暴帝ネロは
ローマの大火を見ながらヴァイオリンを弾いた


 

 これも有名な嘘。内容は自身の記念碑として新都市を築くのを神殿に邪魔されたのを怒ったネロがローマに火を放たせ、それを見ながらヴァイオリンを弾いたというもの。

 まず、ローマ大火の西暦64年、そもそもヴァイオリンは発明されておらず、16世紀になってからである。そのため、ここはリラあるいはリュートに変更された。この時点ですでにマユツバ。

 さらに、大火のときネロ80キロ離れたアンティウムにおり、放火を教唆したという証拠は何もない。それどころか、大火の報を聞いたネロはあわてて都にとって返し、消火に全力を尽くしているほか、罹災者の収容、食糧の配給などをしている。さらに大火の後も市街の復興や耐火建築・防火設備の整備に尽力している。悪名高きネロらしからぬ行動である。もっともこれは、大火を自分の責任とする風説がたったのを回避するためのものであり、大火の犯人としてキリスト教徒を大虐殺しているあたり、大変にネロらしい。彼にこのような汚名が着せられたのは、ひとえに日頃の行いによるものであろう。合掌