慟哭のスーパーマン(4)
私はロイスを助ける目的でルーサーのアジトに侵入した。
しかし、今や悪の天才に罠に嵌められ奴隷以下におとしめられた。
心を満たすのは死を待つだけの絶望と、次に何をされるのかがわからない恐怖心だけだった。
体の細部までクリプトナイトで包まれ、動きを完全に奪われてからというもの、
ルーサーの部屋に連れてこられ、床に投げ捨てられ、まるでゴミの様な扱いを受けた。
私のDNAから作られた軍事兵器を買いに来るテロリストから、
仕返しとばかりに殴る蹴るの暴行を受け、終いには逸物をしゃぶらされたりと、
奴隷以下の扱いを受けていた。
そんな中、ルーサーが思い立った様に言った。
R:スーパーマン、本当にご苦労だった。ロイスを解放しよう!
S:そ・・・れは・・・・・ほん・・・とう・・・・か・・・・?
R:まぁ、君が助けられたらの話だがね。
S:な・・・なに・・・?
R:こっちに来い!
ルーサーはそういうと、私の首に付けられた鎖を乱暴に引きずり別な部屋に連れて行った。
そこで目にしたのは、部屋の外へと伸びた透明な筒の先で、
ぼろぼろな服を着せられてぐったりと動かないロイスだった。
S:か・・・彼・・女・・・・は・・・・無事・・なの・・・か・・・?
R:あぁ、眠ってるだけだ。ただ、早く助けないとあのカプセルは外の崖下に落ちてしまうぞ。
行って助けるのだな。
S:わっ・・・・わ・・かった・・・・・
私は始めて、本来の目的であるロイスの救出が出来る、
その一心でルーサーがどんな男なのかすらも考えもせず、
むしゃぶるようにロイスのいる筒の中へと侵入した。
私の身体が完全に入ってしまうのを待っていたように、音をたてて室内側の侵入口が閉まった。
密室になってしまったとはいえ、ロイスの元へ向わねば筒ごと崖下に落とされてしまう。それだけは避けねばと、それだけを考えた。
パワーを極端に奪われ這いずる事もおぼつかないが、それでもロイスを救いたい一心で残された力を振り絞って前に進んだ。
「シャーーーーーー」という音と共に、何かが筒中に放出された。
それは灰色の霧状の液体で、私の体にまとわりつき、瞬く間に体を灰色に染め上げてしまった。
体表は染められたしまったが、身体自体には特に異変は感じられなかったので、
払いのけもせずに灰色の霧の中をロイスに向けて進んで行った。
ようやく、ロイスのもとに辿り着いた時、私は嵌められたことを知った。
私がロイスだと思っていたのはロイスに似せた蝋人形だったのだ。
そして、ルーサーの目的も直ぐに判った。
筒に入ってからずっと浴びせられていた灰色の液体は、石化する性質を持っていたのだ。
染め上げられた部分が固まりだし、全然動かないのだ。
狭い筒のせいで四つんばいの姿勢になっていた私の体は
みすぼらしい四つんばいの格好のまま徐々に固まり、瞬きも何も出来なかった。
R:良い出来じゃないか!私の部屋のコレクションにぴったりだ!
スーパーマンの石膏像なんて誰も持っていないからな!
ルーサーの高笑いの中、私は意識が遠のいていった。
筒から取り出され、体の表面に透明な固定剤を丁寧に塗られ、
二度と風化して壊れることもない石像へと変わってしまった。
R:スーパーマン、聞こえてるんだろう?
S:(どっ・・・どういうことだ!)
R:きっと驚いてるんだろうな!
はっはっはっ、この石化剤は君に栄養を与え続ける特殊な石化剤なんだ。
君はその格好のまま微動だに出来ず、自らの死さえもままならず、
石の中に閉じ込められ生きながらえるしかないのだ!
S:(なっ・・・なんてことだ・・・・・・・・)
R:私の部屋で世界が私に支配されていく様を見るがいいさ!
私に挑んだことを一生悔やみながらな!
S(・・・・・・・・・)
正義のヒーローは世界の破滅を黙って見ることしか出来ず、未来永劫続く生き地獄を味あわされ、一生を遂げた・・・・・・