12月29日
アラスカ鉄道の日である。
フロントのお姉さんが、今日はプリティコールドね、と言って、徒歩5分の駅に車で送ってくださる。
……駅舎があった。数日前はなかったのに。広々とした待合室まである。
要するに、運行しない日は開いてません、ということらしい。
しかし。あとからあとから、大量に湧いて出る日本人。決して広くないフェアバンクスのどこにこんなに隠れていたのだ。乗客のおよそ8割が日本からの観光客なんではなかろうか。いや、鉄道好きな民族であることよ。
もっとも、生活手段とするにはあまりにもトロく、値段も高く(115ドル)、しかも冬期は週に1便しか運行しない。ほぼ観光用の列車なのである。

8:30頃 出発。
こちらの時刻表は、おおむねいい加減で、というかおおらかで、時間通りに発車などしない。
時速30マイルの振動が心地よく、早起きもあって、こってり爆睡する。目を覚ましたら、遅い朝日がのぼっていた。
山あいの雪の原野をトロトロ進む。
およそ500キロの距離を12時間かけてアンカレジまで向かうこの鉄道には、食堂車が併設されている。あたたかいアップルサイダーという、ありそうでないものをすすったりしながら、ひたすらぼーぜんと外を眺め、時々うつらうつら船を漕ぎ……。

そういえば、何曜日の何時からかは覚えていないけど、「世界の車窓から」というスポット番組があったよなあ。今考えると、スタッフは大変だったのかも。毎日毎日、そうは劇的な風景があるわけでなし。
このアラスカ鉄道も撮ったんだろうか?
今日の空は薄く晴れ、遠くまで見渡せる。原野の向こうに、青く光る山嶺が現れては去り、また現れては去り。

アラスカの大地に感激した割には、ぜんぜん知識を仕入れていない私は、山といえばマッキンリーしか覚えていない。確かデナリ国立公園のそばだったから、列車から見えるであろうと勝手に決めつけ、ピークが見えるたびに、「おお、マッキンリー」と一人感動。

いくつものマッキンリーが、わたくしの視界を過ぎてゆく。
(いいのか、こんなことで?)
途中の小さな駅に寄ったりしながら(乗る人がいると止まる)、アンカレジに着いたのは、午後8時過ぎ。もちろん日はとっぷり暮れていた。タクシーを呼んで、ホテルバーラットインへ。今までと違って、一夜のかりそめの宿である。
……日本で仕入れた情報では、「空港ホテル」となっていた。
………………どこがや。
荷物持って歩いたら、空港まで結構な距離ではないか。
朝の6時に飛行機は飛んでってしまう。
チェックインのとき明朝の予定を交渉し、4時にモーニングコール、4時半にシャトルバスを出してもらうことに。
とにかく寝よう。早く寝よう。
しかし列車の中でうとうとしていたので、ビールの1本くらいではなかなか寝付けない。
もっと強めのアルコホルを用意しとくんだった。次来るときにはそうしよう。
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