鉄の塊
穏やかな朝だった。木の葉の合間から漏れる暖かな日差しを身体に浴び、思いっきり背伸びをしてベッドから起きた。いつの間にか眠っていたらしいが、しっかり布団を掛けて貰った様子をみると、僕はユリに一つ借りができたみたいだ。時刻は何時かわからないが太陽の位置からして遅く起きたわけでもなさそうだった。
「んーっと、ご飯作ろうかな……」
キッチンに行き包丁を持ったとこで止まった。
「ユリ……?何を持ってきたんだ?」
そこには籠いっぱいの色とりどりの野菜。
ユリは、おいしょっと重かったであろうその籠をリビンングにまで持って降ろし、腕で額の汗を拭う真似をした。
「重かったんだよ?ほら、美味しそうな野菜!」
ユリは目をキラキラさせて見つめてきた。
包丁を落としそうになるのを何とか耐えて、そのどう考えても2人では食べきれない量の野菜を指差し、素朴な疑問を聞いた。
「1人でとってきたの?」
「うん」
当たり前のように頷く。
「2人で食べ切れる?」
「この位余裕だよ」
ソーヤ男の子だし、と後から言う。
「どこでとってきたの?」
「向こうのビニールハウスの中から」
普通なら泥棒なのだが、荒廃したこの世界においてそれは意味をなさなかった。
僕は半ば諦めながらその籠を受け取った。
「大丈夫だよ、ノープロブレム!」
親指を立ててグッと突き出して来るユリに毎日サラダを出すはめになったのは言うまでもない。
あんなに晴れていたのに空は薄暗くどんよりと灰色に覆われていた。それはまるでこの先行きに不安を抱いていた僕の心から溢れてきたようだった。
小走りにユリが外に駆け出して行く、僕は慌ててユリに後を追いかけた。
「ユリ?!ま、待って!どこ行くの?!」
ユリは足が速い、まるで獣の様に走るユリを追いかけた。辿り着いた場所は、ユリと初めて会話をしたあの丘だった。
「ユリ、待って、よ……」
ユリは丘の下をじっと見ている、睨みつけている。
「ユリ……?」
僕はユリの視線の先に目を向けた。
「……!!?」
堪らず息を飲んだ。そこには20~30の鉄の塊が並んでいた。その様はまるで軍隊見たいだった。鉄の塊をしたそれは人型のものや戦車みたいなもの、四足型など様々な形をしていた。
ユリがゆっくりと寄り添ってきた。髪から香るシャンプーとお日様の香りが鼻をくすぐる。僕はそっとユリの肩を抱き寄せた。とても軽くて今にも消えてしまいそうな、そんな淡い気持ちと共に抱き寄せた。
ユリが口を開いた。
「アレはMT、無人型から有人型まであるの。貴方たちがかかっているその病は彼らが起こしているの……信じられないかも知れないけど、彼らは皆、火星人」
不思議と驚かなかった。ユリに口から出る言葉に嘘はないと感じたからだ。
「ソーヤ……貴方には戦って貰わなくてはならない。……ごめんなさい。」
ユリの頭にそっと手をのせ、優しく頭を撫でた。
「良いんだ、きっとこれも運命だから。何か手段はあるのか?」
ユリは一瞬顔を俯かせたが、直ぐにもどり遠くを見つめ言った。
「ある。貴方にはACのパイロットになって貰うの。勿論、貴方がパイロットの経験者でない事は知ってるし、ACはそんなに簡単に動かせない。」
それではどうするのだろう、練習する時間なんてなさそうだが。
僕が思案していると、ユリが手を重ねてきた。
「私も一緒に乗るから、本来ならACは1人しか搭乗できないの。でも、アレは特別なの……」
どこかユリの表情が晴れなかった、そしてユリの思い口が開いた。
「ソーヤはこれから3日間眠って貰うから。」
