敵地上世界軍事基地襲撃 OK
地上、軍事コロニーで戦闘。
重量二脚の黒い重量級ACが左手に持つ大型レールガン(1)を発射する。
MTに直撃、装甲や内部機構を抉りながら、進路を変えて右上方へ。
流れ弾が直撃し、それにより落下する建物に偶然潰されるMT達。
黒いACはゴツゴツしたフレームばかりで構成されており、コアはGAの高機動型である。
但し高機動と謳ってはいるが、同社の重装甲的思想が抜け切っておらず、実際は普通の重量コアである。
だが、高機動と謳う分には確かに機動戦を展開し易いコアでもある。
複数のリコンや大容量エクステンションを容易に装備出来る搭載コンテナの要領は、GAグループトップクラスで、内部空間の面積だけで語れば、車両が多重タンク系脚部の格納コンテナを小さくしたかの様な程である。
それらが存分に使えるのであれば、妨害して敵の動きを殺す事で軽量機相手にも対等以上に渡り合える可能性が、非常に高いコアである。
しかし、この機体の戦い方は、もっと分かり易い物である。
各部ブースター補助用高出力インサイド・ジェネレーターによる機動力に回す分への電力補助による息切れ(1)が起き難くなり、より長期的な激しい軌道が行えると云う訳だ。
右手には大型バレットライフルが握られている。
ドラムマガジンを採用しており、ライフル系にも拘らず、キャノン類に匹敵する大きさを誇る。
その重量は軽量な脚部であれば、優に超える重さだ。
――ドドドドドドッ!!
バトルライフルとは少し毛色が違うが、大口径である事に違いはない。
短所は矢鱈と弾薬日が嵩張る点と重さ、大きさ故の取り回し辛さの三点だ。
長所は銃身が長い為普通に戦う距離であれば、高効率のダメージ源になるだけの精度の高さだろう。
最大の欠点は、反動の酷さだが、それをカバーする腕は充分にある。
正面、ロケット主体のタンク型MTをロックオン。
ロケットを発射した所でブーストダッシュから空中ブーストへ移行する。
そのまま直上付近からシールドの範囲外からバレットライフルを掃射する。
簡易型頭部が砕け散り、内部へ弾丸が食い込んで、装甲が内側からの爆発で吹き飛ぶ。
壁を蹴ってバックブースターを噴射、左側の狙撃特化型支援MTへVLSミサイル発射、ヒットサインを確認しながら着地し、そのままブーストダッシュして、建物の陰から出た瞬間、右背部のチェインガンを掃射、シールド外からロケット発射機構だけを破壊して、オーバードブーストで通過する。
MTが爆発。
誘爆だろう。
正面の狙撃型MTへレールガンを発射。
刹那、ヒットサインと共に手前にガトリングガンを装備したノーマル。
「っ!?」
すぐに飛び上がり、ビルを蹴る。
下を見る為、一瞬右操縦桿のカメラボタンを下げるが、既にミサイル二発が発射されていた。
右後方からのミサイルに対し、メインブースターのペダルから足を離す。
右操縦桿を手前に、左操縦桿を置くに叩く様に動かして、ブースト減速予約ペダル(3)を軽く踏む。
股間に内蔵された高度探知レーザー装置(4)で機体の姿勢測定と高度測定を行い、低高度になり次第自動ブースト、着地時に解除のサインが表示される。
ブーストペダルを強く踏み、ブーストダッシュに移行、レールガンを逆関節型砲撃MTに叩き込み、黙らせる。
撃破したと同時にロック対象をノーマルへ。
敵ノーマル、ガトリングガンを掃射しながら高速後退。
両背部接続機構を使って装備している大型マルチミサイル用コンテナを解放、奥の防衛部隊諸共マルチロックオンする。
肩部連動ミサイル発射装置を起動させ、FCSのミサイルモードに変更する。
「消えろ」
両肩に装備された多段式徹甲弾頭ミサイルと第一弾頭を徹甲弾、第二弾頭を爆破弾とした二種類混合多弾頭ミサイルが大量に放たれる。
ロックオン開始から僅か2秒程である。
防衛部隊が密集して迎撃し始めるも前衛隊やノーマル達がミサイルに潰される。
ミサイルの白煙や爆炎により視界が最悪になった所でACがFCSを通常モードに変更、バレットライフルを掃射してミサイル迎撃に勤しむ防衛部隊を蹴散らし、左手の大型レールガンで防衛対象――ACに取っての破壊目標がある装甲装備型倉庫のシャッターを破壊せんとする。
――ドガッシャアアン!!
