初陣
――――――(ここはどこだろう?)
頭がぼんやりして、なにも思い出せない。
ベッドに寝たまま、周りを見渡しても誰もおらず、ただ無機質な機械の音だけが部屋に響いている。
首筋や身体の色々なところに、妙な違和感を感じるが身動きができない。
「目が覚めたかね?」
部屋に入ってきた白衣の男がベットに寝ている少年に問いかける。
「………ッ!?」
少年は反射的に身構えようとするが、身体が動かないため、無理に力を入れようとした瞬間、全身がバラバラになるような感覚に顔をしかめる。
「あまり動かないほうがいい、君は本来とはだいぶ違う処置を受けてるからね。ともかく、おめでとう!!今日から君はリンクスだ。No.6………………
――――――「ッ!!!!」
エドガーは、飛び起きそれが夢だったことに気づく。
、
「またあの夢か…クソッたれ…」
ピ…ピピピ…ピピピ…ガチャッ
鳴り続いていた目覚ましのアラームを止め、ベットから起き上がり部屋の明かりをつける。
さっきまで見ていた夢を思い出しながら、煙草に火をつけ大きく息を吸うと、溜め息を吐くよう煙を吐きだした。
(全く、何度見てもイイ気分はしないな…あの頃の夢は)
そんなこと考えながら身支度をしていると、…コンコン とドアをノックする音が聞こえてきた。
「起きているかエドガー?そろそろ出発の時間だぞ」
「ああ、すぐに行く」
セレンの問いかけに答えつつ身支度を終わらせると、エドガーはセレンと共に事務所を後にした……
第2話 ラインアーク襲撃 前編
「…………以上が作戦の概要だ。 なにか質問は?」
ラインアークへ向かう輸送機の中で作戦の説明を終え、セレンが目の前の男に問いかける。
「質問というより、2つ確認だが…ホワイト・グリントは別の任務で不在、敵は通常戦力のみだけ、これに、間違いないな?」
エドガーは指を折りながら言った。
「ああ、間違いないよ…既にラインアークを発進したと企業連から連絡が入っている。どうした?不安なのか?」
「まぁ不安がないと訳ではないが…情報の再確認をな」
エドガーは、その問いに若干顔を強張らせながら答えた。
「? まぁいい、もうすぐ作戦領域だ。ネクストに搭乗して待機しておけ」
「ああ、了解した」
エドガーはコックピットに乗り込み、、目を閉じ大きく深呼吸をした。
彼は緊張していた。独立傭兵として初ミッションである。
その上、攻撃目標はラインアークである。あの【ホワイト・グリント】が本当に不在なのかどうか、
そして…それ以上に……
通常戦力と言っても、相手の機体には人間が乗っている…つまりこれから行うのは、人殺しである。
彼は、当然理解している。戦争ということは、殺し殺されるものであると…
武器を手にするということは、自分が撃たれる覚悟もあるということだと…
しかし彼は、割り切れずにいた。甘い…のかもしれない。自らの行為を肯定する理由がないからなのかもしれない。
−−−−−−(許されるのか? 自らの答えも出せていない俺に、誰かを殺すことが・・・)
ピピッ!!
「作戦領域に到着するぞ。戦闘準備」
セレンからの通信が入り、「戦闘準備」と言う言葉に即座に反応し、エドガーは頭の中で命令を下す…
<AMS統合制御体にリンク、システム…戦闘モードで起動、AMSフィードバックレベル、レベル7>
エドガーは静かに目を開けた。その瞳に先程までの緊張や迷いはないように見える。
「降下までカウント、…3…2…1…降下!!」
セレンの合図に合わせて、エドガーのネクスト[ストレイド]が空中に解き放たれる。それと同時にECM発生器をストレイドの降下先に投下する。
ストレイドは、数度ブースターを噴射し、姿勢を制御しながらゆっくりとラインアークへと架かる橋に着地する。
「ミッション開始。ラインアーク守備部隊を撃破する。……訓練通りやれば問題ない、落ち着いていけ」
セレンがミッションの開始を告げる。
「任務了解。目標を殲滅する…武器を手にしているんだ、自らが撃たれる覚悟も…あるのだろう…」
エドガーは自分を納得させるように呟くと、ストレイドをブーストでゆっくりと浮上させ、機体背面に装備されたオーバード・ブーストを起動する。
爆発的な推進力を得た機体は、瞬く間に音速を超え、目の前に展開していたMT部隊へと接近する。
ー−ーーーー「ECMだと?各機ただちに迎撃体制!!」
いち早く異変を察知したMT部隊の隊長機は、すぐさま味方に指示をだし、周囲を索敵する。
「「!!…てッ…敵機発見!!」」
何人かの味方が叫ぶ。
「全機迎撃しろ!!」
隊長機が叫ぶと、超音速で接近するストレイドを捕捉したMT部隊は、すぐさま迎撃を開始。相対速度も合わさり回避不能とも言える攻撃が、ストレイドへと襲い掛かる。
(よし!!)
