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拙著『マイナンバーは監視の番号 ─ 徹底批判まやかしの共通番号制度 ─』の表紙写真です。「本書の目次」にリンクしています。


共通番号制度に関する質問と回答

凡例〔 〕内は引用者註


2012年10月29日

内閣官房 社会保障改革担当室様

やぶれっ!住基ネット市民行動
代表 〔名前省略〕〔註1〕

共通番号制度に関する質問書

2月14日「番号法案」(「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」等3法案)が国会に提出され、住基ネットを基礎とした共通番号制度の導入が計画されています。私たちは、住基ネットを国民総背番号制につながるものとして、住民基本台帳法「改正」時より導入に反対してきました。政府は、住基ネットはデータマッチングを行わないなど利用を制限しており国民総背番号制度ではない、と説明してきましたが、今回の番号制度はこの私たちの危惧を現実のものにしようとしています。

番号制度については1970年代から検討されてきましたが、多くの反対をうけて導入には至っていません。今回の共通番号制度に対しても、導入の本質にかかわる疑問が出されていますが、それに答えないまま導入が進められています。

法案審議にあたり以下の点は最低限明らかにすべきだと考えますので、ご回答ください。

平成24年11月12日

やぶれっ!住基ネット市民行動
代表 〔名前省略〕 様

内閣官房 社会保障改革担当室

「共通番号制度に関する質問書」への回答について

2012年10月29日付でいただきました「共通番号制度に関する質問書」 につきまして、下記のとおり回答いたします。

回答書 表題部分

1.何のための番号制度か。法の目的

1)

「社会保障・税に関わる番号制度」として説明されてきたが、番号法の目的(第1条)では、番号の識別機能を活用した国民情報管理の効率化しか書かれておらず、何にでも使える番号制度になっている。なぜ目的に「税と社会保障に使う」ということが入っていないのか。番号の使用目的が明確でなければ、何が目的外利用になるのかも不明確であり、個人情報保護は空洞化する。

【質問事項1】

1)

マイナンバー法案においては、マイナンバーの利用範囲を第6条及び別表第一に具体的に規定することで社会保障、税、防災に関する事務等に限定するとともに、その利用に当たって基本とすべき事項を定めた第3条において、社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資することを旨として利用することを明記しており、第1条の目的規定と第3条の理念規定とが相まって番号制度の趣旨・目的を明らかとしているところです。

回答書 質問事項1 1)

【コメント】

尋ねているのは第1条「法の目的」の内容であり、「利用範囲」ではありません。回答書 質問事項1 2)で認めているように第3条は「理念規定」(番号の利用の基本)であって、「法の目的」ではありません。回答はこの点をあいまいにして、「法の目的」が社会保障と税に限定していないことをごまかそうとしています。

なお、回答書 質問事項2の後段①では、「法の目的」として「効率的な情報の管理・利用等」および「国民の行政手続きにおける負担軽減や簡易な本人確認の実現」の2項目を挙げるのみです。

2)

番号制度は「主権者たる国民の視点に立った番号制度」(「基本方針」「大綱」副題)と強調されてきたが、法の目的(第1条)では、国民については手続きの簡素化による負担軽減と本人確認の簡易な手段しか述べられていない。なぜ「国民の権利を守る」ということが目的に入っていないのか。

2)

1)でお答えしたとおり、マイナンバー法案においては、第1条の目的規定と第3条の理念規定とが相まって番号制度の趣旨・目的を明らかとしており、第3条の理念規定において掲げられている事項が、大綱の「国民の視点」「国民の権利を守る」といった観点を具体化したものとなっていると考えています。なお、特に、マイナンバーの利用等により、個人の権利が侵害されることがないように、特定個人情報の保護については、第1条において「個人番号その他の特定個人情報の取扱いが適正に行われるよう行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律…(中略)…の特例を定めることを目的とする。」と規定されており、特定個人情報の保護が目的の1つとして明記されています。この目的規定に基づき、マイナンバー法案においては、個人番号付きの個人情報の取扱いに関して、一般法である個人情報保護法制の適用を前提としつつ、個人番号付きの個人情報の提供・利用の制限の厳格化や罰則の強化などの独自の規制を設けています。

このように、国民の権利を守るための厳格な措置を第1条の目的規定に基づいて具体的に講ずることにより、一般法である個人情報保護法制における措置とマイナンバー法における厳格な措置とが相まって、制度全体として個人情報保護に万全を期す仕組みとしているところです。

