偽・行殺(はぁと)新選組ふれっしゅ番外編

デザートクエスト1002×× つよい人


 この作品は『行殺』の世界で発生したかもしれないし、発生しなかったかもしれない些細な事件・任務・冒険の顛末について語るという、妙なコンセプトで作られたものだ。
 食後のデザートを食するような感じで読むのがいい。だからDessertQuestシリーズと呼ぶ事にする。
 今回、時期の設定とかは考えないでください。あと、伊東甲子かんこと鈴木美樹の姉妹とかも(無断で)登場させています。米倉さとや様には先に謝っておきます。
 すいません!・・・『デザインしてもらったので彼女のSSを書きたいなあ』と、若竹様が言ってたのを思い出しまして。それもそうだと考えて、つい勢いで執筆してしまいました。


 二月十四日。島田誠は力説していた。ちなみに相手は斎藤はじめ。
「どうも今まで、俺は方向性を誤っていたような気がするんだ」
「・・・何が?」
 斎藤は首をかしげた。
「この日が来ると俺は、ひたすらチョコ欲しさに駆け回っていたんだけど」
「うん」
「女の子にモテるためには、まず女の子に尊敬されるような強さを見せなきゃ駄目だよな」
「すごいよ島田。その通りだよ」
 斎藤はそう答えておいた。
「そこでだ。今日は町を回って、女の子に尊敬される事をやるんだ! 町で発生した揉め事をスパッと解決する! そしたら女の子のときめき度が上がって、へっへっへ」
「・・・」
 具体的にどんな事をどのように解決するんだろう、と斎藤は思ったが黙っていた。
「ただ・・・この時期、ジャックスカさんは俺を『血まみれにする気まんまん』じゃないかと思うと不安でしょうがない。前も、前の前も出血させられたしな」
「何をわけのわからない事を言ってるのさ」
 島田は、不安なのは気のせいだと思う事にした。<注・さーて、どうかな>
「というわけで、トラブルを探しに町へGo!」
 そういう事になった。


 あっという間に京の大通りまでやってきた。あちこちの店で、バレンタインチョコが売られている。
「む! 早速トラブル、発見だ」
 妙にテンションの高い島田が、そう言って前方を指さした。どうやら誰かが暴れているらしい。
「よーし! 強いところを見せるチャンスだ。島田誠、目標に向かって突撃!」
 叫んで走り出した。あわてて斎藤も後を追った。
「とう! 誰だ、暴れているのは」
 そう叫んで現場に到着した島田に声をかけたのは・・・。
「あら、島田はんやないの」
 最近、参謀として入隊してきた伊東甲子だった。
「あれ? 伊東さん」
 気が抜けたように、島田は言った。そして伊東の視線の先に目をやった。
「何が『ばれたい』だよ! 魚みたいな名前しやがって。日ノ本の国にそんなモン必要ねーんだよ! うちの方が『暴れたい』んだよ!」
 暴れている人が見えた。青い髪の色っぽいチャイナ姿の美人さんだった。
新選組うちの人間じゃねえか! ちなみに、ばれたい、じゃなくてバレンタインだぞ!」
 島田がそう叫んで頭を抱えた。伊東が、申し訳なさそうに話し始めた。
「ウチら姉妹が、その、南蛮の風習とかに否定的なのは・・・知ってるやろ?」
 島田も斎藤も、もちろん知っている。
「美樹たちを巡回に行かせたんやけど、ほら、今日はどこを向いてもソレやから・・・」
 鈴木さんは酔っぱらっているらしい。手当たり次第に人や物に攻撃しているように見える。どう見ても、ヤケ酒飲んで暴れている光景だ。
「あの子、素面しらふの時は礼儀正しいんやけど、酔うと性格が変わるんよ」
「性格が変わるって・・・」
 島田は思った。豹変するって感じだぞ。或いは、何かに取り憑かれてるって感じだ。
「何が『ちょこ』だよ! さかずきの親戚みたいな名前しやがって。日ノ本の国に必要ねーんだよ!」
 よく見ると、あちこちに人が倒れている。あちこちの店が荒らされている。
「お菓子屋さん・・・というかチョコを扱っている店や、その売り子さんを攻撃してるね」
 斎藤が冷静にそう言った。
「そうらしいな・・・おや?」
 二人三人と、見知った顔も混じっている。島田のその視線に気づいて伊東が、
「伊東道場から連れてきた連中なんやけど・・・取り押さえに失敗した結果やよ」
「ええ!? こいつらって北辰一刀流・・・って、ええ! どんだけ美樹さん強いの!?」
 入隊の時に聞いた話と全然違う。確か鈴木さんは、腕前は中くらいだって言ってたぞ?