MT部隊の隊長は命中を確信していた。高速で飛来したため、どんな敵かはわからないがこの距離と速度なら回避は不可能だ、そう思っていた……しかし、
超音速で迫る敵機は、肩から大きな光を放つ同時に横方向にすさまじい勢いでスライドする、そして迎撃弾の射線上から文字通り[消えた]のだ。
クイック・ブースト…「ノーマル」と呼ばれる従来のACと「ネクスト」の決定的な違いの1つ。コジマ技術を応用した大出力ジェネレーターから供給される膨大なエネルギーを利用し、噴射方向に瞬間的に機体を亜音速または超音速まで加速させるブースト機能である。これにより「ネクスト」は従来の兵器を遥かに凌駕する機動性を有している。
「「っな!?」」
驚愕するMTパイロット達。次の瞬間には自分たちを飛び越えながらライフルを構える敵機が見えた。
頭上から続けざまに発砲音がなると、次々とMTが爆発する。
「っち!!」
辛うじて被弾を免れた隊長機は、慌てて機体を旋回させる。その直後、視界がマズルフラッシュで染まる。…そこで彼の意識は途絶えた。
−−−−−−数分前のラインアーク管制室−−−−−−
「ホワイト・グリント発進しました。」
管制官がそう告げると、指揮官は内心に言い得ぬ不安を感じていた…
(先日のマザーウェル襲撃失敗以降は依頼のなかったオーメルからの急な依頼か…なにも起こらなければいいが…)
「レーダーに反応あり。大型の熱源反応接近!!数は1、ECMのため未確認機、識別できません!!」
レーダー監視員の言葉にに管制室が緊張に包まれる。
指揮官は嫌な予感を感じ、最悪の事態を想定して指示を出す。
「未確認機がネクストの場合を想定。ホワイト・グリントに連絡、防衛部隊は直ちに迎撃体制」
通信士に命令が下る。
なかなかに優れた判断力ではあったが…しかし、すぐさま状況は悪化する…
「味方MT部隊…第1小隊壊滅!! これはッ…コジマ粒子反応!?敵機はネクストです!!間違いありません!!」
瞬く間に消えた味方の反応と、ECMの範囲から出てきた敵の熱源反応を見て、レーダー監視員が絶叫ともとれる声で叫んだ。
「くそ!!ネクストだと!?直ちにノーマル部隊を増援に送れ!! それとホワイト・グリントに救援要請を、急げ!!」(よりにもよって、ホワイト・グリントが出撃した直後にネクストによる襲撃とは…クソ!!)
指揮官は内心で、自分の予想が当たったことに悪態を吐きつつ、即座に通信士に指示を飛ばす。
「ホワイト・グリント…フィオナさん聞こえますか!?こちらラインアーク管制室、敵ネクストによる襲撃を受けています!!至急救援を!!」
通信士が即座に救援を要請する。その横では別の通信士が、待機中のノーマル部隊に出撃命令を出している。
指揮官も、指示を続けざまに飛ばす。
「万が一の事態を想定して、外周区の民間人を中央区まで避難するように指示を出せ!」
先程までの緊張した空気は掻き消え管制室は、喧騒に包まれる。
そんな中、レーダー監視員が再び声をあげる。
「味方MT部隊…第2、第3…第4小隊シグナルロスト!!敵ネクスト、橋中央部のトンネルまで進行しています!!」
(馬鹿な…いくらネクストとはいえ、わずか十数秒で味方部隊の約半数が壊滅だと!?)
