ユニレンジャーV3(4A)

 

「ようこそ、我々の秘密基地へ」

インベダ星人の不気味な声に目を覚ました。

戦闘艇に捕らえられ、吊り下げられたまま基地まで連行されたところまでは覚えている。

だが、基地らしい島を見た後、何らかの方法で眠らされたらしい。

ユニレッドにはその後の記憶はなかった。

周囲を見回し、状況を確認するユニレッド。

どうやら、戦闘艇の格納庫のようだ。

ユニレッドを連行してきた戦闘艇もその一角に着陸しているが、ユニレッドは依然

数メートルの高さに吊り下げられたままである。

ユニレッドの周りは、インベダ星人の兵士達が取り囲んでいた。

 

やがて、ユニレッドを吊り下げていたロープが少しずつ下がり始める。

それに連れて、獲物を仕留めた猟師にも似た歓喜の声が、兵士達の間から起きた。

「ぐぐぐ。地球星のヒーローもたいしたことはないな」

「まったく、いいザマだ」

嘲笑が浴びせられる。

ロープは、どうにかユニレッドの足が床に着く程度で止まった。

吊り下げられているとも、立っているとも言えない、中途半端な高さだ。

 

「よく来たな、ユニレッド」

さっきと同じ声がした。

ユニレッドが声のした方に目を向けると、戦闘服姿の兵士に混じって、

ただ一人、灰色のローブを身にまとった男が目に入った。

おそらく、インベダ星人のリーダー格なのだろう。

この男が声を発した瞬間から、兵士達はすっかり静かになっている。

「お前がこいつらのボスか!」

「グググ。

 ボスとは、また品性のない表現じゃな。

 長老と呼んでもらおう」

長老を名乗る男は、ユニレッドの言葉に、相変わらずの不気味な声を返した。

「人の星を侵略しておいて、何が品性だ!

 ふざけた事を言うな!」

「グググ。我々にも我々なりに、生きていかねばならないんじゃ。

 必要とあらば何でもするわ。

 それに、誤解しているようだが、我々は地球を侵略するつもりなど

 さらさらないんじゃよ」

「何だと?」

「グッ。どうやら余計なおしゃべりをしてしまったようじゃ。

 グググ。今は地球の心配をするより、我が身の心配をした方が良いのではないのかの。

 ムダな希望を持たないように教えてやるが、シャドの偵察衛星は破壊した。

 むろん、お前がこの基地の所在を伝える為に持っていた発信機もじゃ」

「なに!」

ユニレッドは言葉を失った。

まるで、囮作戦を知っていたかのような口ぶりだ。

これでは自分が捕虜になった事に何の意味もない。

「お、俺をどうするつもりだ」

「グググ。やっと自分の立場が分かってきたようじゃな。

 心配には及ばん。殺したりはせん。

 少々痛めつけてやるだけじゃ。

 殺さぬ程度に痛めつけるのなら、やって良いと言われておるのでな」

「やってもよいと言われている?

 誰にだ!」

“この男、どうやら口数が多そうだ。

 頭の方も、長老を名乗るにしては鈍いらしい。

 暗に黒幕の存在を口にしている”

そう思ったユニレッドは、さらに長老から情報を聞き出そうとした。

「お前達が地球に来た目的は何だ?

 それ次第では、無益な戦いなどしなくとも、我々と共存する事もできるはずだ」

だが、長老も自分の口の軽さに気付いたのか、それに答えようとはしない。

 

戦闘艇に吊り下げられたままのユニレッドに、インベダ星人の兵士達が近づいてきた。

両手は縛られているものの、足は自由に使える。

得意のキックを見舞う事も可能だ。

だが、吊り下げられた状態では、どこまで戦えるか疑問でもある。

 

バシッ!!

戦いをためらっていたユニレッドの尻に衝撃が走った。

振り向くと、こん棒を持った兵士が笑い顔を浮かべている。

さらに、今度は腹にパンチが繰り出される。

「ぐわっ」

突然の攻撃に悲鳴をあげるユニレッド。

「待て待て。殺してしまっては、元も子もない

 生かさず殺さず、ほどほどにな」

攻撃はさらに続いたが、長老の言葉があってからは明らかに手加減されたものになった。

元々、特殊防御シールドに守られたユニを身につけているユニレンジャーにとって、

こん棒による攻撃など、たいしたダメージにはならない。

だが、ユニレッドは叩かれるたびに大げさな悲鳴をあげ、

敵の油断を誘う作戦を思いついた。

案の定、しばらくして、ユニレッドが気を失ったふりをすると、

インベダ星人立ちはリンチを中止し、宙づりの状態から下に引き下ろした。

「フン。地球のヒーローなど、他愛のないものよ。

 しばらく地下牢にでも放り込んでおくのじゃ」

長老の命令を受け、兵士二人がユニレッドの脇を抱えて、引きずっていく。