ウルトラマンレオ(1)

 

 ブラックスターからの刺客、星人ブニョの卑劣な罠に堕ちたウルトラマンレオに、

最後の時が訪れようとしていた・・・。

 人質解放と引き換えに、いかなる力をもってしても破壊不可能な、

宇宙ロープで両手を拘束されたおゝとりゲンは、宇宙空間にあるブラック指令の

秘密基地へと拉致されてしまったのだ。

 

 秘密基地内で待ち構えていたブラック指令の剣が、頭上に振り下ろされる瞬間、

辛くもレオに変身し、攻撃をかわしたゲンだったが、宇宙ロープの戒めによって、

巨大化することができない。

 人間サイズのままの無力なレオは、そのまま身体処理室に連れ込まれ、

ブニョによって一方的に殴る蹴るの暴行を受けることになったのだった。

 また、身体処理室の気温は氷点下100℃に保たれており、

超低温の冷気がブニョの攻撃以上に正義の宇宙超人の肉体を蝕んでいた。

 超低温に晒された全身の皮膚感覚はどんどん麻痺し、次々と体中にまとわりつく

霜と氷とが、ロープで拘束された両手同様に、レオの全身の自由を奪っていく。

 

「うっ、ぐはぁっ!」

 ブニョの強烈なキックを顔面に受け、無様に倒れこむレオ。

 ウルトラ戦士の中では、最も格闘戦を得意とするレオであったが、

宇宙ロープと超低温によって、その高い身体能力を封じられ、

防戦すらもままならぬ状態だ。

(くそぉっ、こんな奴に……人質さえ取られなければこんなことには……)

 戦闘能力が決して高くは無い卑劣な星人に、一方的にいたぶられる屈辱と、

この窮地を脱する活路を見出せぬ焦燥感とが、孤高のウルトラ戦士の精神までも

追い詰めていく。

「うはははっ、いいぞブニョ。やれやれもっとやれ〜」

 高みの見物を決め込んでいる、ブラック司令から上がる歓喜の声。

悪の司令官は、自らの作戦をことごとく阻害してきた憎き宿敵が、

無様に叩きのめされる姿を、心から楽しんでいるようだ。

「ほ〜ら、これでも喰らえ!」

 ブニョは床に倒れこんでいるレオを強引に引きずり上げると、

今度は渾身の力を込めたボディーブローをお見舞いする。

「ぐふぅっっ……!」

 強烈な一撃を鳩尾に受けたレオは、受身を取ることも出来ずに

再び硬く冷たい床の上にひれ伏した。

 卑劣なブニョは自分だけちゃっかりと防寒服に身を固めており、

無防備に冷気にさらされているレオを、思いのままにいたぶることができるのだった。

(こ、このままでは奴らに倒されてしまう。俺はここで死ぬわけにはいかない!

 俺が死んだら、誰がブラックスターの侵略からこの地球を守るんだ!)

 薄れゆく意識を必死に繋ぎ止めようとするレオ。

 しかし、低温とブニョの攻撃によって、既に大半のエネルギーを消耗した彼には、

既に再び立ち上がる体力は残されていなかった。

(駄目だ……か、体の……自由が利かない……くぅっ、俺はここで……死ぬのか・・・)

 動きを止めたことによって、体に着氷するスピードが一気に増し、

正義の宇宙戦士の真紅の肉体を、霜と氷が見る間に覆い尽くし、

遂に指一本すらも動かすことが出来なくなる。

 

「そろそろいいだろう。さぁレオの身体を解体するぞ」

 ブラック指令が身の丈ほどもある巨大なノコギリを手にし、処刑を宣言すると、

ブニョは身動きの取れなくなったレオを、部屋の中央にある身体処理台へと運ぶ。

 身体処理台は楔型をしており、レオは両足を大きく広げた状態で、

その上に寝かされた。

 

「う……くぅ……」

 言葉にならぬ、か細い呻き声を上げ、僅かに体を震わせるウルトラマンレオ。

 一方的リンチによって徹底的に痛めつけられ、更に全身を氷付けにされたレオは、

そこが自分の処刑台となることを知りつつも、何の抵抗もすることができない。

「さーて、こいつでギィーコギィーコと、斬ってやるか」

 ブラック指令の巨大ノコギリが、レオの腹部へと当てがわれる。

「ちょっと待って下さい。こいつをこのまま殺すのは勿体無いですよ」

 ブニョはノコギリの刃先がレオの肉体に食い込もうとする寸前に、

突如ブラック指令を制止した。

「何ィ?一体どういうことだブニョ!?」

 悪の司令官は、悲願であるレオ抹殺の瞬間を邪魔され、ブニョを激しく睨み付ける。

「いえね、殺す前にこいつのエネルギーを吸収させてもらいたいんですよ。

 こいつを殺した後で、地球人共を抹殺するのは私の仕事でしょ?

 派手に暴れ回る前に、ちょっとばかり栄養を補給しておかないと……

 なにしろ私、知恵はあっても力の方はからっきしでしてね」

 ブニョは殺気すらこもるブラック指令の視線にも、まったく臆することなく、

おどけた調子で言葉を続ける。

「それに、こいつに対する貴方の恨みは、こんなことでは晴れないでしょう?

 度重なる作戦の失敗に、ブラックスターでは貴方を司令官に抜擢したのは、

 人事ミスじゃないかって話まで出てたんですからねぇ」

 言葉巧みにブラック指令を説き伏せようとするブニョ。

 さすがに非力ながらも悪知恵だけでレオを窮地に追い込んだ星人である。

「むぅ……、確かにな。それにレオの正体を暴き、拉致に成功したのもお前の手柄。

 いいだろう、お前の好きにするがいい。

 そのかわり、レオに今以上の屈辱を味あわせるのだぞ」

「へへへ、そりゃもう、この私にお任せ下さいよ」

 遂にブラック指令の許しを得たブニョは、歓喜に体をクネクネと震わせながら、

大きく開かれたレオの両足の間へと移動する。