一発目、破壊は出来なかったがダメージは与えた。
続けて撃った二発目でシャッターに大穴が空き、内部で着弾する。
オーバードブーストを侵入と同時に停止する。
暗闇の中、スキャンモードで見つけたコンテナへ特殊リコンを射出する。
ターゲティング・リコン(5)だ。
ターゲティング・リコンによってロックオン可能となった全ての対象物へミサイル・ロック、マルチロック完了と同時に発射、グラインドブーストで高速後退し、シャッターから出た瞬間跳躍、壁を蹴って更に後ろの建物の壁を蹴るのに合わせて旋回し、オーバードブーストを起動、コンパターで巡航モードに切り替えて、基地から一気に離脱した。
『敵施設、並びに破壊目標の信号ロストを確認。
目標を破壊したと断定、作戦エリアより離脱する』
雑音のみの通信。
「あー、駄目だ!!」
「如何だった?」
「駄目だ、駄目駄目。
通信なんざ、だーれも喋っちゃいねぇよ…」
戦闘区域突破想定型物資運搬車両を改造した特殊装甲ジープ(以下ジープ)に乗った男二人。
通信を試みた男は運転手に訊ねられた内容に対して、首を横に振りながら答えた。
答えに運転手が唸る。
「参ったな。
本当に次世代砲が潰れたか」
「あー、一杯黒煙とか火とか…。
火災が激しいからね〜。
見た目通りじぇねぇの?」
言いながら覗いていた望遠鏡を運転手に渡そうとする。
運転手は運転中だと断った。
もう一度、機銃座に座って望遠鏡を使ってみる。
「うん?
あ、待て待て!?」
即座に腕の方位系を確かめ、影を見る。
「6時方向!
ほら、ACだよ!!」
「何っ!?」
今度こそ渡された望遠鏡を覗いて、そして運転手の顔が真っ青になる。
「おいおいおい、あの機体は…mohの機体じゃないか!?
でも、あれはミグラント機じゃない。
専属実働部隊…レイヴン部隊の機体だ」
「戦闘のエキスパートって事か、畜生め…」
返された望遠鏡を覗くが、背中のオーバードブーストの光しか見えない。
「本部、本部!!
あーっ、無理だよ。
全然駄目だ」
「この辺りは通信し難い土地らしいからね…」
「あ、前!」
「え?――うおああ!?」
行き成り眼前に現れた岩――否、岩竜。
「全然気付かなかった!!」
後ろを見ながら別の意味で運転手が真っ青になる。
「おいおい、駄目だ…。
来るなよ…?」
動き出す岩竜。
「じっとしてろ…」
此方を見やる。
「来るなよ…」
此方に向かって歩き出す岩竜。
「向こう行けよ?
こっち来るなよ?
来るなよ…来るな来るな……」
走り出す岩竜。
「来たぁあああああああああああ!!!!!!!!」
「おちち、落ち着け!
機銃を撃て、護身用の武装だぞ!!」
「もっとスピード出せ!」
「ああ、これが安全運転の最速だ。
吹っ飛ばすからしがみ付いてろ。
機銃座にシートベルトがあるだろ!?」
言われた男が慌ててシートベルトを着用し、ハンドルを回す。
それに従って、機銃座が回転している間にコンソールを操作し機銃システムを起動させる。
ロックオン機能等忘却しながら絶叫し、全力でトリガーを引き続ける。
銃身から滝の様に自壊機能付きの薬莢が飛び、自らの圧力で製造元の判定が出来ないのは勿論、薬莢だった事すらも解らないであろう程に潰れる。
銃撃の爆音が轟き、弾丸が岩竜の頭部に直撃する。
しかし、どれも情けない音と少し目立つ火花ばかりで弾かれるばかり。
「どんだけでも良い、こいつから離れない事にゃ…――なっ!?」
凄まじい揺れが起きる。
慌ててブレーキを踏み込んだ運転手がハンドルを切り、ジープをカーブさせると、あわや踏まれていたであろう、と云う所に岩竜が着地した。
「こいつ、跳びやがった!!」
「嘘だろ、こんな巨体で!!」
センサーに反応。
「後方に物資運搬用特殊ジープ確認。
戦線突破型、武装は長射程対物狙撃砲、迎撃機銃、近距離連続散弾砲。
岩竜に襲われている、か」
ボードを操作しながらコンパターを叩く。
「現在作戦エリアより56キロを超えた。
後方に岩竜、所属不明車両が襲われている。
対応は如何すれば良い?」
『………』
「おい?」
『………』
「…繋がってない…のか?