驚く暇もなく、上腕からの微細な痛みを感じるとそれっきり感覚がスッと抜けていった。
「ごめんね、ソーヤ……」
最後に聞こえたのはユリの哀しげな声だけだった。
「んーっと、ご飯作ろうかな……」
キッチンに行き包丁を持ったとこで止まった。
「ユリ……?何を持ってきたんだ?」
そこには籠いっぱいの色とりどりの野菜。
ユリは、おいしょっと重かったであろうその籠をリビンングにまで持って降ろし、腕で額の汗を拭う真似をした。
「重かったんだよ?ほら、美味しそうな野菜!」
ユリは目をキラキラさせて見つめてきた。
包丁を落としそうになるのを何とか耐えて、そのどう考えても2人では食べきれない量の野菜を指差し、素朴な疑問を聞いた。
「1人でとってきたの?」
「うん」
当たり前のように頷く。
「2人で食べ切れる?」
「この位余裕だよ」
ソーヤ男の子だし、と後から言う。
「どこでとってきたの?」
「向こうのビニールハウスの中から」
普通なら泥棒なのだが、荒廃したこの世界においてそれは意味をなさなかった。
僕は半ば諦めながらその籠を受け取った。
「大丈夫だよ、ノープロブレム!」
親指を立ててグッと突き出して来るユリに毎日サラダを出すはめになったのは言うまでもない。
あんなに晴れていたのに空は薄暗くどんよりと灰色に覆われていた。それはまるでこの先行きに不安を抱いていた僕の心から溢れてきたようだった。
小走りにユリが外に駆け出して行く、僕は慌ててユリに後を追いかけた。
「ユリ?!ま、待って!どこ行くの?!」
ユリは足が速い、まるで獣の様に走るユリを追いかけた。辿り着いた場所は、ユリと初めて会話をしたあの丘だった。
「ユリ、待って、よ……」
ユリは丘の下をじっと見ている、睨みつけている。
「ユリ……?」
僕はユリの視線の先に目を向けた。
「……!!?」
堪らず息を飲んだ。そこには20~30の鉄の塊が並んでいた。その様はまるで軍隊見たいだった。鉄の塊をしたそれは人型のものや戦車みたいなもの、四足型など様々な形をしていた。
ユリがゆっくりと寄り添ってきた。髪から香るシャンプーとお日様の香りが鼻をくすぐる。僕はそっとユリの肩を抱き寄せた。とても軽くて今にも消えてしまいそうな、そんな淡い気持ちと共に抱き寄せた。
ユリが口を開いた。
「アレはMT、無人型から有人型まであるの。貴方たちがかかっているその病は彼らが起こしているの……信じられないかも知れないけど、彼らは皆、火星人」
不思議と驚かなかった。ユリに口から出る言葉に嘘はないと感じたからだ。
「ソーヤ……貴方には戦って貰わなくてはならない。……ごめんなさい。」
ユリの頭にそっと手をのせ、優しく頭を撫でた。
「良いんだ、きっとこれも運命だから。何か手段はあるのか?」
ユリは一瞬顔を俯かせたが、直ぐにもどり遠くを見つめ言った。
「ある。貴方にはACのパイロットになって貰うの。勿論、貴方がパイロットの経験者でない事は知ってるし、ACはそんなに簡単に動かせない。」
それではどうするのだろう、練習する時間なんてなさそうだが。
僕が思案していると、ユリが手を重ねてきた。
「私も一緒に乗るから、本来ならACは1人しか搭乗できないの。でも、アレは特別なの……」
どこかユリの表情が晴れなかった、そしてユリの思い口が開いた。
「ソーヤはこれから3日間眠って貰うから。」
驚く暇もなく、上腕からの微細な痛みを感じるとそれっきり感覚がスッと抜けていった。
「ごめんね、ソーヤ……」
最後に聞こえたのはユリの哀しげな声だけだった。
13/03/27 16:23更新 / 田中かなた