「行殺(はぁと)新選組りふれっしゅ『近藤ゆーこEX』」

第2幕『新選組大坂始末記』(前編)


 淀川をわたる微風そよかぜが肌に心地よい。俺は夜風を楽しんでいた。見上げれば満天の星空。
まだまだ灯火というもののないこの時代、夜空で光り輝く星の数は現在よりも多い。まさに降るような満天の星空である。
 こうして一人で夜船の舳先に座していれば、日頃の斬った張ったの生活が嘘のようだ。穏やかに水が
流れ、静かに時が流れる。後ろを振り返って障子の張られた船室の方を見やる。中では同道の近藤・芹沢両局長と新たに近習になった谷周子がすやすやと寝息を立てて眠っているはずだ。


 「眠れないのかい、島田」 闇の中から斎藤が現われる。

 「いや、夜風を楽しんでいたんだ」

 「風流だね」

 斎藤も俺の隣に座る。新選組入隊以来、ずっとコンビを組んでいる斎藤とは、既に親友とでも呼べるような間柄だ。言葉を交わさずとも、お互いの胸のうちはおのずと分かる。

 「いつもの・・・・かい?」

 俺が無言で舳先の水面みなもを眺めていると、斎藤が遠慮がちに訊いてくる。

 最初に近藤さんの銃撃事件を予知してからこのかた、俺の頭痛は良くないことの前兆であることが多い。最初の時ほど鮮明な場面が見えることは少ないが、それでも何か良くないことの起こる前には必ずと言っていいほど、激しい頭痛がする。博識な山南さんによると、勘が物凄く鋭いからそれで頭の中が切れて痛いのだろうとの事だ。あの人のことだから、どこまでが本気でどこからが冗談なのかよく分からないが。

 「ああ、何が起こるか分かれば、対処しようがあるが、それともただの頭痛なのかもしれないし・・・・
  今回は何も見えなかった。ただ漠然とした不安感があるだけだからな」

 「でも、島田の頭痛は良く当たるからね」

 「そうだな・・・・・」

 「大丈夫だよ。島田に何かあったら僕が身を呈して守るから・・・・」

 斎藤が真摯な瞳で見つめてくる。本気の目だ。俺たちは自然と見つめ合う形になった。

 「斎藤・・・・」

 俺の手が斎藤の肩に伸びる。斎藤が顔を上に向け目を閉じた。

 “はっ! 何をしてるんだ、俺。斎藤は男だぞ! いかんいかん。斎藤と2人で居ると、
  つい危ない道に走りそうになってしまう自分がこわい”

 「さて、俺たちも休むか」

 何かを訴え掛けてくるような斎藤の視線を振りほどき、俺は船室の方へと向かう。背後からなぜか、
斎藤が舌打ちする音が聞こえてくる。斎藤、お前は俺をアブナイ道に誘い込もうとしてないか?




 京と大坂との交通には淀川の水運が使われていた。この時代の淀川は、まだなみなみと水をたたえて
おり、三十こく船が昼と夜の2便、伏見と大坂の八軒屋の間を結んでいる。





 さて、何ゆえ、近藤・芹沢の両局長が下坂しているかというと、京都守護職の松平けーこちゃん様からの
特命が下っていたからである。




 夏のある日、黒谷にて。
 いつものよーに近藤さんと俺は、会津藩本陣のある黒谷に定期連絡に来ていた。
すると、こちらもいつものよーに木立の間から、会津中将松平けーこちゃん様が現われ、

 「やっほー、ゆーこお手柄だったじゃん」 と開口一番に褒められた。

 「中将様! あ、上州屋の件でしたら、解決したのはトシちゃん達ですから・・・・」

 褒められて嬉しいのだが、奥ゆかしくも謙遜する近藤さん。しかし、

 「うん。聞いてる。その間、ゆーこは、そこな島田くんから、白昼堂々往来の真ん中で押し倒されて、
  抱きしめられて2人してゴロゴロ転がったそうじゃないの。もう、なんて大胆なの。
  愛の告白とかはされたの? えっ、どうなの、白状なさい」

 「あう、あう、あう・・・・」

 突然のけーこちゃん様の言葉に、耳まで真っ赤になってあわてる近藤さん。

 「ど、ど、ど、どこからその話を!」

 俺は驚愕し、近藤さんと同じく慌てた。けーこちゃん様の耳にまで入っていようとは!

