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【緊急要請・拡散歓迎】
共通番号の治安利用を進める政令案に反対の意見を

番号法施行令(政令)案のパブリックコメント(行政手続法に基づく意見募集)が行われています。この政令案の中に、共通番号を治安管理・警察捜査に利用する内容が大量に入っています。

政令案で検討すべきことはほかにもありますが、期日が迫っていることから、この治安利用に反対する意見を集中するよう訴えます。

政令案の内容について

共通番号の治安利用に道をひらく番号法

番号法の第19条は、特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の提供を原則禁止しつつ、14項目に該当する場合には提供を認めています。

このうち第12号には、刑事事件の捜査なども入っており、私たちは以前から共通番号を警察が利用するおそれを指摘してきました。

さらにこの第12号の末尾には、「その他政令で定める公益上の必要があるとき。」という政令で利用拡大できる規定もあり、何が出てくるか警戒していました。

自己情報コントロール権の及ばない治安利用

今回の番号法施行令(政令)案では、予想をはるかに超えて、破防法、組対法、暴対法、オウム規制法などさまざまな治安立法での報告や資料提供、立入検査、さらに国際的な情報交換(共助)で、特定個人情報の提供を認めています。

これらの事務は、情報提供ネットワークシステムを通さないで提供されるため、提供履歴は保存されず、マイ・ポータルで利用状況が本人開示されることもなく、第三者委員会(特定個人情報保護委員会)でのチェックも受けません。

提供された情報が、警察や治安管理機関の中で個人番号(さらに法人番号)を付けてデータベース化されて、番号の強力な個人識別力を使って個人を識別・データマッチング・追跡することに利用されても、わかりません。

具体的には政令案第24条(公益上の必要がある場合)では、「法第十九条第十二号の政令で定める公益上の必要があるときは、別表に掲げる場合とする。」とあり(政令案22ページ)、別表は46ページから51ページにわたり27項目の利用を列挙しています。

この別表をぜひご覧ください(下記「治安管理・警察捜査に特定個人情報の提供を認める場合(政令案別表・抄)」に抜粋と説明)。

番号法の目的を逸脱する政令案

番号法は、社会保障・税番号と言われつつ、法の目的規定にそのような利用の限定はなく、法律で利用事務を追加すれば何にでも使える番号になっており、警察等での利用も制限されていない問題を私たちは指摘してきました。

しかしこのひどい番号法でも、その目的としては行政運営の効率化や行政分野におけるよる公正な給付と負担の確保、国民の利便性向上(手続の簡素化、本人確認の簡易な手段その他)などがうたわれていました。このような犯罪捜査や治安管理への利用は、番号法の目的(第1条)、基本理念(第3条)からも逸脱しています。

国会答弁をないがしろにする政令案

国会審議では、自民党の委員からも警察での利用を懸念する質問がされ、政府は次のように答弁しました。

「具体的な個人番号の利用範囲あるいは提供範囲については、番号法で限定的に書いてございます。そういう意味で、現時点で駐車違反などの交通記録の確認の事務というものの番号制度の利用は想定しておりません。

利用範囲の拡大につきましては、番号法の施行状況を勘案し、今後三年後をめどに進めてまいるというふうに法律に書いてございますけれども、一種、何といいますか、そういう公安の世界というのはある意味最も比較的遠い世界かなという気はいたします。」

2013年5月21日参院内閣委員会 自民党江島潔委員の質問に対する答弁

政令案は、この国会答弁をないがしろにしています。

推進論者からも疑問の声

共通番号を推進してきた論者からも「内閣府大臣官房番号制度担当室は、マイナンバーを何に使わせようとしているんだろう?」という疑問が出るほどです。

野放しの法人番号と特定秘密保護法での利用

なお政令案が定めるのは、個人番号の提供事務です。

このほか、法人番号として、ほとんどすべての団体に13桁の識別番号が付けられます。法人番号に利用制限はなく、何にでも使うことができます。

政令案が定める個人番号の利用事務をみれば、法人番号も治安管理・団体管理に利用されることは必至です。

特定秘密保護法での利用が追加されるのも時間の問題でしょう。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(抄)

(特定個人情報の提供の制限)

