昆布のだし

 よく、昆布のだしが海水に出てしまうことはないのか、という疑問をかける人がいます。昆布がたくさん生えているところの海水はだしが効いていてうまいのだろうか、と。

 まぁ、海水を舐めてみれば分かると思いますが、昆布のだしが海水に出てしまうということはありません。これはあなたが熱い風呂に長時間浸かっていても体の脂肪がお湯に溶け出してガラスープになったりしないのと同じです。

 昆布のだしはアミノ酸の一種で、人間サマに食べてもらうためにあるのではなく昆布が生存していくために必要なものです。したがって昆布が生きている間はこれが外部に漏れない仕組みになっているのです。

 では死んだ昆布がたくさん浮いているところではだしが出ているか、というとそんなこともありません。確かに死んだ昆布からはだしが出ているのですが、昆布のだしは人間でなくてもおいしいらしく、昆布に付着しているバクテリアがこれを食べてしまうのです。そこでバクテリアを死滅させるためにしばらく天日で干してやる必要があるのです。そうやってライバルがいなくなって初めて人間はうまいだし食べられるのです。