 「ふっふっふ。我が会津藩の諜報能力を舐めてはいけないよ。会津には甲賀者のお聞き番がいるからね。
  しかし、否定しなかったね、ゆーこ。 まあ、2人してデートのついでに報告に来ちゃうんだから、
  まいっちゃうよねー。で、帰りは2人で祇園?」

 「違います、違います、違いますー」 はっ、となった近藤さんが力いっぱい否定するが

 「ほう、どこが違うのかなー」 いじわるく続けるけーこちゃん様。

 「押し倒されて・・・・・」

 「きゃー、きゃー、言わないで下さいー」 じたばたと慌てる近藤さん。

 「往来で二人でゴロゴロと・・・・」

 「きゃー、きゃー、きゃー」 じたばたと・・・・

 「…」

 「きゃー、きゃー、きゃー」 じた・・・・

 「まだ何も言われてませんよ」

 「あ、そ、そうなの、あたしったらつい・・・・」

 「まあ、ゆーこをからかうのはこれぐらいにして、本題に入ろうかな」

 パンッと音を立てて扇子を閉じるけーこちゃん様。

 「ははっ」

 けーこちゃん様が真顔になった。おふざけはここまでという合図だ。こちらも気を引き締め、お言葉を待つ。

 「実はさー、お金が足りなくなっちゃってさー。ゆーこ、大坂の商人たちから借りて来てくれない?」

 「はあ?」 いつもと逆だ。いつもはこちらがけーこちゃん様に活動資金をお願いに行くのである。

 「ほら、鴻池こうのいけ(大坂商人で超大富豪)の所に貸しがあったじゃないの」

 「ああ」

 そういえば、先頃、三条にある鴻池の京都別邸にキンノーの押し借りが入って、ちょうど巡回の帰りに現場に居合わせた近藤さん(含む俺)が、そのキンノーを叩き切ったという事件があった。お礼をたくさんもらったので、しばらく夕飯が豪勢になったから俺も覚えている。

 「それでいかほどの御用金を?」

 「そうねー、300万両ぐらいかな?」

 「さっ・・・・・」

 300万両といえば、現在の金額で約600億円に相当する。そのあまりの巨額に、俺は絶句するが、

 「かしこまりました。では、そのように」 近藤さん平然と頭を下げる。

 「うん、じゃあ、よろしくね」




 黒谷を辞してからの帰り道、俺は近藤さんに尋ねた。

 「近藤さん、いくらなんでも300万両とは額が大きすぎませんか?」

 「だって、会津藩だよ? 28万石だよ?」

 「そ、それはそうですが・・・・」

 あまりにも当然至極といった感じでさらりと答えられたので、俺もそれ以上突っ込んだ話は出来なかった。近藤さんの影を踏まないように3歩離れて後ろからついて行く。

 「そっと〜あなたに〜近づく〜の〜♪」

 何やらお気楽にハミングしている近藤さんにそれ以上声を掛けられず、俺たちはそのまま屯所に戻った。




 屯所で新選組の実質的な支配者、土方副長に報告を入れたが、土方さんも300万両という巨額に驚き、
しばらく空いた口がふさがらなかった。

 「会津藩がお金を貸してくださいって、商人に頭を下げたら天下の笑い者になるよ。
  だから中将様はあたしたちに頼まれたの」

 「しかし、我ら新選組の面子はどうなる、それでは我々が商人に頭を下げることになるぞ。近藤」

 「そんなのいつもの事じゃない」 しれっと答える近藤さん。

 「そ、それは、まあその通りだが」

 あまりに真正面から答えられたので、タジタジとなる土方さん。

 押し借りの事である。市中巡回の度に商家から金をせびるのは、新選組隊士の立派な務めの一つだ。

 「それに、これはあたしたちがいかに中将様から信頼されてるかということなんだよ」

 「押し借りに慣れてるのを見抜かれただけだとは思うが・・・・まあ、近藤の言うことにも一理あるな。
  うむ、大恩ある会津中将様からの御下命なれば、これは是非とも果たさねばならん。ふむ、策を練るか」




 こうして、土方さんが策を練った結果、近藤・土方の両局長が直々に大坂まで出向くことになり、その護衛として俺と斎藤も同道することになったのである。




 夜船で京から下ると、寝ている間に大坂に着く。大坂に着いた俺たちは、南堀江にある谷姉妹の武術
道場に落ち着いた。ここは先頃新選組に入隊した谷姉妹が開いている道場で、長女の谷三十華みそかと末妹の
周子は京の屯所詰めだが、次女の万沙代まさよは、大坂で情報収集等の任にあたりつつ、以前の通り道場経営
も続けていた(したたか3姉妹)そして何ゆえ谷姉妹の道場に俺たちが転がり込んだかというと、
こちらも旅費を少しでも浮かすためである。(谷3姉妹に関しては、米倉さとや様の藤鈴堂へGO!)
 谷武術道場で旅装を解いた俺たちは、さっそく土方さんの起てた計画通りに行動を始めた。

谷道場につどっている門人たちは、新選組の大坂予備隊である。それらをも動員しての活動開始である。
近藤さんと周子ちゃんが、大坂の豪商を集めて宴会をする準備。カモちゃんさんが大坂の街での
キンノー退治である。大坂は京の都の玄関口。徳川幕府の西国の拠点である大坂城もあり、
京と同じかそれ以上にキンノーの動きが活発なのである。
 そして俺と斎藤は、谷さんの紹介で阿部十郎という浪人に会いに行った。谷さんの弟子なのだが、
大坂でも有名なガンマニアらしい。