第十九条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。

十二 各議院若しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百四条第一項(同法第五十四条の四第一項において準用する場合を含む。)若しくは議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十五号)第一条の規定により行う審査若しくは調査、訴訟手続その他の裁判所における手続、裁判の執行、刑事事件の捜査、租税に関する法律の規定に基づく犯則事件の調査又は会計検査院の検査(第五十三条において「各議院審査等」という。)が行われるとき、その他政令で定める公益上の必要があるとき

(設置)

第三十六条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、特定個人情報保護委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。

(指導及び助言)

第五十条 委員会は、この法律の施行に必要な限度において、個人番号利用事務等実施者に対し、特定個人情報の取扱いに関し、必要な指導及び助言をすることができる。この場合において、特定個人情報の適正な取扱いを確保するために必要があると認めるときは、当該特定個人情報と共に管理されている特定個人情報以外の個人情報の取扱いに関し、併せて指導及び助言をすることができる。

(勧告及び命令)

第五十一条 委員会は、特定個人情報の取扱いに関して法令の規定に違反する行為が行われた場合において、特定個人情報の適正な取扱いの確保のために必要があると認めるときは、当該違反行為をした者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。

2 委員会は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

3 委員会は、前二項の規定にかかわらず、特定個人情報の取扱いに関して法令の規定に違反する行為が行われた場合において、個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該違反行為をした者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

(報告及び立入検査)

第五十二条 委員会は、この法律の施行に必要な限度において、特定個人情報を取り扱う者その他の関係者に対し、特定個人情報の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該特定個人情報を取り扱う者その他の関係者の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、特定個人情報の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(適用除外)

第五十三条 前三条の規定は、各議院審査等が行われる場合又は第十九条第十二号の政令で定める場合のうち各議院審査等に準ずるものとして政令で定める手続が行われる場合における特定個人情報の提供及び提供を受け、又は取得した特定個人情報の取扱いについては、適用しない。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令案(政令案・抄)

(公益上の必要がある場合)

第二十四条 法第十九条第十二号の政令で定める公益上の必要があるときは、別表に掲げる場合とする。

(各議院審査等に準ずる手続)

第三十四条 法第五十三条の政令で定める手続は、別表第一号第二号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第百一条第一項に規定する犯則事件の調査に係る部分に限る。)、第三号第四号(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二百十条第一項(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第三十条において準用する場合を含む。)に規定する犯則事件の調査に係る部分に限る。)、第六号第七号第九号第十一号第十七号又は第二十五号に掲げる場合において行われる手続とする。

治安管理・警察捜査に特定個人情報の提供を認める場合(政令案別表・抄)

政令案別表が「公益上の必要があるとき」として特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の提供を認めようとしている場合のうち、治安管理・警察捜査に関わるものを抜粋し、内容を補足して以下に示します。

七 少年法

第六条の二第一項又は第三項の規定による調査が行われるとき
警察官が事件について調査をするとき、又は警察官が少年の心理その他の特性に関する専門知識を有する警察職員に調査をさせるとき

九 破壊活動防止法

第十一条の規定による処分の請求が行われるとき
公安調査庁長官が、公安審査委員会による団体活動の制限(第五条第一項)及び解散の指定(第七条)を請求するとき

第二十二条第一項の規定による審査が行われるとき
公安審査委員会が、公安調査庁長官が提出した処分請求書・証拠・調書、当該団体が提出した意見書について審査を行うとき

第二十七条の規定による調査が行われるとき
公安調査官が、この法律による規制に関して必要な調査を行うとき

十一 国際捜査共助等に関する法律

第一条第一号に規定する共助が行われるとき
外国の要請により、当該外国の刑事事件の捜査に必要な証拠の提供(受刑者証人移送を含む。)が行われるとき

第十八条第一項の協力が行われるとき
国際刑事警察機構から外国の刑事事件の捜査について協力の要請を受けた国家公安委員会が、都道府県警察に必要な調査を指示するとき、又は刑事訴訟法第百九十条に規定する司法警察職員として職務を行うべき者の置かれている国の機関の長(第五条第一項第三号)に協力の要請に関する書面を送付するとき

十二 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律

第三十三条第一項の規定による報告若しくは資料の提出の求め又は立入検査が行われるとき
公安委員会が、指定暴力団員その他の関係者に対し報告・資料の提出の求め、警察職員に事務所に立ち入らせ、物件を検査させ、指定暴力団員その他の関係者に質問させるとき

