ARMORED CORE Price of Peace
☆基本設定☆
【舞台設定】
for Answerの戦いから二年後の世界がこの物語の舞台です。
企業連はORCA旅団に勝利し、未だクレイドル体制を維持しています。
しかし、企業は経済的な弱体化と政治的求心力の低下から、自社の立て直しに躍起になっており、その煽りで支援を打ち切られたカラードは瓦解しました。
その結果、最高戦力の一角たるネクストを保有するリンクス達を縛るものが何もなくなり、軍事力の分散が着々と進んでいる状態です。
戦争は終息し、世界は平和を保っています。しかし、それも危うい均衡の上で成り立つ見せかけのものでしかありません。
そして七月。かつてのORCA旅団の蛮行をなぞるかのように、二人のリンクスがアルテリア施設、フェモリスを強襲するところからこの物語は始まります。
【用語】
4やfor Answerに登場する用語に関しては「AC Fan」さんや「RAVENWOOD」さんのデータベースを参照して下さい。かなり詳しく書かれていますので、参考になると思いますよ。
フェモリス…カーパルスに次ぐ規模を誇る、アルテリア施設。管理会社はGlobal Armaments社。二人のイレギュラーにより壊滅、三基のクレイドルが地上に不時着した。
【舞台設定】
for Answerの戦いから二年後の世界がこの物語の舞台です。
企業連はORCA旅団に勝利し、未だクレイドル体制を維持しています。
しかし、企業は経済的な弱体化と政治的求心力の低下から、自社の立て直しに躍起になっており、その煽りで支援を打ち切られたカラードは瓦解しました。
その結果、最高戦力の一角たるネクストを保有するリンクス達を縛るものが何もなくなり、軍事力の分散が着々と進んでいる状態です。
戦争は終息し、世界は平和を保っています。しかし、それも危うい均衡の上で成り立つ見せかけのものでしかありません。
そして七月。かつてのORCA旅団の蛮行をなぞるかのように、二人のリンクスがアルテリア施設、フェモリスを強襲するところからこの物語は始まります。
【用語】
4やfor Answerに登場する用語に関しては「AC Fan」さんや「RAVENWOOD」さんのデータベースを参照して下さい。かなり詳しく書かれていますので、参考になると思いますよ。
フェモリス…カーパルスに次ぐ規模を誇る、アルテリア施設。管理会社はGlobal Armaments社。二人のイレギュラーにより壊滅、三基のクレイドルが地上に不時着した。
第0話 狂騒へのフォーアシュピール
「フェモリスが陥とされた、だと」
「あぁ。昨日の事だ」
「……一大事だな、ククク。で、損害は?」
「クレイドル三基がそれぞれニューメキシコ、アラバマ、そしてサウスダコタに不時着。死者はゼロ」
「随分と丁寧なテロね」
「ウィン・Dの言う通りだな。ローディー、いくらGAの失態とは言え、資料を捏造されては……」
「捏造などしておらんぞ、王大人。これが事実なのだ」
「王大人、その点に関してはローディー様を信じても良いかと思われます」
「ふぅむ。となると、解せんのは……」
「犯人の目的、だな。殺しが目的でないとすれば……どう思う?ルーラー」
「そうですね。この騒動の裏には、緻密な計算があると思います」
「根拠は?」
「ただの快楽殺人であれば、強襲先をクレイドルそのものに向けるはず。わざわざフェモリスを潰し、クレイドルを不時着させたのには……」
「何らかの意味がある、と?フフン、頭でっかちが言いそうなことだ」
「貴様に向けて話しているわけではない。所詮、ジェラルド・ジェンドリンの代替品に過ぎぬ貴様にな」
「何だと……!」
「そこまでだ!殺し合いがしたいのなら、戦場でやるがいい。……しかし、このままでは犯人の出方を窺う他は無いということか」
「ORCAの時から対応は後手後手。……変わっていないな、我々も」
「ウィン。お前の杞憂もわかる。しかし、迂闊に動くのは得策ではない」
「ORCAの時とは違うのだ、ウィン・D。奴等の要求ははっきりしていたが、今回は余りに不明な点が多すぎる」