 なるほど、ガンマニアだ。谷道場の近くの南堀江道具屋筋の長屋を尋ねた所、阿部十郎とは、
髪を追っ立てて、丸いサングラスを掛けたパンクな兄ちゃんだった。部屋の中には何挺もの小銃、
ピストルが入ってるのであろう鉄砲箪笥、ちゃぶ台の上に分解掃除中の小銃が整然と並び、壁には
銃や大砲の分解図の図面が貼ってあり、土間には大砲が一門。砲弾が山積み。火薬を調合するらしい
薬研やげんに火薬樽。鉛の地金、鋳鍋に弾丸の鋳型といった道具類が雑然と並んでいる。火事になったら
町内丸ごと吹っ飛ぶのではないかと、俺は内心不安になった。

 「なんだ、あんたたちは?」

 サングラスの向こうから不審気な目がこちらを睨んでいる。片手を懐に突っ込んでるが、
中でピストルを握っているに相違ない。

 「俺は、新選組の島田誠という者だが」

 「新選組? ケッ、壬生浪みぶろか」

 阿部の銃を握る腕に力が籠もる。まあ無理もあるまい。新選組と言えば泣く子も黙る切り捨て御免の集団だからだ。

 「島田・・・・」 斎藤が俺を庇うかのように刀の柄に手をかけ一歩前に出る。

 「あー、新入隊士の谷三十華さんから阿部君が銃に詳しいと聞いて来たんだが」

 「げっ! 三十華師匠の上役であられますか! こ、これは失礼致しました。自分は奥州出羽浪人の
  阿部十郎であります。何なりとお申し付け下さいませ」

 いきなり態度が変わった。なるほど、出立前に聞いていた通りだ。どうやら谷道場における三十華の名前は、新選組における鬼の副長、土方歳江の名前と同じような効力を持つらしい。

 「隊務で、銃火器を仕入れたいんだが、阿部君、良い店を知らないか?」

 土方さん曰く、『もはや刀や槍の時代は終わった』だそうである。よっぽど上州屋で手も足も出なかったの
こたえたらしい。しかしすぐさま頭を切り替えられるのが土方さんの偉いところだ。それで研究用に新式
洋銃を買って来いとの別命が俺に下り、百両もの大金を預かって来たのである。
近藤さんだと買い食いしそうだし、カモちゃんさんにお金を預けるのは論外だし、実は斎藤も刀剣コレクターなので、古今東西の名剣とあれば、あっさりお金を使い込む可能性がある。その点俺は大丈夫。
趣味もないし、元々貧乏なので金の使い道を知らないからだ・・・・何だか自分で言ってて空しくなってくるな。


 「銃にもいろいろありますが、どのような銃をお探しですか?」

 「うーん、銃の事はよく分からない。だから阿部君を尋ねて来たのだが」

 「和銃(火縄銃の事)は、安価ですが、命中精度や発射速度に難があります。最近では点火装置を燧石フリントロック
  に改良したものが多く出回ってますが、これがいわゆるゲベール銃と呼ばれるものであります。
  火縄の心配をしなくても良いのが利点であります。またゲベール銃の銃身に線条ライフル刻み込んで命中精度を
  上げたものがヤゲール銃であります。さらに同じ先込め銃でも、従来の円弾ラウンドボールから雷管式のミニエー弾を
  使用できるようになったのがミニエー銃です。ミニエーは椎の実型の弾丸で、空気抵抗が減った分射程が
  伸び、また命中精度・殺傷力が格段に上昇してます。そして英国がミニエー銃を改良したエンフィールド銃

  は、線条ライフルを五条のエンフィールド型とし、更に銃弾がブリチェット弾という弾丸に改良されていて・・・・
  あ、実物はコレです」

 と言いながら、阿部君は鉄砲箪笥から一挺の小銃を取り出した。

 「これが、最新なのか?」

 阿部君から渡された鉄砲を手に持つ。刀と同じくズシリと重い。近藤さんを真似て構えてみる。
この手にしっくりくる黒鉄くろがねの重厚感。しかし、何がどう凄いのか全然分からん。

 「いえ、実はエンフィールドを元込め式に改良したスナイドルという銃が開発されまして、
  まこと銃の進歩は日進月歩で、半年前の物がもう旧式になってますから」

 この辺り、幕末の銃火器の進歩は現在のパソコンの進歩に通ずる物がある。

 「じゃあ、そのスナイドルというのが最新型なんですね」 今まで黙っていた斎藤が口を開く。

 「自分の仕入れている情報では、そうなんですけどね。まあ、あとは船場せんばに行ってみましょう」

 船場は当時の大坂の商業地区である。

 「船場?」

 「船場に行きつけの唐物屋がありますので」

 「あ、そう」




 まあ、そんなわけで、俺たちは船場の唐物問屋(輸入雑貨商)に移動した。店の中は、朱塗りで派手な
彫刻を施したテーブルや椅子、戸棚などの家具類、革で装丁された本、宝石や金細工のアクセサリー、
白磁の壷、虎の毛皮。今で言うと中華街の土産物店の様なド派手な原色の商品の数々がならび、
その中に最近流行の南蛮渡来の品々、ガラス製品やゼンマイ式懐中時計、羅針盤、地球儀、伸縮式の
遠眼鏡(望遠鏡)、雨傘などが並んでいる。俺と斎藤の頭はそれらを受け入れることが出来ずに、
かるちゃーしょっくに陥っていたが、阿部君は慣れてるらしくスタスタと店の奥へと進んで行く。
俺たちはその後をおっかなびっくりついていく。“この壷、落として割ったらいくらぐらいするんだろう?”