指揮官は、レーダー監視員の報告に戦慄した。
これまでにも何度かネクストの襲撃はあったが、ここまで圧倒的な力を見せつけられたのは今回が初めてだったのである……
「なんだ!?ほんとに当たっているのか!?」
「プライマル・アーマーだ!!まずはプライマル・アーマーを減衰させるんだ!!」
「くそ!!また視界から消えた…どこだ!?……ッヒ!?うぁぁぁあ…」
「増援は…増援はまだなのか!?」
回線が混乱してるのか味方部隊の通信が管制室に響き渡る。
「クソ!!」
ダンッ
指揮官は机を叩いた。
ノーマルを向かわせたがおそらく、このネクスト相手では通常戦力をいくら送っても無駄だろう…
指揮官は内心では、そう感じていた…
増援に向かったノーマル部隊の、最後の1機が撃破されると、絶望ともいえる空気が管制室を包み始める。
その時、ピピッ…1つの通信が入る。
「こちらホワ……グ…ント、まも…く到着し…す!!それまで……とか持ちこたえてください!!」
ノイズが混じってはいるが、凛とした女性の声が管制室の雰囲気を一変させた……
――――――――「敵反応の消滅を確認、機体損傷率2%、任務、完了した」
「敵戦力の殲滅を確認。よくやった、ほぼ完璧だ。だがあまり調子づくなよ?敵が弱すぎたのだからな…」
エドガーの報告を受け、セレンは釘を刺しながら心の中でつぶやく。
(増援を含めて2分かからないとは…いくら相手が通常戦力だとしても、この速さは異常だな…これは本物かもしれんな)
セレンは内心で笑みを浮かべながら、レーダーを見る。するとそこにはラインアークとは違う方向から高速で接近する1つの反応があった。
「ん…なんだ? これは…ネクスト反応だと!? …まさか!!!!」
最悪の事態がセレンの頭に浮かぶ…
全周波のオープン回線で、戦闘領域全体に男の声で通信が入る。
「こちらホワイト・グリント、まもなく救援に到着する」
第2話 ラインアーク襲撃 前編 完
頭がぼんやりして、なにも思い出せない。
ベッドに寝たまま、周りを見渡しても誰もおらず、ただ無機質な機械の音だけが部屋に響いている。
首筋や身体の色々なところに、妙な違和感を感じるが身動きができない。
「目が覚めたかね?」
部屋に入ってきた白衣の男がベットに寝ている少年に問いかける。
「………ッ!?」
少年は反射的に身構えようとするが、身体が動かないため、無理に力を入れようとした瞬間、全身がバラバラになるような感覚に顔をしかめる。
「あまり動かないほうがいい、君は本来とはだいぶ違う処置を受けてるからね。ともかく、おめでとう!!今日から君はリンクスだ。No.6………………
――――――「ッ!!!!」
エドガーは、飛び起きそれが夢だったことに気づく。
、
「またあの夢か…クソッたれ…」
ピ…ピピピ…ピピピ…ガチャッ
鳴り続いていた目覚ましのアラームを止め、ベットから起き上がり部屋の明かりをつける。
さっきまで見ていた夢を思い出しながら、煙草に火をつけ大きく息を吸うと、溜め息を吐くよう煙を吐きだした。
(全く、何度見てもイイ気分はしないな…あの頃の夢は)
そんなこと考えながら身支度をしていると、…コンコン とドアをノックする音が聞こえてきた。
「起きているかエドガー?そろそろ出発の時間だぞ」
「ああ、すぐに行く」
セレンの問いかけに答えつつ身支度を終わらせると、エドガーはセレンと共に事務所を後にした……
第2話 ラインアーク襲撃 前編
「…………以上が作戦の概要だ。 なにか質問は?」
ラインアークへ向かう輸送機の中で作戦の説明を終え、セレンが目の前の男に問いかける。
「質問というより、2つ確認だが…ホワイト・グリントは別の任務で不在、敵は通常戦力のみだけ、これに、間違いないな?」
エドガーは指を折りながら言った。
「ああ、間違いないよ…既にラインアークを発進したと企業連から連絡が入っている。どうした?不安なのか?」
「まぁ不安がないと訳ではないが…情報の再確認をな」
エドガーは、その問いに若干顔を強張らせながら答えた。
「? まぁいい、もうすぐ作戦領域だ。ネクストに搭乗して待機しておけ」
「ああ、了解した」
エドガーはコックピットに乗り込み、、目を閉じ大きく深呼吸をした。
彼は緊張していた。独立傭兵として初ミッションである。
その上、攻撃目標はラインアークである。あの【ホワイト・グリント】が本当に不在なのかどうか、
そして…それ以上に……
通常戦力と言っても、相手の機体には人間が乗っている…つまりこれから行うのは、人殺しである。
彼は、当然理解している。戦争ということは、殺し殺されるものであると…
武器を手にするということは、自分が撃たれる覚悟もあるということだと…
しかし彼は、割り切れずにいた。甘い…のかもしれない。自らの行為を肯定する理由がないからなのかもしれない。
−−−−−−(許されるのか? 自らの答えも出せていない俺に、誰かを殺すことが・・・)
ピピッ!!
