連載小説
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接触
青いACは、コロンさんの”アディーナ”、そしてMTは、フォーラさんの”ジェムザール”です。
でも、”アディーナ”はもとより戦闘を考えていない軽装備ですし、”ジェムザール”に至っては壊れた警備用MTです。
クレストの正規軍に、それで立ち向かおうというのでしょうか。
フォーラさんが通信を開きます。

「コロン先輩。なんとか間に合ったみたいです。テロリストの生き残りがいます。回収します。」

「フォーラちゃん、無茶は止めて。それに、テロリストを逃がしたりしたら、今度はあたしたちが犯罪者よ。クレスト軍も見逃してはくれないわ。」

「もとより拾った命ですから。責任は全部私が取ります。」

あっ、言うが早いか、”ジェムザール”はクレスト軍の前に飛び出しました。煙を吹いて倒れているテロリストのMTの1機にまっすぐに走ります。

「うそーっ!?ああもう、どうなっても知らない!」

”アディーナ”がジャンプして、”ジェムザール”とクレスト軍の間に着地しました。
驚いたのはクレスト軍です。

「ACだと?聞いてないぜ。」

「いや、こっちにもACは3機もいる。しかも指揮はファイザー少佐だ。」

「そうだ!たかがAC1機。やっちまえ!」

クレスト軍のMT部隊が”アディーナ”にロケット弾を次々に放ちます。

「このっ!フォーラちゃん、早く!」

”アディーナ”はクレスト軍の攻撃をかわしながら、ライフルで牽制します。実に見事な動きです。
その間に”ジェムザール”は倒れているテロリストのMTにたどり着きます。

「そうはさせるかよ!」

前に出たのはロキの”ヴィオラ”です。マシンガンを撃ちながら”アディーナ”に突進します。
マシンガンの弾が”アディーナ”の頭をかすめます。

「このっ!あたしだって、クレスト軍で戦ってたことあるのよ。」

”アディーナ”はライフルをすばやく振り向け、引き金を引きました。
銃口から飛び出した紫のエネルギー弾は、”ヴィオラ”の頭に見事、命中しました。
小さな爆発が起こり、”ヴィオラ”の頭が吹き飛びます。

「ぐあ!?しまった、前が見えねぇ…」

”ヴィオラ”は千鳥足になり、前列から後退していきます。

”ジェムザール”のコクピットハッチが開き、飛び出したフォーラさんが、倒れているテロリストのMTのコクピットに取り付きます。

「このドジ!帰ったらオシオキよ!」

危ない。アルピニー准尉の”ジャンネッタ”がキャノンで”ジェムザール”を狙っています。
”アディーナ”が反転し、”ジャンネッタ”の前に立ちふさがります。

「ふん。そんな軽装のACで、この”ジャンネッタ”に歯向かおうって言うの?笑わせてくれるわ!」

そのとき、”アディーナ”の両肩のハッチが開き、何かが飛び出しました。

びーっ

警告音と共に、”ジャンネッタ”のカメラが戸惑ったように明滅しました。

「なに!?ECMですって?しまった、照準が…」

”アディーナ”が出したのはECMでした。
これはACの電子機能を麻痺させ、レーダーを映らなくし、銃の狙いは定まらなくなります。

「フォーラちゃん、早く!」

フォーラさんが、負傷したテロリストをよろよろと背負って、”ジェムザール”のコクピットに運び込みます。
ああ、いそいで!

ズムッ

しかし、”ジェムザール”の前に黒い影が立ちふさがりました。
重装AC、”ドゥルカマーラ”です。

「あ…。」

その圧倒的威圧感を持つ巨人の目の前で、フォーラさんは息を呑みます。

「貴様ら。どこの者だ。我々がクレスト軍と知っての愚行か?」

ファイザー少佐のドスの利いた声が響きます。

「テロリストに加担するなら、同罪だ。容赦はしない。消えてもらおう。」

”ドゥルカマーラ”がバズーカ砲を”ジェムザール”に突きつけます。
ああ、もうだめです。
そこへ、”アディーナ”が飛び込みました。
バズーカの砲身に、まるでラグビー選手のようにタックルし、バズーカ砲を跳ね上げます。

「ぬ!?」

”ドゥルカマーラ”の振り上げたバズーカの砲身が、今度は”アディーナ”を横殴りに吹き飛ばしました。

「っ…!フォーラちゃん、逃げて!」

”ジェムザール”が地を蹴り、工場のむこうへ飛び上がります。

「逃がさないわ!」

ECMの妨害から回復した”ジャンネッタ”のキャノンが、轟然と火を噴きます。
大爆発と共に、閃光があたりを包みました。

その光と煙が消えた後には、”アディーナ”も”ジェムザール”も見えませんでした。
青い空ばかりが広がっています。


10/02/25 18:49更新 / YY
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まろやか投稿小説 Ver1.50