連載小説
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トンネル内部制圧 修正完了
 広々とした空間を四機のACが駆け巡る。
内一機、ヴァーナイトは一度逃がした間に、背部にガトリングガンを移設、両腕をレーザー型デュアルブレードへと乾燥していた。
 ヴァーナイトのデュアルブレードの連続斬撃をグラインドブーストで回避するナストロファージ。
ブーストダッシュで下がりながらダブルトリガーで牽制しつつ、もう一機の様子を窺う。
 「中々早いんだな、判断が」
ナストロファージの味方機、四脚のスカルフォックスはバズーカを当てれずに苦戦していた。
相手はヴァーナイトと同じ重量逆関節のACだ。
マシンガンを当てては上へ横へと視界の外へ飛び出す。
その度にオーバードブーストやグラインドブーストで強引に視界を広くするために下がっているのだが、その相手、オールスカイ相手にはスカルフォックスは機動力が低い。
 『シャドーミラ、合流出来るか?』
『無理だ』
『了解』
 短く返したエグの目の前に、デュアルブレードを構えたヴァーナイトの姿が現れた。
「幾ら近付こうが、此処は俺の距離だ!!」
そう言ってショックライフルを発砲、オーバードブーストを発動し、推力発生する前にグラインドブーストで急上昇する。
 ショックライフルを至近距離で食らったヴァーナイトの左肩が吹き飛び、電流漏れが発生する。
 「―気合入れて物資流通部の連中が取り戻してくれたショックライフルだ。
他のショックライフルとは比べ物にならない威力だろう!!」
言いながら蹴り上げる。
同時にオーバードブーストの推力が発生、ヴァーナイトの頭部が舞い上がる。
『敵頭部破損、敵右腕破損』
CPUが続け様にヴァーナイトの損傷状態を報告する。
 オーバードブーストを停止、マシンガンを乱発し、再発動。
推力発生前にオールスカイへと旋回し、直後に加速を得る。
突然意図しない方向から放たれたマシンガンに連続被弾したオールスカイが慌てて回避しようとした所を、スカルフォックスがバズーカを直撃させ、着地こそ出来たが、短い間硬直してしまう。
 オールスカイにショックライフルを直撃させてメインブースターとオーバードブースト機構へラッキーショットを当てながら、オーバードブーストの莫大な推力で、自らへ接近しようとしていたヴァーナイトの真横へ滑り込みながらダブルトリガーを連続で直撃させるエグの操るナストロファージ。
 「場数が違うな、お前とは」
短いエネルギーゲージを傍目で見つつ、言いながら残弾数を確認する。
(右50、左40)
素早く残弾率を確認して再集中する。
 (右か)
感で動きを予想しつつ、左へグラインドブースト。
視界へ出たヴァーナイトだが、ナストロファージもヴァーナイトの死角に入っていた。
 『右腕残弾30%、左腕残弾10%』
残弾警告音声が流れる。
 勢いの乗った機体の重さによる激しい摩擦が火花として現れ、凄まじい音量の金属音を轟かせる。
 早々に旋回し終えたナストロファージがグラインドブーストで距離を詰めつつマシンガンを掃射する。
対するヴァーナイトはグランドブーストで距離を取ろうと下がりながら、ガトリングガンをダブルトリガー発射する。
 二つの弾幕が交差し、互いの間に床が穴だらけになる。
 「随分と良い動きだな、こいつ」
右にグランドブースト、一秒間だけペダルを踏み込む。
揺さぶられると同時にオーバードブーストを発動、グラインドブーストの推力が切れかかった瞬間、機体が猛スピードで敵へ接近し始める。
一瞬の内に斜線が外された為、ヴァーナイトが放つ弾丸が、完全に明後日の方向へ飛び去る。
 「ふうん…」
エレンが随一送る情報を確認しつつ、ショックライフルを発射する。
『左腕残弾10%』
 (ふうん、こいつ等意外にACやノーマルは居ない。
が、部隊として質が良くて、こっちが苦戦中か。
こいつらの動きだ、納得は出来る。
 或いは雇われなのか…)
何にせよ、企業のアリーナならトップになる事は容易いだろう。
(それ以外にも、この覇気。
多分、戦闘力だけが取り柄って訳じゃなさそうだ。
このカリスマ性、此処で狩っておかないと、自分の首を切りそうだ)
 直撃、肩の装甲が弾け跳ぶ。
『敵コア損傷、敵左腕破損』
 (色々壊れて情報関係に明確な低下が出ている。
距離を開ければ命中率の差で食えるが、こいつの速さは危険だな)
ロックオン性能が頭部の破損によって大幅に低下した為か、先程から命中率が酷く低い。
 「跳んだ所を潜るか」
相手は逆関節。
攻撃しているが、その驚異的跳躍力により本当に当て難い。
同時に空中で良くグラインドブーストするので、ロックオンの腕が無いと容易に外されてしまうであろう事は明らかである。
 しかし、ジャンプ中は一定の動きが無い。
空中で旋回するのは可能だ。
だが、跳び上がった直後は流石に無理があるらしい。
 ―敵AC、跳躍時に行動開始―
 ―行動内容、敵ACの真下を高速で通過―
 ―実行するための最善な方法を検索―
 ―該当行動を実行する為、必要なシステムをロード―
 ―システム、ロード完了―
 ―敵ACの行動情報収集に移行―
 ―該当挙動、及びそれに伴う事前挙動発生を監視―
「この機能を使うのは久しぶりだが、相変わらず支配し易い事だ」
ニィっと狩猟的笑みを浮かべる。
 そして反応。
 ―該当挙動確認!!―
「ッッ!!!!!」
半ば無意識の内に発動させていたオーバードブーストを実行した機体を制御するエグ。
距離100になった瞬間、オーバードブーストを停止、その直前から既にドリフトを開始している。
「悪いが薬の芽は紡がせてもらう」
 至近距離、加えてほぼ真後ろからのダブルトリガー攻撃にメインブースターとオーバードブースト機構を破壊されるヴァーナイト。
損傷負荷が規定数を超えて爆発と火災が連鎖して起こり始める。
 更に行動を続ける。
「ナストロファージ、敵機撃破。
続けてスカルフォックスの援護、及び敵AC撃破に向かう」