回答書 質問事項1 2)

【コメント】

あいまいな回答に終始しています。事実上「国民の権利を守る」ことが法の目的ではないことを認めた回答だと受け取れます。

3)

政府総務省は住基カードを「公的な身分証明書」だと宣伝してきたが、なぜそれとは別の「本人確認の簡易な手段」として個人番号カードを新たにつくる必要があるのか。住基カードは自治事務だったが、なぜ個人番号カードの交付は国の事務(法定受託事務)にするのか。

3)

成りすまし犯罪等を防止する観点から、対面やオンラインでの手続の際の本人確認手段として個人番号カードを交付することとしています。今後、社会保障、税、防災の分野での行政サービスにおいて個人番号を確認し、本人確認を行う場面が増加することを勘案し、番号制度に必要不可欠なインフラとして、個人番号カードの交付事務は、法定受託事務としたところです。

なお、個人番号カードは、現行の住民基本台帳カードを廃止した上で、その機能を個人番号カードが引き継ぐことになります。

回答書 質問事項1 3)

【コメント】

全く説明になっていません。

2.憲法違反ではないのか

番号制度の導入にあたっては、住基ネット違憲訴訟の最高裁判決(最判平成20年3月6日)の趣旨を十分踏まえるとされてきた。しかしこの最高裁判決は住基ネットを「データマッチングが行われていない」「秘匿性の低い本人確認情報のみを扱う」「行政機関が利用し民間利用されていない」「個人情報を一元的に管理することができる機関・主体は存在しない」と判断しての判決である。今回の番号制度はデータマッチングを目的とし、広汎なプライバシー情報の提供が予定され、民間利用が想定され、あらゆる個人情報の相互提供を管理する情報提供ネットワークシステムの創設が前提となっている。最高裁判決に到底耐えうるものではなく違憲ではないか。

【質問事項2】

住基ネット違憲訴訟における最高裁判決は、①住基ネットによる本人確認情報の管理・利用等が法令等の根拠に基づき住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われていること、及びイ.本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険がないこと、ロ.本人確認情報の目的外利用や秘密の漏えい等が懲戒処分や刑罰で禁止されていること、ハ.本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じていることにより、②本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているとはいえないことを主たる理由として、住基ネットを合憲と判断したものと解されます。

マイナンバー法案においても、①その目的は効率的な情報の管理・利用等及び国民の行政手続きにおける負担軽減や簡易な本人確認の実現であり、マイナンバーは正当な行政目的の範囲内で利用されることとされています。また、イ.情報連携に当たって暗号化処理等のシステム上のセキュリティ対策が講じられ、漏えいの具体的な危険を排除する仕組みとしているほか、ロ.情報漏えいや情報の不正利用に対しては現行の個人情報保護法より強度の罰則を科すこととしております。さらに、ハ.マイナンバーを利用する行政機関等を監視・監督する独立性の担保された三条委員会形式の個人番号情報保護委員会を設置するとすることで情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置も行っているところですので、②情報が法令等の根拠に基づかず又は正当な行政目的の範囲を逸脱して開示・公表される具体的な危険は生じておらず、マイナンバー制度は上記住基ネット判決の判断に反する違憲なものではないと考えます。

回答書 質問事項2

【コメント】

後段の①に示す「効率的な情報の管理・利用等」および「国民の行政手続きにおける負担軽減や簡易な本人確認の実現」が法の目的であり、「マイナンバーは〔その〕正当な行政目的の範囲内で利用される」、すなわち、それらを目的として行政が利用する限り、たとえ秘匿性の高い個人情報をデータマッチングしようとも、それは目的内利用だとしています。

3.なぜ「大綱」から利用事務が大幅に拡大したのか

1)

「社会保障・税番号大綱」で予定されていた利用事務は年金・医療・介護保険・福祉・労働保険・税務・その他(災害、条例利用)で、利用内容も申請・請求や受給の際の本人確認や、税では法定調書への番号の記載や賦課徴収事務だった。しかし今回の番号法の利用事務(別表一)では、事務の範囲が公衆衛生や学校関係、公営住宅の管理事務など93事務に広がり、事務の内容も費用徴収、認定・入所入院措置のような権力行政、患者・対象者管理にまで広がっている。拡大した理由はなにか。

