二枚の板を接合するのに、各々の板の端に切り欠きを入れ、お互いを組み合わせる技法を「組手」と呼ぶ。その組手にもいろいろな種類があるが、私の場合は、キャビネットの本体および引き出しの組み立てに「ダブテール・ジョイント」と呼ばれる技法を使っている。切り欠きの形が鳩の尾のような形をしているので、そのような名前が付いている。全く同じ技法が国内にも昔から伝わっており、「蟻組み継ぎ」などとも呼ばれているが、この呼称が正しいか否かは諸説ある。

 写真はその加工をしている様子である。一見して分かるように、たいへん手間のかかる作業である。キャビネット本体ならまだしも、引き出しまでこのような技法で作っていることに、他の木工家から「よくそこまでやるね」と言われる。しかし、開業当時から一貫してこの方法でやっている私には、もはや苦になることでもない。

 もっと簡便な方法で十分だとする木工家もいる。いや、大半の木工家具制作者はそうであろう。しかし、欧米では、この技法で引き出しを作ることが、高級家具の必要条件とされている。ここらへんが、あちらのクラフトマンのプライドなのであろう。

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