位階って皆さんどこまで知っているでしょうか。一、十、百、千、万、億、兆。ここまでは小学校で習うから知らないと恥ずかしいレベルですね。この次の京(けい)はまあ、知る人ぞ知るってとこでしょうか。
でもこの先は天文学でもやってなきゃ知らない、使わない、文字通りの「天文学的数字」で、普通の人生送ってればたぶん一生縁がありません。順に垓(がい)、禾予(これで一文字。「のぎへん」に「予」で「じょ」)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、正(せい)、載(さい)となり、ここから先は天文学をさらに越えて仏教用語。極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由多(なゆた)、不可思議、無量大数となります。なお、載の位までは1載、10載、100載、1000載、1極ですが、極から先は、10000000極(一千万極)の次の位が1恒河沙になります。
因みに地球から観測可能な最大距離は200億光年ですが(宇宙の膨張速度から計算される理論値。これ以上はハッブルだろうかワッフルだろうが天体望遠鏡の性能如何に関わらず観測不能)、これをミクロンで表現すると、1光年=30万×60×60×24×365×100億μなので、200億光年とは、 1,892,160,000,000,000,000,000,000,000,000,000(18溝9216穣)μとなるので、天文学でもこの辺の数字はそうそう使いません。
さらに、1000万無量大数をアラビア表記すると、 100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000(1096)となります。もう、分けわかんないですね。
今度は逆行ってみましょう。小さい方はどうなっているのかというと、一(いち)、分(ぶ)、厘(りん)、毫(もう)、絲(し)、忽(こつ)、微(び)、繊(せん)、沙(しゃ)、塵(じん)、埃(あい)、渺(びょう)、漠(ばく)、模糊(もこ)、逡巡(しゅんじゅん)、須臾(しゅゆ)、瞬息(しゅんそく)、弾指(だんし)、刹那(せつな)、六徳(りっとく)、虚(きょ)、空(くう)、清(せい)、浄(じょう)となっています。
1浄をアラビア表記すると、0.00000000000000000000001になります。ところで野球好きの方なら「10分の1は割ではないか」、と思った人は多いでしょう。実はこれは実際の数字を現すためのものなのです。例えば10の2乗を百と表記するのと同じなのです。したがって打率のように割合を表すときは分の前に「割」を入れ、以下繰り下げになります。
…さて、以上は塵劫記という江戸時代の書に出てくるものです。この塵劫記、実は小学校の教材のコラムに出てきます。いえ、嘘じゃありません。私が塵劫記を知ったのが小学校の夏休み用ドリルのコラムだったんですから。何より、“無量大数”なんて、ちょっと雑学に詳しい人なら知っていて当然というか、自慢するのがちょっと恥ずかしいレベルであります。…ということは無量大数は当サイトにおける雑学の定義にあたらないということになります。
おやおや、困りましたね。では自慢できるレベルの数というものをお教えいたしましょう。以下は“大方広仏華厳経”という仏教の経典に出てくるもので、塵劫記とは異なるものです。洛叉、倶胝、阿ユ多、那由多、頻波羅、矜羯羅、阿伽羅、最勝、摩婆羅、阿婆羅、多婆羅、界分、普摩、禰摩、阿婆ケン、弥伽婆、毘ラ伽、毘伽婆、僧羯邏摩、毘薩羅、毘贍婆、毘盛伽 、毘素陀、毘婆訶、毘薄底、毘キャ擔、称量、一持、異路、顛倒、三末耶、毘睹羅、奚婆羅、伺察、周広、高出、最妙、泥羅婆、訶理婆、一動、訶理蒲、訶理三、奚魯伽、達ラ歩陀、訶魯那、摩魯陀、懺慕陀、エイラ陀、摩魯摩、調伏、リ離慢、不動、極量、阿麼怛羅、勃麼怛羅、伽麼怛羅、那麼怛羅、奚麼怛羅、ベイ麼怛羅、鉢羅麼怛羅、尸婆麼怛羅、翳羅、薜羅、諦羅、偈羅、ソ歩羅、泥羅、計羅、細羅、睥羅、謎羅、娑ラ荼、謎魯陀、契魯陀、摩睹羅、娑母羅、阿野娑、迦麼羅、摩伽婆、阿怛羅、醯魯耶、薜魯婆、羯羅波、訶婆婆、毘婆羅、那婆羅、摩ラ羅、娑婆羅、迷ラ普、者麼羅、駄麼羅、鉢ラ麼陀、毘迦摩、烏波跋多、演説、無尽、出生、無我、阿畔多、青蓮華、鉢頭摩、僧祇、趣、至、阿僧祇、阿僧祇転、無量、無量転、無辺、無辺転、無等、無等転、不可数、不可数転、不可称、不可称転、不可思、不可思転、不可量、不可量転、不可説、不可説転、不可説不可説、不可説不可説転となっております。読みははっきり言って分かりません。カタカナは漢字変換できないので、多分こういう読みだろう、えいや、ということです。
さて、これはもうそれぞれどういう数なのか、一つ一つ説明するのは面倒なので、どうやって増えていくかだけ説明します。最初の洛叉は105です。その次、倶胝は107、阿ユ多は107×2、那由多は107×22、頻波羅は107×23、矜羯羅107×24、阿伽羅107×25…と2の乗数が一つずつ増えていき、最後の不可説不可説転は107×2122、つまり1037218383881977644441306597687849648128…というすさまじい数になります。先の1千万無量大数など、1の後ろに続く0はたかだか96個でした。不可説不可説転の場合、0の数が37澗2183溝8388穣1977禾予6444垓4130京6597兆6878億4964万8128個…あぁもうどうでもいいや、というレベルです。ここまで憶えたら、ちょっと自慢できるどころじゃないですよ…。