第1話

 

東幸太郎は、左手でPCのスライドショーを熱い視線でめくっていた。

黒く日焼けした若者の笑顔。

他の隊員と共にこちらを指差す日焼けした逞しい上半身。

ついこの間にあった隊員との河原でのレクリエーションのワンシーンだ。

「ああっ。」

幸太郎の右手はジーンズの開いたジッパーに手をいれ、自らの急所を締め上げる。

「タカシ・・・・・。」

【ああ、いつものように、幸太郎の気持ちが、その気持ちが高揚していく。

 その気持ちよさが、俺に響く。何なんだこの感覚は・・・・・・。】

幸太郎は手を止めると、ジーンズをずらし急所を取り出すと、腰を突き出し、激しく右手を上下させた。

「タカシ・・・・・ああああああぅっ。」

【幸太郎の気持ちが俺にダイレクトに伝播する。ああ、いいっ。】

そして、幸太郎は自らの手の中で果てた。

 

幸太郎は最近入隊してきた新人の上野孝隊員にぞっこんだった。

最近の自分の処理はすべてタカシの映像だ。

勿論、正義ヒーローのウルトラマンタロウに変身するわが身の事を考えると、

こうやって、一人で黙って処理するしかない。

幸太郎は一抹の虚しさを感じつつも、いつも、こういうやり方を続けている。

幸太郎は時々思う、こういった俺の行為を、ウルトラマンタロウはどう思っているのだろうか。

くだらない奴と一体化したものだと考えているのだろうか。

しかし、一体化して早一年、タロウは俺から分離する気配はない。

そう、タロウと俺とは一体化しているのではあるが、意識まで一体化しているわけではない。

人間である時は、あくまで、俺、幸太郎の意識が支配している。

そして、危機に陥る瞬間に俺の意識が隅に追いやられ傍観者となる。

その瞬間、ウルトラマンタロウの意識が表出し、俺の意識を凌駕する。

ある種の2重人格のような感じもする。

しかし、2重人格と違うところは、タロウになった後の記憶が無いのかというとそうではない。

タロウとして闘っている間、俺の意識はウルトラマンタロウの意識の片隅で、

息づいている事は感覚として感じられる。

俺は、タロウと会話をした事は無い。

タロウが何を考えているのかも、分からない。

また、俺が幸太郎でいる間、タロウの意識は何を感じて、何を感じていないのかも知らない。

としているのかもしれない。

どうでもいいことかもしれない。

俺は、善良な地球人として、タロウに選ばれた以上は、タロウと一緒に地球を守っていくだけだ。