連載小説
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地獄
フォーラたちが北の倉庫に入ると、そこには悪夢のような光景が広がっていました。

ぶっちがいになって倒れている、2機のランスポーター。

レックのランスポーターは両足をもがれ、その操縦席は激しく炎を上げていました。
エソファーのランスポーターは上半身を吹き飛ばされ、原型をとどめていません。
二人がもうこの世にいないことはあまりにも明らかでした。
残酷な事実。

「クレアさん!クレアさん!」

フォーラは半狂乱でクレアのギボンを探しました。

倉庫の入り口、シャッターの前。
クレアのギボンはそこにありました。

しかし、操縦席のキャノピーは割れ、機関部からは煙が上がっています。
左肩の子猫の絵は、真っ赤な血に染まっています。
操縦席には、忘れ物のようにブーツを履いた片足が残っていました。
レイヴンを志し、日々訓練を重ねていたクレア。
その願いは朝露のように、はかなく煙の中に消えました。

「ちくしょう!!」

デュオの叫び声もフォーラにはうつろに聞こえます。
フォーラにはこの光景が信じられませんでした。
全てが色を失い、くすんで見えます。

「デュオ、フォーラ!まだいるぞ!ACだ。」

煙の向こうに、無言で立つAC。真っ黒な機体。
その両手には、今しがた3人の命を奪ったばかりの大型のマシンガンが硝煙をあげていま
す。
そのカメラアイが鈍く光りました。フォーラたちに気がついたようです。
ACはゆっくりと振り向きました。
フォーラは全身がおこりの様に震えました。
絶対的な恐怖。

「いかん・・・!こいつはランカーだ!デュオ、フォーラ、逃げろ!こいつは俺が食い止
める!」
マーゲンのギボンが前に出ます。

「隊長!」

次の瞬間。
両手に構えたACのマシンガンが、マーゲンのギボンを貫きました。
あっというまでした。
マーゲン=アントルム。
陽気で子煩悩なこの男が最期に見たものは、奥さんと子供の笑顔だったのかもしれませ
ん。
機関部から紅蓮の炎を上げ、そのギボンは崩れ落ちました。
まるで石膏細工が崩れるように。

「あ・・・ああ・・・。」
フォーラはすくんで動けません。
ACがフォーラのランスポーターに向き直りました。
照準を示す、ACのカメラアイが鈍く光ります。
ACはゆっくりと両手のマシンガンを構えました。

「フォーラ!」

デュオのランスポーターが、ACの前に飛び出したように見えました。
激しい銃撃音、閃光。
フォーラはそのまま、なにもわからなくなりました。気を失ったのです。
10/02/25 12:56更新 / YY
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まろやか投稿小説 Ver1.50