連載小説
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ミッション
あくる日。朝日が昇るころ、ミラージュ社の倉庫「メッツェンバウム」に6機のMTが集合
していました。
5−FU警備隊です。ギボンが2機、ランスポーターが4機。ギボンの片方の肩には子猫の
絵が見えます。

フォーラはランスポーターの操縦席にいました。無線とともにモニターが灯ります。ギボ
ンのマーゲンからです。

「任務は、今日一日、この倉庫を警備すること。何かあればミラージュ側から民間遊撃隊
のACが派遣されることになっているが、気を抜かないように。
クレアとエソファー、レックは北側の倉庫を、俺とデュオとフォーラは南側の倉庫を責任もって
守ること。何かあればすぐに俺かクレアに連絡を入れろ。」

「はい!隊長!」
元気のいい返事は、ランスポーターのデュオです。彼は結局、昨日の夜はクレアのガレー
ジに泊まったようです。

「マーゲン隊長。何かあっても、ACの世話にはなりませんって。5−FUは強いんです
よ!」
と、調子がいいのは、ランスポーターのエソファー。

「各自、MTの整備はしてきただろうな?最後は自分の責任だぞ。」
そういうレックですが、彼は既に全員のMTの整備にチェックを入れており、大丈夫なこと
は確認済みです。

「では、全員、持ち場に着け。」
マーゲンの号令で、5−FUは二手に分かれました。
北の倉庫にはクレアのギボンとエソファー、レックのランスポーターが、
南の倉庫にはマーゲンのギボンとデュオ、フォーラのランスポーターが、それぞれ向かい
ます。

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点々と照明の灯る通路を通りながら、クレアのチームは話が弾んでいます。

「クレアさん、その肩の子猫の絵、かわいいっすね〜。クレアさんが描いたんですか?」
真っ先にクレアのギボンの肩に描かれた子猫の絵に気がついたエソファーは、そう聞かず
にはいられません。

「そんなわけないだろう。クレアの絵、見たことあんのか?ひどいぞ。幼稚園児のほうが
まだマシだぞ。」
そう言うレックも全く絵は描けないのですが。

「あはは。これはね、フォーラちゃんに描いてもらったの。いいでしょ。あたしがレイヴ
ンになったら、またフォーラちゃんにエンブレムを描いてもらうんだ。」
クレアはお得意です。

「レイヴンか〜。俺もがんばってみるかな・・・。」

「そうよ。MT乗りよりいいって。きっと。エソファーも頑張りなよ。」

そうこうするうちに、3機のMTは北側の倉庫に着いたようです。めいめい、出入り口を固
めます。

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集合場所から近い南側の倉庫には、もうマーゲン、デュオ、フォーラのMT3機が到着して
いました。

「まあ、まず何もないとは思うが、気は抜くなよ。特にデュオ、お前は気をつけろ。居眠
りは厳禁だ。」

「隊長・・・大丈夫です。昨日はしっかり寝てますから。」

「しっかりって・・ランスポーターの操縦席で寝てたんじゃない。風邪引かなかった?」

3機は倉庫の中央に集まり、待機します。
時間はゆっくりと流れていきます。
日はだんだん高くなり、窓の外には綺麗な紅葉の山々が見えています。
外では小鳥の声が聞こえます。
デュオのあくびも聞こえてきます。
フォーラもだんだん眠たくなってきました。

ああ・・・このまま何も起こりませんように・・。

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夕方。
日は西に傾き、空気はひんやりとしてきました。
晴れていた空にはいつの間にか雲がかかり、風が木の葉をまとって倉庫の窓を打ち付けて
います。

「・・・もうすぐ終わりの時間ですね。ああ・・はやくあったかいコーヒーが飲みたいで
す・・。」
フォーラはなんだかいやな予感がしていました。胸が締め付けられるような重苦しい感
じ・・・。
おねがい、早く時間が来て・・・。

突然、雑音交じりの通信が飛び込みました。
クレアとエソファーです!

「”・・・・!レック!レックが!いやぁぁぁ!!”」

「”・・・クレアさん!危ない!・・・マーゲン隊長!ACです!レックのランスポーター
がやられました!救援を!”」

フォーラの心臓は凍りつきました。

「行くぞ!デュオ、フォーラ!」
マーゲンの声はかすかに震えています。
マーゲンのギボンを先頭に、3機のMTは北の倉庫に向けて駆け出しました。
10/02/25 12:55更新 / YY
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まろやか投稿小説 Ver1.50