暗黒の英雄伝説

 

プロローグ

 

 ここは、ダークセーバーの軍団により、占領された地方の一都市だ・・・

街は平静を装い市民は占領される以前となんら変わらない暮らしをしていた・・・

ただ市民生活に変化があったのは、それまで誰でも出入りできた場所・・

市民の憩いの場所・・

そう巨大な公園だ。

美しかった緑地や豊かに水を湛えた池は今は見る影も無くした。

それは、今から半年前の出来事だった。

 

 ダークセーバー軍団は、音も無くこの街を襲い、市民等の抵抗を鎮圧し

無条件降伏をさせた!

ダークセーバー軍の総統である洸牙は市民等に対し

「我が軍団に無意味な抵抗をしなければ

 卿等は今までの通り、平和な暮らしが出来る事を約束しょう・・・

 だが抵抗をする者は

 その体をもって我が軍の本当の恐怖を知るであろう」と声高く宣言した。

 

 そして、ダークセーバーの政策に抵抗した市民グループは尽く捉えられ、

着衣がボロキレになり、垂れ下がっているだけの物となるまで強制労働をさせた・・・・

それは、この公園を整地させ地上数十メートルにもなる建物・・

悪の楼閣「ダークセーバー統合作戦本部」を建築させた。

この建造物は現世の人が考えられる限りの贅を尽くし、

また外敵らの攻撃に対しては難攻不落の看板に恥じない作りになっている。

また、この建物の建設に携わった全ての人々を恐怖の深淵に貶めたのは

捕らえた抵抗勢力の者を如何に効率良く拷問にかけ、無気力な奴隷とさせる施設の凄さだ。

 

 この建物の建設に携わった人の口コミで悪の楼閣の恐ろしさが全市民に伝わるまでに

1日の時間も必要としなかった・・

人から人へ伝わったのは「ダークセーバーには決して抵抗しない方が身の為だ・・・・

抵抗してあの建物に連れて行かれたら決して・・・

自分の足では出てこられなくなる」と・・・

こうして、市民等が近づきたくても近づけない場所、

「ダークセーバー統合作戦本部」が落成した。

 

 そして、この本部を足掛かりに近隣の地域を一気に制圧し本部同様の悪の施設を増やし

その勢力を拡大し続けた。

いまや、ダークセーバーの占領下はになってない地域は無いと言って良いほどほぼ全国を

制圧する勢いだが、そんな中、やはりダークセーバーの横行を快く思わないグループが

現れ出した・・・・・

対ダークセーバ殲滅部隊アレーナガードだ。

 

これより・・ダークセーバーとアレーナガードの長く果てしない闘いが始まる。

 

 時は流れる・・・・・

ダークセーバーとアレーナガードの鬼気迫る抗争は日ごとに増して行く。

 

 最初のうちは優勢に事を進めていたダークセーバー軍であったが、

アレーナガードも初期の連敗を手本に学習した様に、用兵方法にも纏まりが現れ

ダークセーバー軍と互角の闘いを習得した。

部隊によっては奢り昂ぶりから日々の訓練と警戒を怠っていた一馬大佐が

管理しているDK00016地区要塞が今アレーナガードの猛攻撃のターゲットと

なっている・・・・

 

 一馬大佐は指揮下に在る機甲師団を部下の拓哉少佐に押し付け、アレーナガードや

他の叛徒との戦闘には加わらず、ただひたすら部下の功績を1人占めし彼自身の保身と

栄達しか頭に無い・・・

現場指揮官としては部下達に最も忌み嫌われる司令官であった・・・・

そんな無能で臆病な上司の元で、不平を鳴らしながらでも拓哉少佐は自身の部隊である

機甲師団第1小隊を引き連れ、アレーナガードとの攻防においては著しい功績を上げていた。

 

 しかし、保身と栄達しか考えていない上官の元で良い部下が育つはずも無く

DK00016地区要塞の拓哉少佐の同格である佐官クラスの士官たちはここのところの

アレーナガードとの激戦に奮戦空しく敗れ去り・・・

同地区要塞の守備兵力は当初の兵力は無く戦力と言えるのは拓哉少佐率いる

機甲師団第1小隊を残すのみであった。

 

 そんな手薄になっている要塞をアレーナガード達が見過ごすわけが無かった。

夜陰に乗じて、アレーナガード達は四方から要塞を包囲するように取り囲み、

一斉に総攻撃を仕掛けて来た・・・・

拓哉少佐の第1小隊も奮戦空しく、無能な一馬大佐を擁護しながら統合作戦本部への

転進敗走を余儀なくされた。

 

 

 一馬大佐を含むDK00016地区要塞の司令部と要塞守備隊は全員本部へと

命からがら、逃げ込んでは来たのだが、要塞司令部の恐怖はここから始まる・・・・

要塞と駐留軍、守備隊の略全てを玉砕に追い込んだ責任を問われるのは時間の問題だった・・・・

一馬大佐は、審問官が自身の上席者たる地区連隊司令官を勤める准将相手なら

何時ものように言い逃れをする自信に満ちていた・・

そして、自身満万と審問官がいる会議室へと部下を引き連れ入室した・・・

しかし・・・会議室に足を踏み入れた大佐は一瞬にして全身の血が

どこかへ吸い上げられるかの如くフラフラと会議室の入口で床に両膝を着いて

座りこんでしまった・・・

部下たちがその様子を不思議に思い大佐越しに部屋を覗くと審問間の席に座っていたのは

ダークセーバーの軍政下に在っては総統職をそして軍令下に在っては元帥である

洸牙が不敵な笑みを湛えて広い会議室の中で椅子に座っている

「さぁーどーしたんだ?卿等の話を聞く為に私はここに座っているんだ。

 早く入室せんか!!」

華麗な容姿に似合わない凄みの在る声が室内に響き割り時を同じくして、

敗残兵らは有無を言う時間すら与えられず憲兵隊の手に拠って洸牙総統の座る前に

引き立てられた。