処刑!アクアファイター(上)

 

 

【目標 侵入 確認】

【待機モード】 → 【監視モード】

 

「うわあっ!」

何かが空を切る音が聞こえた瞬間,手にしていたボトルをはじき飛ばされた

クロサキ助教授が声をあげた。

ボトルは砕け,淡い黄色の液体が床に広がっていく。

「だっ誰だ!! 何をするんだっ!」

白衣のクロサキが見上げると,

入り口,階段の最上段に若者が立っている。

水泳部のトレーニングウェアを着た長身の若者だ。

かっちりしたデザインの眼鏡が理知的な印象を与える。

しかしその口から発せられた言葉は鋭かった。

 

「それはこっちのセリフだっ!

 そのボトルの中身はいったい何だっ!

 ここの貯水槽に入れるつもりだったんだろう!

 これまで,この大学を中心におこっていた事件の黒幕は,やはりおまえだったな,

 クロサキ助教授!

 許せんッ! 覚悟しろッ!」

 

眼鏡をはずす若者。

印象ががらりと変わり,悪に立ち向かう戦士の顔があらわれた。

 

「アクアパワー・・・・・・・・・・・チェーンジ!!!!!」

 

はおっていたスポーツウェアをほおり上げる。

最上段から回転しながら飛び降りる。

 バシーーーーーーーッ!!!

青い閃光がその身体を包み,着地した時には,学生スイマー・ヒロユキの姿は

一変していた。

 

「おっ おまえは!!」

 

広い肩にはアメリカンフットボールのような白いショルダーガード。

長い足を膝下まで覆うブーツ。

両手首にはパワーリストバンド。

(同じものが,上腕部にも装着されている)

そして,赤とオレンジの鮮やかなラインが輝く,純白の競パン・・・・

競パンは股間を覆うのにぎりぎりのサイズ。

ゴムのようでもあり,金属でもあるかのような艶やかな光沢をはなっている。

ただの競パンでないことは一目瞭然だ。

 

これだけが,アクアファイター の全装備である。

あとは,ほどよく日に焼けた鋼の筋肉が露出している。

分厚い大胸筋は美しいカーブを描いて盛り上がり,

限界まで絞りこまれたウエストに,左右対称に並ぶ腹筋の列。

競パンから伸びる長い大腿部には,何本もの筋肉のすじがくっきりと

浮かび上がっている。

毎日のたゆまぬ水泳トレーニングと筋トレで鍛え上げられた若武者の肉体だ。

 

若武者がファイティングポーズを力強く決めると,

バトル競パンの中央部,ふつうの競パンなら紐を結ぶ箇所が青い閃光を放った。

ディープブルーの秘石=マリンクリスタルの輝きだ。

エネルギーが全身に行き渡る。

パワーチェンジ 完了!!

 

「いくぞっ! てやーっ!!」

ファイター の身体が宙に跳んだ。

悪への怒りが,全身の筋肉を鋼鉄と化す。

天井を突き破らんばかりの高さまで跳び上がったところで両腕が構えられ,

両足がぎゅんと伸びた。

先端にエネルギーが集中し,赤く輝く。

強敵をいくたびも葬ってきた必殺キックが,クロサキ助教授の胸元に狙いを定めた。

 

と,その時、天井の四隅が激しくフラッシュした!!!

 

バギバギバギバギバギバギ!!!

 

ぐわあああああああああああッ!!

 

意表をつかれた攻撃だった。

鋼鉄のムチに打ちすえられたような衝撃,そして激痛が全身を貫いた。

「ぐわああああああ!! なっ なんだあああ!!!」

アクアファイターの全身が,まばゆい光に包まれた。

「うをおおおおおおおおおおおおおお!!! んががががががががががががっ!!」

 

四方から発射されたのは,超高圧電撃だった。

それぞれの発射装置は,センサーと直結された精密な自動制御である。

全ての電撃は正確に空中のファイターをとらえた。

2本はショルダーガードを突き破って,がっしりした両肩に命中し,

2本はぱんぱんに張りつめた太ももを襲った。

 

アクアファイターは,皮肉にも,必殺技「ダイビングキック」の体勢のまま,

超高圧電撃によって,床上数メートルの空中に仰向けに固定されてしまった。

電撃の轟音とヒロユキの絶叫が部屋に響く。

 

がああああ・・・・ああッ・・・ぐううううううッッッッッ

うおおッッッ・・・・  はああッッ!!

(し,しまったっっ!!!)

