ナイニーアのドワーフ ◇

PCとしてのノーシャドワーフ ◇

ノーシャドワーフのPCとしての扱いは、
通常のDnDルールのドワーフと一切変わりない。
すなわち、最大レベルは12 であり、ヒットダイスにはd8 を用い、
その他の多くの点において、通常のDnDルールに準ずる。
(セーブやTHAC0、特殊能力など)

アポースタル ◇

ドワーフは本来、戦う手段と言えば武器を取って直接的に戦うだけの種族と思われがちだが、
ノーシャドワーフたちは、傷つき倒れた同胞を癒す、イモータルから呪文を与かる手段を所有している。

この、ドワーフクレリックとでも言うべき存在は、「アポースタル」と呼ばれる。
彼らの信奉するイモータルは、人間に崇められている、現在知られているどのイモータルにも該当しない。
そのイモータルとは、物質の領域のローフルイモータル、武具神アハトである。
ノーシャドワーフたちは、ドワーフ以外の種族にドワーフたちの中にもクレリックがいることを極秘にする。
何故ならアポースタルは、基本的にはノーシャドワーフたちの、
ノーシャドワーフたちのためだけのクレリックだからである。

彼らが、他種族にそのイモータルの御業を施すことがあるとすれば、
それは苦楽生死を共にした仲間と認めた者に対してのみ、である。

技術神アハト ◇

無論、ノーシャドワーフたちであれば、
たとえアポースタルでなくとも崇めているイモータルは分かる。
彼らの崇めるイモータルは、技術と匠のイモータルで、名はアハトという。
このアハトはローフルのイモータルであり、
それを信仰するアポースタルも当然ローフルでなければならない。



*** アハト誕生秘話 ***


ユリニアとは別の時間、別の世界のこと。
しかしてそこにも人は存在しており、
その営みもまた、ユリニアに住まう人と大差ない生活を送っていた。
そんな世界の片隅に、アハトという名の青年がいた。
彼は名も知れぬ辺境の寒村の出自であったが、
彼が成人するころには近隣諸国にアハトの名を知らぬものはいなかった。

一介の青年をして名を成さしめたもの、
それは武具を作り上げる鍛冶師としての腕前であった。

彼の鍛えた得物は岩をバターのように易々と切り刻み、
彼の織り成した鉄の衣は纏いながらも水泳を可能とし、
かついかなる得物の貫通をも防いだ。
アハトの打ち出す武具は神がかっていた。

遠方に竜がいた。
齢万年を数えようとしていた琥珀の老竜だった。
彼はそれまで不老不死だった。

琥珀竜だからではない。
彼ほどの者が抗うこともかなわない、
ありとある混沌の竜族の王より賜った強大な呪いがその身を蝕み、
死ぬことのできる命を奪われた身の上だからだった。

その竜の耳にも青年の名が聞こえ、そして考えた。
彼なら、彼の打ち出す武器ならば、
あらゆる武器を退けたこの琥珀色の鱗をも貫けるのでは、と。
気の遠くなるような年月の洗礼をも退けた、
この心の臓腑をも貫けるのでは、と。

琥珀の老竜の翼は、アハトの元へと羽ばたいた。
長いという言葉ではあまりにも足りぬ、永すぎた生命を終わらせられることを夢見て。
二度とは帰れぬ永遠の夢の世界への旅立ちを夢見て。

アハト青年は、
その可憐なことと彼の鍛冶の腕前ほどに近隣諸国で有名な愛らしい少女と、
祝言を挙げていた。
鍛冶師としての名声と収入、
そして見目麗しく貞淑な新妻という喜びの絶頂にあったアハト青年の元に、
果たして、琥珀の老竜はたどり着いた。

老竜は、我が生命を終焉させる武具を作れとアハト青年に命じた。
アハト青年は目の前の琥珀竜を見ながら、
はるかなる太古、龍王の戒律に背き、
その身に永遠の呪いを穿たれ、
人間の世界へと追放された琥珀竜の伝説を思い出した。

アハトは言った。
狂気の象徴たる月の輝きをすら司ろうかという混沌そのものたる龍王の呪い、
それを打ち破れるほどの武具などを、
どうして人たる我が身に鍛えることがかないましょう、と。

琥珀竜は吠えた。
ならば呪え、私をと。
我が耳にすら聞こえたお前ほどの鍛冶師が、
呪う魂で打ち上げた武具ならば我が身も朽ち果てることができようぞ、と。

しかし見も知らぬ、永遠の刻に捕らわれた老竜を、どうして憎むことができようか。
アハト青年は困惑した。

琥珀の老竜は哀れまれたことに激怒し、痺れを切らした。
ならば我を憎めるようにしてやろう、
その魂を、我に対する憎しみの闇一色に染め上げてやろう、と。

老竜はアハト青年の横にたたずむ、見目麗しき青年の新妻を睨み付けた。
アハト青年は老竜の真意を悟って絶叫した。お願いです、それだけはお止めください、と。
必ず武具は打ち上げてみせますからと、泣いて琥珀竜に懇願した。