通信用の巡航リコン(6)は作戦開始前は確認出来たが…」
コンソールを操作する。
―シグナル;断絶―
「!?
通信負荷でも異常発生でもなく、断絶!?
…まさか…棄てられた!?」
急いでオーバードブーストを停止させ、周囲を動き回る。
仮に任務の難易度から遂行不可と判断されていた場合、それでも尚出撃させた所を考えるに、捨て駒にされたのだろう。
であれば、遂行してしまった以上、危険視される可能性も高い。
「オペレーター!!」
返事がない。
通信回線を変更、確認しながら叫ぶ。
「応答しろ、オペレーター!
オペレーター!!」
『――――――――――――――――――』
「…嵌められたか」
少し離れた所を大きなプラズマ弾が通る。
動き回っていなければ当たっていただろう。
これで棄てられたと確信出来る。
オペレーターの返事がないのも同様だ。
彼は企業専属レイヴン部隊の所属だ。
当然オペレーターも企業人。
しかし彼自身は活躍して居る所をスカウトされた。
元々企業人でない人間が、こうして切り捨てられる事は良くある事だ。
何分ACとは一機維持するだけで凄まじい額になる。
それこそ次世代パーツ開発の為にプラント・コロニー開発の一部を凍結させる企業もある。
今の大企業群はプラント・コロニーとAC開発のバランスを保ったり、自社に合うバランスに調整して来たが為に利益崩壊さずに生き残った企業ばかりだ。
「良いだろう」
目標を有視界域に捉える。
「其方が、その気なら―――」
目標、スキャン領域に侵入。
入力過程を飛ばして戦闘モードを立ち上げる。
「―――俺も全力で立ち向かおう!!」
オーバードブーストを起動、第二射が急な加速に追い付けず外れる。
それ違い様にレールガンを真正面から撃つが、敵ACは直前で跳び上がり、結果として戦闘キャリア内部に直撃、大爆発する。
「逆関節か」
跳躍力から察し、爆炎を間に挟んでオーバードブーストを停止、グラインドブーストで立ち回りを調整しつつ、通常ブーストで最終補正する。
敵は軽量逆関節の緑色のACだ。
「だとすればナンバー7辺りか」
両腕は同一の武器腕――パルスガンだ。
「単発発射型か。
間が長いな」
隙を予想してオーバードブーストを起動させる。
パッケージが開き、唸りを上げる。
チラッと熱量ゲージを確認、コンパターを操作して緊急冷却出力を発動させる。
相手はオーバードブーストの予備推力噴射を確認、それ次第両背部の種類の違うミサイルを最大ロック数で発射する。
が、彼はオーバードブースト中に操縦桿を一気に動かした。
突如進行方向を変えた黒いACの挙動に追い付けずミサイル達が燃料推進を終えて爆散する。
ロックサイト内のマーカーに狙撃点表示が移動する。
重なった瞬間、バレットライフルを発砲、敵ACの右肩の装甲を抉り飛ばす。
右下からの攻撃に、急降下ブースターを作動させる敵ACだが、彼の機体は既に回り込み終えており、目標に向かって左手の大型レールガンを向けて充填を開始して居た頃だった。
「遅い」
レールガン砲身から漏れ出た光が発射と共に、発射方向へ盛大に飛び散る。
凄まじい量の磁場を纏った特殊徹甲弾が回線にダメージが入り始めていた右腕部の内側に直撃、右腕が大きく吹き飛び、被弾の際野凄まじい衝撃に、制御不能に陥った緑のACが、高所から落下、転倒し掛ける。