んんんんn・・・・・・  ッッッくっ くそッ・・・・ウむむむむむむむむ・・・

 

「うわははははははははは まんまと罠にはまったなあ アクアファイター。

 いや,K大水泳部 ヒロユキくん か。

 特別製とはいえ,メガネ一つで見事な変装をしていたもんだ。

 予選にすら出場したことがない補欠部員がまさか アクアファイター とはねえ。

 しかし,その正体,とっくに見破られていたんだよ。くくくくく・・・

 そしてだ・・・

 まあ,見るんだな,これを」

 

貯水槽管理室の薄汚れた天井が動きだした。

中央が割れ,左右にすべるように移動していく。

そして,あらわれたのは・・・・

天井全面をびっしりと埋め尽くす大小さまざまの機械,うねうねと走るパイプ,

コード・・・・

空中で仰向けのまま,電撃にいたぶられるアクアファイターの顔に驚きの色が走る。

さらに前後左右の壁からも,異様な装置・機械・配線があらわれる。

大学の片隅の古ぼけた建物は一変した。

 

「うぐっ・・・がはああっっ・・・・ こっ・・・これ・・は・・・」

 

「これこそ・・・くくくっ・・・

 アクアファイター処刑装置!!

 データから割り出した君の肉体能力には驚嘆させられたよ。

 すばらしい・・・ まさに,パーフェクトボディ。

 そしてそのバトル競パンの機能もな。

 まいったよ。これでは私の妖獣では歯がたたないわけだ。

 しかし,正確かつ精密なデータさえ入手できれば,

 いかなるヒーローであっても,倒すのはそう難しいことではない」

 

「お・・・おれ・・・のデー・・・タ・・・だ・・・と・・・」

 

「ふふふふふ・・・,アクアファイター,1ヶ月前のサボテン妖獣との戦いを覚えて

 いるかね」

 

電撃にさいなまれ,時に意識が薄らぐなかで,ヒロユキはあの激闘を思い出していた。

何百本もの細いトゲに全身を突き刺され,窮地に陥った戦いだ。

肉体の痛みもすさまじかったが,ことに集中攻撃を受けたバトル競パンが,

トゲが発する高周波によって,全機能を停止させられてしまった。

最大の危機だった。

競パンの機能を失えば,アクアファイターは

単なる「肉体能力,運動神経がずばぬけた青年」

でしかない。

パワーを失ったヒロユキは妖獣のなすがままになってしまった。

骨をへし折られ,肉を切り裂かれ,血みどろになった。

しかし,

意識を失う寸前,ヒロユキの肉体そのもののワザ「マスキュラー=ビックバン」が

炸裂した。

筋肉をいったん収縮させたのち,一気に限界まで膨張させることで,全てのトゲを

はじき出したのだ。

奇跡的に競パンの機能は回復,逆襲に転じたヒロユキは,

残された体力をふり絞った「回転重ダイビングキック五連発」によって,

ついにサボテン妖獣を倒したのだった。

 

「あの時の我がサボテン妖獣のトゲは,単なる攻撃武器ではない。

 君の肉体能力,神経系の発達状況,そのバトル競パンの素材,性能,弱点 を

 探るためのセンサーでもあったのだ。

 10秒もあればすべてのデータは採取完了だ。

 じっくり分析させてもらったよ,その見事な身体と競パンをな。

 その成果の一つをお伝えしよう。

 アクアファイターがその運動能力を正常に維持できる限界は9万8千ボルトまでだ。

 そして,いま・・・

 15万ボルトの電撃に撃たれる気分はどうかね くくくくっ」

 

「そ,そんな数字・・・ぐあっ ああっ・・・これぐら・・うぐッ 

 うああああ・・・・」

 

「ふっ 電撃のクモの巣でのたうちまわる正義のヒーローか・・・いい姿だ。

 どれ,これはどうだ」

 

悶え苦しむアクアファイターの身体の真下の床から,

新たな5本の電撃が一直線に並んでほとばしり出た。

電撃は,すべて脊椎に命中する。

 バシッ!! バシッ!! バシッ!! バシッ!! バシッ!!

 

「うぎゃあああああああ!!!

 ガアッ  ガアアアアッ ガアアアアアアアアアアアッッッッ!!!・・」

 

「うわっはっは

 そら,電圧をあげてやろう・・・どこまで,耐えられるかねえ・・・

 20万ボルト・・・」

 

「んをっ!! んんんんんんんんんん・・うををををををををををををを!!!!」

 

「25万ボルト・・・」

 

一段と輝きをました9本の電撃がアクアファイターを貫く。

むき出しになっている,たくましい腕,太ももの筋肉がばらばらに痙攣し始めた。

口の端からだらだらと唾液がが流れだす。

首ががくがくと勝手に動く。自分の意志でコントロールできない。

 

「があっ! がはっ! うをッ うをッ うをッ うをッ うをッ

 ごッ!  だあっ! じゅをっ!  うをッ・・・・」

 

「おいおい しっかりしゃべれよ。何言ってんだかわからないねえ。

 ふはははは,つらいか?若僧。 では少し楽にしてやろうか・・・」

 

電流が弱まる。

輝きが落ち,部屋全体を揺るがしていた機械音が小さくなった。

ヒロユキの身体が仰向けのままゆっくりと降りてくる。

床上1メートル余りまで降下して、停止。

クロサキ助教授の目の前で、

ファイターが、電撃網から逃れようと,必死で抵抗している。

 

「ぐっ・・・ぐうううっ・・・・ ぬをっっっっ! ううううううむ!!