 残骸だらけのトンネル。
未だ交戦が続く区域に両部隊が集結しつつあった。
ロシア勢力機と思われる新型人型兵器はサイズの小ささを活かした回避効率によって損害を抑えようと壁に隠れたりしている。
一方の大和側はディスクガンを乱射して相手に攻撃の隙を与えない様にしている。
 互いに譲らぬ戦況となっているが、それは其処だけではなかった。
お互い回り込もうとしていた部隊同士が鉢合わせし、余計に戦場が拡大してしまったのだ。
 MT第一部隊の重装甲型逆関節MTがローラーの走行音を響かせながらロケット砲を発射する。
直撃した小型兵器が爆散し、続くノーロック発射されたクラスター弾頭搭載型ミサイルが広範囲を爆発させて、敵に動揺を齎した。
 瞬時に躍り出た軽量な人型MTがパルスガンを連射、一気に殲滅に掛かる。
 次いで敵増援が右の通路から現れる。
――違った、企業部隊のMTだ。
それも重タンク型の機体だ。
平たいタンク脚部、分厚いシールド、巨大なガトリング砲。
『下がれ下がれ、やべぇのが来た』
『企業部隊かよ』
両部隊を攻撃し出す企業部隊。
『何故急に!?』
此方のオペレートに専念し始めて居たエレンが驚愕の声を漏らす。
 『その声、エレンだな?』
不自然に一機のMTの攻撃が、ロシア側に集中し始めた。
『何処へ行ったかと思えば、その様な穢れた連中と…』
嘲笑うかの様な声音。
 『バレーナ社の社長…』
『流石に私を父とは呼ばんか。
私も、そのつもりだったが……。
 それよりも、奴は如何した。
お前を唆して、一緒に出て行ったろ』
『…』
エグの事だ、と察するエレン。
 「エレン、誰なんだ?」
ケティーナが険しい表情で訊ねる。
「……父…だった人です」
「…」
 人型MT、そのパルスガンが第一MT部隊へ向けられる。
『其処に居るのか、エレン』
 答えたのは隊員だった。
「俺達のオペレーターなら、トラックだ。
…用があるなら俺達が伝言してやるよ、糞爺!!」
向けられるガトリングガン。
 向かおうとする社長機。
だが援護しようとしたのかついて来ようとする僚機を、社長機の頭部のモノアイが睨みつけた。
『私一人で良い。
貴様等は私の邪魔をする愚か者共を排除しろ』
言いながらブーストダッシュする社長の人型MT。
『了解』
若干渋る様に言う部下。
 それに対し、副部隊長が面白い物を見つけたとばかりに叫ぶ。
「っはあっ!!
社長自らがお相手たぁねぇっ!!
 野郎共、爺の覇気に圧されてんじゃねェ!!
総員、目標前方の糞MT!!
全力で掛かれ、戦術忘れんじゃねぇぞ!!」
力強い返事が一斉に返って来る。
 最初に攻撃し出したのは重火力系の高機動ホバーMTだった。
ショットガンとパルスガンを乱射、数機で攻撃する。
これを回避している敵へ重逆関節型がミサイルを発射し、動きを殺す。
 が、敵MT、エクステンション・ブースターの推力で無理矢理脱出する。
気づいた頃にはホバー型が蹴られて数発のパルスにより炎上していた。
 着地する寸前に再度噴射、慣性を活かして重逆関節型MTの真上を取る。
「MTかよ、マジで!?」
言いながらフロントブースターを最大噴射。
もう一機がガトリングガンを掃射して援護する。
 「ふん、高性能とは言え、高々素人のMT一機倒せんのか」