「酔えば酔うほど、飲めば飲むほど、あの子は強くなるんよ」
「酔拳かよ!」
「違う。酔って闘う拳法・・・酔闘拳すいとうけんや。ちなみに素手で相手をぶちのめすんやよ」
 伊東は困ったように額を押さえて、言い訳するように言い続けた。
「伊東道場におったころも、こんな事があった。その時は門下生の全員でようやっと取り押さえたんやよ。ちなみに酔闘拳モードの時の美樹は、普段の3倍くらい速くて強いんや」
 伊東は島田に目を向けて、甘えるような声を出して来た。
「島田はん・・・ウチを助けてや。ウチ一人では、美樹を止められへんのや」
 実は、無理なわけではないのだが、伊東は怪我したくなかった。そこで、島田にすがってみせた。
「お、おお・・・いやそれは、しかし」
“チャンスだぞ島田。ここでトラブル解決したら伊東さんは俺に感謝感激アメアラレ、ついでに妹の美樹さんも、俺に迷惑をかけたお詫びにって・・・よっしゃー、SimaiDon! だ。”
 島田はそう考えて、それを見透かしているような斎藤の冷たい視線を無視して、こうカッコつけた。
「了解しました。ここは俺に任せてください」
「さすがやわぁ。頼りにしてるで」
 おだてられて、島田は酔闘拳の使い手・鈴木さんに接近していった。
「ん? 何だおまえ。うちと戦う気?」
「目指せ、しまいどん! うおお!」
「島田・・・口に出したらまずいんじゃないかな?」
 ドカ ドカ ドカ ドカ ドカ ドカ ドカ ボカ
「ううーん、ばたり」
 不覚にも(正しくは、当然ながら)島田は倒されてしまった。
「島田、大丈夫?」
「やっぱ、無理やったか・・・ま、わかりきってた事やけど」
 斎藤と伊東は、そう言いながら島田に駆け寄った。
「次はおまえか? うちに挑んでくるつもりな奴は?」
 鈴木さんが、びしっと指さしたのは伊東だった。
“ウチの顔もようわからんくらいに酔ってるやなんて”
 伊東は心の中で呆れた。どれほどの量、飲んだのだろうか。
「悪いことは言わない。故郷に帰りなよ」
“このあいだ、京の都に来たばかりなんやけど”
「おまえにも泣いてくれる家族の一人くらいは、いるんだろ?」
「あ・ん・た・だよ!」
 思わず伊東は声に出して言っていた。しかし相手には届いていないようだ。あきらめて伊東は島田の様子を見た。すべての攻撃をまともに食らっていたようだから当分は・・・と考えていると、
「・・・全然、歯が立たねえ。パワーはともかくスピードが違いすぎる」
 思ったより元気に島田は立ち上がった。斎藤はほっと胸をなで下ろした、のだが・・・。
“なんやて!?”
