偽・行殺(はぁと)新選組ふれっしゅ番外編

デザートクエストW 道外れしモモたち(前)


 この作品は『行殺』の世界で発生したかもしれないし、発生しなかったかもしれない些細な事件・任務・冒険の顛末について語るという、妙なコンセプトで作られたものだ。
 食後のデザートを食するような感じで読むのがいい。だからDessertQuestシリーズと呼ぶ事にする。


 ある日の事。今日も今日とてキンノーバトルに興じていた新選組メンバーの前に、
「見つけた! あなたたちが、都を騒がしている鬼の一味ですね!」
 謎の少女が現れた。手に刀を持ち、日の丸の印の鉢巻きをしている少女だ。
「何だ? こいつは」
 ちなみにその場にいたのは永倉・島田・斎藤そして何故か土方。
「私とて、たまには巡回に出る事もある」
 とは、島田に問われて土方が答えた言葉である。が、別に理由があるのかもしれなかった。
「あなたたちが、兄さんを・・・許せない!」
 謎の少女はそう言うなり刀を抜いて斬りかかってきた。
「えーい!」
 しかし、その動きはお世辞にも熟達した戦士のそれではなかった、ので避けるのに苦労はなかった。
「きゃあ!」
 刀を落としてその場にばったりと倒れ伏す少女。再び立ち上がって刀を構える・・・かと思いきや、
「・・・うう、やっぱり私にはかたきちは無理なんだわ。ぐすっ・・・えーーーーーん!」
 泣き出した。見れば、その涙のあふれ方は滝のようだった。
「・・・何だかなあ。アタイら何もしてねえのに」
 永倉の言うとおり、彼らはまだ少女に指一本触れてはいなかった。
「・・・天下の往来だと言うのに、はた迷惑な。これでは我々が少女を苛めているようではないか」
 土方が不愉快そうにそうつぶやくと、
「私は知らん。その娘をどこか適当な所へ連れて行け」
 そう言って背を向け、一人で先に帰ってしまった。
「・・・えーと。アタイも、な。だから島田、斎藤。後はよろしくな!」
 永倉も、頬をぽりぽり掻きながら、そそくさとその場を立ち去ってしまった。
「えーーーーーーーーん! どうせ私は、勉強できるだけのお馬鹿さんなんですぅ!」
 後には、滝涙の少女と二人の隊士が残された。
「ね、ねえ島田。僕たちでどうにかしないといけないみたいだね」
「・・・・・」
 島田は黙っていた。彼らの周りには人垣ができている。新選組の隊士が若い娘に乱暴をはたらいているとしか見えない状況だ。島田はぽんと手を打った。
「斎藤。俺はこの野次馬たちを追い払ってくるから、この娘の事は頼んだぞ」
「え、ええっ!?」
「(野次馬たちに向き直って)おらおら、見せ物じゃないんだから。しっ、しっ」
 島田はそう言いながら、野次馬たちを追い払いつつ・・・自分も遠ざかっていった。
「し、島田ー・・・そんなぁ」
「えーーーーーーん! えーーーーーーん!」
 斎藤は泣きじゃくる少女を前に呆然としてしまった。
「僕を一人にしないでくれよー・・・と泣き言を言っても仕方ないか」
 覚悟を決めた斎藤は、できるだけ優しい口調で少女に話しかけてみた。
「あの・・・ねえ、君。名前は何て言うの? どこから来たの?」
 少女は相変わらず、泣いてばかりいる。斎藤にはその理由がわからない。
「・・・犬のお巡りさんじゃないけど。困ったな」
 とりあえず、往来の真ん中はまずいと言うことで、斎藤は少女の手を引いて(落ちてる刀も拾って)路地裏の方へと移動することにした。
「と、とにかく人目につかない場所に・・・さあ、おいで」
 傍目には少女をそのテの店に連れ込もうとしているようにも・・・見えなくはない。
 少女は泣きながらではあるが、おとなしく斎藤に手を引かれてついてきた。
 そして路地裏。まだ少女は泣きやまないでいた。
「えーーーーーーん!」
「どうしよう・・・つい人気のないところへ連れてきちゃったけど」
 場所が変わっただけで、事態は何も変わっていない。
「ね、ねえ君。そろそろ泣きやんでくれないか、な?」
「えーーーーん・・・ひっく・・・・・・」
 少女の泣き声が少しおとなしくなった。涙で潤んだ目でじっと斎藤を見る。
「・・・えーっと・・・君は」
