愛しいエース  

 

2・2・2 望

第2話

 

 ヤプール特製のスーツを着たサトシに敗北し、意識を失ったエース。

 彼を待っていたのは敗北よりも、死よりも辛いサトシの愛だった・・・。

ヒッポリト星人(サトシ):どう?この部屋少し暑いから大事な大事なエースのために

               涼しくしてあげたよ?


エース:サ、サトシ・・・・ど、どうしたら・・やめてく・・・・?!・・・

     か、体が・・・こ・りついて・・き、きた・・・

 灰色の液体で全身隅々まで汚された直後、カプセルの天井から絶対零度の冷気が

ゆっくり・・ゆっくりと獲物に覆いかぶさってきたのだ。

 カプセルの中は瞬く間に凍りつき始め、寒さが弱点であるエースも

例外なく冷凍され始めていた。

エース:・・サ・シ・・・・助・てく・・・・・・お願・だ・・・・たの・・・・・・・

ヒッポリト星人(サトシ):意外と早くに凍りついてしまうんだね・・・

エース:・・・・・・・・・

 サトシに助けてほしいと懇願したポーズのまま時がとまるエース。

 カラータイマーも赤のまま時間を止め、カプセルの壁に両手をつき、

うな垂れた姿で白く変化するエース。

ヒッポリト星人(サトシ):さぁ・・・これでさよならだ、エース・・・・。

エース:・・・・・・・・・・・・

トロッ・・・トロトロ・・・・

ネバァァァァァ・・・・ヌルヌルヌル・・・・

 白く動かない氷像と化したエースにカプセルは責める手を休めなかった。

 サトシの合図で天井からは妖しい液体が流れ落ち始めた。

 流れる遅さにイラつきさえも覚えるほどの粘度を持った液体が

エースの頭上からゆっくりと、ゆっくりと体を包み込み始めた。

 凍りついた体ではよけることなどできわけもなく、払うことも出来ず

されるがままに液体に体を支配されていくエース。

 顔を包み込み、首を伝い、胸板を流れ下腹部へ・・・あれだけ遅かった流れも、

サトシには愛するエースの氷像を見ていることでアッと言う間に感じたのだった。

 氷は溶け、徐々にエースも意識を取り戻し始めていた。

 体は透明な粘膜に包まれた様になり、エースの体が微かに震えると

糸をひくほどであった

エース:サトシ・・・助けて・・くれたのか?

ヒッポリト星人(サトシ):いいや・・もう、最期の時間なんだ、エース

エース:・・・?!・・・最期・・・・

ヒッポリト星人(サトシ):そう、だんだん死んでいくのさ・・・

ピカッ

 カプセルの天井からライトが照射されたのだ。

 あのどす黒い煙が立ち込めると覚悟していたエースには予想外の展開だった・・・・

しかし、この後起こることは彼の予想などまるで及ばない事態であった。

エース:か、体が・・・・こ、これは・・・・

ヒッポリト星人(サトシ):ブロンズになってるんだよ?エース

エース:し、しかし・・・あの煙が・・・?!・・・こ、このライトか・・・・

ヒッポリト星人(サトシ):そう・・・このライトを浴びた生き物は徐々に体を

               ブロンズへと変えられていく・・・ゆっくりとね・・・

エース:・・?!・・・指先が・・・・?!・・・足まで・・・・・・

ヒッポリト星人(サトシ):気が付かない?

               体が徐々にブロンズの色になってきたでしょう?

エース:サトシ・・お願いだ・・・もう・・やめてくれ・・・・

ヒッポリト星人(サトシ):それは無理・・・・だって、ブロンズ化が狙いじゃないもの

エース:・・・?!・・・どういう・・・・ことだ・・・・

 苦しそうに壁に近寄りサトシと会話するエース。

 その会話の間にも指先や足、末端の部分から確実にブロンズに変えられていき、

体も変色してあの赤と銀の輝かしい体色は完全に失われていた。

ヒッポリト星人(サトシ):だって、ここでエースをブロンズにしてから魂を僕が吸収するんだもの

エース:吸収・・・する・・・・・?!・・・

     腕がもう・・・動かない・・・・?!・・・

     足も・・・動か・・・せない・・・・


ヒッポリト星人(サトシ):そう、吸収。

               そして僕はエースに成り代わって、君は僕の中で

               一生飼われるのさ・・・永遠にね・・・

エース:・・・そんな・・・・?!・・・・体が・・・・動か・・・な・・い・・・・・?!・・・

     視界が・・・・・・・


ヒッポリト星人(サトシ):好きにしていい・・・

              そんなこと言わなければよかったね・・・エース

エース:・・・・・・(な、何も聞こえない・・・何も見えない・・・・も、もう・・・。・・・

          兄さん達・・・私はここまでの様です・・・・)


 口さえも動かせず、耳も目も全てがブロンズに変わったエース。

 カラータイマーもブロンズに変わり、体は完全な深緑食へと変化していた。

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥ

シャァァァァァァァァァ

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥ

ヒッポリト星人(サトシ):これで完成さ・・・もう、君のブロンズ化は誰にも解除できない・・・

              僕だけのもの・・・・あとは・・・・

 カプセルが消え、幾重にも施されたコーティングで助かる見込みがゼロになったエース。

 その出来上がったばかりの彫刻・・・エースの口にサトシはキスをして魂を吸い出した。

 弱弱しい光がサトシの中に溶け込み、狙い通りに魂は吸収されてしまった。
 
ピカァァァァァァァァァ
 
 サトシのスーツが光輝き、超獣ではない赤と銀の逞しいボディラインを持つ

ウルトラマンエースへと変身したのだった。

エース(サトシ):そう、これこれ!こうなりたかったのさ・・・僕は・・・・

 魂を抜かれ、ただのブロンズの置物に成り果てたエースの横で

念願だったエースへの変身を遂げたサトシ。

 そのサトシの内側ではエースが再び忌み物としてサトシに責められ続けていた・・・

永遠に続く拷問を・・・・・・。