「だから待てと?何も出来ずに指をくわえて見ていろというのか?」
「そうは言っておらん。リリウム、あれを」
「はい、王大人。皆様、お手元の資料をご覧下さい」
「……これは」
「インテリオル・ユニオンに届いた声明です。フェモリスを襲撃した犯人と同一人物である確証も取れました」
「奴ら、またアルテリアを潰すつもりか」
「そのようだ。標的はアルテリア・スターナム。インテリオルが保有する、最も大きなアルテリア施設だな」
「くそっ、舐めた真似を」
「焦るな、ウィン。我々はもう、気軽に動ける立場ではないのだぞ」
「ならば指をくわえて見ていろというのか!」
「……リンクスだ。我々から依頼を送信すればいい。そして、スターナムを守らせるのだ」
そんな会話が交わされた翌日。全てのリンクスにとあるメールが同時送信された。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
From:Nobody
Title:Non Title
アルテリア・スターナムを防衛して欲しい。
敵勢力は二機のネクスト。報酬は十分に用意した。
よろしく頼む。
「フェモリスが陥とされた、だと」
「あぁ。昨日の事だ」
「……一大事だな、ククク。で、損害は?」
「クレイドル三基がそれぞれニューメキシコ、アラバマ、そしてサウスダコタに不時着。死者はゼロ」
「随分と丁寧なテロね」
「ウィン・Dの言う通りだな。ローディー、いくらGAの失態とは言え、資料を捏造されては……」
「捏造などしておらんぞ、王大人。これが事実なのだ」
「王大人、その点に関してはローディー様を信じても良いかと思われます」
「ふぅむ。となると、解せんのは……」
「犯人の目的、だな。殺しが目的でないとすれば……どう思う?ルーラー」
「そうですね。この騒動の裏には、緻密な計算があると思います」
「根拠は?」
「ただの快楽殺人であれば、強襲先をクレイドルそのものに向けるはず。わざわざフェモリスを潰し、クレイドルを不時着させたのには……」
「何らかの意味がある、と?フフン、頭でっかちが言いそうなことだ」
「貴様に向けて話しているわけではない。所詮、ジェラルド・ジェンドリンの代替品に過ぎぬ貴様にな」
「何だと……!」
「そこまでだ!殺し合いがしたいのなら、戦場でやるがいい。……しかし、このままでは犯人の出方を窺う他は無いということか」
「ORCAの時から対応は後手後手。……変わっていないな、我々も」
「ウィン。お前の杞憂もわかる。しかし、迂闊に動くのは得策ではない」
「ORCAの時とは違うのだ、ウィン・D。奴等の要求ははっきりしていたが、今回は余りに不明な点が多すぎる」
「だから待てと?何も出来ずに指をくわえて見ていろというのか?」
「そうは言っておらん。リリウム、あれを」
「はい、王大人。皆様、お手元の資料をご覧下さい」
「……これは」
「インテリオル・ユニオンに届いた声明です。フェモリスを襲撃した犯人と同一人物である確証も取れました」
「奴ら、またアルテリアを潰すつもりか」
「そのようだ。標的はアルテリア・スターナム。インテリオルが保有する、最も大きなアルテリア施設だな」
「くそっ、舐めた真似を」
「焦るな、ウィン。我々はもう、気軽に動ける立場ではないのだぞ」
「ならば指をくわえて見ていろというのか!」
「……リンクスだ。我々から依頼を送信すればいい。そして、スターナムを守らせるのだ」
そんな会話が交わされた翌日。全てのリンクスにとあるメールが同時送信された。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
From:Nobody
Title:Non Title
アルテリア・スターナムを防衛して欲しい。
敵勢力は二機のネクスト。報酬は十分に用意した。
よろしく頼む。
「おきて、おきて、ねぇ、おきて、おきて」
狭い部屋に、女の声を摸したアラームが鳴り響いている。雑然とした部屋。半開きのカーテンから差し込む明るい日差しは、既に昼が近いことを示している。
アラームは、15分ほど鳴り続けた後に、ベッドから延びた男の手によって沈黙した。