 でやっ!!  うをっ!!  ぐふうううう・・・・  とおっっっっ!!!」

 

筋肉は盛り上がるものの,電流から逃れるには至らない。

笑いを押し殺して,冷たく見つめるクロサキ。

「ムダだ・・・ 筋力の限界も計算済みだからな・・・」

 

電撃放射装置の向きが微妙に操作され,電撃は両手両足を締め付けていく。

両足はぴたりとくっつけられ,両腕は体側に張り付けられた。

強制的に「気をつけ」の姿勢をとらされていく。

 

「くっ・・・くくっ・・・ があっ・・・う・・うぬ・・・ なっなにを・・・

 ううっ・・ するつもり・・・・・ぐううっ・・ううっ・・」

 

スリムな長い手足。しかし,長年の水泳トレーニングで,腕の付け根の肩や,

足の付け根の太ももには見事に発達した筋肉がついている。

その手足が完全に閉じられたところで,クロサキは低い声で命じた。

「やれ」

 

天井の複雑怪奇な機械から紫色の3本の光線がヒロユキの身体に降ってきた。

それは,むき出しの左右の乳首と,純白の競パンの中心部を直撃した。

 

「ぬをッ!」

 

一瞬,全身がびくっと痙攣した。

はじめは何とも感じられなかったが,徐々に,異様な感覚が乳首と股間を

襲いだした。

 

「ん・・・・・んんんんんんんんん・・・・ううううう・・・おおおおおおおおお・・

・ こっ・・これ・・・は・・・」

 

乳首が硬化し,突き立っていく。

股間の根元から,痺れるような感覚がじわじわとわき出す。

はっ はっ はっ はっ はっ はっ はっ・・・

呼吸が激しくなる。なっなんだっ この感覚はっ!

くすぐったいような「快感」はみるみる肥大化し,ファイターをいたぶる

凶悪な刺激となった。

 

「ぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・うおおおおおおおおおお!!

 あわああああああ!!  だあああああああ!! ・・ああっ ・・・くうっっ

 あっ・・あううう・・・ あはあっ ああっ・・・ぬをっっ・・・」

 

「気をつけ」の姿勢のまま、全身がもだえる。

白い競パンの股間が急速に盛り上がっていく。

盛り上がるだけでなく,激しくうごめいている。

何という刺激・・・・

これまで様々な怪人たちの攻撃を受けてきたが,ここまでつらいものはなかった。

一瞬でも気力をゆるめれば,たちまち変身が解除してしまうことは容易に想像できた。

そして,アクアファイターからK大生ヒロユキに戻った瞬間,

全身が電撃で焼き尽くされてしまうことも。

 

 ・・・・あれ・・・しか・・・ない・・・  あれ・・・しか・・・

 

電撃の激痛と怪光線のいたぶりの中,何度も意識を失いかけながら,

ヒロユキは,おのれを責めさいなんでいる電撃放射装置の位置を確認していく。

そしてさらに「処刑装置」のメイン動力部を推測し,

脳内ディスプレイにインプットしていった。

 

 失敗はできない・・・ 絶対に正確な位置を・・・・

 はずすな・・・・はずすなよ・・・・

 よしっ!

 ううううううううぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・・

 

「どうだ,キミには,乳首責めと股間責めは 初めてだったろう・・・

 これがアクアファイターのエネルギーを奪うのに一番・・ ん? なっ,なんだっ!

競パン中央のマリンクリスタルが強烈に輝きだした!

と,次の瞬間,クリスタルから無数の青い粒子が高速で飛び出した!

 

ビシュッ! ビシュッ! ビシュッ! ビシュッ!

 

粒子はあらゆる方向に飛び,電撃発射口,怪光線発射口 を次々に破壊していく。

クロサキは ひええっ とかん高い悲鳴をあげて,身を隠す。

粒子は「処刑装置」の基幹部にも命中し,あちこちで小爆発がおこる。

電撃が消え,どさっと ファイターの身体が床に落ちた。

低くうなり続けていた機械音が止まった。

 

静寂が,おとずれた。

 

 

 

今までのダメージが深いのか,うめき声をあげながら,ゆっくり ゆっくり

立ち上がるヒロユキ。

ひざががくがくしている。

 

「うう・・・・・この・・マルチクリスタルビームは・・ データに・・・

 入ってなかった・・ ようだな・・・・」

 

乱れた前髪の間から,充血した目が鋭く光る。

おびえた表情のクロサキが,あとずさりする。

 

腰をややかがめ,両手をかまえて独特のファイティングポーズをとるヒロユキ。

息がまだ荒い。

じりっ じりっと クロサキに向かって 歩を進める。

「これ・・まで・・だな・・・ 」

 

その時,追いつめられた暗黒の助教授の目に狂喜の光が走った。