【質問事項3】

1)

マイナンバー制度は、より公平な社会保障制度や税制の基盤となるものであり、その利用範囲については、「社会保障・税番号大綱」に基づき、社会保障(年金、医療、介護保険、福祉、労働保険)・税務(国税、地方税)・その他の分野を念頭に置きつつ、低所得者支援の観点から、就学支援、公営住宅の入居等の事務についても一部利用範囲に含めたところです。

具体的な事務の詳細については今後主務省令で定めることとしていますが、費用徴収、認定・入所入院措置のような御指摘の事務については、所得要件や他の社会保障給付との併給調整の有無等の確認を行う事務を想定しているところです。

回答書 質問事項3 1)

【コメント】

費用徴収、認定・入所入院措置は、低所得者支援に限らず、他の観点からも行われる事務です。

2)

番号法案ではプライバシーに深く関わり差別的扱いの原因となるおそれのある「障害」、母子、生活保護・失業、疾病・要介護などが情報提供ネットワークを通して提供される事務に追加され(別表二)、住基ネットでは提供されない世帯情報も含めて情報共有されることになっている。「社会保障・税番号大綱」では機微性の高い個人情報のやり取りはあらかじめ本人同意を得る(20頁)とされているが、これらのセンシティプ〔センシティブ〕情報の提供では本人同意を得るのか。どのような方法で同意を得るのか。

2)

マイナンバー法案別表第二に掲げるそれぞれの特定個人情報は、現時点では「社会保障・税番号大綱」第2の5.(4)の本人同意が必要な機微性の高い個人情報に該当するものとは想定していません。

回答書 質問事項3 2)

【コメント】

「障害」、母子、生活保護・失業、疾病・要介護などの個人情報は、機微性が高くないから本人同意なしに公開しても構わないという回答です。

4.所得・資産の把握は可能か

所得捕捉を前提とした「給付付き税額控除」の実現のためにはマイナンバーが必須であると説明されているが、所得の捕捉が完全にできないことを「大綱」ですら認めており、金融資産についてマイナンバーは関与しないことになっている。不完全な所得把握や財産把握抜きで、公平な給付などありえないのではないか。

【質問事項4】

マイナンバー法案とともに国会に提出中のマイナンバー法整備法案において、税制上の措置として、まず現行税制を前提に、全ての法定調書、確定申告書等にマイナンバーの記載を求める等の措置を講ずることとしています。株式に係る配当や譲渡代金は、基本的には法定調書の対象とされており、これにより、税務当局がマイナンバーを用いて、法定調書の情報と確定申告書等の情報を名寄せ・突合ができることから、現状に比して所得把握の適正化・効率化に資するものと考えています。

なお、給付付き税額控除の制度設計に当たっては、所得把握のあり方等執行面での対応可能性を含め、様々な論点について総合的に検討されるものと考えています。

回答書 質問事項4

【コメント】

「現状に比して所得把握…に資する」と述べるに留まり、完全な所得捕捉という前提に至っていないことを事実上、認めた回答だと受け取れます。

5.各種社会保障の自己負担額の合計に上限を定める総合合算制度について

1)

低所得者対策として負担軽減を目的とした総合合算制度が番号制度導入理由の一つとされているが、総合合算制度は検討がはじまったばかりであり、低所得者対策としての必要性や実現の可能性、財源など課題が多く実施は不明である。その段階で、なぜ番号制度の導入を先行させるのか。

【質問事項5】

1)

社会保障・税番号制度は、より公平な社会保障制度や税制の基盤であり、情報化社会のインフラとして国民の利便性の向上や行政の効率化に資するものであるため、その早期導入が必要と考えています。

回答書 質問事項5 1)

【コメント】

「早期導入が必要」と述べるだけで、説明になっていません。

2)

総合合算制度については、負担軽減に反して、個人・世帯単位で給付の上限を設定する抑制策や負担に応じた給付など「社会保障個人会計」に利用されるおそれがあることは、政府の担当者もリレーシンポで認めている。むしろ今後社会保障費は削減の方向が打ち出されており、負担軽減より給付抑制や負担増に利用される可能性が高い。なぜ目的に反した利用の危険性のある総合合算制度の導入が必要なのか。

2)

総合合算制度は、低所得者に配慮する観点から、番号制度の本格的な稼働及び定着を前提に、関連する社会保障制度の見直し及び所得控除の抜本的な整理と併せて導入を検討することとされています。