「んんっ、もう朝か…」
ベッドから起き上がった男は、その乱れた金髪をかき上げ、一つ、大きなあくびをした。昨夜はどうも飲みすぎたらしい。酒場はここから近くはないのだが、どうやって帰ってきたのか、その記憶はさっぱり残っていない。一緒にいた、フェアリはどうしたんだ。
男はベッドから半裸のまま立ち上がると、ミネラルウオーターのボトルを口に運んだ。そして、机上に積まれたチョコレートの山から、それを一つ取り、口に放り込んだ。男の朝食は、いつもチョコレートと決まっている。鏡を見ると、右の頬に青あざができている。
「畜生、どこかにぶつけたのかな。痛ぇ…。ったく、しまらねぇな。…ん?」
机上の情報端末が、着信のあることをを示していた。男は、その端末を起動する。
センスのない起動音とともに、トーラス社のロゴが画面に広がる。ロゴの青い色は嫌いではないのだが、それ以外のセンスは最悪だと、男は思っている。この会社のやることはどうにも気に食わないことが多いのだが、自分の生活を支えている企業なので、我慢することにしている。
「2件…か。朝からご苦労様なこった」
続いて開いたメール画面には、2件の着信が見て取れた。まず、先に届いた方を読む。
From:フェアリ=メイ
Title:酔いどれさんへ
おはようございます。
昨夜はおつかれさま。飲みすぎも、程々にしたほうがいいですよ。特に、GAの兵隊に喧嘩を売るのはやめてください。後始末が面倒ですから。IDカードは玄関に置いてあります。
なるほど、顔の青あざは、そういうことらしい。この部屋へは、フェアリが運んでくれたんだろう。華奢な女のくせに、よくやるよ。
その男…、ベン=バリエタールは、そんな事を考えながら、もうひとつ、チョコレートを口へ放り込んだ。軽い苦みに、頭が徐々に覚醒してくる。フェアリは、男と同じく、トーラス社の支援を受ける傭兵である。ただ、傭兵と言っても、どこにでもいる一兵卒というわけではなく、巨大人型兵器、「ネクストAC」のパイロットである。この兵器は1機で1つの戦場を蹂躙し得るほどの代物で、操縦も限られたごく少数の適性ある人物にしか任されなかった。このパイロットのことを、人々は「リンクス」と呼んだ。
「もう一件は、仕事の依頼か。…差出人不明だと?」
差出人不明のメールに、ロクな思い出はない。最たるものが、3年前のものだ。地下施設防衛の依頼で、巨額の報償に釣られて行ってみれば、相手は、GA社直属を含むネクストの5、6機。クライアントは、滅んだはずのメリエス社で、とどめに、GA社実働部隊から爆撃を受けるという、悲惨極まるものだった。後でわかったことだが、滅んだメリエス社からの依頼などあるはずもなく、真の依頼人は、その時に敵対したはずのGA社だった。結局、GA社の企んだ、他社を貶めるための謀略だったわけで、ベンはテロリストの濡れ衣で銃殺にされかけたところを、GA社に敵対するトーラス社に拾われた。フェアリは、トーラス社に元々勤めていたリンクスで、その時から、彼女には随分助けてもらっている。
「このメール、トーラスの検閲をくぐってる。依頼を受けたきゃどうぞ、てか。…なんだこりゃ?」
From:Nobody
Title:Non Title
アルテリア・スターナムを防衛して欲しい。
敵勢力は二機のネクスト。報酬は十分に用意した。
よろしく頼む。
「おいおい、アルテリア防衛なんて、穏やかじゃねぇな!しかし、報酬は十分。内容は怪しい。さて、どうするかね…」
大きな伸びを一つして、カーテンを開けると、強い日差しが目にしみる。ここは高層アパートの14階。眼下から地平線まで、黄色く砂漠が光っている。その砂漠の中を、一台の軍用車が砂埃を上げて走ってくるのが見える。今や、地上は、どこもかしこも砂漠だらけ。クレイドルなんて大層なものを作る前に、こっちを何とかすればいいのによ、と誰もが思っても口にしないことをぼやいてみる。
「ん…?」
その軍用車は、アパートの前で止まった。
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狭い部屋に、女の声を摸したアラームが鳴り響いている。雑然とした部屋。半開きのカーテンから差し込む明るい日差しは、既に昼が近いことを示している。
