555悲話(19)

 

「えっ。な、何をするんだ」

突然、ショウにゴープラスターをこめかみに押し当てられ、狼狽するロビン。

その場に居合わせた面々も、何が何だか分からないまま、

固唾を飲んで見守っている。

「どういう事なんだ、ショウ」

マトイも緊張した様子だ。

「マスクを取ってもらおうか、ロビン。いや、慎也」

ショウの言葉に、サンダーバードの中の時間が止まった。

「ロ、ロビンの正体が慎也なのか・・」

ようやく言葉を発するマトイ。

「俺は最初から不思議に思っていた。

 第一に、慎也は部下を信頼するタイプじゃない。

 その慎也が、どうして最初に敵であるロビンの口から、この島の説明をさせたのか。

第二に、慎也はどうして奴隷小屋の盗聴をしなかったのか。

 第三に、怪人達はどうして、いつもロビンを連れていったのか。

 特に、この島の所在がばれてから、ロビンは帰ってこなかった。

 これは何故か。

 そして今日、どうしてロビンはサンダーバード4号に通じる複雑な地下道を

 迷う事なく案内できたのか」

「僕が慎也の手先だと言うのか」

「いいや、違う。

 疑問はもう一つある。

 どうしてロビンと慎也は同時に現れないのか!」

「うぅっ・・」

「答えは一つだ。

 そろそろマスクを取ったらどうだ、ロビン。

 いや、慎也」

沈黙の時間が流れる。

しかし、沈黙はロビンの・・、いや慎也の声で破られた。

「ふふふ。よく分かったねぇ、ショウ君」

マスクを取って素顔を見せる。

「敵の司令官から『逃げられない』と言われるより、

 味方である筈のロビンを通して言われたら信用するからな。

 奴隷小屋を盗聴しなかったのも、秘密の話を聞き出す場所を作るのが狙いだった。

 そして、島の最高司令官である以上、昼間は司令官としての職務を果たす為に

 司令室に行かねばならなかった。特に島の所在がばれてからはな」

「その通り」

「だが、一つ忘れていた事がある。

 この首輪は俺達がトレーシー島から離れれば、

 首が締まるようになっていたんじゃないのか」

「ははは。そうだったね。それは忘れていたよ」

「だ、だけども、ショウ。ロビンはいつも怪人達に、いたぶられていたんじゃないのか」

マトイの疑問に、ショウより先にダイゴが応えた。

「それは、Mであられる慎也様のお戯れ(たわむれ)だったんだよ」

「えっ?」

振り向くマトイが目にしたのは、マツリにブラスターを突きつけるダイゴの姿であった。

「ダイゴ?!」

「ふふふ。ダイゴ君、いや長野君には、これから私の副官になってもらう事にしている。

 彼もV6の脇役じゃ、役不足だろうからね。

 さて、ショウ君。銃を渡してもらおうか」

勝ち誇る慎也。

ショウはブラスターを慎也に手渡した。

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【エピローグ】

一ヶ月後、マトイ・ダイモン・マツリの3人は、捕虜交換で釈放される。

だが、彼らを迎える視線は、決して暖かいものではなかった。

防衛軍では、555に代わる新しい戦隊の人選が進められていたのだ。

時代は新しいヒーローを求めていたのである。

 

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【作者あとがき】

1900年代から2000年代の長きにわたって、「555秘話」をご愛読いただき、

ありがとうございました。19話に及ぶ長編になりましたが、

正直なところ、自信作といえるのは第4話ぐらいまでで、

以降は質の低下を感じ、“申し訳ない”と思いつつ書き込みしていました。

(特に、ヒーローへのいたぶりが少なくなった)

また、ラストの「ロビンの正体が慎也だった」というオチは、

書き始めた頃からの構想でしたので、もっと盛り上げたかったのですが・・。