さらに、導入にあたっては、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討することとされています。

回答書 質問事項5 2)

【コメント】

総合合算制度については、先に番号制度を稼働・定着させてから考えると述べるだけで、給付抑制や負担増の危険性については答えていません。

6.住民登録がない人、住民登録地と異なるところに住んでいる人への対応

番号制度は「国民が国や地方公共団体等のサービスを利用するための必要不可欠な手段」(「大綱」6頁)とされている。この番号制度は住基ネットが前提となっている(番号の住民票コードからの生成、情報連携のための住基ネットからの基本4情報提供、住基カードに準じた個人番号カードの配布等)ため、住民登録のない人はサービスが利用できないおそれがある。

番号制度は「真に手を差し伸べるべき者」への福祉充実に役立つと説明されてきたが、住基ネットを前提としているために、むしろ困窮している住民登録をできない人は排除され、住所地と異なるところで生活せざるをえない人へのサービス提供に支障が生じる。これらの人にどのように番号制度で対応しようとしているのか。

【質問事項6】

社会保障・税番号制度は、その導入により、現状で適法に行政サービスを利用している方々が行政サービスの提供を受けられなくなるものではありません。番号制度を導入することで、行政機関において住民一人ひとりの置かれた状況をより正確、確実に把握することにより、きめ細やかな行政サービスを実現できるようになると考えています。

御指摘の住民登録のない人に対する行政サービスの提供の在り方については、番号制度の導入の是非とは切り離して個別具体的な事例に即して解決していくべき問題であると認識しています。

回答書 質問事項6

【コメント】

前段の「住民」とは、「適法に住民登録している住民」を前提にしている点に注意が必要です。

後段の住民登録がない人、住民登録地と異なるところに住んでいる人への対応については、うち(内閣官房)の管轄ではない、と番号制度のなかで解決する気が全くない他人任せの回答です。

7.情報連携の仕組みと原則

1)

情報連携基盤(情報提供ネットワークシステム)の仕組みについては、さまざま案が検討されている状態である。どのようなシステムになるのか明らかにされていない状態では、法案によって個人情報が保護されるのか検討ができない。システムの仕組みが明確になってから法案を審議すべきではないか。

【質問事項7】

1)

情報提供ネットワークシステムにおいて実現する機能についてはこれまでの議論で明らかにされており、法制上の観点から必要となる保護措置について、法案の中に盛り込んでいるところです。

情報提供ネットワークシステムの機能の具体的な実装方式については、技術的な観点から様々な方式が考えられるところであり、設計・開発に係るシステム調達において、提案された方式の中から技術面、コスト面、セキュリティ面を含めて総合的に検討した上でどの方式を採用するかを最終的に決定していくことを考えています。

回答書 質問事項7 1)

【コメント】

システムの具体的な実装方式が決まっていないことを認めた回答です。

2)

「大綱」では、個人情報保護のために住基ネット最高裁判決をふまえ「見える番号」として使われる「番号(マイナンバー)」を情報連携に使うことを禁じ(17頁 42頁)、それとは別の情報連携のための「符号」を用いるとしてきた。しかし番号法案では、第2条7で「番号(マイナンバー)」と「符号」をあわせて「個人番号」と定義し区別していない。なぜ番号法案で、情報連携に「番号(マイナンバー)」を使わないということを明記していないのか。

2)

マイナンバー法案においては、情報連携のために用いる「符号」についても、個人番号と同様に保護する必要性があることから、定義において「個人番号」に含めることで、個人番号の取扱いに係るマイナンバー法上の各種規制の対象としていますが、情報連携のための情報提供ネットワークシステムのシステム上の機能要件や実装方式については法律事項ではなく技術的事項であるため、マイナンバー法案には明記しておりません。

回答書 質問事項7 2)

【コメント】

どのようなシステムをどのような方式で作るのかは、法律で決めるべき事項ではなく、技術的に決めるべき事項なので、法律に明記しなくても問題ないという回答です。

8.捜査情報への利用

1)

番号法案第17条第11号で、刑事事件の捜査等に「番号」を含む個人情報を提供できるとなっている。多くの自治体の個人情報保護条例では、原則として外部提供を禁止しつつ「提供について法令に定めがある場合」は例外的に提供を認めることとしているが、刑事訴訟法第197条出入国管理及び難民認定法第28条の「捜査関係事項照会」を受けた行政機関にとって、この第17条は「法令に定めがある場合」の根拠となるか。