アラームは、15分ほど鳴り続けた後に、ベッドから延びた男の手によって沈黙した。
「んんっ、もう朝か…」
ベッドから起き上がった男は、その乱れた金髪をかき上げ、一つ、大きなあくびをした。昨夜はどうも飲みすぎたらしい。酒場はここから近くはないのだが、どうやって帰ってきたのか、その記憶はさっぱり残っていない。一緒にいた、フェアリはどうしたんだ。
男はベッドから半裸のまま立ち上がると、ミネラルウオーターのボトルを口に運んだ。そして、机上に積まれたチョコレートの山から、それを一つ取り、口に放り込んだ。男の朝食は、いつもチョコレートと決まっている。鏡を見ると、右の頬に青あざができている。
「畜生、どこかにぶつけたのかな。痛ぇ…。ったく、しまらねぇな。…ん?」
机上の情報端末が、着信のあることをを示していた。男は、その端末を起動する。
センスのない起動音とともに、トーラス社のロゴが画面に広がる。ロゴの青い色は嫌いではないのだが、それ以外のセンスは最悪だと、男は思っている。この会社のやることはどうにも気に食わないことが多いのだが、自分の生活を支えている企業なので、我慢することにしている。
「2件…か。朝からご苦労様なこった」
続いて開いたメール画面には、2件の着信が見て取れた。まず、先に届いた方を読む。
From:フェアリ=メイ
Title:酔いどれさんへ
おはようございます。
昨夜はおつかれさま。飲みすぎも、程々にしたほうがいいですよ。特に、GAの兵隊に喧嘩を売るのはやめてください。後始末が面倒ですから。IDカードは玄関に置いてあります。
なるほど、顔の青あざは、そういうことらしい。この部屋へは、フェアリが運んでくれたんだろう。華奢な女のくせに、よくやるよ。
その男…、ベン=バリエタールは、そんな事を考えながら、もうひとつ、チョコレートを口へ放り込んだ。軽い苦みに、頭が徐々に覚醒してくる。フェアリは、男と同じく、トーラス社の支援を受ける傭兵である。ただ、傭兵と言っても、どこにでもいる一兵卒というわけではなく、巨大人型兵器、「ネクストAC」のパイロットである。この兵器は1機で1つの戦場を蹂躙し得るほどの代物で、操縦も限られたごく少数の適性ある人物にしか任されなかった。このパイロットのことを、人々は「リンクス」と呼んだ。
「もう一件は、仕事の依頼か。…差出人不明だと?」
差出人不明のメールに、ロクな思い出はない。最たるものが、3年前のものだ。地下施設防衛の依頼で、巨額の報償に釣られて行ってみれば、相手は、GA社直属を含むネクストの5、6機。クライアントは、滅んだはずのメリエス社で、とどめに、GA社実働部隊から爆撃を受けるという、悲惨極まるものだった。後でわかったことだが、滅んだメリエス社からの依頼などあるはずもなく、真の依頼人は、その時に敵対したはずのGA社だった。結局、GA社の企んだ、他社を貶めるための謀略だったわけで、ベンはテロリストの濡れ衣で銃殺にされかけたところを、GA社に敵対するトーラス社に拾われた。フェアリは、トーラス社に元々勤めていたリンクスで、その時から、彼女には随分助けてもらっている。
「このメール、トーラスの検閲をくぐってる。依頼を受けたきゃどうぞ、てか。…なんだこりゃ?」
From:Nobody
Title:Non Title
アルテリア・スターナムを防衛して欲しい。
敵勢力は二機のネクスト。報酬は十分に用意した。
よろしく頼む。
「おいおい、アルテリア防衛なんて、穏やかじゃねぇな!しかし、報酬は十分。内容は怪しい。さて、どうするかね…」
大きな伸びを一つして、カーテンを開けると、強い日差しが目にしみる。ここは高層アパートの14階。眼下から地平線まで、黄色く砂漠が光っている。その砂漠の中を、一台の軍用車が砂埃を上げて走ってくるのが見える。今や、地上は、どこもかしこも砂漠だらけ。クレイドルなんて大層なものを作る前に、こっちを何とかすればいいのによ、と誰もが思っても口にしないことをぼやいてみる。
「ん…?」
その軍用車は、アパートの前で止まった。