 斎藤は何を言って良いのかわからず、天を仰いだ。
「・・・!」
 不意に少女は斎藤が持っている刀(むろん少女のものだ)に気づくと、猛然とそれを奪い取った。
「・・・・・・」
 そして憎しみをたたえた目で斎藤を見た。
“僕はどうすればいいんだ?”
 斎藤が内心そう思った時だった。路地の奥の方からこんな声が飛んできたのは。
「あら斎藤じゃないの。あんた路地裏に女の子連れ込んで何しようって言うのよ?」
「アタシたちお邪魔だったみたいね☆」
「原田さん。それに・・・芹沢局長?」
 珍しい取り合わせだな、と斎藤は思った。しかしこれは地獄に仏だと思い直して、
「じ、実は・・・」
 すべてを話して助けを請う事にした。
 今日の芹沢はいつにも増してきらびやかな服だった。多分、原田さんを無理矢理お供にして高級呉服店に行って来たのだろう。斎藤はそう考えた。
「・・・なるほど。それは大変だわねぇ」
 あんまりそうは思ってない口調で、芹沢は言った。
「まあ、あんたにそんな事する度胸はないとは思ったけどね」
 原田も隣で、納得いったという顔をしてつぶやいている。
「さて、と」
 芹沢が身をかがめて、少女に目線を会わせた。豊かな二つの・・・詳しくは語れないが斎藤は急いで目をそらした。原田がそんな斎藤を、殺気を込めて睨む。
「どーせ。沙乃は・・・」
 さて、芹沢は少女の目を見つめてこう聞いた。
「アナタ、名前は? どうしてそんな・・・」
 一旦言葉を切って、顎に手を当てた。
「どうしてそんな目をしてるの? 自分以外みんな敵だっていう目よね」
「・・・・・!」
 少女はあわてて目を伏せた。しかし芹沢はぐいとその顔を上げさせた。
「それにその鉢巻き。まるで鬼退治に来た桃太郎みたいだけど・・・わかった! 鬼の居所なら心当たりがあるわよ。新選組のドカタっていう悪い女がいるのよぉ」
「ちょっと、芹沢さん!」
 原田が思わず制止の声を上げる。
「本人が聞いたら大変よ。周りが迷惑するんだから・・・」
「あらぁ? 沙乃ちゃんアタシの事そんなに心配してくれるんだ。嬉しい
 芹沢はそう言うと原田の小柄な身体をぎゅっと抱きしめた。
「ちょ、ちょっと芹沢さん! 苦しいからやめて!」
「ふ、二人とも遊んでないで!」
 斎藤はたまらず二人の間に割って入ろうとした。今は僕を助けてくれないと困る。
「んもう何よぉ。アタシと沙乃ちゃんの仲を裂こうっていうの? いい度胸じゃない」
 芹沢は本気とも冗談ともとれる声で言い放つと、鉄扇を取り出して構えた。
「斎藤クンも沙乃ちゃん狙いなのね? いいわ。決闘よ!」
「ええっ?」
「アタシが勝ったら沙乃ちゃんの事はきれいさっぱり忘れる事! いいわね?」
「いや、だから、僕の言うことを聞いてくだ・・・」
「問答無用よ。武士は刀で・・・アタシは扇だけど・・・刀で語り合うものなのよ」
「ひ、ひえーーっ」
 芹沢の気迫に斎藤はその場にへたり込んだ。勝てない。百回戦っても勝てそうにない。
「・・・くすっ」
 小さな笑い声が聞こえた。見ると、さっきまで泣いていた少女が笑っていた。全員の視線を受けてあわてて口元を隠す。
「そうそう」
 芹沢が鉄扇を懐に入れながら、少女に近づいた。
「女の子は泣いてるより笑ってる方が可愛いわよ、ね」
 原田を振り返りながら、芹沢はそう言った。
「斎藤! あんたいつまでへたり込んでるのよ。芹沢さんの本気とウソ気の区別もつかないの?」
 呆れた顔で原田に言われ、斎藤はおずおずと立ち上がった。
「くすくす・・・面白い人。鬼なんかじゃないって事はわかりましたわ」
 少女にまでこう笑われて、斎藤はすごく惨めな気分になった。
「ほらほら女の子のものはとっとと返す」
 芹沢から言われて、あたふたと斎藤は少女の刀を返した。
「ありがとう。斎藤さん」
「で? アナタはどこから、何をしに京都まで来たの?」
 芹沢のこの問いに、少女は少し沈んだ顔でこう話し出した。
「実は・・・私は兄さんを探しに来たんです。私たち『桃太郎一族』は代々この世の鬼を退治してきたのですが兄さん・・・兄はこの京都に巣くっている鬼どもを退治に行くと言って家を出たきり帰らないのです。必ず書くと約束した便りもなく、年月だけが過ぎていきました。私は待つのに耐えきれず、兄が向かった京の都へやってきました。兄を探すために」