ギリギリ姿勢復帰した逆関節ACがブーストダッシュ、更にオーバードブーストで旋回する為の距離を開けようとした所を、後ろからオーバードブースト中のバレットライフル発砲で追撃、敵ACのオーバードブースト機構に直撃し目標を撃破する。
撃破された方は後ろからの爆発に搭乗者が押し潰されてしまった。
コアが崩壊し内装パーツが故障、ジェネレーターの過剰供給により回線が燃え上がり、残っていた左腕も火災して接続機構が自壊、腕が崩れ落ちた。
前方装甲が後ろからの圧力で弾け飛び、ジェネレーターの爆発によってコアは完全に粉々になってしまった。
火災や爆発によって脚部が地面に叩き付けられ、そのジョイント部分は火災や爆発の影響を酷く受け、更には地面との激しい摩擦等により、完全に修復不可能となっていた。
「…何だ、俺より高ナンバーな割に意外と弱いじゃないか。
だが消耗を想定していた割には防衛部隊が少なかったな。
…実際の性能とコストが相当ではないとミグラントの連中が言っていたしな。
存外これが現実かも知れん。
だが、施設の方のコストが高いなら防衛も充実する筈だが…」
ちぎはぐな任務と、割に合わない始末の仕方。
(もしや、ナンバーの低い俺を勝手に弱いと仮定していた…?)
実際、彼は部隊内でも下っ端だ。
仮に下っ端を始末するのであれば、弱い相手を差し向けても三流なら相手がし易かっただろう。
防衛部隊も数が少し多い程度で、ノーマルに注意さえしていれば後はACからすれば的も同然の火力だけのMTだけだ。
「…如何でも良い。
コロニー管轄外に出た縁だ、このままレジスタンス・コロニーにでも行くのも良かろう」
そう言って彼はシステムを通常モード、更に長距離移動モードへ変更した。
当てなき旅の始まりであった。
重量二脚の黒い重量級ACが左手に持つ大型レールガン(1)を発射する。
MTに直撃、装甲や内部機構を抉りながら、進路を変えて右上方へ。
流れ弾が直撃し、それにより落下する建物に偶然潰されるMT達。
黒いACはゴツゴツしたフレームばかりで構成されており、コアはGAの高機動型である。
但し高機動と謳ってはいるが、同社の重装甲的思想が抜け切っておらず、実際は普通の重量コアである。
だが、高機動と謳う分には確かに機動戦を展開し易いコアでもある。
複数のリコンや大容量エクステンションを容易に装備出来る搭載コンテナの要領は、GAグループトップクラスで、内部空間の面積だけで語れば、車両が多重タンク系脚部の格納コンテナを小さくしたかの様な程である。
それらが存分に使えるのであれば、妨害して敵の動きを殺す事で軽量機相手にも対等以上に渡り合える可能性が、非常に高いコアである。
しかし、この機体の戦い方は、もっと分かり易い物である。
各部ブースター補助用高出力インサイド・ジェネレーターによる機動力に回す分への電力補助による息切れ(1)が起き難くなり、より長期的な激しい軌道が行えると云う訳だ。
右手には大型バレットライフルが握られている。
ドラムマガジンを採用しており、ライフル系にも拘らず、キャノン類に匹敵する大きさを誇る。
その重量は軽量な脚部であれば、優に超える重さだ。
――ドドドドドドッ!!