しかして、願いはかなえられなかった。

術によって青年の身動きを奪いし後に竜は、
青年の新妻におよそ人たる者の想像が及ぶ限りの暴虐を加えた後、
最後、その牙で死体となった新妻を骨まで食らった。
アハトの新妻は琥珀竜の腹の中に永遠に消滅した。

身体の自由を取り戻し、
口が聞けるようになったアハトは瞳と喉から血を流して絶叫した。
琥珀竜よ、望みをかなえよう。
自らの欲望のためだけに、
私の最愛の者をためらいなく汚し奪った、
あなたのその薄汚い心の臓腑を止めてみせよう。
幾星霜の刻が掛かろうとも、
妻の無念を具現させるために打ち上げよう、と。

老竜は憑かれたような笑みを浮かべて飛び去った。待っておるぞ、と一言告げて。

青年は伝説とされる貴金属を入手し、
それによって最高の剣を作り上げる決意を固めた。
その決意は7 年と7 ヶ月の歳月の後に達成された。
そこからさらに老竜を探し出して会いにいくために3 年と3 ヶ月の歳月を必要とした。
10 年10 ヶ月という歳月は、アハトをして確実に若さを失わせていた。

だが、アハトは不屈の憎悪でこの困難を弾き飛ばした。
しかして彼の前に、最後の、
そしてどうしようもないほどの試練が眼前に突きつけられた。
宿敵、琥珀竜の老衰死体である。

10 年10 ヶ月の歳月の間に、琥珀竜は万年の年を迎えていた。
そして、それと同時に永劫の苦痛から解放されていたのだ。

琥珀竜を蝕みし混沌たる竜族の王の呪いが、万年の刻の果てに許されたのである。

その時、運命を司る者にアハトが絶望と憎悪の罵詈雑言を浴びせたとして、
誰がアハトを責めることができたろう?

10 年10 ヶ月、そのためだけに生きてきた目的を、
奪われるように失ったアハトは、琥珀竜の死体の前で神々を罵り続けた。
人に大いなる絶望を与えながら、
健やかなる死を迎えた琥珀の老竜の死体の前で、
7 日7 晩罵り続けた。

そして残りの3 日間、鍛え上げた剣で琥珀竜の死体を切り刻み続け、
青年アハトは力尽きて地にひれ伏した。

食わずに7 日7 晩叫び、
飲まずに3 日3 晩死体を切り刻んだ青年は、
そのまま帰らぬ人となった。

しかし、老竜の死を願うアハトの心、
そしてその心で竜を殺すためだけに鍛えられた剣は朽ち果てなかった。

老竜とアハトの死体が風化し朽ち果てようとも、
剣は変わらぬ煌きを宿して老竜の巣の中にありつづけた。
そして永い年月の果てに、いつしか剣は自我を持つようになった。
その剣を、迷い込んだ者が手にした。その者はた易く剣の支配下に落ちた。
そこから、竜殺しの伝説が始まった。

アハト青年の産みし剣は、黒と緑と赤と琥珀の竜の血を吸い続けた。
いつしか剣の自我はより強固に、より確かなものへとなっていった。
竜の血を吸うことによって魔力を高め、
それに比例した竜殺しの魔剣の数多の伝説は、
いつしか混沌の龍王の耳にも伝わった。

混沌の龍王は、魔剣を危険なものと判断し、
自ら赴き封印することを決意した。

果たして混沌の龍王は魔剣と対面した。
その魔剣の誕生の因果が、遥かなる古の自分であることも知らずに。

アハト自身すら意識していなかった、
全ての元凶となった琥珀竜への呪いの主、
創造主のアハトが無意識に殺戮を夢見た混沌の龍王が、
今、自分の前に現れたのである。

剣は金属の共鳴のような音を響かせて、絶叫した。

かくして、傲岸なる偉大な一頭と悲壮なる至高の一振の死闘がはじまった。
永遠とすら思える永い永い激闘の果てに、魔剣は混沌の龍王を貫いた。
龍王は、強大というにも足らぬほど壮絶無比であったが、
そのためだけに鍛えられた魔剣には一歩遅れを取った。
龍王の紅蓮の炎は、
操られし者を灰塵とせしめても、
魔剣を溶かすことまではできなかったのである。

果たして魔剣は、龍王の血をも啜った。
魔剣はもはや無機物ではなく有機質となり、
無生物ではなく生物となっていた。

いやそれどころか、
「彼」は龍王をはじめとする数多の混沌竜の血によって、
神の領域にまでその魔力を高めていた。

「彼」は剣からメタモーフし、
いかような姿にも変じられるようになった。

「彼」は人として姿を現す時、
自身の創造主の姿を取り、
そして自らを知ろうとする者に告げた。

「我、匠の業より出でし者アハト」と。

これが、アハトの神話である。

アポースタルのゲームスタティスティック ◇

アポースタルのPC としての扱いは 、
GAZ6 The Dwarves of Rockhome 内の Dwarven Cleric を参照せよ。
ただし、アポースタルたちのイモータルが伝説に示される"アハトの剣"であるため、
彼らは祝福された"ノーマルソード"を用いることができる。
アポースタルたちの用いる剣は、DnDの通常のノーマルソードと同じものであり、
ノーマルソードのゲームスタティスティックに従う。
(Cost: 2500 クラウン[金貨25枚]、Enc: 60cn)

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