【質問事項8】

1)

マイナンバー法第17条は、特定個人情報〔註2〕の提供禁止の例外を各号に列挙した場合に限定しており、個人情報保護条例等における個人情報の提供禁止の例外である「法令に定めがある場合」よりも厳格に制限しています。そして、法律は条例に優先して適用されることから、特定個人情報について照会(提供の依頼)を受けた行政機関は、マイナンバー法第17条各号に規定された例外に該当する場合に限り特定個人情報を提供することができます。

しかるところ、刑事訴訟法第197条の規定に基づく「捜査関係事項照会」は、マイナンバー法第17条11号「刑事事件の捜査」に該当するためこれに応じて特定個人情報を回答(提供)することは可能ですが、出入国管理及び難民認定法28条の規定に基づく照会は、「刑事事件の捜査」ではないため、これを根拠として特定個人情報を回答(提供)することはできません(これに対し、特定個人情報でない個人情報については、出入国管理及び難民認定法第28条の規定が個人情報保護条例の「法令に定めがある場合」に該当すると考えられるため、回答(提供)できると考えられます。)。

回答書 質問事項8 1)

【コメント】

回答は、刑事訴訟法第197条の規定に基づく「捜査関係事項照会」が、番号法案第17条第11号「刑事事件の捜査」に該当するため、これに応じて「番号」を含む特定個人情報の提供が可能だと認めています。

2)

刑事事件の捜査等に提供された個人情報の利用状況は本人開示の対象にならず(行政機関個人情報保護法第14条)、第三者機関(個人番号情報保護委員会)のチェックの対象外とされ(番号法案第48条)、警察や入国管理局等に提供された後「番号」によってどのようにデータマッチングされても国民は知ることができない。「社会保障・税番号大綱」では番号制度により「様々な個人情報が、本人の意思による取捨選択と無関係に名寄せされ、結合されると、・・・表現の自由といった権利の行使についても抑制的にならざるを得ず(萎縮効果)、民主主義の危機をも招くおそれがあるとの意見があることも看過してはならない」(15頁)と指摘しているが、このような刑事事件捜査等への提供を認めて、国民に生じる「国家管理への懸念」は解消されると考えるか。

2)

例えば、特定個人情報を漏えいしたマイナンバー法違反の刑事事件の捜査において、証拠たる特定個人情報を捜査機関に提出することは不可欠です。他方で、捜査のために提供された特定個人情報は目的外利用が禁止され、当該刑事事件の捜査に必要な限度でのみ利用できます(マイナンバー法6条5項)。

また、個人番号情報保護委員会の権限の対象外ではありますが、刑事訴訟法等において押収物(特定個人情報)に対する保護措置、救済手段等が定められており、例えば、留置の必要のない押収物(特定個人情報)は還付が義務づけられ、還付に関する処分について司法機関たる裁判所への不服申立てが認められるなどしています。

したがって、個人情報の国家管理への懸念はあたらないと考えられます。

回答書 質問事項8 2)

【コメント】

回答は、問題を意図的にカモフラージュしています。

「捜査に必要な限度」かどうかを判断する主体は、警察など当の捜査機関にほかなりません。番号法案第6条第5項は、個人番号の利用可能範囲を定める規定であり、目的外利用を禁止する規定ではありません。

回答後段は、捜査に提供される個人情報が証拠として利用されることを認めるものであり、事後の救済手段云々は問題のすりかえです。捜査機関に情報が提供されたことをどうやって知ることができるでしょうか。

2012年11月24日付け毎日新聞の記事「衆院選:問われる民主党の情報政策 「監視社会法制」進む」を併せて参照してください。

9.個人番号カードの利用と罰則について

券面に個人番号(マイナンバー)を記載した個人番号カードは、社会生活のさまざまな場面で本人確認手段として利用され、その際にコピーされることが想定される。一方、番号法案第18条では、何人も17条に該当する場合を除き、特定個人情報(個人番号を含む個人情報)を収集・保管してはならないと定めているが、この17条には個人番号カードの本人確認手段としての利用は含まれていない。