バトルライフルとは少し毛色が違うが、大口径である事に違いはない。
短所は矢鱈と弾薬日が嵩張る点と重さ、大きさ故の取り回し辛さの三点だ。
長所は銃身が長い為普通に戦う距離であれば、高効率のダメージ源になるだけの精度の高さだろう。
最大の欠点は、反動の酷さだが、それをカバーする腕は充分にある。
正面、ロケット主体のタンク型MTをロックオン。
ロケットを発射した所でブーストダッシュから空中ブーストへ移行する。
そのまま直上付近からシールドの範囲外からバレットライフルを掃射する。
簡易型頭部が砕け散り、内部へ弾丸が食い込んで、装甲が内側からの爆発で吹き飛ぶ。
壁を蹴ってバックブースターを噴射、左側の狙撃特化型支援MTへVLSミサイル発射、ヒットサインを確認しながら着地し、そのままブーストダッシュして、建物の陰から出た瞬間、右背部のチェインガンを掃射、シールド外からロケット発射機構だけを破壊して、オーバードブーストで通過する。
MTが爆発。
誘爆だろう。
正面の狙撃型MTへレールガンを発射。
刹那、ヒットサインと共に手前にガトリングガンを装備したノーマル。
「っ!?」
すぐに飛び上がり、ビルを蹴る。
下を見る為、一瞬右操縦桿のカメラボタンを下げるが、既にミサイル二発が発射されていた。
右後方からのミサイルに対し、メインブースターのペダルから足を離す。
右操縦桿を手前に、左操縦桿を置くに叩く様に動かして、ブースト減速予約ペダル(3)を軽く踏む。
股間に内蔵された高度探知レーザー装置(4)で機体の姿勢測定と高度測定を行い、低高度になり次第自動ブースト、着地時に解除のサインが表示される。
ブーストペダルを強く踏み、ブーストダッシュに移行、レールガンを逆関節型砲撃MTに叩き込み、黙らせる。
撃破したと同時にロック対象をノーマルへ。
敵ノーマル、ガトリングガンを掃射しながら高速後退。
両背部接続機構を使って装備している大型マルチミサイル用コンテナを解放、奥の防衛部隊諸共マルチロックオンする。
肩部連動ミサイル発射装置を起動させ、FCSのミサイルモードに変更する。
「消えろ」
両肩に装備された多段式徹甲弾頭ミサイルと第一弾頭を徹甲弾、第二弾頭を爆破弾とした二種類混合多弾頭ミサイルが大量に放たれる。
ロックオン開始から僅か2秒程である。
防衛部隊が密集して迎撃し始めるも前衛隊やノーマル達がミサイルに潰される。
ミサイルの白煙や爆炎により視界が最悪になった所でACがFCSを通常モードに変更、バレットライフルを掃射してミサイル迎撃に勤しむ防衛部隊を蹴散らし、左手の大型レールガンで防衛対象――ACに取っての破壊目標がある装甲装備型倉庫のシャッターを破壊せんとする。
――ドガッシャアアン!!
一発目、破壊は出来なかったがダメージは与えた。
続けて撃った二発目でシャッターに大穴が空き、内部で着弾する。
オーバードブーストを侵入と同時に停止する。
暗闇の中、スキャンモードで見つけたコンテナへ特殊リコンを射出する。
ターゲティング・リコン(5)だ。
ターゲティング・リコンによってロックオン可能となった全ての対象物へミサイル・ロック、マルチロック完了と同時に発射、グラインドブーストで高速後退し、シャッターから出た瞬間跳躍、壁を蹴って更に後ろの建物の壁を蹴るのに合わせて旋回し、オーバードブーストを起動、コンパターで巡航モードに切り替えて、基地から一気に離脱した。
『敵施設、並びに破壊目標の信号ロストを確認。
目標を破壊したと断定、作戦エリアより離脱する』
雑音のみの通信。
「あー、駄目だ!!」
「如何だった?」
「駄目だ、駄目駄目。
通信なんざ、だーれも喋っちゃいねぇよ…」
戦闘区域突破想定型物資運搬車両を改造した特殊装甲ジープ(以下ジープ)に乗った男二人。
通信を試みた男は運転手に訊ねられた内容に対して、首を横に振りながら答えた。
答えに運転手が唸る。
「参ったな。
本当に次世代砲が潰れたか」
「あー、一杯黒煙とか火とか…。
火災が激しいからね〜。
見た目通りじぇねぇの?」
言いながら覗いていた望遠鏡を運転手に渡そうとする。
運転手は運転中だと断った。
もう一度、機銃座に座って望遠鏡を使ってみる。
「うん?
あ、待て待て!?」
即座に腕の方位系を確かめ、影を見る。
「6時方向!
