連載小説
[TOP][目次]
戦場
工房からは少し遠いウェルファーマシティーの郊外に煙が上がっています。
戦いはもう始まっていました。
工場跡地に立てこもるテロリストを、クレストの軍隊が攻撃しています。
武装したテロリストのMTがばたばたと倒れます。
クレスト軍の先頭で弾丸をばら撒いている、逆関節型のACがいます。コクピットを少し覗いてみましょう。

「ひゃははは!死ね!テロリストども!このクレストの紋所が目に入らぬかァ!!」

赤いモヒカンの痩せた男が絶好調で操縦桿を握っています。ずいぶんお得意ですね。
彼はアルサー=ロキくん。ACで戦う、クレスト軍の兵隊です。襟章を見たところ、あまり階級の高い兵隊ではないようです。

ピピピ

彼に通信が入ったようです。

『ロキ?突出しすぎ!友軍のMT部隊をお待ちなさい!』

ロキのコクピットのモニターに、ショートカットの金髪の女性が映りました。
リンダ=アルピニー准尉です。
ロキの上官で、少しきつめの目が、気の強い彼女の性格を物語っています。

「うへーい。アネゴ、了解です。」

ロキのAC”ヴィオラ”は前進をやめ、後退していくテロリストたちのMTに牽制のミサイルを撃ちながら、待機します。
その横に黒い四脚型のACが並びました。
アルピニー准尉のAC”ジャンネッタ”です。

『ロキ?ファイザー少佐より通達。友軍のMT部隊が追いつき次第、総攻撃をかけるわ。』

「がってんだ!」

ロキはやる気満々です。
やがて、2人のACの上に大型の輸送機が現れました。その下に複数取り付けられたクレスト軍のMTが次々に降りてきます。
土煙を上げて地面に降りたMTたちはゆっくりと前進を始めました。

『いくわよ!』

アルピニー准尉の号令で、AC”ジャンネッタ”、AC”ヴィオラ”、そしてたくさんのクレスト軍MTが、一斉に攻撃を始めました。
激しい攻撃に、テロリストたちのMTは散り散りです。

『よーし、いいか。一人たりとも生かすな。テロリストは全員処刑せよ。彼らにはそれだけの報いを受けてもらわねばならない。』

野太い声が響き、輸送機から一機の重装型のACが降りてきます。
ジャック=ファイザー少佐が乗る、AC”ドゥルカマーラ”です。
地響きを上げて着地したそのACは、テロリストの群れに向かって装備したバズーカ砲をゆっくりと構えました。

「へへっ、ファイザー少佐。わかってますよ。…進め!」

ロキのAC”ヴィオラ”はマシンガンを連射しながらテロリストを次々に倒していきます。
アルピニー准尉のAC”ジャンネッタ”も、装備した大口径のキャノンを轟音を上げながら発射します。
周りはたちまち火の海となり、テロリストたちはあっけなく壊滅してしまいました。

『上出来だ。だが、まだ少し残っているな。ロキ、止めをさせ。』

ファイザー少佐の通信が飛びます。

「がってんだぃ!」

ピ…

突然、ロキのACのレーダーに反応が現れました。2つです。

『何!?新手?』

アルピニー准尉も異変を感じたようです。

「ACと、MTか。識別信号はなし?民間機か?」

ロキが崩れかけた工場の上を仰ぐと、そこには青い軽装型ACと中破したMT”ギボン”が立っていました。
10/02/25 18:49更新 / YY
前へ 次へ

TOP | 目次

まろやか投稿小説 Ver1.50