十三 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

第二十一条の規定による共助が行われるとき
薬物犯罪等に当たる行為に係る外国の刑事事件に関して、当該外国からの条約に基づく要請に係る、没収・追徴の確定裁判の執行又は没収・追徴のための財産の保全の共助をするとき

十五 不正アクセス行為の禁止等に関する法律

第九条第一項の規定による申出の履行が行われるとき
都道府県公安委員会が、援助を受けたい旨の申出があった、不正アクセス行為に係る特定電子計算機のアクセス管理者に対し、必要な資料の提供、助言、指導その他の援助を行うとき

十六 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律

第五十九条第一項又は第二項の規定による共助が行われるとき
外国の刑事事件に関して、当該外国からの要請に係る、没収・追徴の確定裁判の執行又は没収・追徴のための財産の保全の共助をするとき

十七 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(オウム規制法)

第十二条第一項の規定による処分の請求が行われるとき
公安調査庁長官が、公安審査委員会による公安調査庁長官の観察に付する処分(第五条第一項)、当該処分の期間更新(第五条第四項)及び再発防止処分(第八条)を請求するとき

第十四条第一項の規定による調査が行われるとき
警察庁長官が、再発防止処分(第八条)の請求に関して、都道府県警察に必要な調査を行うことを指示するとき

第二十九条の規定による調査が行われるとき
公安調査官が、この法律による規制に関して必要な調査を行うとき

二十四 犯罪による収益の移転防止に関する法律

第八条第一項の規定による届出、第三項若しくは第四項の規定による通知が行われるとき
疑わしい取引に関して、一部を除く特定事業者(第二条第二項)が行政庁に届け出るとき、都道府県知事又は都道府県公安委員会が主務大臣に通知するとき、若しくは都道府県知事及び都道府県公安委員会を除く行政庁又は主務大臣が国家公安委員会に通知するとき

第十二条第一項の規定による提供が行われるとき
国家公安委員会が、検察官・検察事務官・司法警察職員・税関職員・証券取引等監視委員会の職員(検察官等)に、疑わしい取引に関する情報を提供するとき

第十三条第一項の規定による提供が行われるとき
国家公安委員会が、国家公安委員会に相当する外国の機関に対し、疑わしい取引に関する情報を提供するとき

第十二条第二項の規定による謄写若しくは写しの送付の求めが行われるとき
検察官等が、国家公安委員会に対し、疑わしい取引に関する情報の記録の謄写又はその写しの送付を求めるとき

第十四条の規定による報告若しくは資料の提出の求めが行われるとき
行政庁が、特定事業者第二条第二項)に対しその業務に関して報告又は資料の提出の求めるとき

第十八条第二項の規定による報告若しくは資料の提出の求めが行われるとき
国家公安委員会が、特定事業者に対しその業務に関して報告若しくは資料の提出を求めるとき

第十五条第一項の規定による立入検査が行われるとき
行政庁が、当該職員に特定事業者の営業所その他の施設に立ち入らせ、帳簿書類その他の物件を検査させ、又はその業務に関し関係人に質問させるとき

第十八条第三項の規定による立入検査が行われるとき
国家公安委員会の指示を受けた都道府県警察の警視総監又は道府県警察本部長が、当該職員に、特定事業者の営業所その他の施設に立ち入らせ、帳簿書類その他の物件を検査させ、又はその業務に関し関係人に質問させるとき

二十五 国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律

第二条第十一号に規定する協力が行われるとき
証拠の提供、裁判上の証拠調べ、書類の送達、受刑者証人等移送、引渡犯罪人の引渡し、仮拘禁及び執行協力が行われるとき

第五十二条第一項に規定する管轄刑事事件の捜査に関する措置が行われるとき
国際刑事裁判所から国際刑事警察機構を通じて管轄刑事事件の捜査に関する措置請求を受けた国家公安委員会が、都道府県警察に必要な調査を指示するとき、又は刑事訴訟法第百九十条に規定する司法警察職員として職務を行うべき者の置かれている国の機関の長(第六条第二項第三号)に当該措置の請求に関する書面を送付するとき


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初版:2014年02月22日、最終更新日:2014年02月24日
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