台風

 正しくは颱風と書きますが、この字は滅多にお目にかかれません。IME辞書では颱風という単語は登録されていないので今回は俗字の方を使います。
 台風というものは大変に大きな力を持っていまして、そのパワーは毎年日本にやってくる標準的な規模の台風でも、広島型原子爆弾の約10万個分というとんでもないエネルギーになります。地震と比べるならば、M8以上の最大規模の地震と比べてもその数万倍に匹敵します。はふぅ。
 もっとも、我々が被害を受けるのは地表数百メートル前後における台風だけで、あとはせいぜい空路に影響が出る程度ですから、このパワーを、なるほど地球最強クラスのパワーだなぁと実感することはあまりないと思います。むしろ、台風の数万分の一のパワーしかなくとも、地表にあって一瞬でそのパワーの直撃を受ける地震の方がよっぽど怖いわけです。地震雷火事親父ってね。 
 
 さてこの台風、英語で“typhoon”(タイフーン)といいますが、この語源は御存知でしょうか。
 そもそもこの台風という言葉自体、語源がtyphoonであり、古来日本では台風のことを“野分”と呼んでいました。英語が日本語になった例は他にもいくつかあります。例えば浪漫という漢字は漱石があてたといわれています。また冗句というのもjokeが語源です。逆に日本語が英語になった例はないかというと、例えばjukuという単語が英語辞典に出ています。また、大物・将軍を意味するtycoonは日本語の大君が語源です。他にもChina(中国)も中国の旧称“支那”からきています。一方Japanはマルコ・ポーロが日本をジパングと呼んだ(“日本国”を中国語読みすると、“リーベングォ”になる)ことに由来するからどっちもどっちの話です。
 
 では英語のtyphoonの語は何が語源かというと、ギリシア神話の怪物テュフォン(Typhon)に由来するそうです。テュフォンは主神ゼウスとの戦いに敗れてエトナ山の下に封印されましたが、その後も火山や蒸気を起こすとされました。台風の猛威を見た西洋人がギリシア神話最強の魔物を思い浮かべたのはごく自然なことでした。
 なお、病気のチフス(Typhus)もこのテュフォンが語源です。

追記 typhoonの語源については、広東語の大風(タイフン)を語源とする説もあります。