『てめぇの何処が素人だ!?
嫌味か、ボケェッッ!!』
 脚部の補助ブースターで姿勢を制御しながら重逆関節型MTがミサイルを発射する。
 『お前達だよ、鈍重』
ブースターで高度を保ち、エクステンション・ブースターで急接近する。
「だから何だよ、その加速力!!」
左モニターを見て叫ぶも、言葉の最中にはメインモニター上方、言い終える頃には右モニター情報を睨んでいた。
 着地と同時に前後逆にエクステンション・ブースターを噴射、パルスガンを連射する。
 「うわ!?」
内部が火災し、操縦装置の一部が爆発する。
 『あいつ一瞬で重量級を大破させやがった!?
――ぐううう!!』
嫌な予感。
従い、左へ回避するも間に合わず右腕部が爆発する。
『2番機、後退する…!!』
悔しさに塗れる声音。
(こんな奴に、隊長の奥さん一人護れやしねぇだと!?
糞、糞っ、糞糞糞、糞ったれがあああああああああ!!!!!!)
 そんな悔しさ等知らぬ社長のMTが急接近する。
「――!!!
誰も守れない奴は死ねってかああああ!!!!」
操縦桿を激しく操作、左腕部のシールドを叩き付ける。
 「ぬう!?」
これには社長も驚いた様だ。
大型の鉄鋼型パイルを叩き込もうとした所を見事に弾かれたからだろう。
 「うわあああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
絶叫しながらフルブースト、シールドでタックルする。
「こ、こやつ!?」
 何とか姿勢を立ち直らせる為、ブーストペダルを踏む社長。
しかしパルスガンを撃とうにも、今度はシールドで横殴りにされる。
 『社長、下がって下さい。
機体の損傷が!!』
「今は問題ないが…。
ええい、下がろうか…ッッ!!」
 副隊長機を援護しようと集団で攻撃して来る第一MT部隊の機体へパルスガンで牽制しつつ指示する。
『援護しろ、私は下がる』
『了解!!』
 『…中々手痛いじゃないか、貴様らの反撃とやらも…』
 バレーナの部隊が撤退し、少し遅れて他の企業部隊も撤退を開始する。
『…全企業部隊、撤退します。
ロシア勢力部隊、既に反応ありません』
 『釈然としないな』
オペレートするエレンの後ろから聞こえたケティーナの言葉は、彼らを落ち着かせるに値する物だった。
 敵が居ないなら、此処に居る意味は無い。
『第一MT部隊、撤退しトラックへ戻って下さい。
2番機、4番機の損傷が特に酷いです。
 それから損傷率の低い機体は炎上した5番機、7番機の回収を。
生体シグナル、危険域ですが続いています』
『此方3番機。
脚部のダメージが酷い。
他の奴らも歩行するにはきついダメージだ。
ダメージランプの点灯状況は?』
 訊かれてキーボードを操作するエレン。
「ええ、確認。
内部火災のランプも確認したわ。
少し下がって、応急処置した後トラックで一次修理するわ。
二次修理は作戦状況が終了になり次第ね」
『了解だ』
 キーボードを操作、エグとシャドーミラへのオペレートを再開する。
「!?」
「ば、馬鹿な…!?」
画面に映っていたのは、赤い二脚のACだった。
ビリヤードのナインのエンブレム、三連パルス、ライフル、グレネードキャノンと、高火力な武器ばかりの機体である。
 慌ててダメージランプを確認する。