ほら、ACだよ!!」
「何っ!?」
今度こそ渡された望遠鏡を覗いて、そして運転手の顔が真っ青になる。
「おいおいおい、あの機体は…mohの機体じゃないか!?
でも、あれはミグラント機じゃない。
専属実働部隊…レイヴン部隊の機体だ」
「戦闘のエキスパートって事か、畜生め…」
返された望遠鏡を覗くが、背中のオーバードブーストの光しか見えない。
「本部、本部!!
あーっ、無理だよ。
全然駄目だ」
「この辺りは通信し難い土地らしいからね…」
「あ、前!」
「え?――うおああ!?」
行き成り眼前に現れた岩――否、岩竜。
「全然気付かなかった!!」
後ろを見ながら別の意味で運転手が真っ青になる。
「おいおい、駄目だ…。
来るなよ…?」
動き出す岩竜。
「じっとしてろ…」
此方を見やる。
「来るなよ…」
此方に向かって歩き出す岩竜。
「向こう行けよ?
こっち来るなよ?
来るなよ…来るな来るな……」
走り出す岩竜。
「来たぁあああああああああああ!!!!!!!!」
「おちち、落ち着け!
機銃を撃て、護身用の武装だぞ!!」
「もっとスピード出せ!」
「ああ、これが安全運転の最速だ。
吹っ飛ばすからしがみ付いてろ。
機銃座にシートベルトがあるだろ!?」
言われた男が慌ててシートベルトを着用し、ハンドルを回す。
それに従って、機銃座が回転している間にコンソールを操作し機銃システムを起動させる。
ロックオン機能等忘却しながら絶叫し、全力でトリガーを引き続ける。
銃身から滝の様に自壊機能付きの薬莢が飛び、自らの圧力で製造元の判定が出来ないのは勿論、薬莢だった事すらも解らないであろう程に潰れる。
銃撃の爆音が轟き、弾丸が岩竜の頭部に直撃する。
しかし、どれも情けない音と少し目立つ火花ばかりで弾かれるばかり。
「どんだけでも良い、こいつから離れない事にゃ…――なっ!?」
凄まじい揺れが起きる。
慌ててブレーキを踏み込んだ運転手がハンドルを切り、ジープをカーブさせると、あわや踏まれていたであろう、と云う所に岩竜が着地した。
「こいつ、跳びやがった!!」
「嘘だろ、こんな巨体で!!」
センサーに反応。
「後方に物資運搬用特殊ジープ確認。
戦線突破型、武装は長射程対物狙撃砲、迎撃機銃、近距離連続散弾砲。
岩竜に襲われている、か」
ボードを操作しながらコンパターを叩く。
「現在作戦エリアより56キロを超えた。
後方に岩竜、所属不明車両が襲われている。
対応は如何すれば良い?」
『………』
「おい?」
『………』
「…繋がってない…のか?
通信用の巡航リコン(6)は作戦開始前は確認出来たが…」
コンソールを操作する。
―シグナル;断絶―
「!?
通信負荷でも異常発生でもなく、断絶!?
…まさか…棄てられた!?」
急いでオーバードブーストを停止させ、周囲を動き回る。
仮に任務の難易度から遂行不可と判断されていた場合、それでも尚出撃させた所を考えるに、捨て駒にされたのだろう。
であれば、遂行してしまった以上、危険視される可能性も高い。
「オペレーター!!」
返事がない。
通信回線を変更、確認しながら叫ぶ。
「応答しろ、オペレーター!
