ちんぷんかんぷん

 私が学生の頃(法学部)、憲法のテキストは「西の佐藤、東の芦部」と言われ、学生のほとんどがこの二人の本のいずれか(あるいは両方)を持っていました。しかし、佐藤教授のテキストは難しく、「一読して難解、二読して不可解、三読して誤解する」と言われていました。特に、この先生は別名「佐藤語」とさえ呼ばれるオリジナルの造語を多用することでも知られ、「憲法の解読書」であるはずのこの先生のテキストの解読書が大手出版社から出たほどでした。聞くところによると、このテキストしかなかったかつての司法試験受験生は泣きながら勉強していたそうです。
 これほど難しい本でも双璧とされたのは、中級以上の人や波長の合う人に言わせると「これほどよくできたテキストは存在しない」からだそうです。しかし私みたいな低レベルの学生にとってはやっぱり佐藤教授のテキストはチンプンカンプンなのです。

 このチンプンカンプンという言葉、「わけ分からん」という意味で使いますが、この言葉の由来も諸説あります。その一つが「听不憧、看不憧」(ティンプードン、カンプードン)という中国語に由来するというもの。意味は「聞いて分からん、見て分からん」

 なお、「大言海」に、陳紛漢の文字をあてて、オランダ人の言葉が分からなかったことから「紅毛人の詞のまねびなり」(紅毛人とはオランダ人のこと)との記述があります。