交換日記 土方さんと近藤さん
「もういいかげんに許してくださいよ。土方さん」
背中を向ける土方に総司は口を尖らせて話しかけた。
それでも土方は振り向かない。
「私はみんなに土方さんが月夜の晩にオカリナを吹いていた事は
言ってませんよ」
(神谷さんには話したけど)
「大体、土方さんも悪いんですよ」
「いくら月が綺麗だったからってあんなに堂々とオカリナを吹くなんて・・」
「いくらオカリナを吹いても、
一●もめんがやってきて
空を飛んではくれないんですよ!?」
「俺はそんなことでオカリナを吹いてんじゃねぇ(怒)」
土方は噛み付きそうな勢いで振り返った。
「じゃあ、何の為です?」
土方はしょうがないと言わんばかりの顔で懐から小さなオカリナを出した。
「ほわ〜、ちっちゃいオカリナですねぇ」
総司は土方の手からその小さいオカリナを受け取ってまじまじと見る。。
「月一度、必ず俺のところに手作りのオカリナが送られて来るんだ」
「励ましと応援の手紙と一緒にな」
「嬉しかった。こんな俺のオカリナを影で聞いてくれている人がいる事が・・」
「俺はそれ以来、どこかで聞いていてくれるその人をオカリナの君と言っている」
「俺はオカリナの君のためにオカリナの腕を上げるべく日々努力している」
「ガシャン」
総司の手にあった土方のオカリナが滑り落ちて割れた。
その瞬間、土方はム●クの叫びのような表情になった。
「総司〜!!」
「意外と脆いですね。これ・・・」
「事故ですよ、事故。」
「わざとじゃないんですから・・・」
ワナワナと震えてますます怒った土方に総司は溜息をついた。
「許してくださいよ」
「じゃないと土方さんが今、夢中になっているものをみんなにバラしちゃいますよ」
土方の背中がピクリと反応した。
「オレが夢中になっているもの?」
顔をひきつらせながらこちらを向いた。
「何を言ってんだ。俺にもう秘密など・・・」
「本当にないと言えますか?」
総司の目がキラーンと光った。
「私、知ってるんですよ」
「土方さんが今、小野妹子の物真似に凝っているのを!!」
「何でそのことを!」
「この間、風呂場の前を通りかかったら聞こえたんです」
「一人だったから油断しましたね」
「お風呂場は響くんです。覚えていてください」
「それと土方さん、もう一つだけ忠告させてください」
「なんだ?」
「小野妹子は子が付いていても男なんですよ」
「う、嘘だ!俺は信じない!!」
「嘘じゃない!!」
総司は大きな声を出して土方を見た。
「あなたは自分が創り出した小野妹子の幻影に惑わされているんだ」
「そんな馬鹿な・・・」
土方はガクリと畳の上に片膝をついた。
「まさか・・妹子にかぎって・・・」
「土方さんいいかげん目を覚ましてください」
総司は今にも崩れそうな土方の肩に宥める様にポンと手を置いた。
そして・・・・
「あなたの妹子は全然似ていないんです」
トドメの一撃を放った。
(沖田さん、何でアンタに小野妹子の真似が似ていないとわかるんだ)
たまたま廊下を通りかかった斉藤は話を聞いて心の中で思った。
(しかし、この屯所はまともな人間がおらんのか!?)
そう思う斉藤は自分も十分変である自覚がないらしい。
一方、近藤さんは・・・
賄い方の竈を使ってこっそりと焼き物をしていた。
粘土で出来た型を割ると作りたてほやほやのオカリナが出てきた。
「トシの奴、今度のオカリナも気に入ってくれるかな?」
どうやら、オカリナの君は近藤さんだったらしい。
言い訳
土方さんと近藤さんファンの方すみません。
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