「キャプテンをフォローするのが俺らの仕事なんでね」

入江が鷹山の前に立ちふさがった。

「こっちだって仕事だ。邪魔すんな」

正面から向かい合い、威嚇する。
大下と同じ目をし、自分の信じた道を突き進もうとしている入江に、
鷹山はため息をついた。

「それ以上近寄ると、俺のダーツが火を吹くぜ?」

入江は袖口に仕込んでいたダーツを取り出し、構えた。

「ガキと遊んでる暇ねぇんだよ。俺の相棒が中にいるんだ。
どけよ」

鷹山は、両手をポケットに突っ込んだまま、顎で退去を促す。

鷹山のサングラスのせいで、入江には鷹山の眼の表情は読めない。
だが、ただならぬ威圧感を感じる。

入江がそこを死守しようとしていることは、鷹山にも痛いほど分かる。
しかし、時間がない。

鷹山はため息とともに、拳銃をホルスターから引き抜いた。
黒く、鈍く光る銃身に、入江は息を飲んだ。

「何者だ、お前・・・」

「おまわりさん。さ、公務執行妨害でパクられたくなきゃ、どけよ」

「へっ、そんな嘘、誰が信じるかよ」

「こんなダンディな刑事、いるわきゃねぇってか? 信用したくないなら、それでも結構」

鷹山が一歩踏み出した、その足先に入江はためらいもなく、ダーツを数本打ち込んだ。
それに、鷹山の歩が止まる。

「本気で俺とやり合いたいのか・・・・? 死ぬぞ、お前」

決して荒げた声ではない。かえって静かなトーンが、入江の心をえぐる。

入江の全身から汗が吹き出す。心臓の鼓動が早くなる。本能が警鐘を鳴らす。

 

この人は、やりかねない。

 

入江の背後の廃ビルから、銃声が響く。

「ユージ?」

「キャプテン!!」

二人は我れ先へと、そのビルの中へと駆け込んで行った。


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