スーパーマンの敗北(10)

 

われわれの周りに観客やジャーナリストの円ができた…

彼らは私の死を見ることを期待した。

長い沈黙が我々の周辺をつつんだ。

それから、彼女は地面にそっと私を降ろした。

私はすぐに膝まづいて両手を床について頭をさげ、そして再びすすり泣きながら懇願した。

 

「頼む、…グレートベルタ、…頼む、…私を殺してくれ、…お願いだ、

 お願いします………スーパーウーマン、…おねがいします.......私を殺してくれ」

グレートベルタ、スーパーウーマンにして鋼鉄の女性は、私の周りを歩き回った。

彼女は私が哀願するのを聞いていたし、地球全体でもそれを聞いていた。

彼女は、数分間残酷で無慈悲な心理的拷問を続けた。

永遠にも思えた数分の間、私は彼女がいとも容易く私を罠にはめ、

興奮させて、支配し、打ちのめし、屈辱を味あわせて、

私の精神と私が象徴していたすべてを破壊したのかを考えていた。

私の哀願とすすり泣きは強くなっていった。

 

 最後に、彼女は私の髪の毛を握り非常にゆっくりと私の頭を持ち上げた。

私は、また私のコスチュームのライクラを膨らませている一流アスリートのように

逞しくそして鍛え上げられた彼女の脚を見た。

そして両足の付け根に視線を移した。

そこには湿めった大きなしみがあった。

私はもう一度彼女の見事に割れている胃の辺りの筋肉と

胸の上で大きな「S」のロゴマークを上下させている力強いな肢体を見た。

そして、私は再び彼女の美しい顔、邪悪な微笑を浮かべている肉感的な唇、

彼女のカールした赤毛、そして思わずくぎ付けにされる美しく不可解な緑の目をみた。

私の肉体は、彼女の素晴らしい肉体を見ながら、興奮し続けた。

それから、彼女は、私に一言だけささやいた。

 

「私は、既におまえを殺した。」

 

私は、十分にその言葉を理解した。

彼女は、物理的に私を殺さないであろう。

彼女は毎日私に完璧で絶対的な恥辱と敗北を思い出させるために、

私を生かしておく気だった。

事実、彼女は彼女が必要とした全てを得て、一方私は何年もの間苦しんで、

ゆっくりと死んで行くのだ。

私は絶叫しようとしたが、それは声にならなかった。

その代わりにそれは私の心の中で何千回と言う核爆発のように響き渡った。

彼女は、私のまなざしの中に私の絶対的で完全な絶望と屈辱の表情を見た。

私に対する彼女の勝利は、全面的、絶対的、決定的であった。

彼女はその事実を一点の疑いもなく知っているという表情を彼女の目の表情に見た。

そこには私の絶望感がますます膨れ上がっていくような勝ち誇った表情があった。

 

そして、彼女は、私を押し戻した。

私は床に仰向けで落下した。私は立ち上がれなかったし、

立ち上がりたいとは思わなかった。

エネルギーを失って弱った私は、股間のペニスを勃起させたままアスアファルトの上に

投げ飛ばされた。

実際、彼女はスーパーウーマンのタイトルを受けるに値した。

それから、彼女は勝ち誇って両手を挙げながら、私の前に空中に浮かんだ。

彼女は口元に悪意を浮かべて微笑した。

鋼鉄の女、ビッグブレダは体中の筋肉に力をこめて私のコスチュームを

ぐんぐん膨らませた。

ついに、私のコスチューム、ある人々には憧れの的であり、

ある連中には恐れられた私のコスチュームは遂に残酷な悲惨な音を立てて

びりびりにちぎられてしまった。

それは、スーパーマンの神話、人格、イメージ、シンボルの完全な破壊を表していた。

私を破滅させ私のコスチュームを引き裂くと言うやり方で

ビッグブレダはフィニッシュを決めた。

彼女は、スーパーウーマンとしてではなく、神話の破壊者として、

そして、ビッグベルタ、鋼鉄の女性として有名になるだろう。

ぼろぼろにされた私のブーツが私の足元に落ちてきた時、

私のコスチュームだったぼろきれが夜風に吹き払われた。

彼女は、一瞬、完全に裸にされた私ににやりと笑い、

美しい完璧な肉体を誇示しながらメトロポリスの夜の空に飛び去った。

 

一方、私の肉体は大勢の視線にさらされてたっした新たなオルガスムにふるえた。

私のマントが私のうえに落ちてきて、私の頭と身体と太股を覆った。

遠ざかる意識の中で、中央に大きな「S」のロゴが入り、

私の勃起したペニスの所為でかすかに上下している私のマントこそが、

叩きのめされた鋼鉄の男にふさわしい墓標だと思った。

大通りでじっと私は、私を完全に一人の状態にしておいて群衆が立ち去るのを聞いていた。

 

真夜中であった。

スーパーマンの敗北は、終わった。