偽作・行殺(はぁと)新選組ふれっしゅ
番外編その4 『はじめが
「はあ・・・」
新選組隊士、斎藤はじめは悩んでいた。
「一体どうすればいいんだ?」
どうすれば・島田を・僕のものに・できるんだろう?
ことある毎に(と言うのは言い過ぎだろうが)自分をアピールしているのに、いつもぎりぎりのところで他の人たちに、『良いところをさらわれている』ような気がする。
いつの事だったか。島田と一緒に、近藤局長を守るために戦った時だって。島田は近藤さんの事しか頭になかった。(わかたけ氏の『ゆーこさんEX第一幕』を参照されたし)
谷さん姉妹が入隊してきた時だって。僕は島田のために戦ったというのに、結局事態を収めたのは山南さんだった。(わかたけ氏の『谷三十華シナリオ』を参照されたし)
原田さんの、かわら版騒動の時なんかひどすぎる。暴れ猪を華麗に仕留めた僕の活躍はあまり、いや全然本筋とは関係なくって。島田(と原田さん)が酷い目にあってる時に、僕は何も知らずに巡回を続けていた・・・・・。(拙作『番外編1』参照)
こんなに・こんなに頑張っているのに。何故だろう?何故なんだ!?
ドウシタラ・シマダヲ・ボクノモノニ・デキルノダロウ?斎藤は考えた。
“やはりここは力ずくで・・・力は僕の方が上なんだし”
いやいやダメだ。それでは島田の身体は奪えても、心まで奪う事はできない。
お付き合いの基本はやっぱり恋文から・・・却下だ。今更手紙だなんて変だよ。
女性ホルモンを投与するとかして女性の身体に・・・この時代には無理だね。
“そもそも、ライバルが多すぎるんだよなあ”
近藤さん。土方さん。山南さん・・・はないだろうから除外だ。永倉さん。原田さん。沖田さん・・・きりがないので斎藤は数えるのをやめた。
“あの人たちに負けたくない。僕の、島田への愛は誰にも負けないんだ”
島田との付き合いは僕が一番長いんだ。何たって入隊以来だから。
「どうしたら、島田の『一番』になれる?」
声に出して言ってみた。あわてて周囲を見回し、誰もいないのを確認した。
“どうしたら・・・どうしたら・・・はっ!そうだ!”
斎藤はひらめいた。
「ライバルを一人ずつ順番に蹴落としていけば・・・やがては必然的に」
僕が島田の『一番』だ。僕だけが島田の『一番』になれるんだ!
この瞬間から、斎藤の飽くなき挑戦が始まった。
「・・・というわけで、まずは原田先輩。覚悟してください」
斎藤は、巡回中の原田をつかまえた。町を駆け回って足が棒になった。
「あんたねぇ・・・沙乃を最初に選ぶなんて、いい度胸してるじゃないの」
原田は腹立たしそうに、こう言った。
「沙乃もずいぶんとナメられたもんね」
「・・・ふっふっふ。我に秘策あり、というやつです」
斎藤は不敵な笑みを浮かべた。原田さんの弱点はすでに把握しているのだ。
「ヒサク?」
首をかしげる原田。あどけない表情だった。だが手加減はしない。
斎藤はおもむろに身構えた。気を溜めつつ距離をとった。そして、
「つるぺた。まな板」
斎藤は原田の胸の辺りを見詰めて、遠くの方から原田の悪口を言った。こうすれば原田さんは冷静さを失う。冷静さを失えば、どんなツワモノだって隙ができる。
「胸なし・・・・・・盆地」
斎藤は原田の目の前で、ため息をついて見せた。冷たい目で原田を見据えたままで。その声とため息が、原田の心を激しく揺さぶった。
斎藤の目にも、原田の身体が小刻みに震えているのが見てとれた。計画通りだ。だが!斎藤の計画は彼の背後から、もろくも崩れ去った。
「私の弟子にナメた口をきく・・・死にたいらしいわね」
墓場から聞こえてくるような、殺気に満ちた声。副長助勤に抜擢された谷三十華だ。
「!?!?」
斎藤は飛び上がらんばかりに驚いた。かつてのあの敗北。あの恐怖が尾を引いて、現在では斎藤の天敵と言ってもいい存在の、新選組きっての猛獣。
ちなみに彼女には妹が二人いる。谷万沙代、谷周子、二人とも新選組の隊士だ。彼女たちは三人姉妹なので、状況によってはそれぞれ谷ミ・谷マ・谷シと表記する事にしたい。
「楽に死にたい?それとも、苦しんでから死にたい?」
「し・し・し・失礼しましたー!」
斎藤は脱兎のごとく逃げ出した。今の腕、今の心持ちでは谷さんには勝てない。いずれは決着をつけるつもりでいるが、今はまだその時ではない。
「・・・何だ?あいつは。最近の陽気のせいで、とうとうおかしくなったか」
「それが沙乃にもさっぱり。ただ島田への愛がどうとか言ってたけど・・・」
困惑の目と目を見交わす師弟であった。
“まさか谷さんが出るとは計算外”
しばらく走ったところで、斎藤は胸をなで下ろした。
“気を取り直して、次だ”
斎藤は次の相手に、永倉を選んだ。
“まともに戦えば勝ち目は薄い。しかしまたもや我に秘策あり、だ”
永倉さんは、腕は立つが頭の方はからきしだ。そこを突けば勝機はある。
「永倉さん。いらっしゃいますか」
斎藤は、部屋にいるはずの永倉を訪ねた。
「おー!斎藤じゃん。ちょうどいいや」
永倉は珍しく、読書中らしかった。ぱたんと本を閉じて出迎えてくれる。
“読書?あの、脳みそまで筋肉でできているとさえ言われたこの人が?”