「社会保障・税番号大綱」では、法令に基づき「番号」を取り扱い得る事業以外に、本人確認手段としてカードを用いることは実質的に「番号」の告知要求に当たり得ることから、「法令に基づき「番号」を取り扱い得る事業以外に、一切の告知要求を禁止することは妥当でない」(36頁注23)とする一方、カードを本人確認書類として用いることを想定し「番号」はカードの裏面に記載するなど「番号」ができるだけ複写されない措置を検討すると(37頁注27)としている。

1)

レンタル店などが本人確認書類として個人番号カードの提示を求めることは、18条違反となるか。

【質問事項9】

1)

レンタル店などが本人確認書類として個人番号カードの提示を求める行為については、マイナンバーにより本人確認をするわけではないため、18条に規定する特定個人情報の収集、又は保管には該当せず、18条違反になりません。

回答書 質問事項9 1)

【コメント】

杓子定規の回答は、滑稽としか言いようがありません。

2)

マイナンバーが記載された個人番号カードのコピーをとり保管することは、18条違反となるか。

2)

レンタル店などが個人番号カードに記載されたマイナンバーも含めて個人番号カードを複写し保管する行為は、18条に規定する特定個人情報の収集、又は保管に該当するため、当該行為をした場合には18条違反になります。

回答書 質問事項9 2)

【コメント】

カードの提示を迫られ、番号をメモされたらどうなるのでしょうか。

10.番号制度導入・運用に要する費用

「社会保障・税番号大綱」では、番号制度を導入する場合の費用及び便益について、行政の効率化による経費削減効果を含め、国民にわかりやすく示す(23頁)としているが、今に至るも2010年6月の「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会中間取りまとめ」での開発費用の粗い試算以外、費用の説明は公表されていない。また開発・運用費用を誰が分担するかは示されたことがない。

識者からはこのようなコンピュータシステムを開発するのは、何十年もかけ税金を何兆円も投入し続けたとしても実現は難しい、等の指摘もされている。費用を明らかにしなければ、導入のメリットも判断できない。法案審議の前提として、開発・運用費用と、その負担方法を明らかにされたい。

【質問事項10】

マイナンバー制度の導入に係る共通経費として、マイナンバー及び法人番号の付番システムの構築に約100億円、情報提供ネットワークシステム、マイ・ポータル、個人番号情報保護委員会の監視システムの構築に約400億円を見込んでおり、平成24年度予算において約68億円計上しているところです。この他に、毎年の制度改正対応や定期的なシステムリプレイスなどと調整しつつ、国税庁、年金機構、地方公共団体、共済組合、健康保険組合などの既存の業務システムや民間事業者の給与システムの改修が必要となります。その他、個人番号カードに関する費用等につきましても必要となります。なお、2010年6月の「中間とりまとめ」で示された導入に係る費用額は、過去のシステム改修費用等を参考としたごく粗い試算であり、制度がより明確化してきた現在、政府CIO体制の下、より一層の精査を行っているところです。

また、地方公共団体のシステム整備等に要する経費負担のあり方ついては、財政基盤の弱い地方公共団体についても同時に制度導入する必要があることから、政府内で財政当局と協議しています。

いずれにしましても、番号制度の導入・運用に当たっては、費用以上のメリットを国民の皆様に提供していけますよう、準備を進めたいと考えています。

以上

回答書 質問事項10

【コメント】

法案を成立させようというこの時点に至っても、費用について何も決まっていないことが露呈しました。これでは全く話になりません。

※回答は、11月10日までに、下記連絡先までにメール若しくは郵送でお願いいたします。また、回答についての質疑の場を設けていただくようお願いいたします。

(連絡先)〔省略〕


引用者註

〔註1〕代表 〔名前省略〕

「やぶれっ!住基ネット市民行動」は代表を置かない集まりです。質問書に対する回答を求める都合上、連絡先として便宜的に「代表」を記したものです。

〔註2〕特定個人情報

「個人番号」をその内容に含む個人情報。

(定義)
第二条

5 この法律において「個人番号」とは、第四条の規定により、住民票コード(住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第七条第十三号に規定する住民票コードをいう。以下同じ。)を変換して得られる番号であって、当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別するために指定されるものをいう。

7 この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第四条、第五条、第五十六条第一項及び第六十二条並びに附則第三条第一項、第二項及び第四項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。

原典について


Copyright(C) 2012 やぶれっ!住基ネット市民行動
初版:2012年11月29日
http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/kyotsu-bango/haian-ni/20121029shitsumon-kaito.html