「作戦領域に到着するぞ。戦闘準備」
セレンからの通信が入り、「戦闘準備」と言う言葉に即座に反応し、エドガーは頭の中で命令を下す…
<AMS統合制御体にリンク、システム…戦闘モードで起動、AMSフィードバックレベル、レベル7>
エドガーは静かに目を開けた。その瞳に先程までの緊張や迷いはないように見える。
「降下までカウント、…3…2…1…降下!!」
セレンの合図に合わせて、エドガーのネクスト[ストレイド]が空中に解き放たれる。それと同時にECM発生器をストレイドの降下先に投下する。
ストレイドは、数度ブースターを噴射し、姿勢を制御しながらゆっくりとラインアークへと架かる橋に着地する。
「ミッション開始。ラインアーク守備部隊を撃破する。……訓練通りやれば問題ない、落ち着いていけ」
セレンがミッションの開始を告げる。
「任務了解。目標を殲滅する…武器を手にしているんだ、自らが撃たれる覚悟も…あるのだろう…」
エドガーは自分を納得させるように呟くと、ストレイドをブーストでゆっくりと浮上させ、機体背面に装備されたオーバード・ブーストを起動する。
爆発的な推進力を得た機体は、瞬く間に音速を超え、目の前に展開していたMT部隊へと接近する。
ー−ーーーー「ECMだと?各機ただちに迎撃体制!!」
いち早く異変を察知したMT部隊の隊長機は、すぐさま味方に指示をだし、周囲を索敵する。
「「!!…てッ…敵機発見!!」」
何人かの味方が叫ぶ。
「全機迎撃しろ!!」
隊長機が叫ぶと、超音速で接近するストレイドを捕捉したMT部隊は、すぐさま迎撃を開始。相対速度も合わさり回避不能とも言える攻撃が、ストレイドへと襲い掛かる。
(よし!!)
MT部隊の隊長は命中を確信していた。高速で飛来したため、どんな敵かはわからないがこの距離と速度なら回避は不可能だ、そう思っていた……しかし、
超音速で迫る敵機は、肩から大きな光を放つ同時に横方向にすさまじい勢いでスライドする、そして迎撃弾の射線上から文字通り[消えた]のだ。
クイック・ブースト…「ノーマル」と呼ばれる従来のACと「ネクスト」の決定的な違いの1つ。コジマ技術を応用した大出力ジェネレーターから供給される膨大なエネルギーを利用し、噴射方向に瞬間的に機体を亜音速または超音速まで加速させるブースト機能である。これにより「ネクスト」は従来の兵器を遥かに凌駕する機動性を有している。
「「っな!?」」
驚愕するMTパイロット達。次の瞬間には自分たちを飛び越えながらライフルを構える敵機が見えた。
頭上から続けざまに発砲音がなると、次々とMTが爆発する。
「っち!!」
辛うじて被弾を免れた隊長機は、慌てて機体を旋回させる。その直後、視界がマズルフラッシュで染まる。…そこで彼の意識は途絶えた。
−−−−−−数分前のラインアーク管制室−−−−−−
「ホワイト・グリント発進しました。」
管制官がそう告げると、指揮官は内心に言い得ぬ不安を感じていた…
(先日のマザーウェル襲撃失敗以降は依頼のなかったオーメルからの急な依頼か…なにも起こらなければいいが…)
「レーダーに反応あり。大型の熱源反応接近!!数は1、ECMのため未確認機、識別できません!!」
レーダー監視員の言葉にに管制室が緊張に包まれる。
指揮官は嫌な予感を感じ、最悪の事態を想定して指示を出す。
「未確認機がネクストの場合を想定。ホワイト・グリントに連絡、防衛部隊は直ちに迎撃体制」
通信士に命令が下る。
なかなかに優れた判断力ではあったが…しかし、すぐさま状況は悪化する…
「味方MT部隊…第1小隊壊滅!! これはッ…コジマ粒子反応!?敵機はネクストです!!間違いありません!!」
瞬く間に消えた味方の反応と、ECMの範囲から出てきた敵の熱源反応を見て、レーダー監視員が絶叫ともとれる声で叫んだ。
「くそ!!ネクストだと!?直ちにノーマル部隊を増援に送れ!! それとホワイト・グリントに救援要請を、急げ!!」(よりにもよって、ホワイト・グリントが出撃した直後にネクストによる襲撃とは…クソ!!)
