Day Control


1話


ジャック「(・・・・あれからどれくらいの時間が経ったのか・・・・それは全くわからない。

      そもそも・・俺は生きているのか・・・・誰か・・・教えてくれ・・・・・)」




 夢なのか現実なのか・・・

そんなおぼろげなジャックの意識が逆回転を始めていく・・・・。




 ナックル星人の地球再侵略の情報を掴み、最終防衛ラインである月面で

船団を迎え撃つウルトラ兄弟4番目の戦士:ウルトラマンジャック。

ジャック「ついに・・・着た!」

 身構えるジャック。

 他の兄弟達が駆けつけるまで・・・最低でも持ちこたえなくては・・・。

 そんな決意で黒い宇宙船の一団を睨みつける。

 地球を守っていたあの頃・・・

自らが磔にあい、地球人に絶望を与えたあの黒い宇宙船が今、

地球に向け押し寄せているのだ。

ナックル星人「ふははははは・・・よほど、我らに処刑されたいと見える」

ジャック「何を言う!貴様らこそ、覚悟しろ!」

ナックル星人「ふん!これを見てもまだそんな口が聞けるのか楽しみだな」

 全ての宇宙船から黒い球体が次々に月面に降り立つ。

 その数はすでに把握できないほどだった・・・。

ジャック「ま、まさか・・・」

ナックル星人「ブラックキング・・・わたしの最も信頼するパートナーさ」



ジャック「この数・・・しかし、やるしかない!デヤァァァァァァァッ!」

ナックル星人「ふっ・・・だから、お前たちは愚かだというのだ」

 月面を黒く染めるほどのブラックキングの大群に独り立ち向かう光の戦士。

 孤軍奮闘・・・・といきたいところだが、対ジャック用に生み出された怪獣が

あの当時よりさらに改良・強化されており必殺技が1つとして通用しない・・・

もちろん、ブレスレットも例外ではなかった。

ジャック「あぐっ・・・・・ぐっ・・くそっ・・・?!・・がはっ・・・」

ナックル星人「なぶり殺しか・・・ふっ・・つまらぬ・・・・」

ジャック「スペ・・・?!・・・んがはっ・・・・」

ピコン・・ピコン・・・・ピコン・・・・・ピコン・・・・・・・

 背後からの強烈な一撃、さらにストンピングを受け、地面に沈められるジャック。 

カラータイマーは点滅し、瞳も明滅していた。

 ジャックを囲むブラックキングの群れ・・・逃れる術がないのは明白だった。

ナックル星人「貴様は殺す価値もないわ・・・では、続きといこうじゃないか?」

ジャック「っ・・・はぁ・・はぁ・・・つ、続き?・・・」

ナックル星人「ふっ・・・楽に死ねると思うなよ・・・・」

ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!

ジャラジャラジャラジャラジャラ・・・

ジャック「し、しまった・・・・くっ・・・くそっ・・・・外れない・・・」

ナックル星人「当たり前だ・・それはアンチスペシウム鋼だ・・・

        貴様らだけには外せない代物だ」

 絶体絶命のジャックに旗艦から枷つきの鎖が襲い掛かる。

 瞬く間に両手首を捕らえると、続けざまに両足首にも食らい付いた。

 獲物を捕捉するやいなや、鎖は巻き取られ宇宙船が用意したあの忌まわしい磔台に

ジャックを引き上げていく。

ジャック「ぐっ・・・くっ・・くそっ・・・」

ナックル星人「ふはははははは・・・愉快!愉快!」

 苦しみながらも必死に鎖を外そうと試みるも、スペシウムエネルギーに対して

無敵の防御力を誇る鋼はビクともしなかった。

 見る見るうちに磔台に収納されていく鎖・・・そして、ついに・・・

カシャッ!カシャッ!カシャッ!

ジャック「んぐっ・・・」

ナックル星人「貴様を連行する前に一余興といこうじゃないか」

ジャック「余興・・・だと?」

ナックル星人「ほら、そこを見ろ・・・・」

ジャック「あ、あれは?!・・・」

 ナックルの示す先には赤い光が・・・

そう、ウルトラセブンが駆けつけたのだった。

 全速力で駆けつけたのだが一足遅く、弟が磔台に拘束され人質にされるのを

防ぐことができなかった。

セブン「ジャック?!待っていろ、今助ける!」

ナックル星人「それ以上、近寄るな!近寄ると・・」

ジャック「・・?!・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

セブン「なっ・・・わ、わかった・・・・ジャックを解放しろ!」

ナックル星人「そのまま解放するほど馬鹿ではない・・・

        しかし、チャンスを与えようじゃないか」

セブン「チャンス?」

ジャック「はぁ・・・はぁ・・・・・っ・・はぁ・・・はぁ・・・」

ナックル星人「ジャックを助けるか・・・

        地球に向かうこのブラックキングの大群を止めるのか・・・・

        さぁ、どっちをとるのだろうな?」


セブン「卑怯な・・・・(なんだ、この数は・・・)」

ジャック「に、兄さん・・・・地球に・・はやく・・・」


ナックル星人「だそうですよ?ふははははは・・・・」

セブン「弟を・・見殺しにしろと・・・・言うのか?」

ナックル星人「どちらか1つ!弟の命か・・・地球人の数え切れない多くの命か・・」

ジャック「兄さん!地球を・・・罪のない人たちが死んでしまう!」

セブン「し、しかし・・・」

ジャック「ぐわぁぁぁぁっ・・・くはっ・・・・あ、あなたは・・ウルトラ戦士だ!」

セブン「・・・?!・・・・」

ジャック「そ、それに・・わたしは簡単には・・・し、死なない・・・」

ナックル星人「さぁ・・・選ばないのならどちらもいらないと判断しますよ?」

セブン「わ、わかった・・・・」

 下を向き拳を握り締めるセブン。

 ナックル星人の策略は緻密に計算されたものだった。

 地球へ飛び立つブラックキング達はちょうどジャックの視線の先だった・・・。

 フルフルと震える拳を必死に押し堪えて、セブンは最愛の弟に背を向け

ブラックキング達を追いかけ地球へと向かう。

セブン「ジャック、必ず・・必ず助け出す!それまで・・・耐えてくれ!」

ジャック「は、はい・・・それでこそ・・・兄さんです・・・」

ナックル星人「さすがはウルトラ警備隊・・・

        弟を見殺しにしても地球を守りますか・・・ふはははははは・・・」

セブン「見殺しになどしない!地球もジャックも助けてみせる!」

ナックル星人「出来ますかね?彼はこのまま我等が母星の拷問部隊に引き渡します」

ジャック「(ご、拷問部隊?!)」

セブン「くっ・・・・・」

ジャック「行ってください!信じています!兄さん達を!」

セブン「わ、わかった!待っているんだ!ジャック」

 ジャックに背中を押され、地球へと飛び立つセブン。

 月面にはX字に磔にされたジャックが独り取り残されていた・・。

 そして、徐々に磔台を引き上げながらナックル星人の母船団が動き出す。

ジャック「(兄さん達・・・)」

 ピコン・・・・・・・・ピコン・・・・・ピィィィィ・・・・

 戦闘のダメージと月面が陰りだしたことでついにジャックのタイマーは沈黙してしまった。

 それを合図にしたように宇宙船団はワープを繰り替えし、はるか彼方へと飛び去ってしまった。