 「あ、これですよ、島田先生」

 阿部君が立ち止まった先は武器のコーナーになっていて、洋風の短剣や短銃、小銃などが壁に掛けられている。

 「これは阿部様、よう、お越しで」 店主が出て来て、にこやかに俺たちに挨拶する。

 「先日お買い上げいただきましたエンフィールドはいかがですか?」

 「何がエンフィールドだ! 佐賀藩製造のコピー銃じゃないか。しかも、俺が買って一月でモデルチェンジ
  しやがって! 後込めに改造されたエンフィールド改が出回ってるそうじゃないか」

 いきなり阿部君の態度が豹変する。というか、こっちが本来の阿部君なのか。

 「いや、あれは後装式スナイドル銃という新型でして・・・・それに阿部様のエンフィールドは舶来のれっきとし
  た本物でして、はい」

 「鳥羽マークがついてなかったぞ」

 鳥羽とは、Towerの事で、地板に王冠とTowerの刻印のあるものが英国製のあかしである。

 「いや、それは、そのう・・・・」

 「素人が見たって一目で分かる。ねえ、島田先生!」

 「え? いや、はあ」

 俺は曖昧に相槌を打った。こっちは剣で勝負の新選組だ。正直言ってガンマニアの会話にはついていけない。というか、俺にそういう話題を振られても困るんだが。

 「なあ、斎藤」 困った俺はそのまま斎藤に振ってみる。

 「そ、そうだね、あははは」 斎藤も笑ってごまかした。

 「ところで、本日は・・・・?」 店主が助けを求めるように俺たちの方を向いた。

 「ああ、そうだった。こちらは、新選組の島田、斎藤両先生。今日は、御用の向きで罷り越した。
  新選組でも銃を導入するそうなのだ。で、悪徳商人からヤゲールやゲベールといった旧式を
  掴まされんように、自分が同行したのだ。天下の新選組だぞ。最新型を出せよ」

 先述したが、この阿部十郎という人物は、今風に言うとガンマニアであり、趣味が高じて後に新選組の
砲術師範まで務めた人物である。(行殺では、カモちゃんさんのイベントで登場)

 「ええ、それは、もう、今ですと、スナイドル銃が最新ですね。一挺三十両とお値打ちで・・・・」

 「高い!」 阿部君が言下に断る。

 近藤さんの虎徹は二十両だったし、土方さんの兼定は百両もしたそうだから、最新の鉄砲はそんな物かと思っていたが、どうやら吹っかけられたらしい。うむ、阿部君が居てくれて良かった。俺と斎藤だけなら、
ぼられてたな。

 「や、これは阿部様には敵いませんな。一挺三十両の所を二十八両にお勉強させていただきますが」

 安いのか高いのか俺には皆目見当もつかない。俺は阿部君に目配せする。値段交渉は任せた!という
合図だ。

 「十五両」 阿部君が思い切った数字を言う。いくら何でも半値にはならんだろうに。

 「いえ、十五両ではちょっと・・・・」

 当時ミニエー銃の価格が十八両である。ガンマニアの阿部が知らぬはずはない。ミニエーより新型の
スナイドルがそんな値段になるはずがない。これは交渉の始まりというだけだ。

 「じゃ十六両」

 「そ、それもちょっと・・・・」

 「島田先生、何挺ほど、ご所望ですか?」 阿部君が俺に尋ねた。

 えーと俺は百両預かって来てるから、三十両だと三挺、二十五両だと四挺。四は縁起が悪いなあ。
よし、五挺と言ってみよう。

 「五挺ほど欲しいが揃えられないのなら、他所に行くが・・・・」

 俺も阿部君の芝居に乗ってみる。



 不意に、ドーンという音が聞こえてきた。ガラスのケースがビリビリと震える。

 「大砲! いったいどこで?」

 阿部君と店主が慌てる。だが、俺と斎藤はいつものことなので落ち着いたものだ。

 「あー、カモちゃんさんだな」

 耳を済ませると、どーん、どーんと連発で響いてくる大砲の音は聞き慣れたカモちゃん砲の音だ。

 「そうだね」 斎藤も相槌を打つ。

 「カモちゃんさんって誰です?」 阿部君が俺に詰め寄る。

 「新選組のカモミール・芹沢局長だよ。キンノーを退治するのにカモちゃん砲という大砲を使うんだ」 と俺。

 「ひょっとして、二条の上州屋を焼き打ちしたというウワサは・・・・」

 店主がガタガタと震えている。

 「ああ、それ本当。僕と島田は現場にいなかったけど、建物丸ごと焼けちゃったらしいね。
  まあ、御禁制の阿片を扱ってたんだから仕方ないけどね」

 にこやかな笑顔のままで斎藤が店主に答える。話の内容と笑顔のギャップがすごい。さすが斎藤。
 店主の顔がさーっと青ざめた。阿部君も俺たちが日常会話のようにそんな事を言うので多少びびっているようだ。