ナストロファージ
右腕部;損傷大
左腕部;破損
頭部;損傷中
脚部;損傷大
コア;損傷大

スカルフォックス
右腕部;破損
左腕部;損傷小
頭部;破損
脚部;破損
コア;損傷大

 急いでキーボードを操作する。
「余裕のある機体は!!」
『急に何だ?
今一次修理が始まったばかりだ』
「二人が…ナストロファージとスカルフォックスが苦戦してるの。
損傷が酷い、お願い!!」
 「エレン、落ち着け!」
後ろからケティーナが制する。
「オペレーターなんだ、気を保て」
「けど!!」

 ――パン!

頬を打つ。
「けどもへったくれもあるか!!
作戦中だ、落ち着けと言ってるんだ!」
「…」
 「もう良い、俺に代われ」
「でも「早くしろ」…」
エレンの言葉に言葉を被せて強引に後退させる。
 キーボードを操作して、ヘッドセットを装着する。
「此方ケティーナ。
聞こえるな?」
『さっきの一部始終もな。
 それは良い、こいつは何なんだ?
さっきの二機と次元が違い過ぎる!
2対1なのに、何だ俺達の損傷率の高さは!?
強過ぎる!』
「あれは使ったか?」
『現在進行形で。
でも駄目だ、追い付かない!!
 ――っち、ショックライフルをパージした。
 ――ぬぐあ!? …左腕が諸に吹っ飛んじまった…ッッッ!!』
 「スカルフォックスと通信出来ない。
断絶状態と表示されている」
『あいつは頭部が破壊されてから、ずっとだ。
管制機構に副通信装置があると言っていたが…』
「ランプ表示も赤いだ、故障している可能性も高い。
 兎に角、撤退しろ。
  …Bブロックに、もう一人レイヴンが作戦行動中だ。
俺から応援要請を掛けてみる。
お前は出来るだけスカルフォックスと一緒に居ろ。
出来れば二人で合流もして欲しいが、絶望的なのは分かっている」
『重々承知だ。
 ―――わぐ、脚にグレネードが!!』

脚部;破損

 状況は最悪だ。
(これじゃ…あの世にロケットで突っ込む様な物だ…!!)
脳内の『機能』へ再アクセスする。

              ―敵機撃破方法検索―

              ………………………………。

                ―アクセス不能―

(なっ!?)
能力使用不可能。
その動揺は計り知れなかった。
 『エグ、避けろ!!』
「!?――しまっ―――――――――――――」
衝撃だ。
蹴られた。
 転倒した機体を立たせようと操縦桿を握る手に力を入れた瞬間、軽い衝撃が走った。
「こいつ!!」

                   ドォン…!!
13/06/14 19:57更新 /
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■作者メッセージ
 バレーナ社長専用軽量人型MT『アルダ』。
エクステンション・ブースターはバレーナの開発中のパーツで、前後のクイックブーストとクイックターンを可能にするクイックブースターなる物。
角度次第では宙返りも出来る。

 バレーナ社現社長
残念ながら今話での本名公開はありませんでした。

 名前被り
現在執筆中の別作品『エグ・エルード』。
このタイトル、完全に本作主人公の名前ですが、現在エグの登場予定はありません。
 この報告に際して、もう一点。
オリジナル起点なる物が存在しております。
これは作者脳内に構想中の物で、これをモデルにする事で現在投稿中の作品の世界観が構築されています。
内、エグ・エルードは非常に近い世界観ですが、主人公、及び周辺登場人物のメイン層が学生の為、ストーリー自体は大きく変わっています。
 登場人物の近さはレイヴンロードの方が上手ですが、此方はアーマード・コア二次創作の為、世界観は違い、オリジナル起点の場合『4系の国家解体戦争前の世界が国家解体戦争が起きないまま続いている世界』と考えた方が情勢的には近いです。
しかし術業の概念が有ったりエルフやドワーフ、異世界の存在等のファンタジー要素も多く、人型兵器『ランガス』の各国軍の格納庫の整備班の中に妖精が混じっていたり、整備長がドワーフだったりとカオスな世界観です。
異世界同士の国家の首脳等が行き来する等、一部の国家間のみの魔道技術による極秘存在もありますが、エグ・エルードは色々な意味で、それを小スケールに纏めた物です。


 オリジナル起点の登場人物を紹介しようと思いましたが、後書き部分が長すぎる為、他の所へ持って来ようと思います。
 
 ―執筆欲40%―
脳内の人1「ええい、如何にか回復せん物か…」
脳内の人2「無理です、何処を如何しようが補充しようがありません」
1「とは言え、これ以上停止しては…」
2「別に快進撃しなくて良いと思いますよ?」
1「むぅ…」

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まろやか投稿小説 Ver1.50