斎藤は永倉が読んでいた、薄汚れた書物の表紙を見た。
“な、何ですと?”
斎藤は心の中で妙な叫び声をあげた。表紙には『一刀流秘事』とあった。
“秘事、すなわち奥義の書に違いない”
分厚く、手あかにまみれた古ぼけた書物。これを、永倉さんはこんなにボロボロになるまで読みふけっていたのか?天才は他人の見ていないところで努力すると言う。今の永倉さんが、まさにそれなのか!?
“はっ!さっき永倉さんは、ちょうどよかったとか言った”
もしや永倉さんも、僕と雌雄を決するべく己を鍛え、待ち受けていたのか?
「おまえ、今ヒマか?ヒマだったらさ・・・」
永倉の言葉が斎藤の身体をぞくりとさせた。
“暇なら・・・何だ?もう相手は臨戦態勢なのか?まずいぞ、機先を制せられた”
「その、な。おまえを『
「もっ、申し訳ないのですが急用がっ!」
斎藤はそう言い残して、早足でそこを立ち去った。今は勝負すべきでない。そう思っての行動だった。永倉は呆気に取られていた。
「何だーあいつ、変なの?読むのに協力してもらおうと思ったのによお」
この本、汚れがひどくてちっとも読めねぇんだ。永倉はそうぼやいた。
山南があまり強引に勧めるものだから、永倉はちょっとだけ借りてみたのだ。本の内容などは理解できるはずもなく、かろうじて読みとれる文章や絵などから、どうやらオトコとオンナで協力してするものらしい、という事だけが推理できた。
「大体あいつの方から来たのに・・・ま、いいか」
永倉は細かいことを気にしない性格だった。斎藤の事などすぐに忘れた。
侮りがたし!侮りがたし、永倉アラタ!と思いながら斎藤は早足で歩いていた。同時に考えていたのは、こんなに緻密な計画をたてて挑んでいるのに何故勝てないんだろう?ということだった。
気がつくと、道場の近くだった。中から誰かが稽古しているらしい気配がした。
“誰だろう?気配は一つしかしないようだけど”
入ってみると井上源三郎だった。木刀を振るう井上の身体には汗が光っている。
“こうなったら、井上さんでもいいかな”
本来の目的からズレてきている気がしたが、斎藤は考えないようにした。とりあえず、一勝が欲しい。そうしたら弾みがつくと思った。
「井上さん、おひとりで稽古ですか?」
斎藤はそう声をかけた。井上は動きを止めて、ゆっくりと斎藤に向き直った。
「おや、斎藤君。どうしたんじゃね?」
井上は不思議そうな声を発した。その顔にも汗が流れている。
「今日は巡回に行く日じゃなかったのかね」
斎藤は一つ深呼吸した。この人は近藤局長よりも早く入門したくせに、あっさり局長に追い越されたような人だ。腕前もたかがしれてると見た。
「井上さん。僕と勝負しましょう!」
斎藤は大きな声で言った。井上は眉毛をひくひくさせた。その直後だ。
バキャッ!
井上の手から滑り落ちた木刀が道場の床に落ちて、床板をぶち割って刺さった音だ。
“なにぃっ!?”
斎藤は戦慄した。道場の床板を容易く突き割るとは。あの木刀はそれほどの重量だというのか。しかもそれほどの重量の木刀を、ああも軽々と振るっていたのか?
“なんて事だ・・・井上さんも人知れず努力して・・・くっ!”
