ロビン(5)

 

ロビンとバットマンの苦戦は続いていた。

ロビンは股裂き状態にされ、バットマンは木に縛り付けられている。

「さぁて、ロビンの童貞をいただくとするか」

戦闘員の一人がロビンに近づいてくる。

“このまま犯されてしまうのか。

 しかも、バットマンの見ている前で・・。

 そして、ゴッサムの町を恥ずかしい姿で引き回され、

 最後には嬲り殺される”

惨めな光景がロビンの脳裏をよぎった。

目から涙も流れる。

“嫌だ!。そんなことで死にたくはない!”

ロビンは心を奮い立たせた。

「ちきしょー、思い知らせてやる」

ロビンは手にしたバットレーザーで足に巻き付いたクモ男中尉の糸を切ると、

自由になった足で、もう一方の足を掴んでいた戦闘員を蹴り倒した。

すぐに起きあがると、自分を犯そうとした戦闘員に怒りの拳を見舞う。

「小癪な坊やだね。

 そっちこそ思い知るが良い」

モス少佐は再び体当たり攻撃を仕掛けてくる。

ロビンは咄嗟にバットレーザーの引き金を引いた。

照準など、合わせている暇はない。

「ちきしょー、ちきしょー」

ロビンは何度も引き金を引く。

レーザーはモス少佐の羽根をかすめ、空に消えていったが、

バランスを崩したモス少佐は頭から地面に落下した。

「う〜ん、くそー」

頭を抱えて起きあがろうとするモス少佐に

ロビンの狙い澄ましたバットレーザーが直撃する。

「ぎゃー」

モス少佐は断末魔の叫びを残して倒れ落ちた。

「次に死にたいのは誰だ。

 お前か、お前か!」

ロビンはレーザーを向けながら、周囲を取り囲んだ戦闘員を威嚇する。

声がうわずっている。

「クモ男中尉、お前も殉職して二階級特進したいか!」

ロビンはバットレーザーをクモ男中尉にも向けた。

「うっ。くそー。

 今日のところは借りにしておこう。

 だが、いつか後悔させてやるからな」

上官を失い、クモ男中尉は戦闘員を引き連れて引き上げていく。

 

ともかく一つの戦いが終わった。

バットカーで引き上げるバットマンとロビン。

基地に着くまで、二人ともほとんど口を開かない。

モス少佐を倒したものの、奪われた劇薬を取り戻せなかったばかりか、

散々ないたぶりを受けたロビンの心は傷ついていた。

まして、そんな事など知る由もないバットマンが

ロビンの着替えを持ってきているはずがない。

ロビンは基地に着くまで、下半身を曝した格好でいなければならなかったのだ。

「バットマン」

基地が近づいた頃、ようやくロビンが口を開いた。

蚊の鳴くような声だ。

「もし、バットマンが助けに来てくれなかったら・・、

 僕はきっと・・、きっと犯されてたよ。

 戦闘員に輪姦されていた。

 捕まっていた時も、ずっといたぶられていたし・・。

 あのまま犯されて、嬲り殺されるのかとも思った」

「だが、君は諦めなかった。

 君は良く戦ったよ」

バットマンは前を向いたまま、ロビンに答えた。

「敵に負ける事は恥ずかしい事じゃない。

 自分に負けるのが恥ずかしいんだ」

「う、うん。分かった」

それを最後に、再び沈黙が続いた。

無骨なバットマンの、それが無言の優しさなのだとロビンは思った。