 芹沢が顎に手を当てて考えている間に、原田がこう聞いてきた。
「あんた、探すって・・・何か当てはあるの? 一口に京と言っても広いわよ」
「そうだよ、ねえ・・・ってまだ君の名前を僕たち聞いてなかったよね」
 斎藤のこの言葉に少女は、そういえばそうでした、と笑ってから
「私は桃太郎一族の娘、小桃と申します。兄の名は桃太郎です。一族の長子は皆、桃太郎の名前を受け継ぐのです。ですから私の方が先に生まれ出ていれば私が名を受け継いでいたのです。性別は関係ありません」
「こももちゃん、ね。兄さんの桃太郎クンだけど・・・手がかりはあるの?」
「手がかり、かどうかはわかりませんが、兄もおそらく私と同じ鉢巻きをしているはずです」
 小桃は鉢巻きにそっと触れた。そして目を伏せた。どちらも、ほんの一瞬の事だった。
「この京都にいるのは間違いないです。兄は出立前に私たちにそう言い残していたのですから。そう思って足を棒にして探し回っていた時に・・・」
「僕たちを見つけたって事だね?」
 斎藤の問いに小桃は頷く。
「見つけた! と思いました。情け容赦なく人を斬る様を見て。あいつらが、兄の言っていた鬼だと。兄はおそらくこいつらに敗れて重傷を負い、帰るに帰れないのだと」
「まあ確かに、土方さんはよく『斬り捨てて構わん』って言うけど」
 でも、と斎藤は小桃の手を取った。
「君の兄さんを斬った事はないよ。僕らは君と同じ鉢巻きをした人を見ていないし、隊の誰かが斬ったという話も聞いていない」
「え・・・あ、あの」
 顔を赤らめて戸惑う小桃の様子に気づかず、斎藤はこう捲し立てた。
「君とこうして会ったのも何かの縁だ。僕が君の兄さんを探すのに協力するよ。勿論僕だけじゃない、新選組の他の隊士にも話してみる。きっとみんな協力してくれるよ!」
「あの、斎藤、さん・・・手。手を・・・」
 真っ赤になっている小桃に気づいて斎藤は気づいた。そして硬直した。
“女の子の、手を握りしめて。さっき会ったばかりだというのに。ん? この子の手・・・”
「斎藤・・・あんた見かけによらず、やるわね」
 原田の声であわてて斎藤は小桃の手を離した。
「それに、何あんたは勝手に話を決めてるのよ、局を上げて協力するなんて言って。いつからあんたは局の方針を決められるほど偉くなったって言うのよ!?」
 怒りをかみ殺した声で、原田はそう言って肩をすくめた。
「でも、まあどうしようもないかもね」
 え? と斎藤が思うまもなく。
「よーし! アタシも協力しちゃうわよぉ」
 気合いの声を上げる、筆頭局長の姿が目に入った。
「アタシが他のみんなに声をかけてもいいけど・・・歳江ちゃんはああいう性格だし、話がこじれちゃうと思うのよねー。それに今の京都って物騒だから、できるだけ急いだ方がいいかも。だから」
 芹沢は斎藤をじっと見た。
「小桃ちゃんが桃太郎。で、斎藤クンはそのお供の一人、犬よ」
「ぼ、僕が犬?」
 斎藤はそう聞き返した。さっき犬のお巡りさんは連想したけど、いきなり犬って言われるのは・・・。
「そ。そして沙乃ちゃんは同じくお供の一人・・・猿」
「さ、さ、猿!? キーーーーッ! 何で沙乃が猿なの!?」
「語呂が似てるからかな?それに、きーーっ!て言ってるじゃないの」
 芹沢はさらっと言い返すと、やおら自分の胸に手を当てて
「アタシがお供の一人、キジよ☆ あの羽を広げた美しく優雅な姿。はぁ、アタシにぴったりの役よね」
 斎藤は原田と顔を見合わせた。そして恐る恐る聞いてみた。
「芹沢局長。それって・・・もしかしてクジャクと混同してません? まあ、クジャクもキジ科ではありますけど。それから、羽を広げて誘うのは雄の方です」
 芹沢は一瞬、え? という顔をした。そして。
「やーねぇ。わかってるわよ。貴婦人の略でキ・ジよ。アタシは新選組の貴婦人だから、ね」
 こう主張した。本当の所はわからないが、問いただすのは怖いのでやめておいた。
 こうして桃太郎(兄)を探すべく、桃太郎(妹)と三匹のお供は町へ繰り出したのだった。