「何じゃと?年を取ると耳が遠うなって・・・もう一度言ってくれんかの?」
「いえ、何でもありません。失礼しました」
斎藤は小さく答えると、危なっかしい足取りで歩き去ってしまった。
「・・・はて?島田君と切磋琢磨しとると思っておったが」
井上は木刀を引っこ抜いて、不思議そうにつぶやいた。
もうすぐお昼どきであったが、こうなったら後には引けない。斎藤は半ば意地になっていた。次に狙うのは藤堂だった。
“状況をわかっているのかいないのか、イマイチ判断できないあのお気楽口調。存在感がなく、風が吹いたら飛んでいってしまいそうな、ほっそりした身体つき。そしてそして、触ったら柔らかそうな、綺麗な金色の髪・・・”<注・すべて斎藤の主観>
根拠はないが、勝てるかな?勝てそうだ。斎藤は無理にでもそう思うことにした。
「藤堂さーん?」「藤堂さーん」「藤堂さあん!」
屯所じゅうを探し回ってようやく見つけた藤堂は・・・割烹着姿であった。
「藤堂さん。僕と勝負してください」
斎藤の言葉を聞いた藤堂は、何が楽しいのかという感じの笑顔でこう答えた。
「えー?でもー、私お昼ご飯の準備あるしぃ」
藤堂の言葉に斎藤は、なるほど一理あると思った。腹が減っては戦はできぬという格言(諺かな?)がある。自分も腰を落ち着けて腹ごしらえするか、と思いかけた。
ところが!事態は思わぬ展開を迎えた。
「あ、そーだ。だったらお料理対決でも、私はいいよー?」
藤堂がこんな事を言い出した。へらへらと、幸せそうな笑みを浮かべたまま。
「ええ!?で、でも僕は料理なんてやったことないから」
「・・・ふーん、そうやって逃げるんだ。卑怯者」
卑怯!卑怯卑怯ひきょうひきょうヒキョーヒキョー・・・・・・。斎藤の耳にその言葉がこだました。卑怯・怯懦は士道不覚悟!逃げるわけにはいかない。
“ここで逃げたら切腹だ!しっかりしろ斎藤!”
今までにもさんざん逃げまくっているくせに、それらの記憶は頭から追い出して斎藤は闘志を燃やした。この挑戦、受けねば『
「ま、無理にとは言わないけどねー」
「いいでしょう藤堂さん。勝負しましょう!」
「あははー。そうこなくちゃ」
さて・・・以下、昼食の様子を『会話形式』でお届けしよう。
永倉「うめー!やっぱ、へーのメシは最高だよなー!(バクバク)」
原田「井上さんだって上手だけど・・・確かに今日のは秀逸よね」
谷マ「お姉様、そんなに急いで召し上がらなくても」
谷ミ「・・・(モグモグ)お代わり頼めるか・・・?」
谷マ「はいどうぞ、お姉様。ところでそっちの・・・・妙な物は何ですか?」
藤堂「ああ、そっちは斎藤くんの。愛情込めて作ったそうだけどねー」
井上「ほうほう、どういった風の吹き回しかの?」
谷シ「・・・こっちの変なのも食べなきゃいけないんですかぁ?」
??「周子さん。そんな生ゴミ料理、野良猫だって食べないですよぉ」
谷マ「人も料理も見かけだけで判断してはいけませんよ(ぱくっ)・・・うっ」
谷ミ「因幡に語り伝えられている話を思い出したわ(妹に付き合って食べた)」
原田「谷さん、その『話』ってなあに?」
井上「儂も興味があるのう。三十華さんは備中の生まれではなかったかな」
谷ミ「鳥取城攻防戦がおこなわれた、天正九年のこと・・・」
井上「ほお、天正と言えば戦国後期、三百年近くも前(一五八一)じゃの」
谷ミ「羽柴秀吉率いる包囲軍は、あらかじめ米の買い占めをおこなって・・・」
谷マ「お、お姉様。その話は今は・・・ううう」
谷ミ「兵糧が城に運ばれないよう手を打ってから攻めたのよ」
谷マ「だから、お姉様ってば!」
谷ミ「兵糧が尽きた城内では、戦死者の肉さえ厭わず食べたと言うわ」
谷マ「お姉様、みなさんお食事中なんですよ」
谷ミ「特に脳みそが美味だとされて、死者の首を仲間内で奪い合ってね・・・」
原田「・・・沙乃、食欲なくなっちゃった・・・ってアラタ?」
永倉「んー?どうしたんだよ沙乃。いっぱい食わないと大きくなれないぞ」
原田「ちょっとあんた、今の話聞いててよく食が進むわね!」
永倉「話?・・・わりいな、食うのに夢中で全然聞いてなかった。何だって?」
井上「まあ、沙乃ちゃんは感受性が高いから仕方ないかもしれんのぅ」
谷シ「アラタお姉ちゃん。こっちの『生ゴミ料理』というのは食べないですか?」
永倉「あぁん?何言ってやがんだぁ?生ゴミってのは料理じゃねえ、ゴミだろ」
谷シ「へー、これってゴミだったんですかぁ。ふーん(じろじろ)つんつん」
永倉「ああ、駄目だ駄目だ。生ゴミはな、確か黒い袋に詰めて口をぎゅっと縛るんだ」
谷シ「はぁい。(黒い袋を持ってきて放り込む)どさどさっ。ぎゅうーっと縛って」
永倉「よおし偉いぞ。これでまたおめえは、一人前の隊士に一歩近づいたぞ!」
藤堂「二人とも正直だねー。正直なのは良いことだけど、正直過ぎるのも・・・」
谷シ「わぁすごぉい。アラタお姉ちゃん、お料理全部食べちゃったですぅ!」
藤堂「斎藤くんのは料理じゃないって事か・・・あ、こころちゃん。後片づけ手伝ってねー」
結果は出た。ちなみに黒い袋は平隊士・緋村こころが何処かへ持って行った。
“こうなったら、何としても!”
