デカレッド陵辱(1)

  犯罪予告

               

「なんで俺一人で捜査しなきゃなんないんだよ・・・」

 バンこと赤座伴番は、ブツクサと文句を垂れていた。

 街の商店街に入り、宝石店などをちらりと見やる。そして人混みをかき分けながら先へ

進んでいく。

 アリエナイザーの襲撃がこのところ頻繁に、同時多発的に起きていて、決まって宝石店

や銀行が襲われるのだ。だが広大な街には宝石を扱う店や銀行は山のようにある。それを

五人でカバーするのは至難の業だ。しかし、アリエナイザーに唯一対処できるのがデカレ

ンジャーしかいないのだから、こうしてバラバラになってしまうのである。

 商店街の端まで行って、異常がないことを確認してから、別の巡回ポイントへ向かおう

とした時だった。

 さっきチラッと覗いた宝石店のあたりから女性の悲鳴が聞こえたのである。

 バンが慌ててそこへ行くと、ショーウィンドウに並べてあった宝石や、ガラスケースの

中にあったネックレス、レジの中のお金など、ありとあらゆる物が消えていたのである。

「すいません! 通して!」

 人だかりを押しのけて店の中に入ると、身分証を見せた。

「一体何があったんですか?」

 カウンターにいた女性の店員は何が起こったのかまるで分かっていない様子で、

「気がついたら全部無くなっていたんです」

 と分かり切ったことを呟いた。

「だからどうして無くなったんですか!?」

「わかりませんよ! さっきまで全部あったのに、無くなっちゃったんだもの!」

「あの、防犯カメラの映像を見せてもらえますか?」

「ええ、奥へ!」

 店員はバンを店の奥へと連れて行った。

 事務所に入り、防犯カメラのテープを巻き戻して、商品が無くなる前の映像をテレビに

映し出した。

 そこには何人かの客が、ショーケースの中を覗き込む様子や、ちょうどその前を通りか

かるバンの姿も映っていた。

 黒いスーツの男が店に入ってきて、店内を見回している。男が口元に笑みを浮かべたよ

うに、バンの目に映った。

 すると突然映像から、店の商品が全部消えてしまったのである。そして入り口のそばに

いた男の姿もなかったのだ。

「あれ!?」

 と、バンが驚きの声を上げる。

「テープを巻き戻してください」

「はい!」

 巻き戻してもう一度見てみる。男が入ってきて、店の中を見回して、次の瞬間には商品

と男の姿が消えていた。

 アリエナイザーか? でも一体どうやって・・・。

「すみません、テープを借りてもいいですか?」

「ええ、どうぞ」

 店員からテープを受け取ると、バンは店を飛び出した。

 

 デカベースに戻ると、ドギー・クルーガーが椅子に座り、モニターをじっと見つめてい

た。他の仲間達も同様、モニターを穴が開くほど見つめている。まるでバンが戻ってきた

ことに気付いていない。

「ボス!」

 と声をかけると、ドギーが顔を上げた。

「街中めちゃくちゃだ」

「じゃあ、そっちでも何かあったんですか!?」

「ああ。銀行、宝石店、食料品店から金と商品が根こそぎ消えたんだ、それも一瞬でな」

「じゃあ、みんなも!?」

 とバンが言うと、ドギーが頷いた。

「これと同様の事件が前にも起きていてな、先週出所したばかりの時間を操る犯罪者だ」

「時間を操るって・・・」

「時間を止めたり、緩やかにしたり、まあそんなところだ」

「じゃあどうやって捕まえればいいんですか?」

「それについてだが・・・」

 ドギーはそこで言葉を切り、封筒をバンに手渡した。

「これは?」

「犯行声明だよ。次はT銀行を襲うと予告してきた。それも逮捕したければ、バン一人で

来いと名指しでな」

「俺一人で!?」

「捕まえるチャンスは、奴が時間の流れを止める一瞬だ。お前一人を逝かせるのも不安だ

から、もちろんみんなを連れて行く。物陰に待機させて、その瞬間が来たら全員で一気に

片づける作戦だ」

「分かりました。それで、犯行予告の時間はいつですか?」

「今日の夜十時だ。銀行へはこちらから連絡しておく。お前は念のため今から張り込みを

するんだ」

「はい!」