4.

後ろからの二つの足音を確認すると、鳩村は歩くスピードを上げた。
つられて、後ろの足音のテンポも上がる。

つかず離れず、一定の位置を足音が保っているのを確認すると、鳩村はニヤリと笑った。

ロッカー室へと、その頃には走る様に飛び込んでいた。

河瀬と小久保がロッカー室の前まで来ると、鳩村が出てくる所だった。

「鳩村くんっ」

「しつっこいんだよ、あんたたち」

そのまま、足早に署を出て行く。河瀬と小久保も、そのまま後を追った。

その姿が見えなくなる頃、署の前に停めてある、ブルーシルバーのキュープの中から、大下が降り立った。

「行ったな・・・」

 

大下は、改めて、鷹山達の後ろ姿を確認すると、ロッカー室へと向かった。
そして、ロッカー室のドアを、リズミカルにノックする。

「はっとむらさん」

ひょいっと、ドアを開けて、滑る様に中に入り込んだ。

「行ったよ」
「すまないな・・・。これ、返すよ」

鳩村は胸ポケットに挿していたボールペンを、大下に返した。

「便利でしょ、これ」
「カメラもここまで来れば、芸術だよ」

ボールペンをポケットに挿したことのある人なら、分かると思うのだが、蓋の所に小型カメラが仕込んであり、それで今までの鳩村たちのやり取りを見聞きしていたのだ。

「さて・・・、まいりますか。鳩村さん」
「おっと、これからはそう呼ばれちゃ困るね」
「・・・・うーん・・・鷹山、か。違和感あるなあ・・・。タカ、って呼ぶのもなあ・・・」
「好きに呼べよ。勇次」

ちょっと不意を突かれて、大下はきょとんとした顔をした。

「まあ、いいか。たか」

「しばらく、慣れそうもないな・・・」
「ごもっとも・・・」

二人は、署を後にした。

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