斎藤はそう心に決めて、午後からも勝負をしかけて回った。強そうな相手だったらもう誰でもいい。剣術の勝負でなくってもいい。とにかく勝ってやる。
「あ!・・・ねえ周子、ちゃん。お姉さんの万沙代さん知らないかな?」
屯所の近くの道ばた。ぼーっとしていた谷周子をつかまえた。
「ねえさまですかぁ?大坂に戻るって言ってましたけどぉ?」
・・・相手がいないため、対戦する事はできなかった。次だ。
「沖田さん、体調はいかがです?もしよろしければ僕と勝負してもらえますか」
沖田が自室で伏せっているとの情報を入手し、挑戦しようと訪れた。
「駄目です!絶対安静なんですから、ほかを当たってください!」
・・・看護にあたっていた山崎に叱られ、すごすご退散した。つぎだ。
「あ、そこのキミ。緋村をみなかったか?」
目にとまった平隊士を呼び止めて緋村の居所を問いただした。
「こころさんっスか?さっきカワラがどうとかと言って出かけましたっスよ」
カワラ?河原か。おのれ逃げたな。まあいい、あいつは後回しだ。次。
屯所の中で退屈そうにぶらぶらしていた山南に挑戦した。
「おや、どうしたんだい。え、勝負?・・・だったら碁の相手をしてくれないか」
碁?そういえば山南さんが剣を振るうのを見た覚えが・・・一回あったかな?
「そんな嫌そうな顔をしないで。武士は頭から強くなれ、と言う格言もある事だし」
そう言われれば拒むわけにはいきませんね。勝負しましょう。
「その意気だよ。ああ、一回ごとに金を賭けるとしようか。気合いが入るからね」
・・・・・・全戦全敗。有り金を全部巻き上げられてしまった。つぎ。
屯所の中を忙しげにうろついていた土方に挑戦した。
「む?・・・そうか、よかろう。新しい拷問法を思いついてな。被験者を探していた」
いや、そうではなくて勝負を・・・。
「当然これは勝負だ。私の責めに耐えられれば、おまえの勝ちだ」
なるほど、そういう勝負ですか。しかしそれを受けるのは少し不安な気が。
「不安がる事はない。苦痛はやがて快楽へと変わるのだ・・・ふっ楽しめそうだな」
・・・全力で逃走。未知の世界へ足を踏み入れる勇気はなかった。ツギ。
自室に引きこもっていた近藤に挑戦しようかやめようかと悩みながら行くと・・・。
「あ、斎藤くんだ。今お裁縫しているんだけど、よかったら一緒にやる?」
今度はお裁縫ですか。今気づいたんだけど、何でもかんでも受けて立つのは・・・。
「やっぱりお裁縫は上手でなきゃ。家庭的な人はモテるって言うから」
ぬう!?そう言われては逃げる訳にはいかない。島田のために頑張らねば。
「もっと肩の力をぬいて。あっ・・・痛そう(ぞくぞくっ)大丈夫?血が出てるよ」
・・・・・・針で指の先を刺しまくり。優しく慰められた。ツ・ギ。
傷心の斎藤は町に出た。もうすぐ日が暮れる。ついに一勝もできぬまま一日が終わる。一人で寂しくさすらって心の傷を癒すには、京の町は広すぎた。
“結局僕は負け犬さ・・・ハハハ、みじめだ。空気がすごく寒いよ”
周りの景色なんかちっとも見ないで、斎藤は力無く足を進めていた。とある曲がり角にさしかかった。向こうからやはり周りを見てなかったのか、一人の男が走り出る!
「うわっと!」「うわっとと!」
斎藤はぎょっとなって、身体をひねった。しかしそいつも鮮やかな身のこなしで斎藤をかわすと、ちょっと忌々しそうに斎藤を見つめてきた。
“・・・何だこいつ?今の身のこなし、ただの町人とは思えないぞ”
ひょろりと背の高い、やせっぽちの男だ。一見普通のオヤジに見える。
“しかし人は外見では判断できない。こいつ、もしやキンノー?”
