デカレッド陵辱(6)

  命の灯火

 

 ジュノーは薄暗い廊下を歩きながら、デカレッドから奪ったSPライセンスを使っ

てドギーに交信を始めた。

「元気か?」

 そう声をかけると、SPライセンスからドギーの怒鳴り声が響いた。

「貴様! なんて事を!」

「何のことだよ?」

「デカブルーだ! 忘れたとは言わせんぞ!」

「ああ・・・あの青い奴か」

 とジュノーは思い出したように呟いて、ポケットから葉巻を取り出し火をつけた。

「こっちが呼んでもいねぇのに、勝手にテリトリーに入ってくる方が悪いんだ。家宅

侵入罪って言葉しってるかお前?」

「戯言(たわごと)は聞き飽きた! デカレッドを今すぐ解放しろ!」

「それは出来ない相談だ。まずお前らが俺の要求を呑まなきゃな」

 そう言って葉巻の煙をくゆらせながら、穴蔵を通って地上に這い出た。しばらく地

下にいたおかげで、太陽の光が目に刺さる。

「じゃあ金は諦めてやる。兄貴を釈放しろ」

「デカレッドと交換なら、前向きに検討する」

「前向き? 前じゃなくて横や後ろ向いてんじゃねぇだろうな? 今日の昼十二時に

N遊園地に兄貴を連れてこい。そこで待ってる」

 ジュノーはそう言って通信を切った。

 デカベースでは、ドギーが眉間に皺を寄せて、椅子に腰掛けていた。

「・・・ホージーの容態は?」

 とドギーが呟くと、センちゃんこと江成仙一が、

「もって明日までです」

 とうつむき加減で答えた。それを聞いたドギーはため息をつき、

「釈放、しかないな。いいか、釈放してジュノーと合流したらすぐに逮捕するんだ」

「はい!」

「ジュノーの兄は?」

「間もなく地球に到着します」

「着いたらお前達三人で護衛しろ。N遊園地に着いたら作戦開始だ」

 

