せえるすどらいばあ(7)

 

「よし、行こう!」

ヒデアキとケンジはビルの屋上に上がり、"支度"を始めようとする。

しかし、いくら引き受けたといえど、100%までは判っていないケンジ。

「行こうって・・・どうやって行くんですか?」

「まず、全身に力を込めて・・・」

ヒデアキは下を向き、足を肩幅まで広げ、全身に力を入れる。

更にソレを真似るかのようにケンジも同じように全身に力を入れる。

その瞬間、2人の身体は黄金色に輝き始め、表現しようの無い美しい色を放ち始めた。

 

全てを終えると、ケンジは自分の身なりに一瞬言葉を失う。「これは!!」

全身は薄いユニタードのような光沢のあるスーツに包まれ、肩や膝の部分に鎧がつけられる。

しかし股間や太腿、胸板の部分はスーツがピッタリと張り付き、その肉体が裸のように読み取る

ことが出来る。そして、その顔はヘルメットのような、流線型の仮面が取り付けられている。

しかし、ケンジはあることに気付いた。

「ヒデアキさん・・・。あの・・・これ・・・・」

ケンジはヒデアキの、そして自分のスーツ姿に、少し恥らいを感じずに入られない。

スーツは最初白色かと思ったが、時がたつにつれて、互いの逞しい肉体が露になっている。

スーツに守られているものの、半透明、だった。

股間の部分は競泳用の水着で隠されてるものの、鎧と水着以外は美しい肉体

が露になっていた。

 

「・・・・けど、自分の身を守るための機能はちゃんとあるから・・・」

ヒデアキ自身も、少しためらいがあったが、諦めたようだ。

「それに見かけと違って、全身を守る能力はあるから。」

 

「よし、行くぞ!」風を巻き込みながら、ヒデアキは宙を舞う。

ソレを呆然と見つめるケンジ。「それ・・・・一体・・・」

「ケンジもいけるって。」その声に引っ張られるようにジャンプしてみる。ビュン!!

「うわぁっ!」ケンジも風を巻き上げながら飛んだ。しかし、ヒデアキのような

キレイな舞ではなく、空中でもがいている感じの飛び方だった。

 

「大丈夫! こうやって飛ぶんだよ。」

ヒデアキは見本を見せるかのように華麗に舞い始める。

ソレを口を空け見つめるケンジ。けど、見様見真似で同じように舞い始めると、持ち前の

運動神経で、ヒデアキと同じような動きが出来るようになった。

「あ、スゲェ! 俺もできる。」

「な、できるだろ。早くマナブを助けに行こう!!」

「けど、どこにいるかって・・・・」

「大丈夫だ!」ヒデアキは目を瞑り、集中し始めた。

すると、ヒデアキの頭の中にある風景が浮かんできた。

真っ黒い空間、飛び交う白い糸、一糸まとわぬ姿でもがくマナブ、そしてもう一人。

 

仮面越しにヒデアキの眼光が突然鋭くなったのをケンジは見た。

「よし、行くぞ!」ふわりと浮いていたヒデアキは矢のように一直線に飛んでいってしまった。

「あ、ヒ、ヒデアキさん!」焦るケンジ。しかし彼も持ち前の運動神経で矢のごとく飛んでいった。

「すげぇ・・・俺の身体、どうしちゃったんだ?」

ケンジは少し混乱していた。

少し日が傾き始めた空を2筋の光が通り過ぎる。

 

光が収まった瞬間、マナブを締め付けていた糸が飛んでいった。

「ぐあっ!!」怪人もあまりの力によろけていた。

「こ・・・これ・・・・」

マナブも他の2人と同じ格好をしていた。

仮面、鎧、身体にピッタリと張り付いた半透明スーツ、競パンは変わっていた。

突然の事に唖然とするマナブ。しかし、怪物が倒れたのは確か。

 

「何かわからないけど これで!」マナブは正人のところに向かう。

「ぐあ、ぎゃぁ、あああーっ!!」怪物は倒れたのに正人を苦しめる糸の大群は依然として正人を

"切り裂こう"としている。

「待ってろ、今・・」そういいながら糸に手を掛け力を入れた瞬間、さっきまでビクともしなかった

糸がものすごい勢いで砕かれていき、なくなってしまった。

 

数メートル上がっていた正人の身体がリングに落ちてくる。

今度はマナブが支え、リングの上に寝かせる。

「正人・・・正人!!」

「良かった・・・・変身してくれて。・・・これなんだ。あいつがお前らを狙うのは」

「お前ら?」

「お前の力とお前の仲間の力を封じるためなんだ。やつらはお前らを封じようとしてる。」

苦しそうに、息も絶え絶えに話す正人。

 

その瞬間、ぐっ!!

「ふあっ!?」太腿の付け根に締め付けられる感触。

「よくも苦しめてくれたね。今度はこちらの番だよ!」蘇ったクモ怪人は再び自らの糸で

マナブを締め付ける。

「マナブ!」もう体力も無く学ぶを助ける事すら出来ない正人。

「ぐぅ・・いううう!」必死に耐えるマナブ。全ては正人を守るため。

「ヒッヒッヒッ。その友達思いの行動が仇になるのに・・・」そういいながら、その糸に

電流を流す。

「ああああーーーつ!!」何も出来ず、正人の壁になったマナブ。

もういい。守る事が出来れば、正人を守る事が出来れば。遠のく意識・・・・。

 

ビュン。バシッ!!「キィーッ!!」

クモ怪人が倒れこむ。マナブは自分の周りに陰が出来たのに気が付いた。

はっと鳴り後ろを振り向き、マナブが驚きの表情を浮べる。

 

二人の影、そう、マナブと同じ格好をしたヒデアキとケンジである。

「マナブ、大丈夫か?」「ヒデアキさん・・・ケンジさん大丈夫ですか?」

「全然!」

ナゼこんなものを着ているのか、しかし今はどうでもイイ。3人は戦うしかない。

ソレが運命だから。3人の思いはなぜか一致し始めていた。