(14)
ヒッポリト星人の目が光ると、父を閉じ込めたカプセルの天井から
透明なねっとりした液体が降り注ぎ始めた。
ウルトラの父:な、何をする・・・・
ヒッポリト星人:今にわかりますよ・・・
今にね・・・・・
ウルトラの父:くそぅ・・・・
なんなんだこれは・・・・
ウルトラの父に降りかかる怪しげな液体は透明で、恐ろしく粘り気がある液体だった。
体に滴り落ちた側から、薄く広がり体を包み込み始める。
そして、体を隅々まで汚した後も、物足りないと言わんばかりに次々に降り注ぐ。
粘り気こそあるものの、カプセルの底にはどんどん液体が溜まり始め、
すでにウルトラの父の足首を越えるところまで深さがある。
ウルトラの父:汚して・・・
ぷはっ・・・・これで、満足か・・・・・
ヒッポリト星人:あなたがそんなに短慮だから、兄弟達も戦うことも出来ずに
捕まったんですね・・・わかる気がします
ウルトラの父:ど、どういうことだ!
ヒッポリト星人:それもすぐにわかりますよ・・・すぐにね・・・・
不適な笑みを浮かべるヒッポリト星人の視線の先は
足元にたまる液体の深さに向けられていた。
会話をしている間も、休むことなく降り注ぎ、ウルトラの父の体を、
カプセルの壁を介してどんどんたまる液体。
ウルトラの父は動くことなく、両腕で必死に体の液体を取ろうとするが、
まったくぬぐえる気配はなかった。
無駄な努力を重ねている間にも、液体の深さはとうとう膝下までになった。
ウルトラの父:・・・・・?!・・・・
こ、これは・・・どういうことだ・・・・
ヒッポリト星人:やっと、気がつきましたか?
あまりにも液体が気味悪いので、めまいがしたウルトラの父を更なる異変が襲ったのだ。
そう、液体に完全に浸かっている両足が全く動かないのだ。
ブロンズ化や石化などの類ではなく、液体があまりに重く、
液体の中で足を動かすことさえも出来ないのだ。
慌てるウルトラの父を笑うように液体は降り注ぎ、両足が動かない事実に気がつき、
足を液体から抜き出そうとした頃にはすでに股間部の近くまで達するほどに深くなっていた。
ウルトラの父:・・・・?!・・・ま、まさか・・・・・
ヒッポリト星人:そう、勘はよいようですね・・・
あなたは標本にされるのです、このままね・・・・
ウルトラの父:くっ・・・・・
驚愕の事実、予想もしなかった自分の未来を聞かされ、
慌てて両足を液体から抜き出そうとするウルトラの父。
カプセルの狭さもあり、腰を曲げることは出来なかった。
自分のふともも、股関節の辺りを引っ張るほかなかった。
しかし、焦ったウルトラの父の頭には、この液体が動きを奪うほどに強力なのを忘れていたのだ。
ウルトラの父:し、しまった・・・・・・・・
足を抜き出そうともがいてるうちに、液体の水位は容赦なくあがり、
股間をとうに越え、人間でいうところの臍を越すところまで上がっていた。
股間周辺だった時には指が沈んでも、たとえ重たいとは感じても、
抜き出すことは可能だった。
しかし、液体に手を漬け、もがき、一度抜き出した後に、深く両手をつけてしまったのだ。
手首を越えてつけられた手は液体にがっちりと捕獲され、全く動かすことさえも出来なかった。
ヒッポリト星人:おやおや、さすがに指導者だけあって、
お行儀よく標本になるんですねぇ・・・・
ウルトラの父:・・・な、何を・・・・・く、くそっ・・・・・
悔しがってみても液体は無情に降り注ぐ。
行儀よく直立したウルトラの父に液体は降り注ぎ、胸板を越え、肩を越え、
顔にさしかかる段階で急に水位の上昇は止まった。
このまま、標本にされると思っていたウルトラの父には意外なものだった。
ヒッポリト星人:どうです?成すすべなく標本にされる気分は?
ウルトラの父:一思いにやったらどうなんだ!
ヒッポリト星人:いえねぇ・・・
あなたの守りたかったウルトラ兄弟が部屋の外にいるんですよ・・・
最後に話がしたいかなぁと思いまして・・・・
ウルトラの父:ジャックのことか・・・・?
ヒッポリト星人:ジャック・・・入ってきなさい!
ウルトラの父:くっ・・・・どこまでも侮辱する気か・・・・・
ジャック:なんでしょう・・・・・・
ヒッポリト星人:ウルトラの父ですよ・・・・・
ジャック:・・・・父も捕まったんですね・・・・・・・・・・
ウルトラの父:ど、どうしたんだ!ジャック、しっかりしろ!
そいつを倒し、皆を助けるんだ!
ジャック:この方は僕のご主人様です・・・・・・・
父も名誉ある標本になれるのです・・・・
喜んでください
ウルトラの父:ジャックに・・・ジャックに何をした!!!
ヒッポリト星人:いえねぇ・・
精神操作と死にゆくレオと80の姿を強烈に見せたら
素直に奴隷になりましたよ?
ウルトラの父:き、貴様ぁ・・・・どこまでも卑怯な・・・・・
ヒッポリト星人:卑怯ついでに・・・あなたには惨めに命乞いしてもらいましょうか?
ウルトラの父:誰が命乞いなど・・・どうせ助けるつもりなどないだろうが・・・・
ヒッポリト星人:これを見てもそう言えますか?
ヒッポリト星人の目が光るとウルトラの父のロイヤルホーンが呼応した。
ウルトラの父の脳裏に送られたのはヒッポリト星人の体内で消化されかかっている
レオと80の無残な姿だった。
魂を飴玉の様に舐め溶かし、カプセルによりかかり動かない二人・・・・
ヒッポリト星人の逆鱗に触れた二人の末路だった。