第1話
謎の声:そう、あの日から始まった・・・
復讐を誓ったあの日から・・・・。
今日、ようやく願いを叶えることが出来る!
(謎の声:あ、兄貴・・・・・・・い、いつか・・・いつか必ず仇は討つ!必ず・・・・・)
思い出される悔しさに満ちた誓いの言葉・・・。
目の前で正義のレスラー・タイガーマスクに敗北した兄を見つめ、
その敵討ちを密かに誓い、「復讐」ただそれだけに支配され今日まで生きてきた。
誰の目にもとまることなく、兄の無念を晴らすことだけを考え特訓に明け暮れていたのだ・・・この日まで。
ついに・・・ついに果たされる自らの願い・・・。
明らかに場違いな男が一人、拳を握り締めながら邪悪な笑みを浮かべ孤児院を見つめていた。
いや、違う・・・孤児院の中にいる獲物を見定めていた。すでに狩りは始まっていたのだ・・・・・。
子供の声:わぁぁぁ、直人兄ちゃん、足速いんだぁ
直人:ほらっ!早く逃げないと捕まえちゃうぞ!
子供の声:わぁぁぁぁぁ
子供の声:逃げろぉぉぉ
いつもの様にちびっこハウスを訪問し孤児達と明るく遊ぶ伊達直人=タイガーマスク。
この直人こそ、普段の彼からは想像も出来ない激戦を繰り広げ、
資金援助のみならず孤児達に勇気を与える彼らのヒーロー・タイガーマスクだったのだ。
苦戦はするものの今までは勝利をおさめ続けてきたタイガーマスクだった。
もしかしたら、どんなピンチに立たされてもそれを乗り越えてきた経験と自信・・
そこに油断があったのかもしれない・・・。
彼に迫る脅威を誰が想像できただろうか・・・・・。
ルリ子:直人さん・・・お手紙よ
直人:手紙?僕に?
ルリ子:え、えぇ・・・
直人:どうしたんだい?顔色が悪いよ、ルリ子さん
ルリ子:たいしたことじゃないのよ・・・
ただ、この手紙を託した人の目があまりにも冷たいから怖くって・・・・
直人:・・・・・・・・ありがとう、読んでみるよ
おそらく手紙の主は虎の穴の刺客と考えて間違いないだろう・・・・。
しかし、野生の勘なのか、いつもとは違う何か嫌な予感を感じつつ
ルリ子から渡された手紙を開ける直人だった。
タイガーマスク 挑戦状だ!
貴様に拒否権はない、拒否すればお前に群がる子供達がどうなるか・・・わかるな?
○月×日 □□工場跡へ独りで来い
誰にもこのことは告げてはいけない・・・子供の命が大事ならな・・・
漆黒の暗殺者より
手紙を読んだ直人の表情は、孤児達と戯れるいつもの明るい青年のものとは違った。
周りにいる子供を人質に捕られ、誰にも知らせずに来いという内容に
先ほどから感じていた不安は膨れ上がるばかりだった。
しかし、逃げるわけにはいかない・・・
どんなに敵が強大でもこの孤児達は何があっても守らねばならないからだ!
人知れず手紙を握り締め、誰にも悟られないようにちびっ子ハウスを後にした。