 伊東は内心、驚愕していた。
“酔闘拳モードの美樹の攻撃を八回食らって、自力で立てるやなんて”
 耐久力だけならバケモノだ。そう思った。今までそんな人間には会ったことがなかった。
“強い男やな・・・もしかすると、コイツは障害になるかもしれへん”
 そんな、冷酷な目で見られているとは夢にも思わず、島田は口元を手で拭った。
「血だ!? ほら見ろやっぱり血まみれじゃねえか」
 空を見上げて、島田は文句を言った。そして、気を取り直して伊東に向き直った。
「妹の美樹さんですけど。俺では取り押さえる事は不可能でした」
 それに答えたのは伊東ではなく、いつの間にか伊東のそばに来ていた男だった。
「当然だ。美樹殿を一人で取り押さえようとは、物知らずな奴」
「・・・あんた誰?」
「先日会ったばかりだろう、記憶力がないのか・・・服部はっとりだ」
 思い出した。伊東と同時期に入隊してきた、実直そうな男だ。
「ああ、ハットリ君か。どんぐりまなこな、タケオ・・・いやヨシオ君だったっけ」
「馴れ馴れしい男だな。親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らないのか?」
「礼儀知らずとか、記憶力が悪いとか、有ること無・・・有ること有ること言いやがって」
 険悪になりそうな島田と服部の間に、伊東が割って入った。
「二人とも、喧嘩はやめや。それよりも」
 今だ暴れ続ける妹を見やって、こう言った。
「あないになった美樹を取り押さえるんは、さしずめ虎を仕留めるようなもんや。はあ・・・」
「虎と戦って勝てる人間?」
 島田には二、三人の心当たりがあった。
「そうだ。服部さん」
 斎藤が、そう服部に話しかけていた。
「みんなで協力すれば、きっとうまくいくと思うんだ」
 服部は黙っていた。黙って、暴れる鈴木さんを見ていた。
「服部さん。一緒に戦ってくれませんか?」
 斎藤の言葉に服部は首を左右に振って、こう答えた。
「拙者は・・・戦えぬ」
「どうして?」
 服部は指差した。暴れている鈴木さんが、そこにいた。
「あの人の、戦闘スタイル」
「・・・確か、酔闘拳とか」
「そう、それだ」
「・・・?」
 服部の顔は、何故か赤かった。
「酔闘拳・・・拙者、美樹殿の事を好いとうけん!」
「何を言ってるんだコイツは!」
 叫んだのは島田だった。斎藤も呆れた顔をしている。伊東が、申し訳なさそうな顔をした。
「服部は、ああ見えて純情なんよ」
「純情とか、そういう問題じゃないだろ! 今日はバレンタインデーなんだぞ!」
「し、島田落ち着いてよ。あんまり興奮すると、血が止まらなくなるよ」
 そんなこんなで言い合っていると。
「みんなどうしたの? 喧嘩? 喧嘩しちゃ駄目だよ?」
「・・・けほっ、職務放棄ですね」
 虎に勝つ事のできる強い人が、ふたりもあらわれた!
「あ、近藤はんに・・・沖田はん?」
「ああ! 良いところに!」
 島田がそう言って、豊満な肉体の方に飛びついた。近藤は、おどおどした。
「え、島田くん。駄目だよ、こんな人前で・・・まだお昼だよ」
「豊満な肉体の方?・・・ナレーター、許すまじ
 殺気を発しているメガネは無視して・・・ワンスモア。
 島田が近藤に飛びついた。沖田の体調を考慮したのかもしれなかった。
「局長! かくかくしかじかで、出番ですよ! 局長の力を見せてください! どうせそーじは病弱だとか言って戦わないのがわかってるんで、当てにはしない!」
 近藤を抱きしめたまま、島田はそう力説した。
「あうー・・・島田くん、情熱的。あたし流されてしまいそう。人前でなんて、いけない事なのに」
 三十秒後。冷静さを取り戻した近藤は、それでもやっぱりおどおどしていた。
「でもでも、美樹ちゃんだって悪気があってしてるんじゃないんだし」
「悪気がなければ、何をしても良いってものじゃないんだけど」
 斎藤が小声で感想を述べた。
「く・・・こうなったら」
