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「ビューティフル・マインド」 シルヴィア・ナサー 塩川優 訳 (新潮社, 2002 ) | |
途中で別の本を読んだりして、読了するのに時間をかけすぎたきらいがあり、印象が散漫になってしまったかもしれない。
存命の人たちの伝記なので、客観的な手法に徹しているというか、基本的に取材記事とインタビューを統合したもの。それが多分物語としての面白さを存分に楽しめない原因かも。ナッシュの家族以外の証言者の多くは、人格があまりビビッドに描かれておらず、名前が憶えきれなかった。 それでも、ナサーのストーリーラインにそって証言群は構成されていく。 子供のころからの変人ぶり----天才たる自恃の強烈さと、卓越への熱望、他人との感情的交流の希薄さ---と、ブランド志向的な俗物性は、魅力的な人物像を構成はしない(常に将来の精神分裂症への参照がされるからもあるが)。天才の名を縦にした20代、学者としてこれからというときに襲った精神病。家族間の確執と苦悩は想像するにあまりあるし、特に奥さんのアリシアや、ナッシュの身勝手なエゴから日陰者であることを強いられたエレノアと息子のジョン・デヴィッドには同情してしまう。さまざまな妄想と奇行の果てに学者としても、社会人としても完全に立場をなくし、幽霊のように生きた30年。そして奇跡的な寛解とノーベル賞受賞の栄誉。受賞後の穏やかな生活と、人間的にすばらしくなった晩年。 天才を狂気で贖った、あるいは、狂気の治癒は凡人への移行だった、という筆者のパースペクティブがあからさまなのが気になるけど、物語としては救いがあるものになっている。 ノーベル財団の裏舞台とか、レッドパージ時代のアメリカのアカデミズムの動きなどはとても興味深かった。 輝く才能を持っていること、それが自体が強い魅力となり、人をひきつけて離さない。アリシアの人生はその魅力に捕われてしまった人の悲劇として読むこともできる。 映画を観ていないので、こんどDVDかりよっと。 |
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2004.03.02
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