連載小説
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Gore Woolf show  第3話
茜色の夕日が部屋を照らす。少々豪勢ながらも小綺麗に配置された調度品。
壁にはオーメルのロゴが描かれた大きな旗が貼り付けてある。

その部屋に、二人の男が向かい合って座っていた。片方はきっちりとしたスーツを着、胸にはオーメルの社章を付けていた。無論、この男が部屋の持ち主であることは明白だった。

一方もう片方はソファーにふんぞり返り、足をテーブルに乗せ、気味の悪い笑みをうかべていた。白い服に、首輪のような金属製の輪を装着し、手は二重の電子手錠によって拘束され、その出で立ちは囚人のようだった。


「で、また極秘の任務かい、所長さんよ」


囚人風な男、カスパルは所長と呼んだ人間を面白そうに見ている。一方、所長と呼ばれた男は不機嫌そうにソファーから立ち、カスパルに背を向ける。


「すでに聞いていると思うが、我々がBFFより購入しようとした油田施設の制圧だ」


なんでもオーメルは、化石燃料採掘のための施設と土地をBFFから買い取ろうとしたのだが、互いの要求が食い違い、結局交渉決裂となってしまったのだ……


「BFF(チキンハンター)のバックにはGAがいるだろうが。何でまた、んな強硬手段に」


そう、BFFは現在GAの庇護を受けている。下手すれば全面戦争は避けられないというのに、あえて実力行使に踏み切る理由。


「無論、そんな無謀なこと本社は許さないだろう。だがね、その油田施設にはちょっとした問題があってな」

「ふぅん、興味あるねぇ」

「BFFは一部の油田施設の存在をGAに隠していてな、そのうちの一つが、今回目標になる施設、というわけだ」

「つまり隠してるんなら、無理矢理奪っても泣きを見るのはあいつらってか」


カスパルは歪んだ笑みを表す頬を、一層つり上げる。
しかし彼は確信していた、ただの施設制圧のための援護だけなら、自分という存在を使うはずがないと。


「でよお、そろそろ本題に入ってくれねぇか。聞いてる方は疲れるんだよ」


少しも動じた風もなく所長は革張りの椅子に腰を下ろす。そして睨むように薄ら笑いを浮かべる男を見やり、軽く鼻で笑う。


「相変わらず貴様は最後まで聞かない人間だな」


所長は不満を漏らすが、カスパルは動じた風はない。相変わらずの表情にさらに機嫌を悪くしたのか、一層表情が険しくなる


「貴様にはBFFに対する示威行動として『間引き』をお願いしたい」

「どれくらい暴れればいいんだ?」

「それに関しては一任するよ。命令があるまではな」



――――――…………


ロッカールームのベンチの上で、カスパルは急に顔を上げる。
しばらくしない内にしばしの仮眠に入っていたのだろう。今だ眠そうな目だが、血に餓えた獣のような眼光は全く衰えていない。

すると不意に機内スピーカーが起動する。


『リンクス、緊急の要請です。ローゼンタール管轄の兵器工場が、BFFの機動部隊に奇襲を受けた模様。シャトルの空中給油、および弾薬補給後、直ちに救援に向かえとのことです』

「バーロー、なんで他人のケツに着いた火を、こっちが消さなきゃならねーんだよ」


しかし所詮ただのスピーカー、彼の言葉は届くはずもなく、お構いなしに詳しい内容が報告されていく


「部隊構成は詳細不明。ただしネクストクラスは2機確認。ローゼンタール側からもネクストが派遣されるそうですが、到着時刻不明。追って知らせますので、第1種警戒待機を発令」


そしてスピーカーから声が途絶え、ロッカールームには低いうなり声をあげるエンジン音だけが響く。


「しっちめんどくせぇが、2機か……殺せるなら数なんざどーでもいいわな。キキキ」


どう猛な獣の嗤い声と共に、部屋のドアは閉じた。
10/02/26 23:08更新 / 厚着
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まろやか投稿小説 Ver1.50