(3)

「ストッープ!!」

 

先走りの液体がダラダラと流れてホースの中を通り、バットマンの口にあと少しで入ると

いう時だ。青年の声と共に彼らの時間は再び停止した。青年はニヤッと笑ったままスーパ

ーマンの方に顔を戻す。

 

「どうかな、君の仲間の淫らな姿は。面白かったでしょ? 君も相当楽しんだよね?」

 

悪びれた様子もなく、楽しそうに語る青年は、スーパーマンの股間部を指差す。バットマ

ンとロビンの姿を呆然と立ち尽くして見ていた彼だが、臀部には変化が現われていた。テ

カテカ光るビキニパンツを突き上げるように肉棒が勃起しており、その頂点は黄色に染ま

っていた。

 

「精液が染みるとね、そのパンツは黄色くなるのさ。仲間の様子を肴にして君も相当エロ

イことを考えたみたいだね。スーパーマンといえども、所詮はやっぱりオスってことか。

他の奴らと同類だな」

 

自身の勤める新聞社で他の貴社が話していたことと同じ言葉が彼の口から零れ、スーパー

マンは屈辱の上塗りを感じた。だが、青年にとってはそんなことはどうでもよく、スーパ

ーマンが傷つこうがどうしようが変わらない。彼の口からはさらにとんでもないことが零

れ出た。

 

「さて、そろそろ本題に入らせてもらうよ。今からバットマン、ロビン、そして君の3人

のうち、誰かを陵辱し、ネット上にばら撒けるように撮影する。今この世界は僕たちの周

囲以外は止まっているけど、君やバットマンが姿を消してから1週間は経過している。君

たちの仮の姿と正体を同時に晒しても十分に話題づくりにはなる。だけどさ、一辺にそれ

をやっちゃうのは楽しくないのさ」

 

青年はスーパーマンの目をじっと見つめながら言い続ける。スーパーマンは彼の好奇心の

つまったキラキラした目に引き込まれ、何も言えないでいる。彼がやっていることは自分

たちにとっても世界にとってもいいことではないが、それなのにも関わらず、彼の目は純

粋に光っているため、スーパーマンは何も反論できなかったようだ。

 

「一般人の持っていない力で人の役に立とうと動いている君達だけど、所詮は男だろう?

本来の男である姿をさらけ出した君達を世間に晒し、君たちがどのように過ごすかを見る

と結構楽しいんだけどね、やっぱり一気にそれを行ってしまうと楽しいことはすぐに終わ

ってしまう。だから決めたのさ。今か3人の誰を陵辱したらいいか、君に決めてもらうよ」

 

青年はそう言うと、スーパーマンをカプセルから解放した。だが、カプセルから出られて

も、彼が動くことはできなかった。青年によってスーパーマンの時間が止められてしまっ

たからだ。青年の声だけが聞こえる状態にされたスーパーマンは、青年の言葉に異を唱え

ることもできず、青年によって難題を押し付けられてしまった。3人の誰が、誰を陵辱す

るのかと言うことを。

 

「君がもしバットマンを陵辱した場合、ロビンは余る。その時、彼には観客になってもら

う。彼からは肉棒についたホースを取り除かれ、君がいたカプセルの中でじっくりと君ら

の様子を眺め、終わったら、彼が気を失った時の場所に帰す。攻めを受けることはない。 

もし君があの2人を選べば、君は彼らの様子を肴に楽しみ、ここから出ることもできるけ

ど、友人2人を君は見捨てることにもなる。さて、どうするか、頑張って決めるんだよ」

 

そういうと、青年は姿を唐突に消してしまった。

 

スーパーマンの時間を完全に止め、残っていた大量のコスチュームを全てマネキンに着せ、

この場から立ち去ったようだ。

 

『決まったらその2人の名前を叫ぶように』

 

こう書かれたメモが残され、後にはその時間の止まった世界で動くことの出来るスーパー

マンが一人取り残されている。スーパーマンは最大の決断を迫られる状態に追い詰められ

た。彼はただ、自分か、友人か、どちらを取ればいいのかを迫られようとしていた。もし

ここで2人の枷を取り除いたとしても、青年はどこかでそれを見ているだろうし、スーパ

ーマンの時間を一気に流して死に至らしめるかもしれない。だからといって自分とどちら

かを選んだとしても、残ったバットマンかロビンのどちらかに罪悪感や屈辱が残り続ける

のは確かだった。彼らが必要以上に心を痛めることは確実に分かる。だが、それは自分自

身を残した場合も同じことだ。何もできずにただ何も知らずに生活をすること等できない。

誰かを守るため、誰かを助けるためにヒーローとしての活動を続けているだけあって、た

った一人といえども、その誰かを助けられないで過ごすことがどれだけ哀しいことかはよ

く分かっている。

 

「やはり、こうする以外にはない……」

 

スーパーマンはある決心をし、それを実行しようとした。だが、その意図は青年に読まれ

ていたらしく、スーパーマンが歩き出した直後、彼は再び完全に時間を止められてしまっ

ていた。

 

 

 

「まさか自害しようとは、ヒーローの風上にもおけないね」

 

再びスーパーマンの時間が動き出した時、彼はあのカプセルの中に閉じ込められ、カプセ

ル越しに青年に睨みつけられていた。彼の手の上にはその物体の時間を封じる形で浮かん

でいるように見える、緑色の鉱石がある。スーパーマンの弱点のクリプトナイトだった。

バットマンの装備品の中に紛れ込んでいたらしく、スーパーマンはこれを使って自害する

ことを選んだのだ。選択するという行為が自分にはできないと判断したからだったが、そ

れを決めたことで青年は怒りを露にしたらしい。

 

「君には当分、別の時間軸の中で生活してもらうよ。身体を動かすことはできないくらい

遅い時間の流れだけど、何故か君の意識や感覚は元の時間軸と同じになるっていう状態の

中でね。そして、そこで延々とバットマンや他の仲間や多くの人間が苦しむ姿を見てもら

うよ」

 

青年はそう言い、バットマンとロビンの方を向く。再び彼らの時間を動かし、今度は彼ら

をひたすら攻めようとしていた。スーパーマンはそれを見せられるならば死んだ方がマシ

だと思っていただけに、顔を俯かせようとするが、直立不動のまま動けなくなっており、

もうすぐ始まろうとしている2人の苦しみを見せ付けられようとしていた。しかも、彼ら

が攻められると感じると、股間が熱くなり始めるのを感じた。だが、感覚と意識は普通に

動いても、実際の身体は殆ど動かない。もし性欲に囚われてしまったら生き地獄でしかな

いということだ。

  

「それが自害を選んだ君に相応しい罰だよ」

  

青年の声と共に彼らの時間は再び動き始め、その後、何人ものヒーロー達が時間を止めら

れた中で陵辱されていった。スーパーマンはそれらを見せ付けられ続け、意識や感覚が性

欲に敏感になってもそれを発散できないまま、時間の中に閉じ込められていた。

 

だが、彼は知らない。

 

スーパーマンもバットマンが姿を消したその日から、あの写真によって既にヒーローでは

なくなっていることを。そしてそれが、最も卑猥な写真であったことも。