「おいおまえ。名を名乗れ」
今までの鬱憤が、斎藤の声を凶悪なものにしていた。オヤジは首をすくめて名乗る。
「は、はいっ。私は山口一郎といいます。そ、それが何か?」
山口・一郎だとお?と斎藤は思った。もう何もかも怪しく思えてならなかった。どーも偽名っぽい。加えてさっきの動きだって怪しい。長州か薩摩の手の者に違いない。
「おまえ、生まれは?」
「は?・・・生まれは江戸であります」
山口は背筋を伸ばして、堂々と答えた。それさえ斎藤の気に障った。
「嘘をつけ。貴様、長州か薩摩のスパイだろう?」
斎藤は今にも刀を抜かんばかりにして問いつめる。こいつは限りなくクロに近い。
「な、何をいきなり・・・私は江戸で豆腐屋を・・・」
「黙れ」斎藤は聞く耳もたなかった。正常な判断力を失っていたと言ってもいい。
「話を聞いてくださいよ。私は見廻り組の・・・」
「見廻り組だと!」斎藤は刀を抜いた。こいつはクロだ、と思った。いくら僕が物を知らないといっても限度がある。見廻り組にはそれ相応の身分の者しか入れないのだ。こんなしょぼいオヤジなどが入れるものではない。
「見廻り組の名を語る痴れ者め。新選組の斎藤はじめが成敗してくれる!」
「ひいいっ!話には聞いていたけど、新選組ってやっぱり危ない集団みたいだ」
山口は一瞬悩むような顔をしたが、くるりと背を向けて逃げ出した。
「待てえ。やっぱり貴様キンノーだったんだな!」
「違います!さっきも言ったとおり私は江戸で豆腐屋・・・は店じまいして京都まで来たんでした。しかしですね、とにかくキンノーなんかじゃありませーん!」
斎藤は刀を納め、逃げる山口を追いかけた。見た目より足が速いが、僕の方が少し上みたいだ。じきに追いつけるだろう、と思った。
だが、それが甘い考えであった事にすぐに気づいた。山口は、追いつかれそうになると突然斎藤の方に逆走してきた。そして斎藤の腕をかいくぐって逃亡を続けたのだ。
“こいつ・・・かなりできる。やはり間者の可能性が・・・”
一体どれくらい追いかけっこをやっていたのか。いつしか二人は夕焼けの中を走っていた。かなり息が切れていた。それでも二人は追い、逃げる。
そしてついに。斎藤は行き止まりの小路に、山口を追いつめた。
「はあ、はあ・・・やっと追いつめたぞ。観念しろ、キンノーめ」
「ぜえ、ぜえ・・・本当にしつこい人だ。話をちゃんと聞いてくださいよ」
しばらく二人は、息を整えていた。そして二人同時に声を出した。
「悪は・即刻・斬り捨てる」「耳にまで神経がいってないんですか?」
お互いの発言を受け止め、同時に反応した。この二人、結構息は合うのかもしれない。「僕の耳は正常だ!」「問答無用ってやつですか?」
斎藤は怒りに燃えた顔に、山口は焦燥で青い顔になっていた。
「新選組の方。私はこの動乱の時代、何をも為さず生きている自分を恥じて・・・」
斎藤は山口の話など、聞くつもりはなかった。頭に血がのぼっていた。
「話は番屋・・・じゃなかった屯所で聞く。おとなしくしろ」
斎藤がそう言った、まさにその時であった。背後で気配がしたのは。
「・・・なにやつ!」
斎藤が振り返るのに合わせたかのように、地鳴りのような音がした。そして土や砂が斎藤の視界を塞いだ。石くれなどが身体に当たるが、それは大したことはない。
「・・・くっ!?」
斎藤は手びさしで目をガードしながら、油断なく身構えた。誰かは知らぬが、襲ってくるのならば相手になるつもりだった。
風が、頬を掠めた。否。風のように斎藤の身体を掠めていった者があった。
「うわあっ!」山口が悲鳴を上げてその場にへたり込んだ。その山口に対して、
「大丈夫ですか、災難でしたね」と謎の人物が声をかけていた。
土煙が晴れた。斎藤は隊服の埃を手で払う。山口の方へ向き直った。
「お、おまえは・・・!どういうつもりなんだ?」
「ひそひそ・・・」その謎の人物に諭されて、山口一郎はぺこぺこ頭を下げながら、斎藤の脇を素早く駆け抜けて行ってしまった。斎藤はもうそれには見向きもしなかった。
小柄で痩せた身体。赤い髪。頬にはトレードマークの絆創膏。
「こんなところで何をやっているんです?・・・あなたは」
新選組の(まだまだ)新参者・緋村こころは、いつもとは違う『声』でそう聞いた。
「それはこっちの台詞だ。おまえやっぱりキンノーだったんだな?」
斎藤の言葉を、緋村はこめかみ辺りを押さえて聞き流した。そして、
「山口さんは、こころがよく行く豆腐屋さんで、日雇いで働いてるおじさんなんですー。だからイジメちゃ駄目ですよぉ」ころっと口調を変えて普段通りの声音で言った。
「話は藤堂さんたちから、あらかたは聞いて知ってますけど」
緋村は心なしか、肩を揺するようにしていた。額には汗が浮いている。
「呆れて物が言えないってのが、正直な感想ですね。それとも昼間、こころに生ゴミ料理と酷評されたのが悔しくて、それで荒れているんですか?」
「おまえに僕の気持ちがわかってたまるか!」
斎藤は言い返した。新参者のおまえなどに、僕のこの狂おしいまでの想いが理解できるわけがない。理解されてたまるものか。僕の、島田への愛は・・・。
「あなたの語る『愛』って何ですか?」
斎藤の内心を見通しているかのような、緋村の言葉。またもや『声』が変わる。
「あなたの『愛』とは他人と比較しないと語れない、そんなものなんですか?」
斎藤は答えに詰まった。返す言葉がなかった。
「皆さんに勝てば、あなたの腕が一番・・・勝てれば、それはそうかもしれません。でもそれが『あの人の一番』って話と、どうつながるんです?」
「・・・黙れ・・・」緋村の言葉が、斎藤の身体の内側をちくりちくりと刺す。
「だったら、こころがあなたに勝ったら、こころが『あの人の一番』?」
「・・・そんな事はさせない。認めない。認めたくない!」
斎藤は刀を抜いた。僕が一番なんだ。島田との付き合いは一番長いんだ。一緒に組んで巡回に出たのだって一番多いんだ、誰にも譲れないんだ。一番は僕なんだ!