 大砲の音が止んだ。

 「あ、キンノーをやっつけたみたいだね。周辺の被害が少ないといいけどね」

 「そうだな」

 という俺たちの会話に、まだ店主は顔を引きつらせていたが、

 「ご、五挺ですか、そうですね・・・・では、ぎりぎりまでお勉強して一挺二十両ではいかがで
  ございましょう?」

 さすがは商売人。かような事態でも商売の話を忘れてない。しかし、いきなり値段が下がったが、
これはカモちゃんさんのおかげだろうか? 
 俺は目だけで阿部君の方を見る。阿部君も目だけで頷いて見せた。“買い”の値段なのだろう。

 「うむ、では、いただこう」 俺は土方さんから渡された二十五両の包みを4つ取り出して並べた。

 「これは、どうも、ありがとうございます。では、どちらにお届けすればよろしいでしょうか」

 「うん、南堀江の谷道場まで頼む」

 「かしこまりました。後ほどお届けにあがります」

 さて、これで任務は済んだ。さっさと谷道場に戻って近藤さんを手伝うか。
肩の荷の降りた俺は、チラと商品を見回して、一点に釘付けになった。 “こ、これは・・・・”

 「あ、島田、どうしたの?」

 「先に行っててくれ、斎藤」

 「うん、分かった」




 斎藤と阿部君を店の外で待たせておいて、俺はつい衝動買いをしてしまった。

 「ふっふっふ。じゃーん!」 俺は懐から金ぴかの拳銃を取り出して2人に見せびらかした。

 「レミントンの新型リボルバーですね!」 さすがはガンマニア。見ただけで分かるとは!

 レミントンニューアーミー。アメリカの南北戦争の際に活躍した拳銃だ。断面が正八角形をした銃身オクタゴンバレル
取り外し式の回転弾倉シリンダー。銃身から銃把までの流れるような優美なライン。全体的に均整のとれたデザイン。同じリボルバーでもコルトの様に銃身と銃把のバランスがバラバラでいびつではない。
ちなみに、映画、『風と共に去りぬ』でスカーレット・オハラが使ったのもこの拳銃である。

 「いいだろう、ピカピカの新型だぞ。米国製れみんとんの6連発だそうだ」

 「だそうだって・・・・ひょっとして知らないで買ったの?」

 「ああ。つい衝動買いをしてしまった。やはり今からは銃の時代だからな」

 「ミーハーだね、島田」

 「しかし、レミントンの最新型とは、島田先生も銃を見る目がおありですね」

 「この銃が俺に買ってくれ、と訴えたのだ。武士として買わねばなるまい」

 「武士は関係ないと思うけど・・・・」

 「しかも18金仕上げの逸品だからな。全財産が吹っ飛んでしまった」

 「だ、だめだよ島田、18禁だなんて、そんな」 顔を赤らめる斎藤。

 「24金よりも18金の方が実際的なんだそうな」

 「24禁・・・・・ぶはっ」 斎藤が鼻血を吹いた。

 「しっかりしろ、斎藤、いきなり鼻血を吹くんじゃない!」

 「24禁よりも18禁の方が実際的ってどういうこと? はっ、まさかそんな、島田ってそんな趣味が?」

 「18金の方が硬いから銃器の仕上げに向いてるんですよ。サビないし」 と阿部君。

 「そんな・・・2人して18禁だなんて・・・・ああ、僕はどうしたらいいんだぁ!」

 「18金の何が悪いって言うんだ? ピカピカ光ってキレイじゃないか。高かったんだぞ」

 「島田はモザイクよりもピカピカ光ってる方が良いっていうんだね!」

 意味不明な事を口走る斎藤。

 「もざいく? どんな形なんだ?」 “斎藤は銃にも明るかったのか?”

 「形・・・・そんな恥ずかしい事、僕に訊かないでよ、島田」

 「斎藤、何だか会話が基本的にズレてるような気がするのは気のせいか?」

 「ふっ、僕たち大人だから、いいよね。島田」 斎藤が遠い目をする。

 「何の事だ? おーい斎藤、帰ってこーい」 どうやら斎藤の心は遠くへ旅立ったようだ。




 「あ、ところで島田先生」

 俺と斎藤で意味不明な会話をしていたが、阿部君が話を元に戻した。

 「あ、阿部君。どうもご苦労様でした。おかげで滞りなく任務を遂行できました」

 「いえ、新選組には、あのスナイドル銃を使いこなせる人がおられるのですか?」

 「うーん、近藤局長は火縄銃を使ってるけど、ああいう新型は使ったことないんじゃないかな?」

 「それでは、自分を新選組に加盟させていただけないでしょうか?
  銃火器の取り扱いに関してはそれなりの自信があります」

 「新選組は剣客集団だからね。どうだろう」

 「自分は三十華師匠の門弟ですが・・・・」

 「槍、使うの?」

 普段から沙乃の槍にひどい目にあわされ、三十華の槍に叩きのめされた俺としては、
槍使いが増えるのは、どうも気が引ける。

 「まあ、銃や大砲が専門ではありますが、種田流槍術と神明流剣術も使えます」

 俺と斎藤は顔を見合わせた。谷3姉妹の入隊試験の際、俺と斎藤(特に斎藤)は長女の谷三十華に
こっぴどくやられたからだ。三十華は種田流槍術の師範で、沙乃の師匠。最近、末妹の周子が近藤局長のお気に入りで俺と同じ局長付近習になってからは、それを笠に着て谷派閥とでも呼ぶべき一派を形成
していた。谷一派が増えるのは好ましくないが、しかし、新選組に鉄砲に詳しい人間が居ないのも事実。
土方さんも新型洋銃の研究をするのなら銃に詳しい人間が必要だろう。