指揮官は内心で、自分の予想が当たったことに悪態を吐きつつ、即座に通信士に指示を飛ばす。
「ホワイト・グリント…フィオナさん聞こえますか!?こちらラインアーク管制室、敵ネクストによる襲撃を受けています!!至急救援を!!」
通信士が即座に救援を要請する。その横では別の通信士が、待機中のノーマル部隊に出撃命令を出している。
指揮官も、指示を続けざまに飛ばす。
「万が一の事態を想定して、外周区の民間人を中央区まで避難するように指示を出せ!」
先程までの緊張した空気は掻き消え管制室は、喧騒に包まれる。
そんな中、レーダー監視員が再び声をあげる。
「味方MT部隊…第2、第3…第4小隊シグナルロスト!!敵ネクスト、橋中央部のトンネルまで進行しています!!」
(馬鹿な…いくらネクストとはいえ、わずか十数秒で味方部隊の約半数が壊滅だと!?)
指揮官は、レーダー監視員の報告に戦慄した。
これまでにも何度かネクストの襲撃はあったが、ここまで圧倒的な力を見せつけられたのは今回が初めてだったのである……
「なんだ!?ほんとに当たっているのか!?」
「プライマル・アーマーだ!!まずはプライマル・アーマーを減衰させるんだ!!」
「くそ!!また視界から消えた…どこだ!?……ッヒ!?うぁぁぁあ…」
「増援は…増援はまだなのか!?」
回線が混乱してるのか味方部隊の通信が管制室に響き渡る。
「クソ!!」
ダンッ
指揮官は机を叩いた。
ノーマルを向かわせたがおそらく、このネクスト相手では通常戦力をいくら送っても無駄だろう…
指揮官は内心では、そう感じていた…
増援に向かったノーマル部隊の、最後の1機が撃破されると、絶望ともいえる空気が管制室を包み始める。
その時、ピピッ…1つの通信が入る。
「こちらホワ……グ…ント、まも…く到着し…す!!それまで……とか持ちこたえてください!!」
ノイズが混じってはいるが、凛とした女性の声が管制室の雰囲気を一変させた……
――――――――「敵反応の消滅を確認、機体損傷率2%、任務、完了した」
「敵戦力の殲滅を確認。よくやった、ほぼ完璧だ。だがあまり調子づくなよ?敵が弱すぎたのだからな…」
エドガーの報告を受け、セレンは釘を刺しながら心の中でつぶやく。
(増援を含めて2分かからないとは…いくら相手が通常戦力だとしても、この速さは異常だな…これは本物かもしれんな)
セレンは内心で笑みを浮かべながら、レーダーを見る。するとそこにはラインアークとは違う方向から高速で接近する1つの反応があった。
「ん…なんだ? これは…ネクスト反応だと!? …まさか!!!!」
最悪の事態がセレンの頭に浮かぶ…
全周波のオープン回線で、戦闘領域全体に男の声で通信が入る。
「こちらホワイト・グリント、まもなく救援に到着する」
第2話 ラインアーク襲撃 前編 完
11/02/16 11:18更新 / 自由人