「あなたの口にする『一番』なんてその程度のもの。一体誰が認めるんです?」
うるさい。それ以上言うな。聞きたくない。
「あなた一人が舞い上がって、事ある毎に『一番』と口にしても誰も認めませんよ」
黙れと言っている。でないと、力ずくで黙らせるぞ。
「一番なんてものは、本人じゃなく周りが認めるものでしょう?」
棒立ちの状態で、緋村は斎藤の肺腑を抉る言葉を放ち続ける。
「あなたの口にしているのは『愛』じゃなくて単なる『欲望』でしょ?」
「黙れ黙れ黙れ!」斎藤が構えた。もう我慢できない。
“こいつのすべてを、否定してやる。でないと僕は・・・”
「牙突、ですか。あなたの・・・」緋村は言葉を切って、目を伏せ深呼吸した。
「斎藤さんの『一番』ですよねー。悪・即・斬ってヤツですか」
普段通りの『声』に戻って緋村は、自分の刀の鞘に左手をかけた。
「こころの飛天美剣流は、
抜・即・斬。抜いた(抜かれた)時は即ち斬った(斬られた)時と言う事である。
「こころとも勝負するんですか?こころは、いつでもいいですよぉ」
左手だけで刀の鞘を握ったまま、右手はだらりと下げて、緋村は立っていた。
「構えた方がいい。僕は本気だ。手を抜くつもりはない」
「一番になりたいんでしょ?だったらそうすればいいじゃないですか」
嘲るような、緋村の物言いに押されるようにして斎藤の牙突が唸りをあげて発動した。一直線に緋村目がけて突進する。狙うは一点、緋村の右の肩口。
“抜刀の起点の反対側、ここにヒットさせれば美剣流の速さは半減する”
緋村はすっと右手を動かした。だがそれは斎藤の想像とは異なっていて・・・
“何っ?牙突の先端に!?”
緋村は手のひらを、斎藤の放った牙突の先にあてがうように無造作に広げたのだ。このままでは手が吹き飛んでしまう!そう思った斎藤の意識が、一瞬だけ緋村の右手に集中した。その一瞬に、緋村の身体が稲妻のような閃きを見せた。
緋村の左半身が鋭く引かれた。そして左半身が突き出され、右半身が引かれる。その身体の動きに乗せて『刀が抜かれた』。鞘に作用した力が、刀に命を与えたのだ。
斎藤の右脇腹に鈍い痛みが走った。鞘から抜けた緋村の刀の柄が、斎藤の脇腹に命中していた。息が詰まり、牙突の突進力が弱められる。
“ぐっ、しかしまだ牙突は生きているぞ”
斎藤の左腕から繰り出される、必殺の突き。その突きが右肩を貫く・・・寸前に緋村の身体が、右手が動いた。
予想とは違った手応え。自分の刀の中程をしかと素手でつかまえている、緋村の手。いつの間にか鞘に収まっている、緋村の刀。そして息がかかりそうな程の距離にまで迫っていた、緋村の顔。すべての事象が、斎藤の意識の外側でおこなわれていた。
斎藤の刀も緋村の手も血にまみれていたが、他に怪我はしていないようだった。牙突を真っ向から受けたにしては無事すぎる。
緋村の身体の動きは、牙突の左腕が突き出てくるタイミングに絶妙に合っていた。突きの威力が最小であるように、技の威力をうまく殺していた。だがそれにしたって。
「う、うわっ緋村!怪我はない!?」
斎藤はあわてて刀を下ろし、緋村の身体に手をのばした。牙突が命中した肩に触れると妙な感触があった。異様に・・・硬い?