 「今、谷道場に新選組の局長が2人来てるから、直接聞いてみたらどうかな?」

 と、斎藤が助け船を出してくれる。

 「島田先生にお口添えいただけるとありがたいのですが」

 「そうだな、阿部君。局長にお伺いを立ててみよう」

 「では、自分も久しぶりに道場に顔を出すとします」




 こうして俺たちは、午前中に鉄砲購入の任務を終えて、3人で谷道場へと戻っていた。その帰路、

 「やっほお☆ 島田く〜ん」

 背後にカモちゃん砲と谷道場の門弟数人(全員美形だ)を引き連れたカモちゃんさんが徳利を下げて、
赤い顔で近づいてくる。

 「あ、カモちゃんさん」

 「島田く〜ん」 カモちゃんさんが抱き着いてくる。

 「どちらですか?」 同道の阿部君が斎藤に尋ねる。そういえば、初対面だな。

 「新選組のカモミール・芹沢局長だよ」 斎藤が答える。

 「芹沢局長と呼ばなくても良いのですか?」 阿部君が小声で俺に訊く。

 「だって、カモちゃんさんと呼ばないと怒るんだもん」 と小声で俺。

 「あ、そ、そうなんですか。難しいですね。日本人なのに名前がカモミールですか?」

 「ああ、それはカモミール・芹沢というのは源氏名で、本名は木村継美さん・・・・きゅ」

後ろから首を締められた。

 「こーらー、誰が源氏名よぉ? それに何で島田くんがアタシの本名を知ってるのよぉ?」

 「はっはっは。監察の島田をなめちゃいけませんよ」

 「島田くんは、ゆーこちゃんの近習でしょ? それとも歳江ちゃんに乗り換えたの?」

 「はっ・・・・俺は近藤さん一筋なのだった・・・・しかし土方さんの下で監察をやった記憶が・・・・」

 「ふ〜ん、島田くんは心の底で歳江ちゃんの下僕になりたい願望を持ってるのね。分かったわ。
  アタシが歳江ちゃんに頼んであ・げ・る☆」

 「い、嫌じゃあ〜。カモちゃんさん、お願いだから余計なことをしないで下さい」

 「どうしよっかなあ。島田くんがアタシの近習になってくれたら考えてあげてもいっかなー」

 いたずらっぽい目で俺を見つめるカモちゃんさん。

 「ううっ」

 俺は頭を抱える。土方さんの側近になるのは嫌だが、さりとてカモちゃんさんの近習になるというのも・・・・近藤さんがぁ〜。

 「あ〜、冗談よ、冗談☆ ゆーこちゃんの男を盗るわけにはいかないもんねえ」

 「ほっ、良かった。 あ、そうだ。さっき、カモちゃん砲の発射音が聞こえましたけど、キンノー退治ですか?」

 「ううん。攘夷よ」

 「は? 攘夷?」

 「港に外国船がいたから、追い払え〜って、カモちゃん砲を撃ったの。攘夷決行だぁ」

 「な、なんて事を! 外交問題になりますよ!」 顔を青ざめさせる斎藤。

 “あーうー。京に帰ったらまた土方さんから大目玉を食らうぞ、こりゃ”

 「だいじょうぶよお。幕府の異国船打払令を実行しただけなんだからあ☆」

 「異国船打払令は20年も前に撤廃されてるじゃないですか!」 と斎藤。

 「そんなのアタシ知らな〜い」 “こ、この人は〜”

 「で、ひょっとして沈めちゃったんですか?」

 「んー、弾が届かなかった。ちぇ、こんなことならPaK43の真カモちゃん砲を連れて来ればよかったな」

 “なんだか、今、聞いてはならないことを聞いてしまったような気が・・・・”

 「カモちゃんさん、お願いですから、その真カモちゃん砲というのは使わないで下さい!」

 「もー、島田くんは心配性だなあ。向こうも撃ち返して来たから、おあいこよ☆」

 「撃ち返して来たって・・・・」 “ひいいい。戦争が始まる〜”

 「でも弾を込め忘れたみたいで飛んで来なかったけどね。あはは〜」

 「それは空包ですね。向こうも祝砲か礼砲だと思ってくれたのではないでしょうか?」

 こう口を挟むのは、大砲専門家の阿部君だ。

 「いや、水柱が上がっただろうから、かなり無理があると思うけど・・・・」

 と冷静な意見を述べるのは斎藤だ。

 「こーやってね、カモちゃん砲の上に乗って、鉄扇を広げて、カモちゃん砲、発射ぁ! って」

 実演してみせるカモちゃんさん。

 露出度の高い衣装の金髪グラマーな美人が、大砲の上で扇子を広げてるから、外国船の船員もさぞ
びっくりしたことだろう。何かのアトラクションだと思ってノリを合わせて空包を打ち返したに違いない。
 ずどーん! いきなりカモちゃん砲が発射した。そ、そこまで実演せんでもいいのに!