 京都の町を、桃太郎娘と三匹のお供が行く。
 先頭は、キジこと芹沢局長。にこにこしながら肩で風を切って歩いている。
 続いて、桃太郎こと小桃がおどおどした顔つきで、恥ずかしそうについて行っている。
 その後ろの両側に、原田と斎藤が付き従う。油断なく、周囲に注意を払いながら。
「まずは・・・」
 芹沢が、ふと立ち止まって一行を振り返る。
「桃太郎は三匹のお供に、団子をあげるのよね。だから小桃ちゃんのおごりって事で」
 そう言って、前方に見えてきた団子屋を指さした。
「・・・・・」
 小桃は、何故か困ったように手をおろおろと動かした。そして意を決したように答えた。
「あの・・・ごめんなさい。私、お金持ってないんです」
 聞けば、京都に着いて早々スリに遭って無一文になったのだと言う。
「はあ・・・まるで島田ね」
 原田が呆れたように天を仰ぐ。斎藤は曖昧な笑みを浮かべる。そして芹沢はと言うと・・・。
「そお?・・・なら今日はアタシがおごってあげるわ」
 スタスタと足早に、団子屋に入って行くのであった。
「おじさーん!お団子ちょうだい!」
 店の中に響き渡る、芹沢の叫び声。店主が引きつった笑い顔で近寄ってきた。
「芹沢さん、小桃ちゃん、何にする? 斎藤も、何でも選んでいいわよ?」
 言葉では斎藤にも言ってはいるものの、原田の目は壁にあるお品書きの方を向いていた。彼女が、斎藤の意見を聞くつもりがない事は明らかだった。それくらいの事はわかるほどの間柄である。
“僕の意見は聞いてもらえそうも・・・まあいいか”
 斎藤は黙って耐える事にした。
「あ、あの・・・」
 しどろもどろな様子の小桃に、芹沢は強く背中を叩いて、
「大丈夫! 何でも好きなもの注文していいわよぉ!・・・あ、おじさん。みたらし団子を四人前ね」
 ・・・勝手に注文していた。発言と行動が一致していなかった。
「・・・・・」
 沈黙する小桃の様子を見て、斎藤はあわてて囁く。
「あ、無理してみんなに合わせる事ないから」
「い、いえ。私は文無しなので。食べられるだけで幸せです」
 小桃は手を振って、笑顔で答えた。その間にも。
「はい。お代。お釣りはいらないわよ☆」
 芹沢は店主の手に、一両を握らせていた。
「・・・あの、お客様」
 ちなみに『京都』の物価は本編冒頭にて、島田が団子を一人前食べられなかった事からおわかりのように馬鹿に高い。一両では、団子の一本さえも食べられはしない。
「あら、足りないの? 足りない分は後で、カモちゃん砲と一緒に支払いに来るから、ね」
「・・・・・!」
 店主の顔が青くなった。
「い、いえいえ! お代は後ほどで結構でございます! そちら様の、よろしいお日柄に!」
 彼は早足で奥へ引っ込んでしまった。奥から、店員をせかすような声がかすかに聞こえる。
「あの、芹沢局長。それって」
 斎藤がそう声をかけようと、したのだが。
「あらぁ? いつでもいいなんて、何て気前のいい店・・・毎日来ちゃおーか?」
 がらがっしゃーん!奥で何かが割れるような音と、すすり泣きのような声が漏れてくる。
「・・・店主、泣いてますよ。苛めるのもそのくらいで」
 斎藤はそう言うと、傍らの小桃を見た。小桃は、困惑したような顔で固まっていた。
 ほどなく運ばれてきた団子の味に舌鼓を打っていると・・・。
「こんちはー。おいちゃん、ゴマダン(ごま団子の事)三つちょーだい」