オペレーター!!」
『――――――――――――――――――』
「…嵌められたか」
少し離れた所を大きなプラズマ弾が通る。
動き回っていなければ当たっていただろう。
これで棄てられたと確信出来る。
オペレーターの返事がないのも同様だ。
彼は企業専属レイヴン部隊の所属だ。
当然オペレーターも企業人。
しかし彼自身は活躍して居る所をスカウトされた。
元々企業人でない人間が、こうして切り捨てられる事は良くある事だ。
何分ACとは一機維持するだけで凄まじい額になる。
それこそ次世代パーツ開発の為にプラント・コロニー開発の一部を凍結させる企業もある。
今の大企業群はプラント・コロニーとAC開発のバランスを保ったり、自社に合うバランスに調整して来たが為に利益崩壊さずに生き残った企業ばかりだ。
「良いだろう」
目標を有視界域に捉える。
「其方が、その気なら―――」
目標、スキャン領域に侵入。
入力過程を飛ばして戦闘モードを立ち上げる。
「―――俺も全力で立ち向かおう!!」
オーバードブーストを起動、第二射が急な加速に追い付けず外れる。
それ違い様にレールガンを真正面から撃つが、敵ACは直前で跳び上がり、結果として戦闘キャリア内部に直撃、大爆発する。
「逆関節か」
跳躍力から察し、爆炎を間に挟んでオーバードブーストを停止、グラインドブーストで立ち回りを調整しつつ、通常ブーストで最終補正する。
敵は軽量逆関節の緑色のACだ。
「だとすればナンバー7辺りか」
両腕は同一の武器腕――パルスガンだ。
「単発発射型か。
間が長いな」
隙を予想してオーバードブーストを起動させる。
パッケージが開き、唸りを上げる。
チラッと熱量ゲージを確認、コンパターを操作して緊急冷却出力を発動させる。
相手はオーバードブーストの予備推力噴射を確認、それ次第両背部の種類の違うミサイルを最大ロック数で発射する。
が、彼はオーバードブースト中に操縦桿を一気に動かした。
突如進行方向を変えた黒いACの挙動に追い付けずミサイル達が燃料推進を終えて爆散する。
ロックサイト内のマーカーに狙撃点表示が移動する。
重なった瞬間、バレットライフルを発砲、敵ACの右肩の装甲を抉り飛ばす。
右下からの攻撃に、急降下ブースターを作動させる敵ACだが、彼の機体は既に回り込み終えており、目標に向かって左手の大型レールガンを向けて充填を開始して居た頃だった。
「遅い」
レールガン砲身から漏れ出た光が発射と共に、発射方向へ盛大に飛び散る。
凄まじい量の磁場を纏った特殊徹甲弾が回線にダメージが入り始めていた右腕部の内側に直撃、右腕が大きく吹き飛び、被弾の際野凄まじい衝撃に、制御不能に陥った緑のACが、高所から落下、転倒し掛ける。
ギリギリ姿勢復帰した逆関節ACがブーストダッシュ、更にオーバードブーストで旋回する為の距離を開けようとした所を、後ろからオーバードブースト中のバレットライフル発砲で追撃、敵ACのオーバードブースト機構に直撃し目標を撃破する。
撃破された方は後ろからの爆発に搭乗者が押し潰されてしまった。
コアが崩壊し内装パーツが故障、ジェネレーターの過剰供給により回線が燃え上がり、残っていた左腕も火災して接続機構が自壊、腕が崩れ落ちた。
前方装甲が後ろからの圧力で弾け飛び、ジェネレーターの爆発によってコアは完全に粉々になってしまった。
火災や爆発によって脚部が地面に叩き付けられ、そのジョイント部分は火災や爆発の影響を酷く受け、更には地面との激しい摩擦等により、完全に修復不可能となっていた。
「…何だ、俺より高ナンバーな割に意外と弱いじゃないか。
だが消耗を想定していた割には防衛部隊が少なかったな。
…実際の性能とコストが相当ではないとミグラントの連中が言っていたしな。
存外これが現実かも知れん。
だが、施設の方のコストが高いなら防衛も充実する筈だが…」
ちぎはぐな任務と、割に合わない始末の仕方。
(もしや、ナンバーの低い俺を勝手に弱いと仮定していた…?)
実際、彼は部隊内でも下っ端だ。
仮に下っ端を始末するのであれば、弱い相手を差し向けても三流なら相手がし易かっただろう。
防衛部隊も数が少し多い程度で、ノーマルに注意さえしていれば後はACからすれば的も同然の火力だけのMTだけだ。
「…如何でも良い。
コロニー管轄外に出た縁だ、このままレジスタンス・コロニーにでも行くのも良かろう」
そう言って彼はシステムを通常モード、更に長距離移動モードへ変更した。
当てなき旅の始まりであった。
13/05/25 19:03更新 / 天