 島田がそう言って・・・近藤の目の前に指を出した。そして指をくるくる回した。
「そーれ、くるくるくるー」
「は、はわぁ・・・まわ。まわ、はわー・・・」
 近藤は目を回した。一つ間違うと『見ていなかった』と表示される、危険な手だ。
「よし、今だ・・・虎だ、おまえは虎になるのだー!」
「島田はん、何してるのん?」
 伊東が聞いた。そしてそれに誰が何を答える前に・・・。
「ニャーオ!」
 泣いた。否、鳴いた。近藤が鳴いた。
「何で猫になるんだよ!?」
 島田がそう叫んだが、時すでに遅し。
「マーオ!」
 向こうでも、鈴木さんが鳴いた。触発されたのか、鳴きだした。
「あっちも猫になったー!?」
 二匹の獣は、互いに威嚇しあいながら、徐々に間合いを詰めていった。
「・・・そういえば、俺が田舎にいた時に」
 突然、島田が言った。伊東も斎藤も沖田も服部も、この状況にどう反応していいかわからなかったので、思わず島田の語りに引き込まれた。
「島田、何か知ってるの?」
 代表して、斎藤がそう聞いた。
「暇なんで、猫の喧嘩を観察した事があったんだけど」
「島田、そんな事してたんだ」
「猫と猫が喧嘩する時、最初にああやって威嚇し合うんだ」
「ニャーオ!」
「マーオ!」
「そう。互いに連呼し合う。交互にやり取りしていくにつれて」
「ニャーーオ!」
「マーーオ!」
「どんどん声が伸びる、後部が高音になっていく」
「ニャーーオ!」
「マーーーオ!」
「そう、あんな感じに」
「・・・・・」
 島田の解説?に、何故か四人は聞き入った。
「ニャーーオ!」
「マーーーーオ!」
「ニャーーーオ!」
「マーーーオ!」
 おもむろに、島田が二人いや二匹に近づいていった。てくてく。
「ニャーーーオ!」
「マーーーーオ!」
 てくてく。てくてく。てく・・・
「ニャ・・・!」
「・・・!」
 声が止まる。二匹が人間に目を向ける。島田は一歩下がった。
「・・・ニャーーオ!」
「マーーーオ!」
「猫は自分の領域があって、そこに踏み込まない限り、基本的に人間の存在は気にも留めない」
「ニャーーーーーオ!」
「マーーーーーオ!」
 島田は、その位置で手を口元に当てた。山で、やっほーと叫ぶような感じで、
「カーン!」
 試合開始のゴングを鳴らした。
「「ギャフベロハギャベバブジョハバ!」」
 猫どうしの喧嘩が始まった。互いに一歩も譲らず、じきに近くの店の中に戦いの場所が移った。
「島田・・・今のは」
「ゴングだ。事ここに至っては、もはや人間が立ち入れる戦いではない」
 島田は平然と答えた。
「ゴングって・・・それに事ここに至ってとか言ってるけど」
 斎藤が言っている間にも、どこかの店の中で二匹が戦っている音がしている。
「「ゲフムギョボバハ!」」
 間断なく、物が壊れる音も聞こえてくる。あの店はもう商売はできないだろう。
「フォー!」
「フブフー!」
 もうどっちがどっちかわからないが、また威嚇の声が聞こえた。
 島田がそろそろと店の入り口に近寄り、
「Fight!」
「「フギャシャムベロクジョフォホ!」」
 伊東、斎藤、沖田、そして服部の四人はゆっくりと島田に近寄った。
「島田。今、戦いを・・・あおってたよね?」
 斎藤が聞いた。
「何を言う。人には、獣と獣の戦いを止める事はできないのだ」
「あおって・・・たよね?」
 斎藤がまた聞いた。
「言いがかりだ。仕方がない事なんだ。だからひじ・・・黒髪で色白で餅と含み笑いが大好きな人に告げ口なんかするなよ。いいか、絶対にするなよ」
「その言い方だと、告げ口しろって言ってるみたいだよ」
「黒髪で餅・・・誰の事言ってはるのやら、ねえ」
「けほけほ・・・だいぶ遠回しな言い方ですね。それだと誰のことか、わかりません」
「島田、誠か。この状況でぬけぬけとそんな言い方ができる。それがこいつの強さか・・・」


 ほどなく、沈静化した店内でダブルノックアウト状態の近藤と鈴木を保護して、一同は帰還した。