「えへへ、こんなこともあろうかと『防具』を仕込んでおいたんですよ、」
服の切れ目を裂いて見せる緋村。薄布にくるまれた黒い、硬質の物体が見えた。それは牙突の直撃を受けて割れていた。
緋村は昼食後に事の次第を聞いた。そしていずれ自分が斎藤と戦う事になると推察し、それに備えて『防具』を入手しに出かけたのだ。
それが瓦だった。ただ、瓦をまるごと仕込むのは実に重い。またわざわざ購入するのは勿体ない。そこで知り合いの職人を訪ね、廃棄処分される瓦の一部を貰ったのである。
“斎藤さんの牙突は一点を目がけて突き進む技。その一点を防御すれば・・・”
狙われる一点とは『抜刀術の起点である右肩』に違いない。緋村は飛天美剣流の極意の一つ『読み』でそう断定した。(緋村の洞察力は、常人の三倍はあるらしい)
「瓦ですよ。正確には瓦の欠片です。おかげで肩がこっちゃって」
「そ、そうか。それで無事だったんだ。カワラって、河原じゃなくて瓦の事だったんだね・・・・・って手は?手は無事じゃないだろ!」
緋村は言われて初めて気づいた(わけないだろうが)ように、自分の右手を見た。手のひらがざっくりと切れて血が出ている。それは地面にも滴り落ちていた。
緋村は少しの間、その血に見とれている感じだったが不意に目を上げて、
「斎藤さん・・・歯、食いしばっててくださいね」
こう言った。斎藤が言葉の意味をはかりかねていると
バチン と衝撃が来た。斎藤の頬に、緋村の血がついた。
緋村は手ぬぐいを取り出すと、手早く自分の手の血をふき取り、それから右手の傷口にそれを巻き付けた。あっという間の事で斎藤は何も言えなかった。
「目は覚めました?」
緋村は笑顔でそう聞いてきた。斎藤が呆気に取られていると、
「脇腹は平気ですか?」
言われて斎藤は思い出した。ズキズキと痛みだした脇腹を押さえながら言う。
「そ、そうだ。一体何がどうなって・・・」
緋村の刀が抜かれ、いつの間にかまた鞘に収まっていた。どういう事なんだ?
「ヒリュウセン。体捌きだけで刀を飛ばし、間合いの外から攻撃する飛天美剣流抜刀術。その後距離を詰めての、斎藤さんの刀掴みと片手納刀術とを同時にやったんです」
斎藤にはよくわからなかった。そもそも見てもいない事柄を理解しろという方が無理な話なのだ。ただ、緋村の速さが常識を越えているであろう事は感じ取れた。
「誰かのために『一番』になる事と、誰かのためにお料理する事は一緒なんですよ」
緋村は言いながら(さっきと別の)手ぬぐい?を取り出した。花柄の小さな布。
「どっちも、けっこう時間がかかるものなんです」
斎藤は黙ったまま、緋村の言葉を聞いていた。
「あせっても、あわてても、独りよがりになっても駄目なんです」
ゆっくり時間をかけてやっていかないと、うまくいかないんですよ。緋村はそう言って斎藤に手の中の布を差し出した。
「顔、拭いて下さい。そんな顔で屯所に帰ったりしたらおおごとですよ」
言われるがままに斎藤は、緋村の渡してくれた布で頬の血を拭き取る。
「島田さんは、はっきり言って倍率高いですよー。昼間に顔を合わせた人たちの中で、島田さんの事を嫌いだっていう人は一人もいやしませんから。激戦必至ですね」
緋村は斎藤が頬を拭いている間、足をトントンさせながら自信ありげに、
「その島田さんにしたって、島田さんらしい信念を胸に秘めて日々戦ってるんです・・・斎藤さんも、斎藤さんらしい強い信念を持って戦えばいいじゃないですか」
頬を拭き終わった手から布を奪い取って、緋村が斎藤をビッと指指した。
「自分の信念を貫けなかった人の生き様なんて、みじめなものですよ」
こころの知ってる斎藤さんは決してみじめじゃないし、そんな斎藤さんにならこころ、百回戦っても負ける気しませんよー。笑ってベエーと舌を出す緋村。
「言ったな」斎藤はようやく言い返す気力を取り戻した。
「百回やったら、こころを八十回は泣かす事になるさ」(おっと呼び方が変わった?)
「えへへー、その意気ですよぉ。やっぱりこころの最大のライバルはそうでなきゃ」
「それって、他のみんなは眼中になし・・・って事かい?」
斎藤の心は、さっきまでとはうってかわって明るい物になっていた。そうだったんだ。僕は何を一人で悩んでいたんだ。みんなに喧嘩をふっかけて回って、町の人に八つ当たりして、大切な同士(こころの事だろうか?)に怪我させてしまった。
“大切なのは、信念を貫くと言うこと。僕の信念とは・・・”
島田と共に、悪即斬な生き方をする。島田の目指すものを僕も目指す。それこそが島田の『一番』になると言う事なのだ。
“これからも、おそらく長く苦しい戦いの日々は続くはずだ。だけど・・・”
これから先何があっても、たとえ島田と離ればなれになろうとも、世の中がどう変わろうとも、僕は決して自分の生き方を変えはしない。これこそが僕の『愛』だ。
「さて、と・・・こころはこれで失礼しますね」
こころはそう言って、斎藤を置いて駆け出した。
「あ、こころ、ちょっと・・・・・」
言いかけて、こころを追おうとした斎藤はぎょっとなった。路地の入り口?の地面が、まるで大きな獣の爪で引き裂かれたかのようになっている。
“なんだこれは?・・・まさか、これも緋村の技で?”