 閉園中の遊園地は実に寂しいところである。遊園地に付き物の子供達の笑い声や恋

人達の歓声などで溢れている場所も、不況のあおりを食らって潰れてしまえばただの

廃墟である。埃をかぶり、所々さび始めたメリーゴーラウンドや、古びて本物のお化

けが出そうなお化け屋敷。朽ち果てた夢の残骸だけが放置されている。

 ジュノーは葉巻をふかしながら、兄の到着を待っていた。

 約束の時間きっかりに、遊園地の入園ゲートの前にパトカーが止まる。デカグリーン、

デカイエロー、デカピンク、そして大勢の警察官達に囲まれて、ジュノーの兄、

ルノーが姿を現した。

 まるでルノーが大群を従えているかのようにどっしりとした足取りでジュノーへ向

かって歩いてくる。その様子を見て、ジュノーの顔が綻(ほころ)んだ。

「よし、そこで止まれ。そこの緑の奴、兄貴を連れてこっちに来い」

 緑の奴と言われて少しムッとしながら、デカグリーンがルノーを引っ張り、入園

ゲートの間近まで歩み出る。

「兄貴、さあ入れよ。緑の奴も一緒に入れ」

 ゲートを取り巻く警察官達に見守られながら、デカグリーンとルノーが入園ゲートを

くぐる。

 その瞬間、ジュノーはバリアーを展開した。一瞬にして小豆色の光があたりを包み込み、

遊園地全体を覆い隠してしまった。

「おい!」

 デカグリーンがジュノーの肩を掴むと、ジュノーはその手をぎゅっと握りしめた。

「まんまと罠にかかってくれたな」

 そう言って、隠していた注射器をデカグリーンのグローブに突き立てたのである。

そして中の液体を一気に流し込むと、デカグリーンは首を押さえて地面にうずくまった。

 ジュノーはグリーンから鍵を奪いルノーの手錠を外してやる。

「よくやったな」

「兄貴のためなら命だって惜しくはねぇよ。さあ、最後のショーを見物しようぜ」

 そう言って、ジュノーがパチンと指を鳴らすと、さび付いていた観覧車がギシギシと

音を立てながら、ゆっくりと回り始めた。

 二人はまるで子供のように連れ添って観覧車へと駆け込み、ゴンドラに乗り込んだ。

 ゆっくりとゴンドラが空へと上っていく。

「ドギーへの復讐か?」

 とルノーが聞くと、ジュノーは頷いて、

「可愛い部下が一人死にかけ、今度はその部下同士が殺し合う。これこそ最高の

ショーだよ。俺達は高みの見物さ」

 ジュノーは自慢げにそう言うと、窓の外へ目を向けた。

 地面に横たわっていたグリーンが、不意に起きあがった。手に突き刺さった注射器を

捨て、ふらふらと遊園地の中を彷徨い出す。

 注射器の中には、デカレッドに仕込まれたものと同じナノマシーンが入っていたの

である。それがグリーンの意識を完全にコントロールしているのだ。ナノマシーンに

インプットされているのは、デカレッドの抹殺である。

 メリーゴーラウンドの前で足を止めたグリーンは、カボチャの馬車の中を覗き込んだ。

その中にデカレッドが横たわっていた。

 グリーンが手をさしのべると、それに気付いたレッドが体をゆっくりと起こし、

腹を手で押さえながらゆっくりと起きあがった。

「来てくれたのか?」

 とレッドが言う。だが、グリーンは答えない。

「助かった・・・」

 半ばグリーンにのしかかるような格好で馬車から這いだしたレッドは、荒く息を

つきながらグリーンの体を抱きしめた。

 その直後である。レッドはカッと目を見開き、よろよろと後ずさった。

「な、何を・・・」

 グリーンがデカレッドの腹を殴ったのである。驚いて嗜好が止まっているレッドに、

グリーンは攻撃をかけ始めた。

 ディーロッドを抜き、デカレッドの体にそれを思い切り叩きつけた。

「がはあッ!」

 スーツから火花が散り、レッドが地面をゴロゴロと転がる。レッドがゆっくりと

起きあがると、グリーンがディーナックルを取りだして、レッドのみぞおちにパンチを

食らわせた。

「ぐあああああッ!」

 その直後レッドの全身に電撃が走り、スーツが大爆発を起こす。

「がはあああッ!」

 そしてレッドの体は三メートルも吹き飛ばされ、コンクリートの壁にぶち当たった。

「かッ・・・はぁ・・・がはッ・・・」

 血を吐き、腹を押さえてうずくまるレッドをグリーンが踏みつける。

 そしてあらわになっているレッドの尻に、ディーロッドを突き刺したのである。

そして電撃をくわえると、レッドは壮絶な悲鳴を上げて悶え始めた。

 蹴って体を仰向けにすると、レッドのペニスがそそり立っている。ロッドから

発せられた電撃が前立腺を激しく刺激したからだ。

「やめ・・・グリーン・・・」

 レッドのかすれた声はグリーンの耳には届かない。レッドの膝を抱え上げて持ち

上げると、穴に突っ込まれたディーロッドをピストンさせ始めたのである。

「はああああッ! あああぁん!」

 ジュボジュボと湿った音を立てながらで入りするロッドは、幾度となくレッドの

前立腺を擦り続け、堪えがたい快感と、太いロッドが出入りする苦痛をじわじわと

味わわせた。

 レッドの体の中にいるナノマシーン達も動きだし、前立腺から送り出される快感を

何杯にも増幅させ、前に味わった射精地獄よりも酷く、それでいて甘美な快楽の渦へと

レッドをたたき落としたのである。

「ぐわああッ! やめろ! ダメ・・・やめ・・・」

 はち切れんばかりに膨らんだレッドの肉棒が、堪えきれずに精液を吐き出した。

一直線に精液がレッドの顔に飛ぶ。

 血まみれの顔に、一筋の白い筋を描いた。

 グリーンのロッドはそれでもまだ止まらず、一回射精するたびにドンドン速度を

増していった。

「んあああッ! ふがあああああッ!」

 体を震わせながらあり得ないほどの速度で何度も射精するレッドをの姿を、観覧車から

ルノーとジュノーが見つめている。

「いい様だな」

「弟よ、ちょっと下劣すぎないか?」

「なに、あれくらいやらなきゃあいつの意識は飛ばねぇよ」

 グリーンがロッドを抜き、レッドの体を地面に投げ出した。

 顔はおろか、スーツの至る所に大量の射精染みをつけたレッドは、二、三度体を

震わせると、くりんと白目を剥いて気を失った。

 ナックルとロッドを組み合わせてディーブラスターを完成させたグリーンは、

メリーゴーラウンドの馬を支えている支柱にビームを撃ち込んだ。支柱がバックリと

折れて、グリーンの足元に転がってくる。

 グリーンはそれを手に取り、再び気を失っているレッドの尻に突き立てたのである。

 その瞬間意識を取り戻したレッドは、

「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああッ!」

 と凄まじい悲鳴を上げた。

 もがき苦しむレッドの足を引きずり、グリーンが観覧車へと引っ張っていく。

そしてゴンドラの屋根に上ると、そのまま頂上へ着くのを待った。

「グリーン・・・なんで・・・なんでお前まで・・・」

 ここまでされて、レッドはようやく気がついた。グリーンはジュノーが持っていた

ナノマシーンに操られていること。

 そして、頂上に着いた瞬間、自分の命が消えることを悟ったのである。

 レッドの頬を一筋の涙が伝い落ちていった。

「頼む・・・やめてくれ・・・まだ死にたくない・・・俺は・・・まだ・・・」

 泣きながら命乞いをするレッドの声も虚しく、ゴンドラはもうすぐ頂上へとたどり

着こうとしていた。

「俺はまだ死にたくない!」

 ゴンドラが頂上に着くと、ピタリと動きが止まった。グリーンがデカレッドの体を

持ち上げ、ゆっくりと空中へ身を投げ出したのである。

 地面に激突するまで、二、三秒の出来事だった。

 地面に激突した瞬間支柱がレッドの内蔵を突き破り、先端が心臓を押しつぶしたの

である。

「ゴボオォッ・・・」

 レッドの口から大量の鮮血が溢れ出し、ガックリと頭を垂れた。グリーンは手を離し

レッドの死体を地面に放り出すと、自らの変身をといた。そして、ディーブラス

ターを自分のこめかみに当てて、ゆっくりと引き金を引いたのである。

 仙一の体は糸の切れた操り人形のようにぐらりと揺れ、地面を転がった。自分で撃ち

抜いたところから血が溢れ出す。

 その様子を見届けたルノーとジュノーは遊園地の奥へと姿を消した。

 そして凄まじい地鳴りと砂埃を巻き上げながら、隠してあった宇宙船でバリアーを

突き破り、空の彼方へと消えていったのである。

 バリアーが解け、デカイエローとピンク、そして警官達が遊園地になだれ込む。

 そして駆けつけたドギーも遊園地の中へと飛び込んでいった。

 警官達を押しのけて前に出たドギーは、二人の戦士の亡骸を前にして、ガックリと

膝をついたのだった。