(7b)
地球を守護していたメビウスがやられ、偽のウルトラサインでおびき出されたAが罠にかけられた。
そして、過去の敗北と同様に惨めなブロンズ像に姿を変えられてしまった。
その毒牙はウルトラ兄弟全員に向けられ、偽のウルトラサインで集められた兄弟達は
まんまとカプセルに閉じ込められヒッポリト星人の本拠地へと転送されてしまった。
ウルトラ兄弟2番目の戦士、ウルトラマンも捕まり、そしてモルモットと称され、
成すすべなく敵の本拠地に連行されてしまって、地球を一番最初に守護した戦士は
もはやただの実験対象にまで成り下がり、狭いカプセルの中で施されるままに
最期の時を待つのみだった。
彼が転送された部屋は、まるで何かの儀式を行うような、怪しく薄暗い部屋だった。
光の国には探しても見つかりっこない、そんな部屋だった。
ヒッポリト星人:気分はどうだい?
マン:いいわけ・・・ないだろう・・・・・
ヒッポリト星人:大丈夫だ、君もすぐに兄弟達と同じ運命を辿る
マン:殺すなら、一思いに殺したらどうなんだ!
ヒッポリト星人:君達はいつでも殺せるんだ。
もう、簡単に殺すのさえ惜しいほどさ。
マン:・・・・・なんてやつらだ・・・・・・・・
ヒッポリト星人:喜びたまえ、ウルトラマン。
君はこれからのヒッポリトの繁栄の礎になれるのだから
マン:ど、どういう意味だ・・・・・?
ヒッポリト星人:あれを見たまえ・・・・
後ろでに手を組んでいたヒッポリト星人が手を前に出し、示した先には
怪しげな彫刻が部屋の壁から突き出していた。
よく見ると、それは巨大なヒッポリト星人の顔の様なものだった。
壁からあの特徴的な口が飛び出し、冷酷な目、頭部にある3つの触覚の様なものがある。
何とも悪趣味な彫刻だ。
マン:あれが、なんだというんだ?自分達の姿の彫刻ではないのか?
ヒッポリト星人:そこじゃありません、きちんと見てください・・・・
私の手の先は触覚に向いてるでしょう?
マン:・・・・ん?!あ、あれは・・・・・
ウルトラマンがヒッポリト星人に言われるままに見た右側から生える触角には、
ピクリとも動かないヒッポリト星人が壁に磔になっていた。
目は虚ろで、生気が感じられなかった。
体が落ちない程度にシートベルトの様な感じで壁にくくられたヒッポリト星人は
生きているのか、死んでいるのかすらわからなかった。
人形なんじゃないかと疑うほどに「生」が感じられないのだ・・・
マン:・・・あれは・・・・・一体・・・・・?
ヒッポリト星人:私達は今のままでも十分に強い。
それはあなたも知っていますね?
マン:・・・・・
ヒッポリト星人:しかし、まだまだ強くなれる・・・
いや、私達は他のどんな生き物もまるで敵わない、
そういう種族であるべきなんです!
マン:・・・・それとあのヒッポリト星人と私がどう関係あるんだ・・・・・?
ヒッポリト星人:そこで、私達は思いつきました。
宇宙広しと言えども、私達の様に強い種族はそうそういない・・・
あなた達を除いてね!
マン:皆殺しにでもするつもりか?
ヒッポリト星人:いえいえ、もっと良い手があるじゃないですか?
マン:・・・・?
ヒッポリト星人:あなた達の強さをもらうんです。
しかも一時的ではなく、永遠にね・・・・・
不適な笑みを浮かべたヒッポリト星人の合図で、壁に磔になっていたヒッポリト星人が彫刻の触覚の先、
丸い部分に飲み込まれ始めた。
足元から飲み込まれていき、瞬く間に胸元までが壁に吸い込まれていった。
そして、ウルトラマンの見ている前で顔だけを残し、胴体は全て彫刻の中に入ってしまったのだ。
マン:・・・あ、あれは・・・・ど、どういう・・・・・
ヒッポリト星人:彼は、この星で今、一番強い戦士なんです
マン:貴様が一番ではないのか・・・・
ヒッポリト星人:私は非力な頭脳班なのでね。
自分達が完全な敗北をきした相手が、戦闘用の戦死ではなく非力と自称する
頭脳タイプだったことに愕然とするウルトラマン。
ヒッポリト星人はさらに見せたい場所があると言わんばかりに
落胆するウルトラマンの視線を頭から真っ直ぐ上に伸びる触角に向けた。
そこには磔になっているものはないが、蠢く何かが見え隠れしていた。
マン:あ、あれは・・・・・?
ヒッポリト星人:突然変異で増殖が止まらなくなった卵です、我々の・・・・
マン:た、卵・・・だと・・・・?
ヒッポリト星人:はい。もう、おわかりですね?私の目的・・・・・
マン:・・・・?!・・・ま、まさ
ウルトラマンがヒッポリト星人の目的に気がつき、
驚きの声をあげている最中にカプセルは何者かに襲われた。
モルモットの閉じ込められているカプセルに左側の触覚の球体から触手が伸び、
カプセルを消し、ウルトラマンを絡めとったのだった。
マン:・・・・は、離せっ・・・・・
ヒッポリト星人:もう、あなたは逃げられませんよ・・・・・
必死にもがくウルトラマンを尻目に、球体はウルトラマンを磔にするために
触手をどんどん絡めていった。
暴れる両足を足首で束ね、脛で束ね。
両手は伸ばした状態で手首でそれぞれ球体にくくられ、脇の部分でも壁にくくられてしまった。
頭が動かない様に首も額の部分も壁に磔られてしまった。
最後に腹部を太目の触手が縛り、自らの意思で動かせるのは指先だけになってしまった。
そう、ウルトラマンが少し前に見た、ヒッポリトの戦士がそうだった様に、
磔になってしまったのである。