ゆれる
新宿武蔵野館 2006年8月
映是枝監督の弟子だけあって、映像は満足。心理描写の映像化の芸が細かく、決して多弁とはいえない台詞もよい。丁寧に作りこんでいる感。
難を言えば・・・そしてこれがストーリー上最大の欠陥になっているけど・・・弟のオダギリジョーが「真実」を話してしまう動機の裏付けが足りないところ。
みんなで、被害者(?)の母親を含めて、お兄さんを無罪にするため力を合わせて努力した、そこにはもちろん個々の利害関係が絡んでいるのだが、とにかく一方向に向かっているのを、一言「ぶちこむ」ことでこっぱ微塵にしてしまう。それは弟猛の最大のエゴであり、「僕の兄を取り戻すため」という美辞でカバーしようもなく自己防衛。
そこに至るためには、もっと過去の兄弟の〜お互いに頼りあい、表と裏で一体〜といったありようと、弟猛のわがままで複雑な人格を描き込まないと。兄が刑期を終えて出所する7年後にあっさり「気付き」をもって兄弟の絆を再生するためにやってるようにみえちゃう。
人間の表と裏、どろどろした醜い感情を描くことから救いを求めるあまり、に現実味がそげてしまう残念な例になっている気がする。オダギリジョーが根本的に「いい人」すぎるからかな?兄役の香川照之はすごくよかったけれども。
現実味といえば・・・
現在検察などが行うのDNA鑑定(2種のサンプルが同一人物のものか、血縁関係のない他人のものか)では、普通確か家族のメンバーの区別まではできないのでは?だとしたら、実際には弟の精液でも、状況から兄の精液と鑑定されてしまうほうが現実的。
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