 「うわ、町中で撃たないで下さいよ」

 「カモちゃん砲、発射ぁ〜!」 ずどーん。

 「あ、カモちゃんさん酔ってますね! みんなカモちゃんさんを止めるんだ」

 俺たちは大慌てでカモちゃんさんを押さえ付ける。

 ずどーん。三度みたびカモちゃん砲が発射する。“またオートになってる〜”

 阿部君がスタスタとカモちゃん砲に近づいて何やら操作してカモちゃん砲を止めてしまった。
さすが大砲屋!カモちゃんさんしか扱えないカモちゃん砲を難無く操るとは。帰ったら近藤さんにお願いして阿部君を新選組に入れて、阿部君をカモちゃんさん係にしよう。うん、そうしよう。
 着弾地点辺りで火災が発生したらしく、半鐘の音が・・・・聞こえない、何も聞こえないんだあ!





 こうして何事もなく平穏無事なまま、俺たちは仮屯所となっている谷道場に帰り着いた。

 「島田、そのナレーションには、かなり無理があるよ、御堂筋で火災が発生して・・・・」

 「うるさい。何事もなかったんだ。それとも斎藤、連帯責任で切腹したいのか!」

 「こうして何事もなく平穏無事なまま、僕たちは仮屯所となっている谷道場に帰り着いたのだった」

 「よし」

 「あ、みんなおかえり」

 「近藤さん」

 「島田くん宛に荷物が届いてるよ」

 「そっか、カモちゃんさんを止めるのに時間がかかったからな」

 「何事もなく・・・」 斎藤、それはもういいって。


 細長い革ケースに収められたライフル銃が五挺。おれはパチンと一箱開けてみる。黒光りする銃身、
艶やかに磨き抜かれたウォルナット製の銃床。阿部君から持たせてもらったのと同じだが、手元の部分が蓋になっている。これが元込めなのだな。

 「あー、新型だー。いいな、いいなー」

 近藤さんの武器も鉄砲である。最新型の銃を目の前にして目を煌かせている。ま、まずい。

 「英国製のスナイドル銃です。元込め式で1分間に15発撃てる最新鋭の銃ですよ。弾丸もボクサー
  カートリッジという銅製薬莢の最新型を使います。最大射程は1300ヤード(約1200m)もあり、
  エンフィールド線条ですから命中精度も高く・・・・」

 阿部君、余計な事を・・・・

 「わー、すごい、すごーい」 と言いながら近藤さんも一箱すでに抱え込んでいる。

 「ねえ、島田くん。これどうするの?」

 「えーと、ですね、土方副長の命令でですね、銃火器の購入をですね・・・・」

 「いいなー、いいなー」 近藤さんがじいっと俺の方を見つめる。

 「だ、ダメですよ、近藤さん、そんな目をしても」

 「ね、こんなにたくさん、あるんだからあ・・・・」

 「いや、だからですね、任務なので、屯所に帰ってからですね」

 「そっか、島田くん、あたしの事、嫌いなんだ。そうなんだ・・・・」

 近藤さんがうるうると涙目になる。

 「いえ、だから任務なので・・・・」

 「あたしが旧式の銃を使って、それで死んじゃってもいいって思ってるんだ・・・・」

 うるうるうる。

 「そ、そんなことないです!」 俺がこう言い切った途端、近藤さんが破顔一笑、笑顔になる。

 「じゃあ、この新型銃は、あたしがもらっても良いよね」

 “し、しまったぁ〜”

