宇宙刑事ディルバン(16A)

 

「それじゃあシン君の見張りは君たちに任せようかな」

 ベロニカを出迎えるために、懲罰室を出ようとするアルスは、通路で入り口の警備をし

ていた、2名の戦闘員に命令を下した。

「うへへへ、お任せ下さいアルス様。こいつのお相手は俺達がしっかりとやらせてもらい

ますよ」

 アルスに敬礼を送りながらも、突然沸いて出た美味しい話に、ついつい顔がほころんで

しまう戦闘員達。

彼らにとって人質の見張りをするということは、その人質を自由にいたぶってよい、と

いう意味と同じなのだ。しかも相手は高名にして、眉目秀麗なエリート宇宙刑事である。

 下っ端の戦闘員には滅多に回ってこない役得に、喜びを隠せないのも無理はない。

「そうそう、この薬を一時間置きに塗るのを忘れないように。クククッ、彼は明日のパ

ーティーのメインディッシュだからね、料理の仕上げをしっかりと頼むよ」

 去り際、媚薬入りにガラス瓶を、戦闘員に手渡すアルス。

 懲罰室から立ち去る主を見送った二人の戦闘員たちは、お互いの顔を見合わせると「グ

ヘヘヘ」と下品な笑みを浮かべ、欲望丸出しのギラギラとした視線をゆっくりとシンに向

けた。

「ずいぶんお楽しみだったようだなぁ、宇宙刑事さんよ!あんたの喘ぎ声は廊下にまで

響き渡ってたぜ」

「エリート刑事さんでも、あんな色っぽい声が出せるんだなぁ。お陰で俺達二人は欲求

不満が溜まって仕方が無かったぜぇ」

 竿の形がくっきりと浮き出る程に、完全勃起した股間を指差す戦闘員。

エリート宇宙刑事の表情は、恐怖と絶望に瞬時に凍りつく。

「やめろぉ〜っ!こっちに来るなー!俺に近づくな!!」

 じわじわとにじり寄る二人の戦闘員に向かって、力の限り叫ぶシン。

 既にアルスと四天王によって、容赦のない陵辱の受け、完膚無きまでにプライドを粉砕

されたシンであったが、相手が雑魚の戦闘員となると話は別だ。

 失われかけた正義の戦士としての誇りを奇跡的に取り戻し、戦闘員を鋭く睨み付ける。

 今も尚、性感帯をジリジリと焦がし続ける媚薬の効果に、消し飛びそうな理性を必死に

繋ぎ止めるエリート宇宙刑事。

瞳には、かつての強固な意志の炎が、再び灯されようとしていた。

「おお〜、怖いねぇ。だけどよ、自分の姿を良く見てみろよ。今のお前にいったい何が

できるってんだ?」

「クゥッ……」

 図星を指され言葉を詰まらせるシン。戦闘員の指摘通り、全裸で両手足を鎖で拘束され

ている彼には、抵抗の術などあるはずが無い。

「へへへ、いいじゃねぇか。これくらいイキが良くないと嬲り甲斐が無いぜ。ほーら、

ここを擦って欲しいんだろ宇宙刑事殿!」

 おもむろにシンの肉棒を握りしめる戦闘員。

「ヒィィッ……やっ、止めろ〜!俺に触るなぁ!!」

 媚薬で極限まで敏感になった陰部を、突然乱暴に握り締められ、堪らず声を出すシン。

「覚悟しろよエルデバン。明日までタップリ可愛がってやるからなぁ」

「時間は十分にあるしな。ちなみに俺達が疲れたら、別の奴らが交代に来るからな。有

名なエリート刑事を思う存分に陵辱したいって奴らが、何十人も順番を待ってるんだぜ」

「へへへ、残念ながらお前の替わりはいないからな。お前は明日まで不眠不休でヒィヒ

ィよがりまくるって寸法さ。ぎゃははは」

「くっ、くっそぉ〜……」

 射精できぬ状態で全裸で吊るされ、じっくりと全身の性感帯を開発されたかと思うと、

次は痴女と化した同僚の女刑事達に、身体の隅々までをタップリとねぶり廻され、更に

強烈な媚薬で心身を狂わされた状態で、執拗な焦らし責めを受けたシン。

 その彼に、今度は下っ端の戦闘員達による陵辱地獄が待ちうけているのだった。

「さ〜て、まずは薬の追加といきますかねぇ〜」

 戦闘員はアルスから受け取った薬ビンを開けると、大量の媚薬を手の平の上へと注ぐ。

 シンはおぞましい紫色に染まった戦闘員の手が、自分の股間へゆっくりと伸びてくるの

を、ただ呆然と見つめていた。

 

 

「メインディッシュの最後の仕上げ……あのような者達に任せてよろしかったので

すか?」

 懲罰室を出て、要塞内の通路を進むライラは、自分の隣を無言で歩くアルスに、率直な

疑問を投げかけた。

アルスは不満顔のライラを一瞥すると、いつもの氷の微笑を浮かべる。

「自分の手で嬲りたかったって顔だねライラ。でもね、彼みたいな気位の高いエリート

には、ああいう責めが一番効果的なのさ。それに、お前たちはパーティーの準備に専

念して欲しいからね。僕の方はダークパレスから届いた例の通信の件で、これから忙

しくなるし」

「やはりイザベラ様が裏切ったのでしょうか?」

 宇宙警察機構本部基地を制圧した直後に、ダークパレスから宇宙警察長官宛に届いた、

アルス艦隊襲撃を知らせる通信文の話になり、ライラの顔も自然と深刻なものになる。

「確かに姉上ならやりかねないかもね。でも、もしそうなら通信文は僕らがここに到着す

る前に届いていたはずだよ。宇宙警察機構の連中は万全の迎撃体制を整えていて、こ

うも簡単に陥落させることはできなかったろうさ」

「では、いったい誰が?」

「わからないかい?犯人は現在ダークパレスにいて、空間を操作する技術に長けた我々

ダークギルのワープ航法が、通常のそれよりもはるかに高速で移動できるってことを

知らない人間さ」

「まさかディルバンが?いったいどうやって?」

「もしかしたら姉上が一枚噛んでいるのかもしれないね。もしくは元宇宙刑事の副官タ

ッキ−が裏切ったか…。そして見張り役に残してきたヒーレッツも、うまく立ち回っ

たのかもしれない」

「ヒーレッツ……あの口先だけの男がですか……」

 ライラはヒーレッツの名を聞いて、露骨に嫌悪感を露にする。

 実力と武勲によって今の地位を得た彼女にとって、奸智と口の上手さだけでアルスに取

り入ろうとするヒーレッツは、目障りな存在でしかない。

「まあ、そう言うな。情報収集や情報操作といった諜報活動に関しては、あの男の能力

はなかなかだよ。ただ、日和見な奴だから何時裏切るか判ったものではないけどね」

 能天気にクスクスと笑う美貌の王子に、不満を口にしかけるライラであったが、その言

葉は背後から響く、若い男の喘ぎ声によってさえぎられた。

 通路全体に響き渡る、その熱く悩ましげな叫びは、見張りの戦闘員に嬲られているエリ

ート宇宙刑事シンのものだ。

「くくくっ、始まったようだね。これで明日のメインディッシュはより一層熟成される。

とにかく、今は明日のパーティーの準備に、専念しようじゃないか。ダークパレスの

件はその後でじっくり考えればいいさ」

「……アルス様の御意のままに」

 居城を奪われた可能性にすら、どこまでも余裕の笑みを浮かべる主に、底知れぬ恐怖を

感じたライラは、反論の言葉を飲み込んだ・・・