二人が部屋を出て行くと、ブルースは一人、物思いに耽った。

(あそこまでする事はなかっただと? とんでもない。

 これで良かったんだ。

 あいつは、これで二度と、独立したいなどと言い出すことはないだろう)

 

両親を失ったブルース・ウェインにとって、

唯一人の家族にして相棒のディック・グレイソン。

ブルースとよく似た境遇の天涯孤独のディックを引き取り、後見人となり、

育て、トレーニングを施し、ロビンの名前を与えて自らの相棒とした。

バットマンの傍らで活躍するロビン。そのディックに自らの過去が重なる。

そして、若さ、情熱、純粋さ、ブルースが失った全てを持っているディック。

 

アルフレッドから受け取ったビデオテープをデッキへと挿入すると、

今日スタジオで収録された光景が30インチのテレビに再生された。

 

(あいつは私の全てだ。誰にも渡さない。

 いずれ私から離れていくなんて耐えられない。

 美しいコマドリは、ずっと私の側にいて、

 いつまでも囀っていてくれればそれでいい。

 あいつは私以外の他の誰の自由にもさせない、

 たとえ、それがディック本人の意志であろうとも・・・)

 

「ディック、お前がいないとダメなんだ」

誰もいない書斎で、モニターの中のロビンに向かって、

ブルース・ウェインは一人そう呟いた。