 「・・・・えーと、一箱お持ち下さい」

 ダメだぁ。近藤さんには勝てない。あとで副長には謝ろう。まあ横流ししたとかじゃないから、
許してくれる・・・・といいな。

 「わぁい。島田くん、ありがとー。やったあ、新型だぁ」

 「島田先生、自分にも一挺いただけませんか?」

 阿部君だ。物欲しそうに俺の後ろの箱を眺めている。

 「ダメ。これは屯所に持って帰って、」

 「あ、島田くん、その人、誰?」

 「これは申し遅れました。自分は阿部十郎であります」

 「谷さんのお弟子さんで、鉄砲とか大砲に詳しいんですよ」

 「じゃあ、じゃあ、新選組の鉄砲の先生になってもらおうよ」

 「え、では?」

 「局長の近藤さんがいいっていったんだから、阿部君は今から新選組の仮隊士だな」

 「それでは、さっそく近藤局長にスナイドルの使い方をお教えしたいので自分にも一挺」

 「だから、屯所に帰ってから・・・・」

 「島田くんの、ケチ」 あう! 近藤さんの口撃。

 「いや、ですから・・・・」

 「どーせ、島田くんには使えないのに」 ぐさっ! 近藤さんの口撃が続く。

 「しかし、任務が・・・・」

 「島田くんは、トシちゃんとあたしとどっちが偉いと思ってるの?」

 非難するような近藤さんの視線が痛い。

 「あう・・・・分かりました。阿部君も一挺持ってっていいよ」

 「これはかたじけない」

 阿部君も一箱持っていく。駄目だぁ。絶対土方さんから怒られる。も、いいやあきらめよ。

 「島田も大変だね」

 「うう、友よ、分かってくれるのはお前だけだ」

 がばっ、と斎藤に抱き着こうとしたところ、こめかみに銃口が・・・・。

 「やおいは切腹よ☆」 俺に銃を向けたままにこやかにそう告げる近藤さん。

 「はう・・・・」 踏んだり蹴ったりであった。






 「ところで、近藤さん、金策の首尾はどうだったんですか?」

 周子ちゃんの入れてくれたお茶を飲みながら気を取り直して近藤さんに聞いてみる。

 「えーとね、万沙代さんと周子ちゃんにお手紙を書いてもらって、谷道場の人達に配ってもらったの」

 「近藤さんが書かなかったんですか?」

 「だって、ほら、あたしはお習字がヘタだし・・・・」 近藤さんが頬を赤らめる。

 「ということは近藤さんは何もしてないわけですね?」

 「あ、でもでも、あたしは料亭の『三橋楼』に電話してちゃんとお座敷と料理の予約をしたんだから」

 「うわーい。今夜は宴会だあ〜☆」 酔っ払いが復活してきた。タフだなあ。

 「あ、カーモさん、ダメだよ。今夜は接待なんだから」

 「よーし、じゃあ、ゆーこちゃんと2人で余興に裸踊りだぁ〜」

 「え、えええ?」 近藤さんが顔を赤らめる。だが、なんだか嬉しそうだぞ。

 俺は・・・・不覚にも一瞬想像してしまった。い、いかん。煩悩よ去れ!

 「芹沢さん、さすがに局長2人の裸踊りはまずいのではないですか?」 と顔を赤らめつつ斎藤。

 「えー、じゃあ、ゆーこちゃんの女体盛りでガマンする。豪商の旦那さんたちも大喜びー」

 「えええええっ!?」 近藤さんの顔が真っ赤になる。だが、やはりなぜか嬉しげだ。

 にへらっ。
 そして俺は、やはり想像してしまった。近藤さんの女体盛り・・・・思わず口元が緩む。

 「あ〜、想像してる〜。 し、島田くんのバカーッ!」

 ガンッ。スナイドル銃で殴られた。さすが新型! 殴られると痛いぞ。

 「局長、銃をそのように使ってはいけません」 阿部君、そういう問題でもなかろう。

 おや、何だか気が遠くなってきた。カモちゃんさんの笑い声が聞こえる・・・・そして世界が暗転した。


<後編に続く>


(あとがき)
 今回のお話は、新選組の大阪出張の史実をベースにしております。芹沢の大坂出張のエピソードは有名なので省きますが(力士とケンカしてます)、元治元年11月の近藤の大坂出張は、あんまり有名ではないので少々解説。当時、会津藩も貧乏でお金に困っていたらしく(長州征伐とかもあって戦費がかさんだ)、池田屋、蛤御門の変と功績を上げ、メジャーになってきた新選組に対して、松平容保から金策の命が下ります。要は大坂の豪商に借金するわけですが(=押し借り)、300万両を年3朱の利息で30年ローンで貸せという無茶な内容でした。結局、接待したり脅したり嫌がらせしたり、色々工作して67万両を借りることに成功
(金額は様々な説あり。文書によって異なる)したようです。
 後編は、芹沢暗殺事件にまつわるエピソードです。長くなったので前後編にしました。



(参考文献)
 今回作品を書くに当たり、以下の図書を参考にさせていただきました。ここに一覧にすると同時に心より
感謝致します。



『復元 江戸生活図鑑』 笹間 良彦  著 :柏書房
『図解古銃辞典』 所 荘吉    著 :雄山閣
『日本の軍装−幕末から日露戦争−』 中西 立太  著 :大日本絵画
『グラフィックアクション28 WWUドイツ陸軍兵器図鑑』 :文林堂
『世界の拳銃』 ワールドフォトプレス  編 :光文社文庫
『歴史群像シリーズ31 血誠 新撰組』 :学研
『新選組 知れば知るほど』 松浦 玲   監修 :実業之日本社
『新選組裏話』 万代 修   著 :新人物往来社
『いつの日か還る』 中村 彰彦  著 :実業之日本社
『図解雑学 新選組』 菊地 明   著 :ナツメ社
『アームストロング砲』 司馬 遼太郎 著 :講談社文庫
『新選組血風録』 司馬 遼太郎 著 :角川文庫
『燃えよ剣』 司馬 遼太郎 著 :新潮文庫
『新撰組 解体新書』 DaGama編集部 編 :光栄
『幕末パノラマ館』 野口 武彦  著 :新人物往来社
『幕末・維新のしくみ』 童門 冬二  著 :日本実業出版社


書庫に戻る

topに戻る