 子供がこう言いながら店に入ってきた。斎藤はその子供に見覚えがあった。と言うか、原田や芹沢もその子供の事はよく知っていた。屯所の近く(でもないが)の長屋の子だ。
「あら歓太じゃないの」
 原田がその子・・・歓太に声をかけた。
「あれ? 奇遇だね。みんなして・・・何か事件?」
 歓太は目をパチクリさせて一行を見つめた。
「実は、かくかくしかじか、というわけなんだ」
 斎藤が一行を代表して、歓太に説明してやった。
「ねえ歓太。あんた、この子と同じ鉢巻きした男に覚えはない?」
 原田が歓太と目線を合わせ・・・る必要はなかったが、ともかく目を見て真面目な声で聞く。
「・・・背丈は、そう。さっき斎藤さんと一緒にいた人くらい」
 小桃が、小さな声でそう付け足した。
「こんな鉢巻きをして、島田と同じくらいの背丈の武芸者なんだ」
 斎藤が手で、このくらいだよ、と大きさの度合いを表した。
「日の丸の鉢巻き、で島田のあんちゃんくらいの背丈?」
 歓太は首をかしげて考えた。何秒かの思考の後、
「背は、よくわかんねえけど。日の丸の鉢巻きの男なら、さっき見かけたよ」
 と、何ともご都合な返答をしてくれた。
「何ですって!? それは本当!?」
 原田が猛然と詰め寄ったので、歓太は一歩後ずさってから答える。
「だ、だから・・・その鉢巻きは、珍しかったんで。でもみんな座ってたから背丈までは」
 歓太は先刻、御伽屋という店の前を通りかかった。その時に、店先に腰掛けていた何人かの浪人者を見たのだが、その中に日の丸の鉢巻きをした屈強な、サムライ風の男がいたと言う。
「何か、話ができすぎてる気もするけど」
 斎藤の言葉は一行の総意だったらしく、一瞬しんとなってしまった。
「それでも、当てもなく探し回るよりはマシだわ」
 原田が立ったままで一行を見渡した。芹沢はゆっくりと立ち上がると鉄扇を広げて、
「小桃ちゃん、何があってもアタシたちがいるからね」
「はい・・・。兄はもしかすると、悪い奴らに利用されているのかも」
 妙に真面目で融通の利かない性格でしたから、と小桃は言って立ち上がった。
「じゃ。行くわよ!」
 キジ役の芹沢の一声で、一行は真剣な面持ちで団子屋を飛び出して行くのだった。

続く


<後書きモドキ>
 ジャックスカです。第一稿のデザクエWは、わかたけ氏によって酷評されてボツにされたとです。
 それはともかく、見ての通りに前編ですので嫌でも後編を書かなくてはなりません。おわり。


 (若竹あとがき)
  第1稿はデキがあまりにも悪かったので(ベースアイデアが悪かった)、私が校正の段階でボツにしました。切磋琢磨という言葉がありますが、自分にも厳しく、他人にも厳しくが私のモットー。もっとも、私の作品も同様にジャックスカによる校正を受けてシーン丸ごと書き直しになったりするので、まあお互い様というべきか。作品が良くなるのならば、甘んじてそれを受け入れるべきだと私は思っとるとです。

 芹沢が土方の事を『ドカタ』と呼ぶシーンがありますが、これは『新選組銘々伝』(早乙女 貢)の中の一遍『散りてあとなき』が元ネタですな。さすが、我が友、マイナーなネタを良く知ってる。

  ジャックスカはまだネット環境にないので、感想は、若竹宛メールか、掲示板にでもお願いします。


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