「なるほど・・・」
 沖田や斎藤の報告を聞いたひじ・・・否、黒髪で(略)な御方は島田に目を向けると。
「くっくっく」
 まず、笑った。ちなみに同じ部屋には山南もいるのだが、このオヤジが助け船を出してくれるとは思えなかった。ひとしきり笑って見せてから、さて土方が本題に入ろうとした時だった。
「お取り込み中、すみません。入ります」
 そう言って、副長室にやってきたのは意識不明なはずの鈴木美樹だった。ダブルノックアウト状態だったはずだが、そこはそれ、近藤が無意識に手加減していたのかもしれない。
「おや、どうしたのかね鈴木君。もう動いて大丈夫なのかね?」
 山南の声に、鈴木は力強く頷いてから、島田に歩み寄った。
「・・・!?」
 思わず身震いしてしまった島田だが、鈴木は島田の前まで来ると、
「さきほどは、本当に申し訳ありません! ごめんなさい! ごめんなさい!」
 背骨が折れるかと思われるくらい、謝りだした。
「色々な方からお話を伺いました。島田さんには多大なご迷惑をおかけしたそうで、お詫びのしようもないところですが、このままでは私の気がすまないのです。何か、何かお詫びさせてください!」
 視界一杯に迫ってくる鈴木を見て、島田は思った。
“本当に、素面しらふだと別人みたいだな・・・それに、その、実にいい身体してるなあ”
 島田は、鼻の下を伸ばした。艶やかな髪、長い睫毛、口元のほくろ、豊満な胸、そして・・・。
“はっ! いかんいかん。俺はどこを見ているんだ!・・・ちらっ”
 すごい、くびれてるぜ。もうちょっとでムチムチ太股が見え・・・とか考えてしまう島田だった。
「島田君。女性に恥をかかすものではないよ。返事をした方がいい」
 山南に言われて、我に返った。目の前の女性は島田の返答を待っているようだ。
“そう言われても。多大なご迷惑も何も、俺は今回ろくな事してないんだけど。そーじあたりが、面白おかしく脚色して伝えてるんじゃないのか? いや、待てよ”
 島田は、閃いた。試しに言ってみる価値はある。そう考えた。
「じゃあ」
 口を開いた。
「バレンタインなんで、チョコください。それでチャラって事で」
「・・・!!」
 鈴木は硬直している。島田は頃合い?を見計らって言葉を続けた。
「なーんてのは冗談・・・」
「ワカリマシタ」
「わかってくれましたか・・・って、はあ!?」
 島田は間抜けな声を出した。鈴木の目は血走っていて、あまりまともそうに見えなかった。
「有言実行が、武士としていえ人としての最低限の常識ですから」
「いや、あの、今のはジョウダンなんですけど・・・」
「ちょこれいと、というものを作るのは生まれて初めての経験ですが・・・」
「え? ちょ、ちょっと」
「粉骨砕身の覚悟で頑張ります。要求なさった以上、必ず受け取っていただきますから」
 右足と右手を同時に出しながら、鈴木はその場から立ち去ってしまった。
「島田君。火をつけたのは君だよ。デストロイな物体とか、石炭とか、口が裂けても言ってはいけない。受け取り拒否などは論外。君は強い人になる決意を固めたはずだ」
 山南はそう言って、余裕の表情で去っていった。
「考えたな、島田」
 背後で土方の声がした。
「恩を売っておいて、相手が断れない状況で迫る。そうすれば確実に『初めて』がもらえるわけだ」
「え? いやあ、それほどでも。でもその言い方だと誤解されそ・・・」
 言って振り返った島田の目に、無表情な土方が映る。ガシッと腕を掴まれた。
「仕事もせず、女性の初めてをいただく男か。恥を知れ」
「ぎゃあああ!」
 島田の、悲痛な叫びが屯所にむなしく響くのだった。


<後書きモドキ>伊東甲子の口調とか、鈴木美樹のキャラとか、ハットリ君とか、結構ハチャメチャです。ちなみに酔闘拳モード時は一応『鈴木さん』で統一してます。


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