愛しいエース  

 

1・1・1 序

第1話

 

 ウルトラ5兄弟全員が罠にかかり、

自分を除く4人の兄達が無残にも磔にあったあの悪夢の星・・・ゴルゴダ。

 破壊されたはずのゴルゴダが復活したと報告を受け調査に来たA。




 そこに待ち受けていたのは以前と同じ光景・・・

兄弟と自分のために用意された忌まわしい十字架であった。

エース:だ、誰がこんなものを・・・・

謎の声:君は学習能力がないのかね?

エース:そ、その声は・・ヤプール!





 それまでは光こそ差していないが、特に荒れた天候でもなかったゴルゴダの空に異変が生じた。

 暗雲が瞬く間に立ち込め、暗黒の大地を強力な冷気が覆いつくしたのだ。

エース:同じ手にかかってたまるか!

ヤプール:すでに手遅れだというものを・・・

 ジリジリジリジリ・・・ズドォォォォォォォォォン

 エース自らが地球を守護していた時代、同じ手でウルトラ兄弟全員がゴルゴダに閉じ込められ、

磔にあったことを忘れたわけではなかった。

 そうなる前に!と勢いよく飛び立ちゴルゴダを抜け出そうとしたエースを

ヤプールが張り巡らせたバリアが阻んだ。

強力な電撃がエースの体を駆け巡り、着地姿勢をとれないまま地面に叩きつけられた。

ヤプール:私が何もせずにあなたに話しかけると思ったのですか?

エース:く、くそっ・・・・・

ヤプール:そして、ここから出られないあなたに勝機はありませんよ

エース:そ、そんなこと・・・まだわからないさ・・・

 強がるエースではあったが、地面を這う極低温の冷気に両足はおろか、

バリアのせいで地面に数秒寝そべってしまったために全身が凍りつき始めていた。

 あの悪夢と何も変わらない・・・体が凍りつき、星からは出られない・・・・

背後には自らの墓標が用意されている・・・・。

 違うのは・・・・今は独りであることだけだった。

ヤプール:お前の体がすでに凍りついていることがわからないとでも思ったのか!!

 バリバリバリバリ ビリビリビリビリビリ

 ビィィィィィィィ

エース:ぐわぁぁぁぁぁ・・・・・・・?!・・・・な、なんだこれは・・・・・

ヤプール:ふははははは・・・貴様の負けだなぁ・・

     エースよ・・・・ふはははははは・・・・・・

 凍りついた体で動きの鈍いエース目掛けて空より激しい稲妻が戦士の体を直撃した。

 凍りついた体がさらに電撃により痺れ、動きを完全に止めた瞬間!

十字架の脚の部分、腕の部分、首の部分、背中の部分から牽引ビームが放出され、

エースの体をそのまま十字架へと手繰り寄せた。

 痺れ、凍る体ではこの光線に抗うことなど出来るわけもなく、

なされるままに十字架に密着することとなったエース。

 ガシャン・・・ウィィィン

 十字架は獲物の体が密着したのを察知するとアンチスペシウム鋼で出来た拘束具を

両足首、両手首、胴体、首に対して施した。

そして、エースの体との隙間をなくすように柔軟にアンチスペシウム鋼が動き出し、

溶接されたかのようにピッタリとフィットした状態でエースを拘束した。

エース:くっ・・・・思い通りか・・・・・

ヤプール:簡単には殺しませんよ?あれを御覧なさい・・・

エース:・・・・?!・・・・あ、あれは・・・・・

 ヤプールの指差した先には空間が歪み、他の場所が映し出されていた。

どこか見覚えのある景色・・・・

そう、自分が昔守護していた地球の風景だった。
 
エース:ち、地球を破壊するつもりか!

    ふっ・・・甘いな、ヤプール!今はメビウスが守っているんだ。

    そう簡単には
 

ヤプール:違いますよ!

エース:・・・?!・・・ち、違う?

ヤプール:まだ続きがあります・・・御覧なさい

 エースの言葉をさえぎり、まだ歪んだ空間を見るように仕向ける。

 エースが注目した途端、とあるマンションの一室を透過して映し出した。

 そこにはなんの変哲もない地球人の青年が暮らしていた。

エース:こ、これが何なのだ?

ヤプール:知っていましたか?あなた達、ウルトラ戦士が命をかけて守っている地球。

     この星の住人の中にも君達の敗北を願うもの達がいるのを

エース:・・?!・・・そ、そんなこと・・・・あるわけないだろ!

ヤプール:そうですか、やはりご存知なかったのですね・・・

     まぁ、無理もない。まさか、自分が命をかけて守っている人の中に

     そんな人がいるなんて誰が想像しますかね?

エース:・・・・・・・・俺を騙そうということか・・・・

ヤプール:騙すも何も、自分の身をもって体感して見てください

エース:・・・?!・・・・ど、どういうことだ?

ヤプール:その言葉の通りですよ!ふはははははは・・・・・・

エース:・・・・・?!・・・・・ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉ・・・・・

 ヤプールの高笑いと共に十字架の根元の地面も、目の前の空間の様に渦をまき歪み始めた。

 そして、徐々に徐々にエースの磔になっている十字架を根元から吸い込み始めたのだ。

 エースの絶叫が終わるよりも先に、十字架は完全に歪んだ空間に飲み込まれ、姿を消した。
 
ヤプール:第一段階、終了ですかね・・・・ふふふふ・・・・・
 
 不気味な笑い声を残し、モヤの様に消えるヤプール。