その答えを知るためにも、斎藤は路地を駆け出た。
「あれ?いない・・・早いな」
緋村の姿はどこにもなかった。まさに風のように去ってしまっていた。いや、或いは今までの出来事は、全て夢だったのではないか?斎藤にはそうとさえ思えた。
「・・・とにかく、帰ろう」
斎藤は刀を鞘におさめて、屯所へ戻る事にした。
幕末最強の豆腐屋、山口一郎。彼は腕っ節が強い、正義感に燃えた豆腐屋だった。薩摩とも長州とも関係ない。彼は見廻り組に加わることもできず、かといって新選組に加わる事は異様なまでに拒み、江戸へと帰っていった。彼は何故、新選組を嫌ったのだろう。
今日の出来事が、彼の頭に浮かんだわけでは・・・絶対無いと言い切れるだろうか?
屯所の近くまで来た時、前方から見知った顔が近づいてきた。
「あ、斎藤さん」沖田だった。顔色はあまり良くない。が足取りはしっかりしていた。
「昼間、訪ねてきてくれたそうですね。何か御用だったんですか?」
斎藤は首を横に振る。もういいのだ。
「そうですか・・・あ、そうそう。明日一日、道場は立ち入り禁止ですよ。道場の床板が古くなっていたとかで、大工の喜助さんに来てもらうそうです」
「わかりました。ところで沖田さん、もう出歩いても?寝ていた方がいいのでは?」
道場の事より、今の斎藤にはそちらの方が気がかりだった。
「ええ、だいぶ良くなってきました。だからちょっと散歩してみてるんです」
沖田は笑顔でそう答えると、(何故か)眼鏡をくいっと動かした。
「ゆーさんと島田さんを除けば、斎藤さんだけです」
ほかの人は、最近は慣れてしまったのか、あたしが寝込んでいても何も言ってくれなくなりましたから。こう言って沖田は自嘲気味に笑っていた。
「あ、それはそうと・・・」斎藤は躊躇いながらも、意を決して聞いてみた。
「緋村は・・・その・・・」だが、どう言えばいいのかわからなかった。
「あ、それなんですが・・・」沖田の顔がパアッと明るくなった。いつもの笑顔だ。
「こころさんが、調理中に手を切ったらしく、右手に包帯を巻いてました」
斎藤は一瞬呼吸さえも止まった、ような気がした。やはりあれは夢などではなかった。そんな斎藤の動揺を知ってか知らずか、沖田は笑顔でこう続けた。
「黙ってて欲しいって言われました。だからこの事はまだ、へーちゃんとあたししか知りません・・・『普通』でしたよ。だから斎藤さんも『普通』にしてていいと思います」
沖田は散歩の続きだと言って、早足でどこかへ歩いていってしまった。もしかして沖田さんはすべて知っていて、話をしに来てくれたのだろうか?と斎藤は思った。
どちらにせよ、僕が緋村に何かをしてあげる必要はない。ただまっすぐに前を向いて、自分の信念を貫いて行こう。それが、僕の生きる道だから・・・。
その後。緋村は屯所内にて、『斎藤さんにキズモノにされました』『初めてだったのに』『痛くて血が出ちゃいました』などの発言を繰り返した。当然、隊は大騒ぎとなった。
土方は「斎藤、やってくれたな」と刀に手をかけた。永倉は「見損なったぞ斎藤!表へ出ろ!」とハンマーを振り回した。谷三十華は「同じ目に遭わせる」と斎藤を背後から槍で突こうとした。藤堂は「ま、血くらいは出るかもねー」と楽しそうに笑った。
そして近藤は、とても言葉では言い表せないほど取り乱し、屯所の壁を壊して回った。
とまあ、それはそれは楽しい騒ぎとなるのであるが、今は語らない事にする。
終了
<今回は緋村こころを登場させてしまいました。副長ラブ様、許可を下さり感謝です。>
<同じく谷三姉妹は米倉さとや様にも感謝。お色気は・・・・・肝に銘じておきます。>
若竹です。
ジャックスカの行殺SS第4弾です。副長ラブさんのオリジナルキャラ、緋村こころちゃんに加えて、米倉さとや様の谷3姉妹も登場。大盤振る舞いです。
ところで、幕末最強の豆腐屋、山口一郎は実在の人物です。蒔田相模守広孝をお得意様としていたのですが、蒔田が京都見廻組の支配役に任ぜられると、一緒に上京してます。本当にかなり強かったらしく、見廻組の幹部たちも驚いたそうなのですが、見廻組は幕臣エリート集団だったため、見廻組には入れませんでした。新選組に入るように見廻組幹部から説得されたそうですが、なぜか彼は新選組に加盟してません。その辺りの史実をうまーく・・・・ってなんでお前はそんな事を知ってるんだ!? さすが我が友、おそるべし!
彼はやっぱりネット環境にないので、原稿はフロッピーディスクで届けられてます。感想は若竹掲示板か、若竹宛にメールをいただければ、私が彼のところに印刷して届けます。